2012年65日号

分散型・グリーン電力取引市場を創設
 経済産業省は、電力の市場取引の拡大を目指す一環として分散型電源の取引市場を創設する。電力の供給力不足が継続する中で、コージェネなどの自家発電設備の有効利用を促し、電力取引市場の活性化につなげる観点から、卸電力取引市場に「分散型・グリーン売電市場」を開設し、コージェネや自家発の余剰電力の流通をやりやすくする。
 中小規模の自家発やコージェネ等の分散型電源は、これまで原則的に系統連系が認められていなかったため、もっぱら自家消費を想定した電源として設置されている。しかしながら、電力ピーク時を中心に、自家発やコージェネの余剰電力が市場を通じて適正な価格で取り引きされる環境が整備できれば、出力を増強して余剰電力を発生させるなどの新たな取り組みが開始されることを期待して、専門の取引市場を開設することにした。
 新市場では、現在は、取引の最小単位が1000kWとされている制限を撤廃して、小規模の自家発やコージェネの余剰電力も取引可能とすることや、余剰電力の出力が不安定な電力も取り引きできるようにする。また、取り引き手数料についても当分の間は無料とするなど自家発の市場参加をやりやすくする。


関西電力とエネットがネガワット取引を開始
 関西電力は、節電により需要しなかった電力を「ネガワット」として買い取る「ネガワット」取り引きを制度化する。管内の大口需要家を対象に関西電力があらかじめ指定する電力ピーク時に、契約した節電を行った場合、事前に入札によって取り決めておいた金額を割り引くという仕組み。契約電力500kW以上の大口需要家が対象だが、500kW未満の需要家でもBEMSアグリゲーターが一定量以上の節電量を取りまとめる場合はネガワット契約を同様に結ぶ。
 一方、新電力(PPS)事業者であるエネットも大阪ガスとタイアップしてコージェネの電力を活用する「ネガワット」取り引きを試行する。
 エネットから電力供給を受ける需要家が、電力ピーク緩和を目的に、コージェネの出力を増加させることにより系統電力の需要量を削減する場合、削減した電力量を「ネガワット」として評価し、需要家には対価を支払う。大阪ガスは、コージェネのネガワットを管理してエネットに提供するアグリゲーターの役割で、エネットのユーザーの電力の需給状況に合わせてコージェネの出力を制御して、エネットのピーク電力供給量の抑制に貢献する。


電力制度改革、発送電分離の在り方を検討
 電力自由化の拡大や発送電分離など電力事業制度改革について検討している総合資源エネルギー調査会の電力システム改革専門委員会は、電力ネットワークの運用を電力会社から切り離して中立性を確保する、いわゆる発送電分離に向けた本格的な議論を開始した。
 委員会では、現在の会計分離では、中立性透明性が確保できていないことを前提に、送電部門を独立した主体が運営する形に改める方向で議論が進められている。全国規模の広域運用を行う広域系統運用機関を置き、各電力会社管内の系統運用も中立機関にゆだねる形が目指されている。残された課題は、どのような形で送電部門を切り離すかということに集約されており、所有形態はそのままにして独立した系統運用機関を設ける「機能分離」と、分社化した子会社が系統運用を行うという「法的分離」の2つの案が提案されている。


エネルギーミックス、4つの選択肢に絞り込み コージェネは15%
 総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会は、脱原子力発電依存を掲げた2030年のエネルギーミックス(電源構成)を4つの選択肢に絞り込み、取りまとめた。選択肢はエネルギー・環境会議に報告される。
 電源構成の考え方は、@省エネルギー・節電対策の抜本的強化A再生可能エネルギーの開発・利用の最大限加速化B化石燃料の有効活用C原子力発電の依存度をできるかぎり低減するという4つを基本的な方向性として、前回までの原案には残っていた原子力発電の構成比を35%とする選択肢は、参考ケースとして除外した。
 選択肢は省エネ(節電)とコージェネをそれぞれ10%と約15%と見込み、この2つを各選択肢に共通として、原子力発電と再生可能エネルギー、火力発電を変数とした。
 選択肢1は、「意志を持って原子力発電比率ゼロをできるだけ早期に実現し、再生可能エネルギーを基軸とした電源構成とする(原子力0%、再可エネ約35%、火力約50%)」。選択肢2は「再生可能エネルギーの利用拡大を最大限に進め、原子力発電への依存度は2030年に向け低減させる(原子力約15%、再可エネ約30%、火力約40%)」。選択肢3は「原子力発電への依存度は低減させるが、今後とも一定の比率を中長期的に維持し、再生可能エネルギーも含め、多様で偏りの小さいエネルギー構成を実現する(原子力約20〜30%)、再可エネ約25〜30%)」。選択肢4は「社会的コストを事業者(さらには需要家)が負担する仕組みの下で、市場における需要可の選択により社会的に最適な電源構成を実現する(電源の割合は示さない)」というもの。いずれも2030年時点のエネルギー需給を想定して、あるべき電源構成の姿を選択肢として示した。


その他の主な記事
・三菱重工、燃料電池でトリプルコンバインド
・パナソニック、モニター発売
・JFEエンジが電力創生PT
・オリックス電力がグリーン電力で一括受電サービス
・シャープが変換効率43.5%の太陽電池
・ニッケが太陽光発電事業に参入
・三井住友FG、太陽光と蓄電池で節電
・三菱重工、燃料電池でトリプル発電
・東芝、韓国の風力メーカーを買収
・東芝、福島のソーラー事業に出資
・東邦ガス、3電池でスマートハウス
・スマコミ、再加熱など新エネ導入を募集
・大阪府市、新たなエネルギー事業を提案募集
・東京都、新たな太陽光発電の普及策を募集
・環境省、エコノ芽ビジネスも募集
・環境配慮型ビジネス金融機関を指定
・経産省、低炭素産業の国内立地を支援
・12年度省エネ大賞募集
・12年度第1回中小水力研修会  etc.

<インタビュー>
・エコポイントの活用で節電プロジェクトを推進
(一般社団法人スマートプロジェクト代表(エコポイント提唱者)加藤敏春氏)
 夏期の電力ピークが近づく中で、電力の供給力不足に対する深刻な懸念が続いている。原子力発電の再稼働問題だけでなく、再生可能エネルギーの導入拡大や分散型電源の拡大、化石燃料の安定確保など、電力の需給安定化に向けた課題は山積したままで、なかなか出口が見いだせない状況が続いている。こうした状況に対し「エコポイント」を活用した節電プロジェクトを推進しているのが加藤敏明氏が代表を務めるスマートプロジェクトである。節電の先には、スマートグリッドが「エネルギーのインターネット」へと進化した社会がある。新著「スマートグリッド「プランB」」で目指す、スマートエネルギー社会について、加藤氏にお話を聞いた。


シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革(31)「2000W社会」の実現、研究から政策へ=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授


・電力全面自由化時代(その1)
 =MWとMWhの使い分け=
 山田光/スプリント・キャピタル・ジャパン代表



コラム
・発電論評<自家発の新たな可能性開くネガワット取引>
・プリズム<チキンゲームを仕掛けた国の責任>
・青空<乾坤一擲>
・ちょっと一休<オムロンの迎賓館で歓談>


自家発の新たな可能性を開くネガワット取引【発電論評】

 ネガワット取引という新しい取り組みが始まろうとしている。関西電力とエネットがこの夏からスタートさせる。関西電力のやり方は、大口の需要家がピーク時に節電した削減分を「ネガワット」として評価し、対価を支払う。ネガワット契約は入札によって行い、価格の安い契約から順番に、ピーク時の節電を依頼する。ネガワット取引を実際にうかどうかは、電力の需給状況による。いわばネガワット予約契約だ。
 関西電力は、これを中小需要家にも拡大するために、BEMSアグリゲーターを活用する。BEMSアグリゲーターは、経済産業省が事業者認定制度を発足させている。自ら省エネや節電に取り組むことが困難な中小規模の需要家に対して、省エネや節電サービスを提案し、需要コントロールによって、節電や省エネのサービス事業を展開するというもの。どこかESCO事業にも似ているが、複数の需要家を集約することで、省エネや節電のボリュームをかさ上げして事業性を高める。ちりを積もらせて山にするのだ。
 一方のエネットの方法は、ガスコージェネに着目する。ガスコージェネをピーク時に有効に活用して貰い、自家消費電力を増やし、系統電力の使用量を削減する。ガスコージェネは中小規模が多いので、アグリゲートして一定量以上のネガワットを確保するために、大阪ガスとタイアップする。大阪ガスが、複数の需要家側のガスコージェネをまとめて運転制御して、系統電力の使用量を抑制する。ピークカットできた電力を、エネットは供給余力として他の需要家への供給に回せる。電源確保が困難なために電気を売りたくても売れないというジレンマに悩んでいる新電力各社にとっては、ピーク電力がネガワットできれば、新たなバーチャル電源が確保できたことになる。
 ネガワット取引の目新しい点は、自家消費分の電力も系統電力の需要量を下げる効果があるということに着目したことであり、系統電力を使用しないことが結果的に新たな電源を確保したのと同等の効果が得られるということになる。
 従来の自家発の活用は、余剰電力を如何に系統に逆潮流させるかというものであったが、逆潮しない自家発も系統電源の一部として捉えることができるようになるわけで、まさにマイナスをプラスに転じるという意味で画期的だ。
 一方で、経産省は、今月中にもコージェネなどの分散型電力の取引市場を開設する。国内に大量に眠ったままになっている自家発電設備を新たな電源として活用するという取り組みの一つとなる。
 大きく変化する分散型電源の役割について、システムを提供する業界側にも新たな事業提案が求められているといえそうだ。