2012年925

革新的エネルギー・環境戦略決まる 分散型拡大に向け環境整備
 政府は、エネルギー環境会議を9月14日に開き、新たなエネルギー政策の基本的な大枠を「革新的エネルギー・環境戦略」として取りまとめた。また、原子力発電の依存度を2030年代にゼロとする目標の達成に向けては様々な困難が予想され、目標達成に向けては「戦略」を見直しを行いながら取り組む必要があるとして戦略の柔軟な運用を行っていくことを前提に「今後のエネルギー・環境政策」として閣議決定した。
 「戦略」は、7月に示したエネルギーの選択肢を、パブリックコメントや意見聴取会などを通じて集約し、また政権与党の意見も踏まえてとりまとめを行った。再生可能エネルギーの可能な限りの拡大や、コージェネレーションシステムなどの高効率の分散型エネルギーシステムを大量に導入して化石燃料の高度利用を図りながら、原子力発電の依存度をできるだけ下げていくという道筋が描かれている。
 また、「戦略」では、「電力システム改革」を断行するとして、年内に電力制度改革の基本方針を年内に示すことも明記した。
 グリーンエネルギーの拡大については、「主要な電源にしようという明確な意志」をもって「グリーンエネルギー革命」を推し進め、@2010年比で10%以上の節電・省エネを実現し、2030年までに原油換算で7200万kl以上の省エネを目指すA再生可能エネルギーについては2030年までに10年比で約3倍となる3000億kWhの供給力を目指し、大規模水力を除いた供給力では、8倍以上の1900億kWhを目指す。節電と省エネでは、節約型の省エネに加えて、住宅も分散型発電所として機能させるため燃料電池の大量導入を目指し、2020年に140万台、2030年には530万台の導入を目指すことにしている。


電力システム改革 年内に戦略を策定
 革新的エネルギー・環境戦略の実現に向けて年末までに、取り組む改題として@グリーン政策大綱の策定A電力システム改革戦略の策定B地球温暖化対策の策定を3つの課題として示した。
 グリーン政策大綱はグリーンエネルギー革命の実現に向けた工程を具現化し、これを国民に提示して目標や負担を共有するもので、固定価格買い取り制度や広域的な電力ネットワークの整備、技術開発や補助制度などによる再生可能エネルギーの具体的な拡大策や必要なコストなどを洗い出し、ロードマップ化する。
 電力システム改革戦略は、検討が先送りされている、発送電分離の詳細などを具体化し、電力システム改革を断行するための具体的な道筋を示す。
 地球温暖化対策の計画は、25%削減の中期目標の達成が実質的に困難になっていることを踏まえて、2050年に80%削減するという長期目標の達成を踏まえた、2013年以降の取り組みを具体化して、国民及び国際社会に対して示していく。


IHI 20kWの低温バイナリー発電装置を開発 少量の低温温排水で発電
 IHIは、系統連系機能を有する20kWのパッケージタイプ小型バイナリー発電装置を開発した。2013年度からの販売開始を目指して商品開発を進める。
 バイナリー発電装置は、100度C未満の工場排水や地熱などの未利用のまま捨てられている排熱を、沸点の低い熱媒体によって蒸気を作りタービン発電機を作動させるもので、IHIでは、70度度C〜90度C程度の温水から所定通りの発電が行えることを確認し、商品化への目途を立てた。
 開発したシステムは、従来のバイナリー発電装置にはない20kWという小型タイプであり、発電に必要な温水量が少なくれすむため、これまで大量の熱エネルギーの回収が難しいとされてきた中小規模の工場などの低温の温排水を電力に変換できる画期的な発電装置といえる。
 まとまった温水が排出される比較的規模の大きい工場では複数台設置し、温水を各装置に分散させて発電することも可能で、メンテナンス時には一台ずつ停止して他の装置で発電することにより、発電装置の稼働ロスを最低限に抑え効率の良い運用が行える。
 また、商用電源に接続可能な系統連系機能を標準装備しており、発電した電力の品質を上げ、余剰電力の売電にも対応可能な仕様としている。


北大、PEFC用の新触媒を開発 発電効率劣化に効果
 北海道大学触媒化学研究センターの研究グループは、家庭用燃料電池PEFCの効率向上に寄与する新触媒の開発に成功した。
 新触媒は白金原子とルテニウム原子が完全に混ざり合った合金触媒で、燃料の水素に微量の一酸化炭素が含まれていても高い発電効率が維持できる。また、貴金属の使用料も削減できるため、燃料電池システムのコスト低減も期待できる。
 現在使用されている触媒では、白金とルテニウムの合金度が低いため、燃料中に微量に含まれる一酸化炭素により、触媒活性が低下する問題が解決できないでいるが、発電効率を長時間維持することができる新触媒は、PEFCの性能向上に大きく寄与できるものとして注目される。


その他の主な記事
・火力建設は入札調達を原則に 発電コストに競争原理を導入
・再生可能エネルギーとコージェネの拡大(エネ環戦略)
・8月末再可エネ設備の認定状況 設備容量は130万kWに
・コージェネ研のコージェネ統計2011年度実績
・20011年度ガスコージェネは2.9万kW
・スマートプロダクツ展開く
・富士経済、住宅の創エネ設備市場を調査
・日本を変えるスマート革命
・全戸に太陽熱システムを採用した集合住宅
・北大、太陽光をレーザーに変える新技術
・GSユアサ、エコモデル駅に蓄電池システム
・三井不動産三井造船と共同でメガソーラー事業
・東芝、ホンダとスマートエネマジを共同実証
・電源開発が四国にウィンドファーム
・近鉄が奈良にメガソーラー
・ローム、携帯で使える水素燃料電池
・明電舎750V太陽光発電対応のパワコンを発売
・森トラスト、太陽光発電で災害時の大規模ビルへ電力供給
・排ガス対策建機を追加認定
・東工大で第4回AESシンポ
・エネ庁が固定価格買い取り制度の説明会
・都市環境エネルギーシンポジウム 10月に名古屋で  etc.





シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流(26)
 =米国大統領選挙と再生可能エネルギーへの逆風=
 (和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏)
・日本を変えるスマート革命(14)
 = 政府の「革新的エネルギー・環境戦略」とスマートグリッド「プランB」=
 (スマートプロジェクト代表 加藤敏春)
  →PDFで読めますこちらから
・インタビュー
 =BEMSアグリゲーターに聞く=
 (富士電機 発電・社会インフラ事業本部 エネルギー流通事業部 スマートコミュニティー総合技術部 BEMSアグリゲータープロジェクト課 東谷直紀氏)
エネルギービジネスが「電気」などの量の販売から「明るさ」などの質の販売に変化することが予兆される今、スマートグリッドに代表される新たな社会インフラが必要となってくる。また、そのインフラ関連技術・製品は日本再生のエンジンとなるのではないか、という期待が高い。富士電機は、こうした分野に関するさまざまな技術・製品をラインナップした企業だ。BEMSアグリゲーター事業の向こう側に、どのようなエネルギーサービスを見据えているのか。
・キーパーソン
 =安全な福島第一の廃炉と分散型発電の推進を=
 (フェアウィンズ・アソシエーツ チーフエンジニア アーニー・ガンダーセン氏)




コラム
・発電論評<コージェネと固定価格買い取り制度>
・青空<政治はどこへ行く!?>
・一筆啓上< 内向きの研究者>


コージェネと固定価格買い取り制度【発電論評】

 固定価格買い取り制度の8月末の設備認定が130万kWになった。この後、RPS制度で認定されていた設備の大半も固定価格買い取り制度への移行が見込まれており、遅ればせながら日本も再生可能エネルギー大量導入の時代を迎えようとしている。
 ただ気になるのは、新規電源の中心が太陽光や風力といった出力が不安定な電源であるということだ。バイオマスや水力、地熱などの安定した出力が得られる他の再生可能エネルギーと組み合わせた形で導入できると、系統に与える影響は極小ですむ。地域の電源をマイクログリッド化し、自家消費した上で広域流通させれば、系統電力の依存度を大きく引き下げることができる。再生可能エネルギーを全て系統で引き受けるという現在の方向は早晩改められる必要があるのではないか。
 出力の安定化については、系統による調整と、蓄電池による調整の2つが先行している。しかし、調整方法はこの2つに限られるわけではない。例えば、コージェネや燃料電池システムによる調整。太陽光や風力の出力が低いときは、コージェネや燃料電池を運転する。燃料にバイオ燃料を少しでも利用できるようにしておけば、地域のバイオマス燃料製造にの進行にも役立つ。地域で生産されたバイオガスを発電用に義務づけるという方法も考えられるかもしれない。蓄電池と組み合わせてコストパフォーマンスの高い電源装置として運用することも考えられる。
 普及の障害となるのは、ランニングコストが高いこと。火力発電でも化石燃料コストが問題視されているが、化石燃料を使う限り当分の間この問題を避けて通ることはできない。
 そのための有効な手段として考えられているのは、コージェネや燃料電池を固定価格買い取り制度の対象にするということ。しかし、コスト回収は電気料金に求めるのではなく、電気料金への反映を極力抑えることが求められる。例えば、環境税による税収や、系統安定化用の蓄電池の整備費用や系統整備費用の一部。これらのものを財源として、コージェネや燃料電池買い取りコストの充てれば、電気料金の負担も軽くてすむのではないか。無制限に拡大できないというのなら、量を限って購入するという事でも良い。
 コージェネや燃料電池を普及拡大させることは、効率利用とバイオマス燃料の拡大という2つの効果が期待でき、化石燃料の抑制にも繋がる。これらは、将来的には、さらに進化が期待できる手段であるともいえ、今できる未来への投資ということもできる。
 買い取りの対象に、コージェネや燃料電池も加える。その方向で、対象設備や価格などの条件を具体的に考えてみる価値がありそうだ。