2012.01.15


2012年115日号

電力制度改革に10の論点 自由化拡大に非対称規制も
 経済産業省は、原子力発電への依存度を下げ、再生可能エネルギーや高効率の分散型電源を活用した新たな電力需給システムの構築を目指して、電気事業制度を抜本的に見直す「電力システム改革」の本格的な議論を開始する。
 現在の垂直統合型の地域独占の電力事業制度から、多様な電力事業者が多様なスタイルで参画する自由な競争環境の下で電力事業を再構築することを目的に、昨年10月から省内にプロジェクトチームを設置して検討を進め、その結果を10項目の論点としてまとめ公表した。今後、総合資源エネルギー調査会の総合部会の下に「電力システム改革専門委員会」を設置して、具体的な制度改革の議論を開始する。
 示された10の論点は、@スマートメーターなどを整備して、需給状況に応じた料金やサービスによる需給調整を可能とすることA需要家が供給者や電源を選択できるようにするために、小売りの完全自由化を図ることB電源や供給者の多様化を図るため卸規制を見直すことC分散型システムの活用拡大に必要な制度の見直しD電力需給の安定確保のための予備力を含めた供給力の確保E電力会社間の競争を活性化するための方策F供給区域を超えた広域での系統運用や需給調整を図るための仕組みG送配電部門の中立性の確保と電源間の公正な競争を担保するルールや仕組みH送配電投資やユニバーサルサービス、供給責任の確保など市場原理に委ねることでは解決できない公益的な仕組みの再構築I新たなシステムを構築するための時間軸を設定した制度設計。
 競争市場の構築に主眼が置かれており、電力市場参加者を拡大するため、電気通信事業制度改革などで採用された非対称規制の導入も視野に、発送電分離の具体化などが実現しそうだ。特に、自由な市場競争の下で、自家発余剰電力の市場流通がどのような形で実現されるのかなど、分散型エネルギーシステムの活用策に注目が集まる。


リチウムイオン電池とEV用急速充電器で規制緩和
 総務省消防庁は、政府のエネルギー規制・制度改革アクションプランに基づいて見直しを行ったリチウムイオン電池の取扱規制と、電気自動車用の急速充電器の設置基準について規制緩和の報告書をまとめ公表した。
 急速充電器については、今後急激な普及が期待される電気自動車の充電インフラの安全確実な整備を確保することを目的に、専門の検討委員会を設け@給油所での急速充電器を設置する場合とA大規模店舗などの商業施設に設置される急速充電器の安全対策をとりまとめたもので、給油所については、給油設備から6m以上離して設置することや、監視カメラなどで使用状況を監視することなどの対策を求めることにした。商業施設に設置する場合は、設備メーカーなどの組織である協議会の規格に基づくものは新たな安全対策は必要なく、定期点検の実施状況を確認する。
 リチウムイオン電池の安全対策については、これまで危険物として規制していたものを、基準以上の厚さの鋼板で区画することなどを条件に、少量危険物施設として取り扱うこととし、電解液の容量についても、従来同じ場所に設置される自家発電設備などの燃料と合算していたものを、合算しないで計算できるようにして、指定数量規制を緩和する。また、設置場所についても耐火構造で区画することなどを条件に、建築物の地階にも設置できるようにすることや、防爆構造や貯留設備、浸透しない床構造などを求めていた規制は撤廃することにした。
 リチウムイオン電池の規制緩和については、リチウムイオン電池を非常用電源として使用できるようにする措置を今年度中に措置することも求められているが、消防庁ではこれについても告示を改正する方向で対応を進めている。


川崎重工、希薄な炭鉱ガスで発電するGT発電装置を開発
 川崎重工は、石炭採掘時に湧出する希薄な炭坑通気メタンガス(VAM)を燃料として発電するガスタービン発電装置を世界で初めて開発した。
 利用方法が無く、安全のため世界中の炭鉱で大気中に放出されている低濃度のメタンガスを回収して、燃料として資源化する画期的な技術開発として注目される。
 開発した「VAM焚きガスタービン発電装置」は、大気中に放出されているVAMに、メタン含有量1〜30%の炭鉱メタン(CMM)を加えた低濃度メタンと、空気混合気を触媒燃焼器で燃焼させて発電する。さらに、発電装置の排熱を利用してVAMを酸化処理することで、なお一層、温室効果ガスの排出低減が可能となる。
 炭鉱の石炭層中には、石炭の生成過程で生じたメタンガスが含有されており、メタン含有量が30%以上の炭鉱メタンは燃料として利用されているものの、メタン含有量が1〜30%のCMMと、メタン含有量が1%未満のVAMは、現状では利用方法がないため大気中に放出されている。
 メタンガスは京都議定書で定義されている温室効果ガスの一つで、その温室効果はCO2の約21倍とされていて、採炭過程において排出されるメタンガスの60〜80%を占めるVAMを大気中に放出することは、エネルギーを無駄にするだけでなく地球温暖化の一因として指摘されるようになっている。
 川崎重工が開発した触媒燃焼方式は、通常の燃焼方法では燃焼させることができない低濃度のメタンガスを燃焼させることができ、燃焼温度が低いため酸性雨の原因となるNOxを全く発生させないクリーンで環境にやさしいのが特長で、今回開発した「VAM焚きガスタービン発電装置」の信頼性や耐久性等を確認した後に商品化し、中国やオーストラリア等の炭鉱や、低濃度メタンガスの放出量が多い米国等のごみ埋め立て地などに向けて販売していく。


経産省が蓄電池戦略構築でPTを設置
 経済産業省は、電力貯蔵や電気自動車用など、次世代エネルギーシステムとして急速に需要が拡大しているリチウムイオン電池などの新型蓄電池について、産業戦略を構築することを目的に、省内に「蓄電池戦略プロジェクトチーム」を立ち上げた。
 エネルギー政策、情報政策、製造産業政策を一体として捉え、新たな市場の創造や産業競争力強化を図っていく観点から、負荷平準化用やスマート・グリッド社会などで分散電源の促進用、さらには自動車用や防災用など、今後市場の成長が期待される分野での活用促進に向けて必要な政策を検討する。


2011年度国内風力発電導入量が激減 補助金廃止の影響
 日本風力発電協会は、2011年12月末の国内の風力発電の導入実績をまとめた。また、11年度末の導入量見込み量についても予測した。
 12月末の累積導入量は、250万1千kWで、発電所数は417カ所。11年単年の導入量は、6発電所で16万6千kW(78基)となり、前年度の約70%と低迷、さらに3月末までの2011年度の導入量の見通しでは、前年度の3分の1以下の8万2千kW程度に止まる見通しで、固定価格買取制度の詳細も決まらない中で、国内の風力発電市場は深刻な事態を迎えている。
 国内の風力発電の導入状況は07年度に風力発電機の倒壊事故などを背景に建築基準法が改正された影響で、前年度の導入量に比べて半減するという事態があったが、今回は、それを上回る落ち込みぶり。風力発電の事業環境は、導入補助制度とRPS法による買取制度によって最低限の導入量が維持されてきたが、11年度については、固定価格買取制度の導入と引き替えに導入時の補助制度が廃止されたことや、系統連系規制が慢性化していることなどで、事業環境の急速な悪化が影響しているものと考えられている。


その他の主な記事
・電力制度改革の10の論点
・エネ研が短期エネ需給見通し
・風力拡大へ西日本6電力が協力
・デンヨーと岩谷がLPG発電機を開発
・サイサンがコーラ−製発電機の代理店契約締結
・矢野経済研が地熱市場を調査
・JR東日本が薄膜太陽光発電の実証試験
・JXが家庭のエネルギー診断サービスを事業化
・東京ガスがスマートエネシステム構築支援業務を受託
・大阪ガス淡路島で太陽光発電サービス
・富士通が地中熱利用システムを導入
・大規模太陽光で横浜市が8社を選定
・2月1日からENEX2012&SEJ
・NEDOがバイオマス成果報告会
・2月18日に低炭素杯
・エネファーム導入補助3期分の募集開始
・温暖化対策実証研究などの実施方針を公表
・環境省が地中熱HPの実証システムを選定
・バイオマス総合講座やバイオディーゼル研修
・9月末のRPS設備の認定状況   etc.

<電源別の発電コスト試算結果を整理>
 昨年末に政府のコスト等検証委員会が、電源別のコスト試算を行った報告書が公表されている。福島第一原発事故によって、我が国の電力供給構造の脆弱性が明らかにされたことで、政府は、電力需給構造のゼロベースでの見直しを掲げて議論を開始している。示された電源別のコスト試算は、今後の電源構成を見直す上で経済性の指標となるものとして大きな意味を持つものだといえる。今回の試算で特に注目されるのは、分散型エネルギーシステムを活用するという観点から、ガスコージェネや燃料電池、石油コージェネなどの需要側に設置され自家用電源や省エネ価値までもが横並びで試算が行われていること。また、コージェネの発電コストからは排熱価値を控除するという画期的な試みも加えられている。検証委が示した電源別のコスト試算のポイントを整理した。

<インタビュー>
・IBMが考えるエネルギー管理
(日本アイ・ビー・エムソフトウェア事業Tivoli事業部 清野聡氏)
 IBMは、これまで、設備管理としてのエネルギー管理を行い、エネルギーの「見える化」を通して省エネにも貢献してきた。昨年には、不動産管理ソリューション企業を買収し、設備管理と不動産管理の両面からの効率化が実現できる体制を構築した。IBMが考えるこれからのエネルギー管理について、話をうかがった。

<年頭所感・第二集>
・資源エネルギー庁長官
・石油連盟会長


燃料電池新聞の主な記事
・水素インフラ整備とFCV普及について(九州大学・尾上清明教授インタビュー)
・定置用燃料電池の用途別市場規模予測
・海外ニュース
 -豪Ceramic Fuel Cells、英E.ON UK から105台の家庭用燃料電池を受注
 -米調査会社が補助動力装置の市場予測を発表。2020年で6600万ドル
 -英IE-CHP、2014年から1kWと10kWのPEFCを発売
 -英Nottingham大学病院、2020年までに35%のエミッション削減できるエネルギーシステムを導入
 -米プラグ・パワー、P&Gの工場に200台以上のGenDriveを納入
 -BMWとGM、燃料電池自動車で提携交渉
 -米ベタープレイス、広州にバッテリー交換式電気自動車の体験センターを開設
 -米エネルギー省、FCV用水素貯蔵技術開発に700万ドルを助成
 -独オペル、水素燃料にグリーン水素を使用するベルリン空港に燃料電池車を納車
 -カナダ・バラード、ベルギーのバスメーカーに最新燃料電池スタックを供給
 -伊アクタ社と台湾APFCT、燃料電池スクータ向けの水素ステーションとスタック供給で合意
 -米FuelCell Energy、スペインAbengoaと欧州・南米市場向け定置用燃料電池システムの開発で合意
 -米フォード、初の電気自動車の生産を開始
 -米IdaTech、インドネシアで携帯電話基地局向けのバックアップ電源を設置
 -デンマークGMR、Serenergyなど、燃料電池園芸トラックを開発
 -カナダBC Transit、20台の燃料電池バスにより100万マイルの走行を達成
 -台湾APFCT、燃料電池スクータで走行距離1万5000kmを達成
・燃料電池フラッシュニュース
 -富士電機、生産ラインの常用電源として自社工場にリン酸型燃料電池を設置
 -さいたま市、次世代自動車・スマートエネルギー特区に指定
 -積水ハウス、宮城県で太陽電池、燃料電池、蓄電池を設置する戸建て住宅の分譲を開始
 -東北大、下水汚泥から高純度の水素製造〜無機添加物と600℃程度の加熱で収率90%以上達成
 -東芝燃料電池システム、新型家庭用燃料電池「エネファーム」を2012年4月から出荷開始
・燃料電池インフォメーション
 ■水素先端世界フォーラム 2012
2月1日(水) グランドハイアット福岡(福岡市博多区) ○概要:セッション1「2015年FCV・水素供給インフラ普及開始に向けた世界のシナリオ」=新日鉄エンジニアリング 東義氏、トヨタ自動車 河合大洋氏、マッキンゼー&カンパニー マーチン・リンダー氏、ドイツNOW トーステン・ヘルベルト氏の講演/セッション2「水素エネルギー社会への各国の挑戦」=GM ジョージ・ハンセン氏、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 ペトロス・ソフロニス氏、フランス原子力庁 ポール・ルーケイジー氏、スペイン国立航空宇宙技術研究所 アントニオ・ガルシア-コンデ氏、オランダエネルギー研究財団 マルセル・ウィーズ氏、水素エネルギー製品研究試験センター 渡邊正五氏、水素材料先端科学研究センター 松岡三郎氏の講演   etc.

シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(62)
 =京都議定書の最後の1年=
 大串卓矢/スマートエナジー代表取締役社長

・世界を読む(41)<EUの航空業界でのCO2排出規制>

・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革(27)ゼロ原発」でもCO2排出量は増えない?=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授



コラム
・発電論評<発送電分離に向かう電力制度改革>
・青空<一般メディアの報道姿勢に一言>
・ちょっと一休<北村さんの木版仏画展>
・ちょっと一言<なんちゃって発送電分離に注意>


発送電分離に向かう電力制度改革【発電論評】

 年が改まって、電力制度改革に向けた議論が本格化する。改革の方向は明確に示されており、大規模集中型から分散型の活用拡大による供給サイドのリスク分散と効率性の向上、原子力発電依存度の低減と低炭素化の両立などに集約される。そうした新たな電源構成が自由な競争のある市場の下で実現できるように、環境整備も進められることが謳われている。
 原子力依存度を下げるには、当面の間は火力発電による代替が現実的な手段だが、燃料コストの問題を解決するには、電源の高効率化と低炭素化を図ること、また、火力代替として再生可能エネルギーなどの低炭素電源の飛躍的な拡大を目指すことが不可欠になる。また、再生可能エネルギーの出力変動の調整には蓄電の拡大や、きめ細かな出力変動にも機敏に対応できる中小規模のコージェネレーションの調整力にも期待が高まっている。
 大規模電源を分散型のシステムで置き換えて行くには、多数の電源が必要になるが、それを制御するためにスマート技術が活用される。分散型電源の多くのものは、需要サイドに置かれ、自らの必要をまかなうと共に余剰電力を発生させ、それを広く流通させることであらたな役割を分担することになる。
 安定した出力でベースを担う大規模電源と、時々刻々の変動する電力需要に対しては、小規模の太陽光や風力発電などの再生可能電源と補完し合う形で多数の蓄電池や分散型電源が対応していく。新たな電力システムはそうしたものになると想像できる。
 多数の電源を刻々と変動する電力需要に対応させ需給の安定化を図るには、これまでほぼ一方通行だった電力の流れを、必要に応じて需要側の電源から逆潮させるという双方向型の複雑なものとする必要があるが、安定した需給構造とするためにはネットワークのスマート化がまた不可欠なものとなる。
 また、競争環境の整備の観点からは、電力ネットワークの自由化の視点も欠かせない。そのために、発送電分離についても今回の改革議論の主要なテーマとして取り上げられている。
 可能性のある議論の方向として、4つのパターンが例示されている。すなわち、@会計分離=送電部門の会計を分離するA法的分離=送電会社を分離するが、持ち株方式の子会社でもよいB機能分離=中立組織が系統を運用するC所有分離=送電部門の資産保有も資本関係のない別会社に分離するというもので、自由な市場競争の実現を担保するために、より公平で中立性の高い系統運用が行えるようにするというのが議論の終着点となる。
 分散型電源の活用に向けて開始される、今後の改革議論の行方を注視したい。