2014年75日号

「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表
 経済産業省は、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」をとりまとめ公表した。中長期の水素利用のロードマップとして、エネルギー基本計画で「水素社会の実現に向けたロードマップの策定」が盛り込まれており、水素の利用や製造、輸送・貯蔵の各段階で目指すべき目標や実現のための取り組みを時間軸を盛り込んで明示した。
 2020年代後半には未利用エネルギーによる水素供給システムを確立することや水素発電の本格導入も視野に入れ、2040年頃を目標に再生可能エネルギーなどによるCO2フリーの水素供給システムの確立が目指される。
 ロードマップは、省内に設置した水素・燃料電池戦略会議(座長・柏木孝夫東京工業大学特命教授)の検討結果をまとめたもので、定置用燃料電池、燃料電池自動車などの水素の利用分野と水素の輸送・貯蔵、製造の3分野ごとに、水素利用の飛躍的拡大(フェーズ1:燃料電池の社会への本格的な実装)、水素発電の本格導入(フェーズ2:大規模な水素供給システムの確立)、トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立(フェーズ3)の時間軸で水素利用拡大に向けての道筋を示した。
 当面の水素利用の中心を担うことになる定置用燃料電池については、2020年頃までに、ユーザーが7〜8年で導入コストが回収できるコストの実現を図り、家庭用のエネファームの140万台の導入目標を掲げ導入を支援し、戸建て新築住宅や集合住宅への拡大も図る。大型の業務産業用については、SOFC型の低コスト化や高耐久性などの技術開発を進め2017年には市場投入を図る。業務・産業用については、家庭用のような具体的な導入目標を掲げることはできなかった。
 水素の製造については、化石燃料並みかそれ以下のコストが求められるところだが、水素の利用拡大に伴って、有機ハイドライトや液化水素などの形で海外からの未利用エネルギー由来の水素の製造や輸送・貯蔵が本格化し2020年代半ばにはN立方mあたり30円程度の価格が実現できるという姿が描かれている。


いすゞとユーグレナ、次世代バイオディーゼルを共同開発
 いすゞ自動車とユーグレナは、微細藻類であるユーグレナ(ミドリムシ)からバイオディーゼル燃料を製造する実用化に向け、共同研究を行う。活動の第一歩として、ユーグレナ社が世界で初めてミドリムシから製造したバイオディーゼル燃料をシャトルバスに搭載して、いすゞの藤沢工場で定期運行を行い、実証試験する。ユーグレナ社は世界で初めて微細藻類ユーグレナの屋外大量培養技術を開発。いすゞとユーグレナ社は、軽油のニーズが高い長距離輸送車向けの低炭素の代替燃料としてバイオディーゼル燃料開発の必要性に着目し協議を進め、約1年間の開発機関を経てバイオディーゼル燃料の開発に成功した。
 今後は、実証試験の結果も踏まえて、含有率100%でも車両エンジンに負担をかけることなく使用することができるバイオディーゼル燃料として実用化を目指し、2018年をめどに技術の確立を目指すとしている。


ソフトバンクグループが電力小売り事業を開始
 ソフトバンクグループのソフトバンクテレコムとSBパワーの両社が協力して電力小売り事業に参入したと発表した。PPS(新電力)事業に参入登録しているSBパワーから業務委託を受ける形で、ソフトバンクテレコムが自社の情報通信サービスと併せて電力販売を行う。2016年から予定されている全面自由化をまたずに、現在の自由化範囲である50kW以上の業務用電力需要家を対象に電力販売する。7月1日付けで事業を開始しており、当面は関東地区でソフトバンクテレコムの情報通信サービスを提供している顧客を中心に営業活動し、順次、東北エリアへも拡大していく。
 SBパワーは、メガソーラー事業や風力発電事業などの再生可能エネルギー発電事業を行うSBエナジーが全額出資する子会社で、北海道と沖縄を除く全国の発電事業者から電力を調達し、販売した電力の需給管理を行う。提供する電力は再生可能エネルギー比率の高い電力とする方針で、CO2の排出量を抑制したい法人顧客を中心に供給する。
 ソフトバンクグループのネットワークサービスやクラウドコンピューティングサービスなどの法人向けの提案事業と組み合わせることで、サービスの充実化を図る。


静岡ガス、電力事業推進へ「ガス&パワー」設立
 静岡ガスは、総合エネルギーサービス事業の展開を目指す一環として、7月2日付けで「静岡ガス&パワー」を設立した。新会社は、ガス事業と分散型電源を活用した新しい電力事業モデルを組み合わせる新たな事業形態を構築し、2016年を目途に静岡県東部地域から電力供給を開始する。
 新会社は、地域内の製紙工場などの自家発余剰電力や再生可能エネルギー電力などの地域資源を積極的に活用し、これとガスコージェネレーションなどの自社電源を組み合わせて調整することで、様々な需要に併せた電力供給を行っていく。


その他の主な記事
・エネルギー基本計画具体化の3小委、省エネ部会も開催
・日本海側の表層型メタンハイドレートの資源量調査始まる
・水素貯蔵容器の規制緩和 産業競争力強化法で
・東京都 カーボンポートレートの提供開始
・茨城の複合団地で、太陽光特高接続を4社協同で
・3種類の電源が切替なしで使えるパワコン 三菱電機
・スペインゲスタンプが日本でもメガソーラー
・宇部市の共同メガソーラーが運開
・SBエナジー 鹿島沖で10万kWの洋上風力に出資
・太陽光発電の効率が向上する波長変更粒子
・東京ミッドタウンに125台の充電装置を整備 国内最多
・トヨタ自動車 燃料電池自動車を12月から販売
・共同印刷 工場の屋根で太陽光発電事業
・オリックス 四日市にもメガソーラーを建設
・NTTファシリティーズ 31カ所目のメガソーラーが運開
・キューデンエコソル 松浦市にメガソーラー
・ユーラス 北海道最大規模のメガソーラーが運開
・広域機関が会員募集中 17日に設立総会
・山梨県、小水力電力を入札で売却 FIT価格で
・次世代エネ社会実証決まる
・スマコミ構想普及支援の募集を開始
・カーボンオフセット 認証支援
・次世代エネ技術実証も決まる   etc.

<インタビュー>
・小型バイナリー発電で、地熱・廃熱利用を促進
(第一実業 プラント・エネルギー事業本部資源開発部 地熱・バイナリーグループ 主事 柳澤保則 氏)
 
地熱発電というと、地下深い場所から得る高温高圧の蒸気を使ったフラッシュ型の大型プラントのイメージが強い。しかし、より低温の熱を利用したバイナリー発電も世界各地で利用されている。これは、日本でも温泉発電として注目を集めている技術だ。実際には、バイナリー発電は、温泉だけではなく、工場や廃棄物焼却場の排熱などを活用した発電としても使えるという。第一実業は米国アクセスエナジー社の125kW小型バイナリー発電設備の国内独占製造権を取得し、日本国内のみならず、アジア地域での展開を図る。




シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革(53)市民は「エネルギー自治」を支援=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授

・<新連載>エネルギー市場のサステナブルな世界(その1)
 =中国原発の非常用発電機市場を王手をかけた英国=
 日本サスティナブル・エナジー株式会社 大野嘉久






コラム
・発電論評<水素利用社会がやってくる>
・プリズム<ガスシステム改革の長期化する議論>
・青空<集団的自衛権の閣議決定>
・ちょっと一休<日比谷高校ラグビー部OB会の総会>




水素利用社会がやってくる【発電論評】

 水素燃料電池ロードマップが発表された。2015年からの燃料電池自動車の市場投入というこれまでのロードマップの節目の段階で、最新の市場動向や技術開発の見通しなどを検証し、あらためて進むべき道筋を概ね示されている。
 20世紀が化石燃料の時代だとすれば、21世紀は水素の時代だと言われて久しい。燃料電池や燃料電池自動車もすでに実用化技術も開発され、製品の普及段階に入ってきており、素旧のカギはコスト削減がどう進むのかにかかってきている。
 水素は、電気に似ている。水素は燃料であるが、化石燃料とは違って、多くのものから工業的に作り出せるということが最大の特徴で、そういう点で2次エネルギーである電気と共通するものがある。水素は燃やせば水になる。工場などの副生ガスや化石燃料、未利用エネや再生可能エネ、また、電気分解や熱分解で水から水素を簡単に作ることもできる。水素は循環型社会にふさわしい、循環型の再生可能エネルギーということもできる。燃料電池などを用いれば、水素を電気に変えることができる。そして湯や蒸気の形で熱と水が回収できる。水を、再生可能エネルギーで発電した余剰電力を使った電解水素の形で貯蔵すれば、形を変えて電力が貯蔵できることになる。原子力発電の夜間の余剰電力を使って揚水発電所が作られているが、これに代えて電解水素を作れば、水の代わりに水素の形でエネルギー貯蔵ができることになる。現在は、電気の貯蔵は蓄電池に頼ろうとしているが、水素の形でも蓄電できるということだ。水素燃料はCO2を排出しない燃料であり、再生可能エネルギーを水素に転換すればCO2フリーのエネルギーとして水素を流通させることもできる。
 燃料電池自動車などの研究開発が進んだことで、水素の貯蔵技術も急速に進化している。安全性の高い低コストの貯蔵容器が開発されれば、水素の貯蔵や運搬がやりやすくなる。
 水素の貯蔵・運搬技術が確立できれば、石油や天然ガスなどのように、国際的な取り引きも可能になる。水素は、エネルギーの共通の国際通貨となる可能性も見える。水素を電気に変え、また、水素に変える。21世紀のこれからのエネルギー社会は、水素と電気によって回っていくことになるのかもしれない。
 水素を電気に変えるには、燃料電池のほか、ガスタービンやガスエンジンによる内燃力発電も使える。ガスタービンやガスエンジンによる発電は、コージェネレー技術も発達しているので、高効率のエネルギー利用も可能とすることができる。水素社会の実現に向けて、内燃力発電業界も水素利用の事業モデルの構築に取り組んでおく必要がありそうだ。