2013.12.15


2013年1215日号(次号は新年号です)

エネルギー基本計画の原案を提示
 エネルギー基本計画の原案が示された。経済産業省は、12月6日に開いた総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会を開催し、これまで検討してきた新たなエネルギー基本計画の原案を示して議論した。
 示された基本計画の原案は、三村部会長が「今回の案は基本計画というよりも今後のエネルギー政策的なもの」と総括したように、内容的には各エネルギー源毎の政策上の位置づけや課題、今後の取り組むべき方向性などを示したものとなっており、計画というには必要な具体的な目標や割合、導入量やベストミックスの考え方などは示されていない。これについては、基本計画策定後に、原子力発電の再稼働の状況などを見定めながら改めて具体的な数値や各エネルギー源別の割合などを持ち込んだ本来的な「計画」を来年度以降に策定する方向で議論される。
 基本計画に盛り込まれるのは、各エネルギーの評価や位置づけで、今回の特徴といえるのは、再生可能エネルギーを国産エネルギーとして位置づけ、導入拡大を目指すとしたことや、将来的な国産の有望なエネルギー源としてメタンハイドレートの開発を促進することを盛り込んだこと。また、コージェネシステムなどの分散型エネルギーシステムを供給側と需要側の双方で有効性を評価し、供給側では化石燃料の高度利用を可能とするシステムとして位置づけたことや、再生可能エネルギーとの組み合わせによる多様な活用が図れること。また、需要面では、省エネルギーや電力の系統依存度を引き下げる有効な手段として、また、スマートコミュニティなどの面的な高効率のエネルギー利用システムの中核システムとしてもその活用を位置づけている。
 さらに、電力システム改革の断行もうたい、電源システムの分散型化の進展や、化石燃料の中で今後も引き続き利用拡大を目指す天然ガスの高効率利用システムとして位置づけ、発電システムの分散型化を目指していく方向も打ち出している。
 東日本大震災以降、課題となっているCO問題では、原子力発電の再稼働と再生可能エネルギーといったCOを排出しない電源を拡大するという、従来までの対策を引き継ぐだけで、新たな対応策は盛り込まれていない。エネルギー基本計画は、関係閣僚会議に諮られた上で、1月中に閣議決定される運びとなる。


積水化学など、室温でフィルム型色素増感太陽電池の試作に成功
 積水化学工業は産業技術総合研究所の研究グループと共同で、世界で初めて室温プロセスでのフィルム型色素増感太陽電池の試作に成功した。有機フィルム上の色素増感太陽電池としては世界最高水準の8.0%の変換効率も達成している。
 耐熱性の低い汎用フィルムや粘着テープのような材料にも膜を形成することが可能であり、多様なフィルム基板を用いたフレキシブルの色素増感太陽電池が、低コスト、薄型、軽量、大面積に製造できる。また、製造工程で高温のプロセスが必要でなくなるため、製造工程の大幅な簡略化が図られることになる。
 今後は、量産技術を確立すると共に、パートナー企業を募って開発を進め、2015年の市場参入を目指すことにしている。


CZTS太陽電池セルの変換効率で12.6%を達成
 ソーラーフロンティアは、IBMコーポレーション、東京応化工業との共同研究で、CZTS太陽電池セル(0.42平方cm)を使ってエネルギー変換効率が12.6%を達成し、同研究チームが1年前に達成した世界記録の11.1%を、1年間で更新した。
 CZTS太陽電池は、銅、亜鉛、スズ、硫黄、セレンといった容易に入手できて安価な原材料を主成分としており、レアメタルであるインジウムなどを使用しないため、コスト競争力に優れ、量産化にも適してた将来性のある薄膜太陽電池として期待されている。
 ソーラーフロンティアは、現在、CIS薄膜太陽電池の世界最大メーカーであり、研究開発段階では、変換効率19.7%を達成している。CZTS太陽電池でも、CIS太陽電池の変換効率にどれだけ近づくことができるか、さらに研究開発が進められる。


新エネ大賞決まる
 新エネルギー財団は、平成25年度の新エネ大賞の選考を行い受賞者を発表した。
 経済産業大臣賞に選ばれたのは、鹿児島県いちき串木野市の地元中小企業や学校などが共同で取り組んだ「薩州自然エネルギー工業団地事業」。地元企業や行政、学校法人などが出資して合同会社「さつま自然エネルギー」を設立し、金融機関や市民ファンドからの資金提供により、工場や施設の屋根に太陽光発電設備を設置して売電事業を行い、売電収入の一部を屋根などの賃料に充てるという取り組み。現在は、工業団地内に2千kW、その他市内に700kWの合計2700kWが稼働している。事業期間は約12年間で、事業終了後は、設置先に発電設備が無償譲渡される。一般市民に対しては地域特産品で還元する仕組みも工夫されており、地元関係者が後半に関わり地域に根ざした波及性のある取り組みだと評価された。
資源エネルギー庁長官賞は、太陽光パネルの不具合を「接続箱」からの検査で特定できる検査装置「ソコデス」を開発したシステム・ジェイディーと、北海道岩見沢農業高校が取り組んだ「農業における新エネルギー利用開発と地域活動」2つの取り組みに贈られた。
 「太陽光発電検査装置ソコデス」は高周はパルスを利用した検出技術が採用されており、技術的な新規性があることが評価された。岩見沢農業高校の取り組みは、地中熱や雪氷熱などを野菜栽培やh貯蔵などに利用する技術を研究開発し、実験実習や地域に向けての発表などの普及啓発活動を長年続けていることなどが評価された。
 そのほかに、新エネルギー財団会長賞として4件、審査委員長特別賞1件が選ばれている。


その他の主な記事
・電力システム改革、インバランス料金など議論
・コスタリカと2国間クレジットで文書
・NEDO 再生可能エネルギー技術白書を改訂
・丸紅 米社と協同でDR事業
・森トラストのファンドが太陽光に投資
・新日鐵住金とJパワーが共同で石炭火力を建設
・東電と中部電力の発電事業会社が発足
・大和ハウスが 物流施設で省エネ実証
・東芝 ドイツで太陽光発電による電力販売事業
・北電エコエナジー、池田町のメガソーラーが運開
・協和エクシオ 2カ所目のメガソーラーが運開
・オンキヨーがHEMSの製造販売に参入
・積水化学と産総研 室温でフィルム型太陽電池の試作に成功
・三菱電機 ユーラスから太陽電池を受注
・東芝 福島空港のメガソーラーにシステムを寄贈
・NEDO 断熱財と蓄熱健在の調査業務募集
・NEDO 水素利用技術を追加募集
・NEDO バイオマスの状況変化を市場調査
・スマートエネウイーク 燃料電池や風力展示
・カーボンオフセットマッチングセミナー
・環境省 地方発カーボンオフセットを4次募集   etc.

<インタビュー>
・LPガス事業は、ソフト面でのスマート化を
(日本LPガス協会 供給グループリーダー 旦 通夫氏/企画グループ 供給グループ(国際担当)荒畑 誠 氏)
 LPガス事業は現在、いくつかのチャンスあるいは転機にさしかかっている。その1つとなるのがシェール革命であり、価格が安い米国産LPガスの輸入を通じて、LPガス全体の価格が下がることが期待されている。もう1つは、スマート化がある。電気事業や都市ガス事業ではスマートグリッドやスマートシティなどが注目されているが、LPガス事業もこうした動きとは無縁ではない。電力システム改革やガス事業システム改革が行われ、エネルギー市場が大きくその姿を変える中でLPガス事業についてもその役割が大きく変わろうとしている。LPガス業界を主導する日本LPガス協会に、今後の方向性などを聞いた。



燃料電池新聞の主な記事
・90万人が見た東京モーターショーの燃料電池
・海外ニュース
 -米DOE、車載水素貯蔵技術開発に2014年、4百万ドル(約4億円)の資金助成
 -米Stanford大学、低温作動で高出力のSOFCを開発
 -伊San Remo市、2014年1月から路線バスとして燃料電池バスが運航開始
 -英水素・・燃料電池協会、大気汚染対策としての水素・燃料電池の役割を強調
 -米Plug Power、電気トラックのレンジエクステンダー用として燃料電池を提案
 -米Nuvera Fuel Cellsと伊Fincantieri、船舶用燃料電池で協業
 -英国と韓国、水素・燃料電池の研究開発を共同で推進する覚書を締結
 -米Air Products、英AFC EnergyのPower Upプロジェクトに参加
 -英Microcab、SWARM?プロジェクトで10台の燃料電池「H2EV」の走行実証を開始
 -米Microsoftの最新研究:データセンターの電源として燃料電池に優位性がある
 -米Vision Industries、DOEから助成を得て、4台の燃料電池搬送トラックの実証試験を実施
 -米NYSERDA、米Plug Powerによる燃料電池冷凍ユニットの実証試験に50万ドルを助成
 -豪Ceramic Fuel Cells、オランダの仮想発電所プロジェクトに45台の燃料電池を納入
 -英Intelligent Energy、モバイルUPS燃料電池を開発
 -韓国Hyundai、2014年4月からカリフォルニア州でFCVを月額499ドルでリース販売
 -韓POSCO Energy、MCFCのセル生産工場建設に着工
 -英スコットランド、燃料電池バスの実証走行を100台規模に拡大して実施を計画
 -英ITM Powerと独NRM、「POWER to Gas」プロジェクトで協業
・燃料電池フラッシュニュース
 -大阪ガス、都市ガス改質方式の水素ステーション向け水素発生装置の販売開始
 -パナソニック、米テスラモーターズとEV用電池の供給拡大契約
 -JX日鉱日石エネルギーとLIXILグループ、相互の販路活用で業務提携
 -日産・ルノー連合と三菱自動車、電気自動車開発などの提携検討で合意
 -神戸製鋼、水素ステーション向けに拡散接合型コンパクト熱交換器の販売開始
 -千代田化工 2015年稼働の水素供給基地から供給される水素価格は30円/N立法m程度
 -九州大学、SOFCの低温作動化などに寄与する新規高酸素イオン伝導体を発見
 -トヨタ、燃料電池バスから避難所に電力供給する実験を公開
 -三菱重工業、閉鎖式燃料電池システムを使った海中への電力供給に成功
 -岩谷産業、水素ステーションを輸入から国内生産に切り替えることでコスト半減を計画
 -野村総研、世界のエコカーの販売台数を予測、FCVは2020年に15万台
 -サムテック、水素ステーションむけ複合タンクの量産を開始       etc.
・燃料電池インフォメーション
■リード エグジビション ジャパン・オートモーティブワールド2014:2014年1月15日(水)〜17日(金) 東京ビッグサイト ○プログラム▼基調講演/サステイナブル・モビリティ実現に向けたトヨタの取り組み トヨタ自動車 奥平総一郎氏/サプライヤーから見た自動車の未来 マグナ・インターナショナル イアン・シモンズ氏/実現が近づく自動運転 スタンフォード大学 シーブン・ベイカー氏 ▼特別講演/インテリジェント・モビリティに向けた自動車産業の進化 デロイト・トーマツ  周磊氏/マイクロソフトが見据えるコネクティッドカーの未来 マイクロソフト サンジャイ・ラビー氏 ▼専門セミナー(次世代エコカーの本命「燃料電池車」 〜トヨタ、ホンダ、日産 各社の開発戦略〜)/トヨタ自動車における燃料電池車開発の課題と今後:トヨタ自動車  FC開発部 小島 康一氏/ホンダの燃料電池電気自動車の開発動向 本田技術研究所 四輪R&Dセンター 守谷 隆史氏/日産自動車における燃料電池自動車の研究開発  日産自動車 総合研究所  飯山 明裕氏       etc.


シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(85)
 =京都議定書目標達成の次に=
 大串卓矢/スマートエナジー代表取締役社長

・<連載再開>世界を読む 60
 =気候変動対策から取り残されるCOP19=
 (本紙:本橋恵一)





コラム
・発電論評<2013年を振り返ってみると>
・青空<安倍首相の軽佻浮薄な発言>
・ちょっと一休<長谷川君のお祝いの会>
・ちょっと一言<アベノミクスの賞味期限>


2013年を振り返ってみると【発電論評】

 12月も半ばを過ぎようとしており、今年も1年を振り返る時節を迎えた。本紙の次回の発行は、2014年の新年号である。今年も1年間、ご愛読頂き有り難うございました。
 さて、今年を振り返ると、なんといっても電力システム改革がようやくその仕上げの段階に入ったということになるだろう。11月には、電気事業法も改正され、改革がスタートした。電力の送配電網を全国規模で運営する広域運営機関が設立され、自己託送制度なども整備される。続く第2段階となる小売りの全面自由化も2016年度からの実施がスケジュール化されており、年明けの通常国会に電気事業法改正案が提出される。全面自由化は、発電事業の自由化も意味する。発電事業は現在でも自由だが、発電した電力の販売先に制限があるため、事業として広がりにくい。全面自由化によって電力販売に制約がなくなることで、分散型電源による多様な発電事業が活発化することが期待できる。
 固定価格買い取り制度の定着も今年のトピックスの一つだ。
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、太陽光発電を中心に急拡大を続けており、建設計画分も含めると、既に2千万kWを超えている。太陽光発電だけでなく風力発電もその恩恵を受けた。RPS制度から固定価格買い取り制度への移行が認められたためだ。RPSでは、環境価値も含めて1kWhあたり10円を切ることが当たり前だった買い取り価格が、倍以上の値段で買い取られることになり、新制度に移行した風力発電は250万kWを超え、大半が新制度に移行したことが報告された。
 コージェネや自家発電市場も活発な動きが継続している。原子力発電の大量停止に伴う、電力供給不安が継続しており、節電を求められる電力の需要現場では、自給力の確保を目的に発電設備の整備が進んでいるといわれる。再生可能エネルギーも含めて分散型システムを活用する新たな動きも次第に顕在化してきている。
 一方で、電力排出係数の悪化問題も続いている。国内の温暖化対策は、京都議定書の削減義務期間を通り過ぎたことで一段落し、COPでの議論の中心も既に2020年以降の枠組みづくりに移行している。こうしたなかで、今後の国内対策は来年以降の課題として先送りされ、年末にまとめられようとしているエネルギー基本計画でも、この点は明確にされていない。
 通りすぎようとしている2013年は、こうしてみると、多くの課題を積み残しながらも、次の時代に向けた新たな対策や制度作りが準備された1年だったといえる。迎える新年は分散型エネルギーの活用への取り組みが、さらに活発化することを期待したい。