2012年725

発電・小売りを全面自由化 電力システム改革の基本方針決まる
 経済産業省は、7月13日に電力システム改革委員会を開き、小売り全面自由化などを目指す電力制度改革の基本方針を取りまとめた。
 現在は50kW以上の高圧需要家までが対象となっている小売り自由化の範囲を低圧部門にまで拡大し、家庭用も含めて全面自由化に踏み切る。
 焦点となっていた発送電分離については、送配電部門を電力会社から切り離して、全国的な送配電部門を管理運用する系統運用期間を創設、その下で、各電力会社の供給エリア毎に送配電網を運用する中立的な運用機関を置く。各電力会社管内の送配電部門については、現在の会計分離方式を見直し、電力会社から送配電部門の機能を分離させ独立した運用機関を設ける「機能分離」か、送配電部門を分社化して、電力会社の傘下で独立した系統運用を行う「法的分離」かのどちらかを採用する。
 秋以降に委員会を再開し、制度の詳細設計について議論を深める。
 小売り分野では、全面自由化によって、電力会社の供給義務や料金規制を撤廃するが、電力供給を受けられない事態を回避するために最終供給保障サービスを制度化する。
 発電分野では、卸電力規制を撤廃し、発電事業者の電力販売の自由度を高める。また、卸電力取引の活性化を目的に、当面の間、必要な予備力を除いて余裕のある電源を市場を通じて提供することを各電力会社に義務づけ、新電力の電源調達力を高める。また、部分供給をルール化して、新電力が顧客開拓をしやすくすることや、常時バックアップ料金の適切化を担保するために、発電コストに見合った価格設定とすることを電力会社に求める。
 発電分野や小売り分野で自由な電力販売が制度的に担保されることで、コージェネレーションなどの分散型電源による電力販売も自由に行えるようになる。


大型複合施設でスマートエネルギーサービス 鹿島建設が導入
 鹿島建設は、自社が所有する大型複合施設「東京イースト21」に、施設全体のエネルギーの面的有効活用と、電源の自立性を目指した実用レベルでは日本最大級となる「スマートエネルギーネットワーク」を構築する。高効率ガスコージェネレーションを導入し、電力の自給率を高めるとともに、全体をスマートタウン化してエネルギーを効率的に利用し、付加価値向上につなげる。
 東京ガスとその子会社のエネルギーアドバンスと共同で、設計・工事を進める。竣工後は、エネルギーアドバンスがエネルギーサービスを行うことになる。ガスコージェネレーションは、エネルギーアドバンスがエネルギーサービス用設備として設置して運用する。


日立、5MW級の洋上風力を開発へ 国内市場拡大に対応
 日立製作所は、5MW級の洋上風力発電システムの開発に着手した。日本の風況に合うとされるダウンウィンド型の風力発電システムで、経済性を向上するためシステム全体を軽量化し、高性能・高効率の風力発電システムとして開発する。
 2014年度から実証試験を開始し、2015年度の販売開始を計画している。また、2MW級の陸上風力発電システムの開発も並行して進め、再生可能エネルギー固定価格買取制度によって新たな市場拡大が期待される国内風力発電市場での製品力を強化する。
 日立のダウンウィンド型の風力発電システムは、富士重工から事業譲渡を受け、7月から、日立事業所で開発・製造を行っている。


防災用自家発は30%増 内発協が2011年度の設置実績をまとめ
 日本内燃力発電設備協会は、2011年度の防災用自家発電設備の設置状況をまとめた。
 設置台数は、前年度比30.1%増の7611台、設備容量は103万9545kWとなり、設備容量では、100万kWの大台を超えた。東日本大震災により、非常用電源が再確認され、ピーク対応を中心とした非常用電源確保への要望が高まるなかで、前年度に比べ1742台・24万3530.2kWと大幅な増加となった。
 メーカー別に見ると、最も設置実績が多いのは、ヤンマーグループで、グループ会社のヤンマーエネルギーシステムを合わせて、2935台・31万1191.4kWで、前年度に比べて台数で34.8%増、設備容量では43.7%増と大幅に伸ばした。ヤンマーグループに次いで設備容量が多いのは川崎重工業の17万9560kW。3位は東京電機の10万9367.8kWだった。
 地区別に見ると、被災地域を多く抱える東北地域の各県で大幅な増加が見られ、震災による復興需要がくっきりと表れている。
 施設別に見ると、増加幅が大きいのは、病院、工場・作業場、停車場・発着場、福祉施設など。病院は前年度比台数でほぼ倍増となる697台・12万1901.4kWと、大幅な伸びを示し、緊急時の非常用電源の確保に対する対策が優先的に進められた影響が明確に示された結果となっている。


その他の主な記事
・九州電力もネガワット契約
・日立、分散型EMSを実証
・関西電力、デマンドレスポンス効果を実証
・KDDIら 節電アドバイスの事業化を検討
・パナホーム、街区全体に創蓄エネシステムを導入 
・カナディアンソーラー、日本で太陽光を販売
・東邦ガス、岐阜市でスマートハウスを実証
・JFEが下水汚泥固形燃料化を実証
・東京電力、スマートメーターの調達仕様を見直し
・兵庫県、太陽光発電のトラブル急増で注意喚起
・東京都が発電所更新などで国に要望
・BEMSアグリゲーターなどでSSKセミナー
・スマエネ特区などでJPIセミナー
・スマートエネシンポジウム開くンポ
・環境省、再可エネ立地情報を公開
・2011年度の環境配慮契約、電気は9件
・林野庁、日本の森林非常事態宣言
・環境省、CO2大量削減事業を追加募集
・戦略的省エネ2次の公募説明会
・GT教育シンポ、9月に明石で
・被災地への再可エネ導入を募集
・太陽光次世代技術開発7件決まる
・カーボン・オフセット講座9月に  etc.





シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流(24)
 =シェールガスが日本のLPGの追い風に=
 (和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏)
・日本を変えるスマート革命(12)
 =日本の電力網を転換する「プランB」=
 (スマートプロジェクト代表 加藤敏春)
  →PDFで読めますこちらから
・寄稿
 =「M2M」との二人三脚で進むスマートグリッド=
 (参議院議員 藤末健三公設第1秘書 野副秀樹氏)




コラム
・発電論評<電力システム改革に期待する>
・青空<ソーシャル・ネットワーク・サービスの時代到来>
・ちょっと一休み<日比谷高校ラグビー部OB会>
・一筆啓上<プロフェッショナリズム>


電力システム改革の基本方針が示された【発電論評】

 小売りの全面自由化や、発送電分離、卸電力規制の撤廃・市場取引の活性化など、供給・販売両面からの市場競争を実現し、需要家の選択肢を拡大する。基本方針がそのまま実現すれば、日本の電力市場は革命的な変化を遂げることになる。
 全面自由化は、家庭用までも含めた全部門で、誰でも自由に電力販売ができるようになる。例えば、自家発を使って隣のうちに電力を売ることも理論上は可能になる。需要家は、自由に電力会社を選べる。太陽光発電や風力発電などの電力だけを売る電力会社があれば、その事業者から電力も買うことができるようになる。
 自由化範囲は、これまで段階的に拡大されてきたが、にもかかわらず、現在は、「規制なき独占」の状態が続いているといわれる。新規の発電所を建設して電源調達を行わざるを得ない新電力事業者は、売るための電力の調達手段が実質的には閉ざされているからだ。
 基本方針では、こうした新電力などの新規参入事業者が、市場を通じて必要な電源調達が行えるようにする。卸電力規制が撤廃されるので、発電事業者は、市場を通じてもっとも取り引き条件の良い電力販売が行えるようになる。また、既存の電力会社に対しては、余裕のある電源を市場に出すことを義務づける。電力会社はピーク需要を上回る電源を保有しているので、少なくともピーク時以外は、常に大量の眠っている余裕電源がある。それを、市場に供出させることで、新電力が市場を通じた電源調達をやりやすくする。また、市場取引によって価格決定の透明性も確保できる。
 新たな電源調達が可能となる新電力は、新規の顧客開拓が行え、新電力のシェアが増せば増すほど、既存の電力会社の電源に余裕が生まれ、さらにそれが市場に供出され、市場取り引きが活発になるという好循環を生むことを期待している。
 また、取引所に供される電力が発電所ごとに行われるようになれば、需要家の要望に合わせて、風力発電や太陽光発電、また、コージェネなどの電源毎の電力販売もメニュー化することもできる。
 発送電分離については、電力会社から送配電部門を切り離すことで、系統運営者の中立性を確保する。分離の方式としては法的分離か機能分離か、どちらにするのか、年末までに絞り込まれる。どちらになっても、既存の電力会社も含めた全ての事業者が公平な送電料金を支払うという仕組みができれば、事業者間の公平性は担保できることになる。
 夏休みをはさんで、秋以降、制度の詳細設計に向けた詰めの議論が再開される。基本方針どおりに、需要家の選択肢拡大につながるシステム改革となることを期待する。