2011.11.15


2011年1115日号

省エネにも自家発を活用 ピーク抑制効果を評価
 総合資源エネルギー調査会の省エネルギー部会が再開された。省エネ法の改正も視野に東日本大震災によって明らかになった需要サイドの省エネルギーのあり方について抜本的な政策の見直しを行う。
 東日本大震災により顕在化した電力の供給制約を踏まえ、エネルギー効率の向上だけを求めていた現在の省エネ規制から、電力のピーク対策も積極的に評価できるようにする方向で、省エネ基準を見直す。自家発電や蓄電池を活用した電力のピーク抑制に対する取り組みについて、具体的な目標を基準として示すことや、自家発電設備やエネルギー管理システム、建築物の節電回収、高効率ガス空調設備の導入などについて強力に支援していくような仕組みに改める。
 現在の省エネ法では、需要サイドの省エネルギーについて、大規模工場や事業場などに対して、年平均1%以上のエネルギー消費原単位の向上を義務づけている。また、家電製品などに対して、最もエネルギー効率のよい製品をトップランナーとして省エネの目標として指定、他の製品も数年以内に同等以上のエネルギー効率に達することを求めるなどの規制を行っている。
 こうした、現行基準に今回新たに、需要側に対して「電力の供給制約」を意識したエネルギー利用を行うべきではないかという視点を加え、省エネ対策として積極的に評価していく。現在の省エネ法では、ピーク対策という観点は含まれておらず、自家発や蓄電池を導入している事業者を評価していないため、今後は、ピーク対策を積極的に評価する体系に転換することを目指していく。


風力アセスで政令改正 1万kW以上を第1種に
 政府は、大規模化する風力発電事業を環境アセスの対象とする環境影響評価法の施行令の改正を行った。出力が1万kW以上の風力発電所を第1種事業に、7500kWから1万kW未満を第2種事業に指定して、環境アセスの実施を義務づける。発電所の変更工事についても同様とする。
 風力発電については、風車の大型化に伴い複数の風車を集中して設置するウインドファーム型が拡大し、渡り鳥などが風車に激突するバードストライクの問題や騒音問題などが顕在化している。このため、環境省が検討会を設置して、一定規模以上の風力発電施設について環境アセスの対象とする方向で、アセス内容について検討してきた。
 風力発電は、再生可能エネルギーの中では、出力規模が大きいことや、山間部などに設置される例が多く、景観問題や系統連系制約などの問題もあり、普及が思うように進んでいない。環境省では、風力発電を迷惑施設としないためにも適切な環境アセスの実施を求める一方で、再生可能エネルギーとして優良な風力発電施設を拡大を目指す観点もあり、アセス期間の短縮が図れるよう運用面での改善を図っていく。
 アセスの詳細については、省令により規制基準を定めることになっており、来春までに省令を改正する方向で準備を進める。


風力発電の電力を水素で貯蔵 日立が極地研にシステムを受注
 日立製作所は、国立極地研究所から、風力発電を利用する水素発電システム一式を受注した。風力発電で得られた電力を水素に変換して備蓄し、必要なときに電力として取り出すシステムで、風力発電の不安定な出力を水素によって貯蔵し、調整できる。来年3月まで、秋田県にかほ市で実証試験を行い、南極昭和基地に設置して発電利用するための基礎データを取得する。
 現在、南極昭和基地では、必要な電力をディーゼル発電機で発電しているが、南極観測船「しらせ」で輸送する昭和基地向けの物資のうち、ディーゼル発電や車両用の燃料が総輸送量の約半分を占めており、必要な燃料輸送に限界があるため、将来の燃料不足対策の一案として風力発電や太陽光発電など再生可能な自然エネルギーを利用することが目指されている。
 このため、燃料の必要がない再生可能エネルギー電源の設置利用が検討されており、時間や季節による発電量の変動が大きい再生可能エネルギー電源の電力を、効率的に備蓄し、安定的に再利用(回収)する観点から、電力を水素として貯蔵するシステムが提案され、採用されることになった。
 日立が開発したシステムは、水を電気分解して水素を発生させ、トルエンに吸着させた液体(MCH)として貯蔵、必要なときに水素を分離して、ディーゼル発電用の燃料として、軽油と混合して発電利用するというもの。
日立は、開発したシステムを、今回の受注を契機に、燃料輸送が困難・割高となる離島や極地のマイクログリッドなど向けに、再生可能エネルギーの出力安定化用システムとして、普及拡大を目指していく。


変換効率36.9%の太陽電池 シャープが接合型で達成
 シャープは、太陽電池を3層に積み重ねた化合物3接合型太陽電池で、世界最高変換効率36.9%を達成した。NEDOの「革新的太陽光発電技術研究開発」テーマの一環として開発に取り組んだもので、極薄の太陽電池層をフィルムなどに転写し、軽量でフレキシブルな太陽電池として商品化することを目指していく。
 化合物太陽電池は、インジウムやガリウムなど、2種類以上の元素からなる化合物を材料とした光吸収層を持つ変換効率の高い太陽電池で、主に人工衛星用の電源として使用されている。シャープは、光吸収層を3層に積み重ねて高効率化を実現する「化合物3接合型太陽電池」の研究開発を進め、09年にはインジウムガリウムヒ素をボトム層として、3つの層を効率よく積み上げて製造する当社独自の技術を実現し、変換効率を35.8%まで高めることに成功、今回新たに、各太陽電池層を直列に繋ぐために必要な接合部の抵抗を低減させることで、変換効率アップを実現した。


その他の主な記事
・原子力の是非などを意見聴取 基本問題委員会
・風力や太陽光のコスト削減見通しなど検討 コスト等検証委員会
・東北電力が風力の連系候補を選定
・積水ハウスが東京モーターショーに出展
・丸紅が英国の大規模ウィンドファームの権益を取得
・双日、ハウステンボスでスマグリ実証
・中部電力が静岡の天然ガス導管事業に参画
・Jパワーが秋田の地熱発電の環境アセスを開始
・IHIがリチウムイオン電池事業を拡大
・東芝ケニアの地熱発電を受注
・三菱電機、アドバンストソリューション
・ホンダ中国で電気自動車を生産
・エネファーム用停電システムを販売
・環境省被災3県のエコリース補助率を引き上げ
・大規模太陽光の検討支援ツールを公開
・環境省が被災地への再生可能エネ導入で提案募集
・東京都が排出量取引でセミナー
・NEDO自然エネルギー成果報告でシンポ
・NEDO、ハワイでスマグリ
・地方発カーボン・オフセット認証募集
・J−VER第2次45件決まる
・CONETがカーボンオフセット講座
・NEF、東京モーターショーで燃料電池セミナー   etc.

<インタビュー>
・HEMSビジネスの将来性
(HEMSアライアンス事務局/東京電力グループ事業部部長 馬場博幸氏)
 家庭内のエネルギー消費の効率化を促進するための「スマートハウス」の注目が高まっている。すでに多くの家電メーカーなどで実証試験が進められているが、「HEMSアライアンス」は、HEMSの市場確立と普及を目的に今年7月、家電メーカーなど10社によって立ち上げられたものだ。HEMZによって何が可能となるのか、今後の検討課題などについて、改めて事務局を担当する東京電力の馬場氏にお話を聞いた。


燃料電池新聞の主な記事
・JX、SOFCエネファーム発売
・水素エネ試験センター渡辺理事長に聞く
・海外ニュース
 -英カイクロカブ 、新しい燃料電池自動車「H2EV」を開発
 -国家電網、電池交換式EV普及へ全国2900ヵ所の充電スタンドを整備
 -連結式燃料電池バス「フィリアス」、ドイツの公共交通機関でフリート運行開始
 -蘭デルフト工科大学など、金属水素化物のナノ粒子サイズが水素放出速度に影響を与えることを実証
 -英リバーシンプル、二人乗り燃料電池車の製造ライン建設のために資金を調達
 -米調査会社パイク社、2020年のFCV市場を累計100万台、169億ドル/年規模と予測
 -米フューエルセルエナジー、水素分離・圧縮技術と二酸化炭素回収技術を開発
 -欧州連合のFCH、JU、現代自動車のFCV「ix35」をFC技術の宣伝車として採択
 -英国初の風力発電で製造した水素で走行する電気配送車が走行開始
 -トヨタ自動車、米UCLAに4台のFCVをリース
 -米テキサス大学など、触媒にチタンを使った水素貯蔵材料を開発
 -スペインの狭軌鉄道運営会社のFEVE、燃料電池式路面電車のプロトタイプを発表した
 -豪セラミックフューエルセルズ、2011年6月期の売上高は360万ドル、前期比で81%増
 -中国華南理工大、中国初の燃料電池と蓄電池の「W電池車」を開発
 -米プラグパワー、マテリアルハンドリング向けの新しい燃料電池を開発
 -米パイクリサーチ、定置用燃料電池の市場規模を2017年95億ドル、120万台規模と予測
 -米オージャプロトニクス、米ボールダーに50台のDMFC燃料電池を納入
 -トルコのボズジャ島、水素エネルギーを利用した再生可能エネルギー発電所がオープン
 -米T−モバイル、アイダテック製バイオメタノール燃料のバックアップ電源を初設置
・燃料電池フラッシュニュース
 -東京ガス山梨、家庭用SOFC型エネファームを2011年10月から販売開始
 -横浜市大、導電性を飛躍的に向上させたCNW担体の白金触媒を開発
 -藤沢市に太陽光発電と家庭用燃料電池システムを標準装備した国内最大規模のエコ住宅街誕生
 -東京ガスと富士電機、PAFCの都市ガス改質プロセスからでるCO2の回収システムを開発
 -イデックスエコエナジー、木材チップを原材料とする世界初のバイオマス水素工場を竣工
 -JAEA等、SPring−8を用いて水素を貯蔵したアルミニウムの結合様式が共有結合であると解明
・燃料電池インフォメーション
 ■広島大学 第14回 水素エネルギー利用開発研究会 講演会
11月29日 鯉城会館(広島市中区)○概要:1.「水素社会を目前とした水素技術の現状と課題」(岩谷瓦斯 岩下博信氏)2.「水電解・燃料電池一体型セルを用いた蓄電システムの開発」(高砂熱学工業 加藤敦史氏)3.「ヒートポンプの利用技術と最新技術動向」(ヒートポンプ・蓄熱センター 佐々木正信氏)
 ■水素エネルギー協会 第31回水素エネルギー協会大会 特別講演会
11月30日 タワーホール船堀(東京都江戸川区)○概要:1.「水素エネルギーを核としたエクセルギー再生によるエネルギー高度有効利用技術」(東京大学 堤敦司氏)2.「低炭素社会に向けたHySUTの取り組み」(水素供給・利用技術研究組合 北中正宣氏)   etc.

シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(60)
 =省エネ法改正とデマンドレスポンス=
 大串卓矢/スマートエナジー代表取締役社長
・世界を読む(39)<露―独間の直結パイプラインがもたらすEUの政治的混迷>




コラム
・発電論評<自家発の運用は効率化を課題に>
・青空<したたかさが必要では>
・ちょっと一休<東大三輪教授の講演にガッカリ>
・ちょっと一言<小水力開発は自然エネ拡大の試金石>


自家発の運用は効率化を課題に【発電論評】

 また節電の冬が訪れる。今年の夏は日本中が節電に追われた。家庭でも事務所でも、工場でも節電に追われた。空調設備も思うようには動かせなかった。オフィスも、暗かった。廊下や階段はもっと暗かった。無駄を省くのが省エネだが、節電というのは、我慢を強いられるのだと思い知った。節電の冬は、寒さ対策としては、厚着するしかないことになるのだろうか。
 震災前までは、一部の例外を除いて、電気は自由に使えた。コンセントにつなげば、どこでも、必要なときに自由に電気が使えた。供給義務のある電力会社が需要に合わせて発電するという仕組みが整えられていた。それもすっかり過去のものになろうとしている。主力電源として電力需要のベースを支えてきた原子力発電の過半が停止する事態となり、再稼働の見通しも立っていない。電力の供給義務は無くなってしまったのだろうか。
 省エネ法の見直しが始まったが、政府は省エネの仕組みの中に節電を取り込む方針を示している。電力のピーク抑制に貢献できる自家発などを導入して電力需要を減らした場合は、省エネポイントが加算される。しかし、系統電力の使用量は減っても電気の使用量そのものが減るわけではない。それでは決して省エネとか節電ということにはならないのではないか。
 自家発を奨励するのなら効率性を求めるべきだ。系統電力よりも効率の劣る自家発なら、緊急避難的なピーク運転ならまだしも、常用運転は避けるべきではないか。燃料費が高止まりしており、経済的にもメリットがない。自家発を奨励するならコージェネ化を求めるべきだ。排熱も有効利用するコージェネであれば、系統電力よりもはるかに高効率であり、その分CO2の排出抑制にもつながる。
 コージェネの運用には、様々な課題もある。その最大のものは、熱と電気が同時にできてしまうということで、発生した熱と電気を使い切ってしまわないと、折角の高効率が無駄になってしまう。この場合は、熱か電気のどちらか余る方を貯めておくという対策が必要になる。蓄電したり補完電力が必要だという点で、出力が不安定さが欠点だとされる太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに似ている。どちらも、効率的な運用を図るには、複数施設が共同で行う面的利用、つまりマイクログリッドを構築することが効果的だと思える。こうした対策を取ることで、コージェネや再生可能エネルギーの欠点が補われ、高効率や低炭素であることなどのメリットが生かせる。
 省エネや低炭素目的で導入する自家発電であるのなら、導入後の効果的な運用が担保できる仕組みも一緒に整備される必要がある。