2012.12.15


2012年1215日号

電力制度改革、小売り完全自由化は2段階で移行
 電力システム改革専門委員会が12月6日に開催され、小売りの全面自由化への移行に伴う課題などについて議論が行われた。7月にまとめられた基本方針では、発送電を分離して家庭用も含めた全面自由化に向かうことを決めているが、今回議論されたのは、小売りの全面自由化の制度設計の詳細と低圧託送制度、同時同量制度、供給力の確保対策、規制機関の在り方についてなど。
 自由化については、現在高圧契約以上の業務用や産業用の分野では実現しているが、競争力のある電源確保が難しいことや電力会社間の供給エリアを越えた競争が進まないなど「規制なき独占」と言われる状態が続いている。こうしたことから、委員会では、自由化に伴って料金認可や供給義務などが撤廃された場合に需要家保護の観点からは問題が残るとして、経過措置を設け、新規参入者も含めた市場競争が確認できるようになる一定期間の間は、現在の電力会社による総括原価方式の規制料金や供給義務も残し、需要家に対する電力供給が途絶えることがないようにして、電力取引の活性化や電力会社間の競争、新規参入者のシェアの拡大、発送電分離の実施など、一定の競争環境の整備・進展が確認された段階で全面的な自由化に踏み切るという二段構えとする。
 自由化後は、一般電気事業者の供給義務も撤廃するが、需要家保護の観点から最終保証サービス制度を設ける。最終保証サービスはどの事業者からも供給契約が結べなかった需要家に対して電力供給を保証するもので、供給を受けていた電力事業者が倒産した場合などの受け皿にもなる。公共サービスとして実施するもので、供給エリア内の支配的な小売り事業者などをあらかじめ国が指定する方法と、発送電分離後に系統運用を行う送配電事業者の2案が提案されたが、送配電会社が担うべきだとする意見が大半を占めた。
 自由化後も競争が起きにくいと考えられる離島の供給体制についても議論されたが、最終保証サービスと同様送配電事業者に担わせる方向となった。料金については事業者が決め、不当な場合は国が変更命令を行い、赤字が生ずる場合は託送料金に上乗せして回収する案が示されている。
 その他、小売りの全面自由化への移行に伴って、特定電気事業は廃止されることになる。自由化によって一般電気事業者特定規模電気事業者(PPS)といった事業形態の分類がなくなるため、全ての電力事業が発電事業と送配電事業、小売り電気事業に分類されることになる。特定供給については、自家発自家消費の延長として、自由化後の新制度でも存続させる。
 委員会は、基本方針で詳細設計が必要だとされていた検討課題については、今回で一応の議論を終えた形。発送電分離の結論など、次回の会合で取りまとめの議論を行うが、具体的な議論は総選挙後の新政権の下に引き継がれることになった。


富士電機もメガソーラー事業に参入
 富士電機は、山梨県の自社工場内に2000kWのメガソーラーを設置して発電事業を行う。運転開始は来年4月を予定している。発電所の建設と運営は富士電機の子会社で再生可能エネルギー発電事業を行う富士グリーンパワー社が行う。
 新設するメガソーラーは、パネルは外部調達するものの、それ以外の電気設備機器については自社の最新パワーエレクトロニクス製品を使用し、製品の実証の場としても活用する。
 富士電機はこれを契機として、太陽光発電を含めた再生可能エネルギー関連事業の拡大を目指しており、グループ全体で、発電設備の設計・調達・施工までトータルで行うEPC事業を中心に、発電事業への資本参加も含めて再生可能エネルギー事業の拡大を目指していく。
 メガソーラーの建設や運営は、12月1日付けでリニューアルした子会社の富士グリーンパワーが行う。同社は、2005年から秋田県の西目風力発電所の運営を行う風力発電事業会社として設立されていたものを改称し、富士電機グループが今後展開する再生可能エネルギー全般を担当する事業会社としてリニューアルした。大規模太陽光発電を始め、風力発電や地熱発電などについても具体的な事業検討を進めており、特に風力発電については、国内の大手企業ともタイアップしてEPC方式のワンストップ型の事業提案を行い、必要な場合は、発電事業会社に資本参加するなど共同事業や単独事業も事業モデルとして考えている。


広島大学、400℃の熱で水素 低温熱で水を熱分解
 広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの研究グループが、400度C以下の低温で水を熱分解して水素を製造する手法を開発した。
 水を熱分解して水素を製造するのは、通常4000℃程度の高温が必要とされているが、広島大の研究グループは、アルカリ金属を用いた多段階化学反応を適用することで400度C以下の低温でも水素が取り出せることを確認した。アルカリ金属は比較的低温で融解し液体になり、水素や酸素の化合物になるという性質を利用して、化学反応を制御することにより低温での水野熱分解を実現した。工場排熱などの低温熱は利用することなく放出されていることがほとんどであり、未利用の低温廃熱を資源に変える画期的な水素製造に道を開くものとして注目される。


ソフトバンクグループ、住宅の屋根を借りる「おうち発電プロジェクト」を開始
 ソフトバンクグループは、住宅の屋根を借りて太陽光発電事業を行う、アグリゲーション型の「おうち発電プロジェクト」を開始する。「おうちの屋根を日本の発電所に」をキャッチコピーに掲げ、貸し出す屋根を1千戸を来年3月31日までの約3カ月間、先着順で募集する。
 プロジェクトの仕組みは、ソフトバンク側が住宅の屋根を借りて太陽光発電設備を設置、1千戸の屋根上の「発電所」を一括管理して、固定価格買い取り制度によって売電する。屋根を貸し出す住宅側は、資金負担がなく太陽光発電を設置でき、売電収入の一部が利用料として支払われる仕組み。また、停電時には太陽光発電の電力を住宅の非常電源として利用できるようにもする。固定価格買い取り制度による20年間の事業期間の終了後は、住宅側に太陽光発電設備を無償譲渡される。使用する太陽光パネルはサンテックパワー社製とシャープ製でソフトバンク側が選択する。


その他の主な記事
・燃料電池や風力、太陽光など規制緩和 電力安全小委が初会合
・環境省 2011年度の排出量をまとめ
・北海道電力管内の太陽光が限界に
・PVJapan開く
・家庭のCO2排出状況を実態調査 環境省
・宮古市で太陽光プロジェクト
・扇島パワステ見学会を開催
・日立が丸紅からメガソーラー8万kW分受注
・ソフトバンクグループ 神奈川県の屋根貸し事業者に選定
・パナソニック大型蓄電システムを発売
・東芝変換効率20%の住宅用パネルを発売
・バイオガスを低コストで製造
・三井物産宮城で復興支援メガソーラー
・出光興産もメガソーラーに参入
・ソーラーFがパネル供給
・シャープ高効率化した太陽電池モジュールを発売
・三菱電機 福山工場でスマートメーターを製造
・シャープ変換効率37.7%の変換効率を達成
・環境省が東京、名古屋、大阪でセミナー
・再可エネ利用地域活性化事業の支援策を採択
・国交省、創蓄省エネモデル構築を推進
・廃棄物熱利用 コージェネも補助
・地熱開発の掘削事業を補助
・来年2月にFCEXPOなど   etc.

<インタビュー>
・高止まりする燃料価格とその対策
(資源エネルギー庁 資源・燃料部長 安藤久佳氏)
 原発事故によって、国内の原発が関西電力大飯原発3、4号機を除き、すべて停止している。こうした状況で、我が国の化石燃料の輸入量は大幅に増加している。その価格も、世界的にはシェールガス革命によって天然ガス価格が下がっているにもかかわらず、高止まりしたままの価格での輸入が続いている。燃料資源の安定供給と価格の引き下げについて、どのように考えているのか、資源・燃料部長の安藤氏に話をうかがった。



燃料電池新聞の主な記事
・ドイツの家庭用燃料電池
・「第53回電池討論会」レポート
・海外ニュース
 -独Viessmannm、スイスHexisに資本参加
 -独Aachen市、バーチャル発電ネットワークの実証試験を開始
 -米Plug Power、空港内の貨物牽引車を燃料電池方式に改造する実証プロジェクトを受託
 -シンガポールCascadiant、インドネシアで無線通信用バックアップ電源を拡大
 -韓POSCO Energy、MCFCを韓国で完全に一貫生産する権利を取得
 -オーストリアMagnaSteyr、液体水素貯蔵技術を自動車向けに開発
 -英水素・燃料電池協会など、燃料電池産業の予測を発表
 -カナダBallardと南アAnglo American Platinum、南ア農村の家庭用発電機を開発
 -英ITM Power、IMPACTプロジェクトで白金担持量の少ない炭化水素系MEAを開発
 -GM、2017年までに年間50万台のBEV、PHV、eAssisitシステムの普及目標を発表
 -米WATT Fuel Cell、プロパンが燃料の500W−SOFCポータブル燃料電池システムを開発
 -イスラエル工科大学、酸化鉄の薄膜と太陽光による電力で水を分解する方法を発見
 -仏Axaneが設置した顧客先の2.5kW発電システム、1万2000時間に到達
 -伊Acta、独FutureEのバックアップ電源向けに小型水素製造装置を供給する契約を締結
 -米Altergyと米 Hy9、メタノール改質方式バックアップ燃料電池を共同開発
 -米FuelCell EnergyとMicrosoft、バイオガスを燃料とするデータセンターの電力供給の研究開始
 -独Mercedes-Benz、ロサンゼルスモーターショーの「デザインチャレンジ」にEner−G−Force出展
 -欧州水素ステーション建設プロジェクト(HIT)、2012年11月に正式にスタート
・燃料電池フラッシュニュース
 -積水ハウスなど、CO2排出ゼロめざす福岡市のスマートタウン公開
 -豊橋技科大、リン酸添加量を1/3に抑えた高温無加湿電解質膜を開発
 -経済産業省、2013年度から水素供給インフラ整備を推進
 -日清紡など、白金代替カーボンアロイ触媒に含まれる残存金属はORR活性に影響しないことを解明
 -神戸製鋼所、水素ステーションの改質装置の起動時間を短縮する技術を開発
 -ホンダ、ロサンゼルスモーターショー「デザインチャレンジ」に三輪燃料電池ポリスカー出展
・燃料電池インフォメーション
■水素エネルギー協会2012 HESS特別講演会:10月1日(月)13時〜17時 タワーホール船堀(東京都江戸川区)○概要/@CO2フリー水素の構想説明(エネルギー総合工学研究所 笹倉正晴氏)APSA式都市ガス改質水素製造の最新動向(三菱化工機 小渕彰氏)B水素分離型リフォーマーを用いた都市ガスからの水素製造(東京ガス 井関孝弥氏)C膜分離による石油留分改質水素製造について(JX日鉱日石エネルギー 池田雅一氏)DCOGの製法と水素源としての活用(新日鉄住金 日比政昭氏)
■(社)電気化学会 電気化学セミナー 最先端電池技術−2013:2013年1月23日(火)〜24日(水)10:10〜18:00 タワーホール船堀(東京都江戸川区)○概要:第1日 リチウムイオン電池/@NEDOにおける蓄電技術開発(NEDO 細井敬氏)/Aパナソニックが進めるリチウムイオン電池システムの開発(パナソニック 花房寛氏)/Bトヨタの環境技術開発と革新型蓄電池への期待と挑戦(トヨタ自動車 小谷幸成氏)/Cリチウムイオン二次電池の市場動向(B3 竹下秀夫氏)/Dキャパシタの進歩と今後の可能性(森本技術士事務所 森本剛氏)/E太陽の恵みを電気に換えて〜色素増感太陽電池(東大 内田聡氏)/F正極材料の研究開発状況と展望(産総研 秋本順二氏)/Gリチウムイオン電池負極材の動向と開発(日立化成 西田達也氏)/H電解液の開発動向と展望(三菱化学 中島孝之氏)/Iリチウムイオン電池用電解質の現状と今後(森田化学 堀尾博英氏)/第2日 燃料電池・自動車の電動化/J燃料電池に関する政府の取組(経産省 原伸幸氏)Kバイオ燃料電池の開発(筑波大 辻村清也氏)LPEFCカソード触媒層の白金有効活用への取り組み(山梨大 内田誠氏)/Mグリーン水素社会への展望(横浜国大 太田健一郎氏)N大阪ガスにおける家庭用燃料電池システムの開発(大阪ガス 栢原義孝氏)Oスマートハウスにおける燃料電池の役割(積水ハウス 石田建一氏)/P電動化自動車用電池の市場動向(野村総研 風間智英氏)/Qホンダの燃料電池電気自動車開発の現状と今後に向けて(ホンダ 斗ヶ沢修一氏)R日産自動車における電動車両開発(日産自動車 宮本丈司氏)/S三菱自動車における電気自動車と電池システムの開発(三菱自動車:吉田裕明氏) etc.


シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(73)
 =電力ビジネスへの参入モデル=
 大串卓矢/スマートエナジー代表取締役社長

・世界を読む(52)<次期枠組みの入口で終わった、COP18ドーハ会議>

・新刊紹介
 『新しい火の創造』
 エイモリー・B・ロビンス、ロッキーマウンテン研究所著、山藤泰訳 ダイヤモンド社 2800円(税別)




コラム
・発電論評<柔軟な発電市場の創出に向けて>
・青空<本年もご愛読 ありがとうございました>
・ちょっと一休<亀高神戸製鋼元社長と岸本昭和電工元社長のお別れ会>
・ちょっと一言<自動販売機に見る、電力全面自由化のリアル>


柔軟な発電市場の創出に向けて【発電論評】

 今年も、残りわずかとなった。本紙も年内の最終号となる。
 さて、今年を振り返るとき、特筆されるのは、なんと言っても固定価格買い取り制度の導入だろう。近年のエネルギー政策の試行錯誤の中で、まれに見る成功例だといえるのではないか。
 それ以前、約10年間のRPS法の時代には、再生可能エネルギーの導入は進まず、RPS法は新エネ促進ではなくて、新エネ抑制法だと揶揄されもした。目標が低すぎたのだという声は大きい。しかし、義務を背負わされた電力会社にしても、供給義務を果たすために必要な発電所を維持しながら、再生可能エネルギーを新たな電源として抱え込むには動機付けが不十分だった朋いえる。またこの10年間は、電力需要の伸びが止まった時代でもあり、電源開発の必要性が乏しかったという事情もある。
 また、地球温暖化対策に明け暮れた10年でもあった。京都議定書が発効し90年比6%の削減義務を負った。CO2対策としては火力発電を減らし原子力発電の依存度を上げることが主に目指された。そして東日本大震災が起きた。
 震災以降、脱原発が目指されている。それぞれの立場によって程度の差は見られるが原子力発電への依存度を下げるという方向では多く意見の一致が見られる。危険なものは止め、安全なものはさらに安全に配慮しながら使用するとのが最も現実的だと思える。
 震災後に目指された、新たなエネルギー政策は、2年が経過しようとしている今も結論が得られていない。新たなエネルギー基本計画の議論も中断したままで再開のメドが立っていない。発送電を分離して発電と小売りを自由化し、需要家が電源や電力事業者を自由に選べるようにするという電力制度改革も、議論を残したまま年を越そうとしている。
 自由化する目的は、需要家の選択肢を拡大するということ。つまり、様々な料金メニューだけでなく需要家個々が電源や電力会社も含めてメニューを選択できるようにするということが忘れられてはいけない。再生可能エネルギーの拡大や分散型電源の活用などによる電源の多様化も合意事項である。
 購入する電力メニューがない人にはコージェネや燃料電池、太陽光発電などで電気を自給自足したり、相互に融通しあったりできる市場を育成することもひとつのアイデアだ。屋根借り型の発電事業など新たな事業モデルの萌芽も始まっている。系統電力に頼らない自由な発想が柔軟に受け入れられる制度改革に向けて、新政権発足後の年明けに、改めて仕切り直しの議論が再開されることを期待を込めて見守りたい。