2012.06.15


2012年615日号

分散型・グリーン売電市場を創設
 経済産業省は、6月18日から、卸電力取引市場に「分散型・グリーン売電市場」を開設すると発表した。電力需給の逼迫が懸念されている今夏の電力ピークに間に合わせて、自家発からの電力流通を促すため、市場の開設を急いだ。100kW未満の小規模な電力や、売電量が一定でない、いわゆる「出なり電気」も売電することを可能で、系統に逆潮できる余剰電力であれば、誰でも市場を通じて売電できるようにする。また、取引所への入会金や販売手数料も当面の間は無料とし、自家発の余剰電力の売電に対するハードルを低くするなどの措置を講じた。売電の条件は売り手が設定できるようにし、卸電力取引所が、マッチング等の斡旋を行い、買い手の中でもっとも条件の良いものが選択できるようにした。
■分散型・グリーン売電市場の概要
◇市場で売れる電気
・ 自家発やコージェネの電力。余剰電力も可能。100kW未満の小規模な電力や、不整形(出なり電気)も売電できる。
・発電設備を複数台まとめて発電した電気でも売電可能。(同一電力会社管内設置の発電設備に限る)。
・再生可能エネルギー固定価格全量買取制度対象の電源から発電された電気(場合によっては、買取価格より高値で売れる可能性がある。また、電源の全部ではなく、発電した電気の一部だけでも売電できる)
・従来のグリーン電力卸電力試行取引から移行する電気
◇売り手の条件
・売り手が販売価格や量、期間・曜日等の売り条件を任意で設定できる。
・事故等による発電不調等による負担の有無も設定できる。(この場合、買い手がリスクを負うことになるため、その他の条件面に工夫が必要)
・取引所の会員以外でも電力系統に逆潮できる電気であれば、市場を通じて売ることが出来る。
◇電気の買い手
・買い手は多くの電気事業者である取引所会員。
・市場を通じて売電することで、買い手を探す手間がかからず、効率的に一番条件のよい買い手の選択ができる。
◇入会金や手数料が不要
・分散型・グリーン売電市場の売電は、入会金(約160万円)は必要なく、当面の間、売買手数料も不要。
◇取引方法
・売電 市場を通じて電気を売る場合、売りたい電気の量や出力状況、条件などを取引所に提示する。(条件設定など、必要な情報は、取引所のアドバイスが受けられる)
・買電 売り方の条件を取引所が取引システム上に掲示し、買い手を募る。
・取引所が買い手を条件順に並べ、最も条件のよい落札者を選定する。
・売電者と買電者間で契約手続き等の必要な事務手続きを行う。(契約手続き等で売買条件の認識錯誤等が発生した場合、取引所が調整する)。


再可エネ賦課金の減免太陽など決まる
 7月からの再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始されることを控えて、再生可能エネルギー電力の買い取りコストを電力料金に上乗せして回収する「賦課金」の減免対象となる事業者の基準や、バイオマス発電の認定などを定めた政令を一部改正した。
 「賦課金」は、原則として系統電力を利用する全ての需要家に等しく負担してもらうことを前提としているが、特に産業用や業務用で、電力を大量に使用する業種や需要家に対して負担を軽減する意味で賦課金を減免することが法律で定められている。
 今回の措置はそれに基づくもので、減免が受けられるのは、製造業の場合は電気の使用量が平均の8倍、製造業以外は平均の2倍以上の事業所とされた。減免を受ける場合は、事業所名や電気の使用量などが公表される。


温暖化対策の選択肢は6案 2020年の削減目標は示さず
 環境省は、6月13日に開いた地球環境部会でエネルギー環境会議に報告する温暖化対策の選択肢の取りまとめを行った。
 選択肢は6案で、先頃、経産省の総合資源エネルギー調査会が示した2030年のエネルギーミックス(電源構成)の4つの選択肢をベースに、温暖化対策として、導入可能な最大限の対策を後押しする施策をとる場合を「高位ケース」、合理的な誘導策や規制により重要な低炭素技術や製品の導入を促進する場合を「中位ケース」、現行の施策や対策を継続する「低位ケース」の3つの強度の異なる温暖化対策を、ケース毎にモデル計算して、その結果を基に取りまとめた。選択肢原案は、エネルギー・環境会議に提案される。
 6つの案のCO2削減量(2030年)は、@原子力発電が0%の場合で大胆な温暖化施策(高位)の場合25%A原子力発電を2020年までに0%とする場合で高位の場合25%B原子力発電が15%の場合で、中位の温暖化施策の場合15%C原子力発電が15%で、高位の場合31%D原子力発電を20%程度維持し、中位の場合27%E原子力発電を25%程度維持し、中位の場合30%。
 また、中間値として2020年の削減率も試算しているが、削減率は5%から最大15%に止まり、いずれのケースでも海外対策なしでは25%の削減は困難という結果となっている。
 報告書では、2020年の中期目標には特に触れず、2013年以降の温暖化対策についても、今夏に示される「革新的エネルギー・環境戦略」を踏まえて対策を講ずるとして、環境省として、具体的な対策の提案は行わないことにした。


その他の主な記事
・広域ガス導管整備、国が基本計画
・NTTもメガソーラーに参入
・エネ環会議が6月末に選択肢
・環境省、カーボンオフセットの認証モデルの成果を報告
・埼玉県が太陽光パネル一括は中のモデル事業を実施
・国内クレジット69件を追加
・スマートシティーに家庭用植物工場
・太陽熱エネ活用型住宅はリクシルに
・王子製紙が北海道で地熱調査
・京都大学などが100kWの洋上風車
・立命大の研究Gがシリコンを溶かして切る技術
・NEDO次世代バイオマスを募集
・日立らがピーク節電契約
・アズビルがBEMSを販売
・森トラストが福島のゴルフ場でメガソーラー
・パナソニックが両面発電太陽光パネル
・トヨタが電気自動車を大型蓄電池として利用
・大王製紙が今夏も四国電力に送電
・中部電力もデマンドレスポンスを実証
・エネット、デマンドレスポンス契約
・FCV水素貯蔵に関する調査も決まる
・FC実用化関連決まる
・NEDO海洋エネ開発を追加公募
・ソーラーエネルギーシンポ開催
・カーボンオフセット講座
・再生可能エネ熱事業者公募
・スマートコミュニティで講演会
・神奈川県ソーラーバンクシステム
・横浜市、ESCO事業者を募集
・埼玉県、メガソーラー事業者を公募
・GT学会、川崎で見学会
・国営公園再可エネ活用 委託先を募集   etc.

<インタビュー>
・BEMSアグリゲータと新しいエネルギーサービス
(経済産業省に聞く)
 今年4月、経済産業省はBEMSアグリゲータ事業者の第一次採択者を公表した。BEMSとはビルディング・エネルギー・マネジメント・システムの略で、これまで大規模なオフィスビルや商業施設に導入されてきた。しかし、中小規模のビルにはまだこれからだ。原発の再稼働が見通せない中、節電へのニーズが高まっており、昨年度第三次補正予算を通じて、BEMSの普及促進が行われることとなった。
 海外では節電サービスを展開するアグリゲータ事業が発達している。米国では約30年の経験を持つ事業者もいる。こうした需要家サイドに立ったエネルギーサービスが、今回の経産省の事業をきっかけに、我が国でも普及していくのかどうか、新たな産業の創出となるのかどうか。本紙はこうした点に注目し、今号よりインタビューを通じて紹介していく。 今回は、経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー・省エネルギー部省エネルギー対策課に話をうかがった。



燃料電池新聞の主な記事
・エネファームの販売台数
・エネファーム用、安価な樹脂製貯湯タンクを開発
・海外ニュース
 -中国国務院、省エネ・新エネルギー自動車発展計画を採択
 -独Rittalと独 SFC Energy、25 〜500W級オフグリッド電源システムを共同開発
 -独Elcore、9000ユーロと安価な家庭用マイクロ燃料電池CHPを開発
 -英Ceresと蘭Itho-Daalderop、ベネルクス3国でのマイクロ燃料電池CHP販売で協業
 -米DOE、燃料電池方式の空港手荷物牽引車の実証試験を実施
 -米DOEが削減を提示したSOFCプロジェクト予算が復活
 -米Lilliputian Systems、マイクロ燃料電池の販売でBrookstoneと提携
 -米ReliOn、米Hy9とメタノール改質式の燃料電池バックアップ電源を開発
 -豪Ceramic Fuel Cells、9か国189台納入した「BlueGen」の累計稼働時間が100万時間に到達
 -独FutureE、中国の電力会社SGCCへ燃料電池バックアップ電源を納入
 -米Vision Industries、100台の燃料電池ハイブリッドトラックを受注
 -デンマークTopsoe Fuel Cellと韓国SK Holdings、家庭用CHP、大規模SOFCで協業
 -米DOE、米国再生・再投資法による助成で1200台以上の燃料電池を設置と発表
 -米P&G、3事業所に燃料電池フォークリフトを200台以上導入
 -英Ceres Power、電圧低下の要因を解明し、電圧低下率1000時間で1%を達成
・燃料電池フラッシュニュース
 -積水ハウス、スマートタウンで攻勢?宮城・富谷町など6カ所で展開
 -京大、錯体ポリマーを使う電解質膜を開発。無加湿、運転温度150℃で発電を確認
 -経済産業省、調査燃料電池の特許出願を調査。58%が日本勢
 -ダイニチ工業、JX日鉱日石エネルギー「エネファーム」受託生産が20億程度になる見込み
 -トヨタ、テスラと共同開発した電気自動車「RAV4 EV」を発表
 -東芝、家庭用燃料電池の2015年度販売目標は8万台
 -NEDOのスマートグリッド実証施設、米国で運転開始
 -九州大学、超電導モーターを利用した液体水素の常圧移送技術を開発
 -神戸製鋼所、チタン箔にカーボン材料をコーティングした燃料電池セパレーター材を開発
・燃料電池インフォメーション
 ■電気化学会固体酸化物型燃料電池(SOFC)研究会「第88回SOFC研究会」:7月25日(水)笹川記念会館(東京都港区)○概要/「TOTOにおける家庭用燃料電池システムの開発」(TOTO 城戸輝希氏)/「次世代エネルギーシステム構築に向けた水素・燃料電池の活用」(筑波大学 石田政義氏)/「1Fuel Cells 2012, Science and Technology (Berlin)」(東京ガス 藤田顕二郎氏)/「10thInternational Symposium on Ceramic Materials and Components for Energy and Environmental Applications (Dresden)参加報告」(堀田照久氏 産業技術総合研究所)/「110thEuropean SOFC Forum 2012参加報告」(講師未定)    etc.


シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(67)
 =国内クレジット制度とJVERの統合=
 大串卓矢/スマートエナジー代表取締役社長

・世界を読む(46)<英国の電力市場改革と原子力の買取制度>

・キーパーソン
 =スウェーデンのエネルギー改革を日本で再現=
 自然エネルギー財団理事長 トーマス・コーベリエル氏

・新刊紹介
 「スマートグリッド「プランB」─電力大改革へのメッセージ」
 加藤敏春著 NTT出版 1900円(税別)



コラム
・発電論評<自家発電力の拡大は防災用自家発の活用を>
・青空<県人会>
・ちょっと一休<草野さんの早い死を悼む>
・ちょっと一言<がっかりだったシャープの経営戦略説明会>


自家発電力の拡大は防災用自家発の活用を【発電論評】

 エネルギーのスマート化によって新たな産業が生まれようとしている。中小規模の電力でも集めれば大きくできる。その当たり前のようなことが、スマート技術によって容易に実現できるようになった。最近の話題といえば、BEMSアグリゲーターと分散型電力の取引市場が開設されるということ。どちらにも共通していることは、スマート技術を利用して初めて実現できるということだろう。
 小容量の電気を集めることで一定量の電源とする。まさに分散型アグリゲートの世界が今始まろうとしている。設置場所の異なる多数の電源をスマート技術によって集約し、一定以上のバーチャル電源として流通させる。全量でも部分でも売買できる。そういうことが想定されていると思われるが、現実を考えると、市場取引が期待できるのは、既に卸売りされているIPPなどの自家発電原がより好条件の取引を期待して移行してくることは期待できても、いわゆるコージェネなどの中小の自家発からの余剰電力は、期待はずれに終わってしまうのではないかと思われる。
 取引市場が創設されてからもう7年になるが、市場を通じて電力を買いたくても、商品がないという状態が続いている。今回も、その繰り返しとなってしまう恐れが十分にある。
 市場の活性化を期待するには、まず、余剰電力が生み出せる自家発・分散型電源を拡大する必要があるが、既設の自家発電の大半は、系統連系が制度的に困難で、基本的には余剰電力が発生しない規模で設置されている。
 もう一つの眠っているといわれる防災用の自家発は、消防設備などに対する専用電源として設置されているもので、目的外の負荷に給電することはできないように規制されている。例外的に認められる場合でも、常に専用負荷に給電できる容量を確保することが求められるため、設置例がほとんどないのが現状だ。
 この防災用が活用できれば、余剰電力は無理でも、相当の「ネガワット」効果が期待できることになるのだが、それには、規制緩和が必要になる。
 夏期の昼間の電力ピークの数時間、ほとんど使用されることのない1千万kW以上といわれる防災用の自家発が運転できれば、どれほどのネガワット効果が発揮できるのか、防災電源のメンテナンス性の向上の観点からも一考の余地があると思われる。
 自家発分散型電力の取引所という「入れ物」は整備されたが、残された課題は、入れ物に入れる商品をどのようにすれば増やせるかということになる。
 それには、防災用も含めた自家発電設備の運転を促せるような規制緩和や自家発活用策の具体化が今後の大きな課題となるといえるのではないか。