2011年105日号

来年夏に新エネルギー基本計画
 エネルギー基本計画の抜本的な見直しを目的に、経済産業省は総合資源エネルギー調査会での検討を始めた。東日本大震災とその後の原子力発電事故を契機として日本のエネルギー需給構造、とりわけ電力の需給構造が激変していることを背景に、原子力発電利用を中心に据えた現行のエネルギー基本計画は破綻しているとして、全くの白紙状態から新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論が行われる。
 議論の場は、総合エネルギー調査会総合部会の下に新たに設置された基本問題委員会(委員長・三村明夫新日本製鐵代表取締役会長)。3日に開かれた第1回の会合では、枝野経済産業大臣が「現状を前提とするのではなく、本来ありうべき姿に、どのようにして近づいていくのかという議論を行っていただきたい」と述べ、ゼロベースで新たなエネルギー基本計画を作り上げていくという方向性を示した。
 来年夏頃に新たなエネルギー基本計画をまとめ上げることを目標として、今後毎月1、2回程度のペースで議論を重ねていく。
 全くの白紙からの議論を進めると言いながら、議論の枠組みとしては政府内の関係する他の会議や委員会などとの連携する形で議論を進めることが求められている。初会合で事務局が説明した内容では、議論の下敷きは、7月にエネルギー・環境会議がまとめた「当面のエネルギー需給安定策」と原子力発電の依存度の低減や分散型エネルギーシステムへの移行を中長期の戦力として方向性を示した「中間的な整理」として、並行的に進められている原子力の安全対策や温暖化対策革新的エネルギー・環境戦略などの議論と連携して進められる。
 3日の初会合は、事務局側から議論の方向性の説明が行われた後、委員のフリートークや問題提起の形で進められた。その中では、分散型エネルギーシステムを普及させるには、電力ネットワークの整備や、需要家側の電源選択を可能とする仕組み、それによって市場が電源を淘汰できる仕組みを作るべきだなどの注目される意見もあった。
 また、原子力発電について、廃止を前提として議論を進めるべきだとする意見や、高い安全性の確保を前提にエネルギー選択肢の一つとして原子力発電を残すべきだとする意見も述べられた。


川崎重工、発電容量11万kWのガスエンジン発電所を受注
 川崎重工業は、特定規模電気事業者(PPS)である日本テクノの袖ヶ浦グリーンパワー向けに、7800kWのガスエンジン14台で構成する、11万kWの発電所建設工事を受注した。6万kWを超える発電所がガスエンジンだけで構成されるのは、国内では初めてとなる。2012年夏の運転開始予定。
 日本テクノは、2009年6月からPPS事業に参入しており、販売する電力は主に電力卸売事業者や卸電力取引所など、外部からの調達電源によっていたが、今冬以降も続くと見られる電力需給逼迫や供給力の安定確保などを目的に、自社保有の発電所の建設を決めた。川崎重工業は、発電所の設計、発電機器の供給および据付、土木建築からなる建設工事一式をフルターンキー方式で請け負う。
 川崎重工のグリーンガスエンジンは世界最高の発電出力49.0%を誇る高効率、低NOXの経済性・環境性に優れた画期的なガスエンジンで、同出力のガスエンジンとの比較では燃料費を5%以上削減できるほか、排ガス規制が実施されている国内のほぼ全域で脱硝装置を取り付けることなく使用できる。また、軽量・コンパクトで、電気着火方式の採用で、着火時にパイロット燃料としての液体燃料を必要としないといった特長もある。


北海道、東北、東京の電力3社が共同実証 新たに60万kWの風力連系を募集
 北海道電力と東北電力、東京電力の3社は、風力発電の導入量拡大を目的に、共同で実証試験を始める。これまでは、各社がそれぞれの事情から導入可能量を決めてきたが、電力需要の少ない北海道電力や東北電力では、出力変動の大きい風力発電の調整力に限りがあり導入量の拡大が難しい情況が続いている。これに対して導入量が少なく、また電力需要規模が大きく調整電力にも十分な余裕がある東京電力が、北海道や東北管内で過剰となる風力発電の余剰電力を受け入れることで、北海道と東北の風力発電の導入量を拡大しようというもの。3社が共同して、既設の地域間連携線を活用し、風力発電の出力制御技術を組み合わせて受け入れ可能な風力発電量の拡大を図る。
 具体的には、北海道電力は、30分より短い周期の風力発電の出力変動の調整を行い、東京電力が30分より長井出力変動分を北海道電力から受電し調整する。東北電力に対しては、東北電力の不足する調整力を東京電力が引き受ける形で出力変動分の調整を行う。
 実証試験の実施に合わせて、北海道で20万kW、東北電力で40万kWの風力発電の新規連系を募集する。


経産相の概算要求 エネ特は11.1%増
 経済産業省は、2012年度予算の概算要求をまとめ、一般会計とエネルギー対策特別会計を合わせて1兆762億円を要求した。エネルギー対策特別会計の経産省分の概算要求額は前年度に比べて11.1%増の8174億円。このほかに、復興枠として121億円と、自家発電の導入支援などの電力需給対策も要求事項として盛り込んでいる。
 とりまとめた概算要求は東日本大震災からの復旧復興と原子力災害の速やかな収束、また、石油危機以来のエネルギー不安や国内産業の空洞化などの危機の克服を目指して編成された。今年度の第3次補正予算として要求した復興支援や産業空洞化対策、エネルギー対策と一体的、連続的に重点施策を展開することで課題の克服を目指していく。
 再生可能エネルギー対策予算は、住宅用太陽光の導入加速化や地熱など熱利用の拡大、小水力のモデル事業の新設、バイオ燃料の導入支援などを重点として掲げ、研究開発を抜本的に強化して新たなエネルギー需給構造の構築を目指す。この観点から、世界最先端の次世代型送配電ネットワークの構築を目指して電力供給システムの強化を図る。
 また、エネルギーの安定供給の観点から災害にも強い供給体制の整備を目指し、石油、ガス、LPガスといった1次エネルギーの供給体制の整備を図ることや当面の電力需給の抜本的強化を目的として、家庭や中小事業所などの自立型電源の確保対策、また、大規模事業所での自家発電設備の導入支援を強化して、電力供給力として活用する。


環境省概算要求 エネ特は2倍超える要求 病院のコージェネ整備も
 環境省の2012年度予算の概算要求は、一般会計とエネルギー対策特別会計を合わせた総額で1兆1338億円で、11年度の当初予算に比べて約454%増、エネ特も2倍を超える797億円を要求した。東日本大震災からの復旧・復興に重点を当て、低炭素社会の構築など持続可能な社会の実現、循環型社会の実現、生物多様性の保全など自然共生社会の実現、安全安心な生活の実現の4つのテーマを軸に政策を展開する。
 エネルギー関係では、震災からの復旧復興枠で、再生可能エネルギー等導入推進基金(236億円)、再生可能エネルギー出力安定化のための蓄電池導入促進(20億6500万円)、風力発電の環境影響評価モデル事業(130億円)、次世代スマートメーターによる需要側対策(3億円)、地域主導の再生可能エネルギーの緊急検討事業(5億円)などを要求。 持続可能な社会作りでは、地域への再生可能エネルギーの利用拡大への取り組みとして、自然共生型の地熱発電の掘削補助(12億5千万円)。また、分散型エネルギーシステムの拡大についても病院へのコージェネシステムの緊急整備として52億5千万円なども要求している。


その他の主な記事
・産総研が印刷で熱電素子を形成する技術開発
・川崎重工が新型GT用燃焼器
・東工大ASEがシンポ
・次世代エネルギー第19回会議
・ジェネポシステムを大型化
・JXなどが横浜で蓄電システムを実証
・NTTグループが太陽光を増設
・オリックスのバイオマス発電所が運開
・日立と明電舎、富士電機が合弁を解消
・ハタノシステムが本社事務所を移転
・再生可能エネ熱利用2次募集の採択結果を発表
・次世代エネ技術実証6件を採択
・ドイツの風力発電視察ツアーの参加者を募集
・産総研がエネルギー技術シンポ
・環境研究成果発表会
・燃料電池セミナーイン福岡
・バイオディーゼル燃料基礎講座
・サステイナブル都市再開発6件採択
・国内バイオマス視察、東北で
・電力負荷平準化機器表彰、募集開始  etc.

<インタビュー>
・ポスト原発のエネルギー政策を聞く
(民主党環境委員長・衆議院議員 生方幸夫氏)
 地球温暖化が重要な問題となって以降、環境問題とエネルギー問題は表裏関係にある。原子力安全庁(仮称)が、来春にも環境省の外局として設置される。原子力発電への依存度を軽減しながらCO2削減を同時に達成する。今後の電力・エネルギー政策はより多くの課題を突きつけられることになった。原子力にニカドに依存しないこれからの環境・エネルギー政策はどうあるべきなのか。衆議院環境委員長の生方幸夫衆議院議員に話を聞いた。


シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革(24)持続可能な未来のための人材育成=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授

・ポスト震災のエネルギーシステム(その2)
 =次世代エネルギーシステムの基本的な考え方=
 井熊 均/日本総合研究所創発戦略センター所長

・キーパーソン
 =「政府で一番重要な部門」の長に=
 資源エネルギー庁・新原浩朗省エネルギー・新エネルギー部長


コラム
・発電論評<電力ネットワークのあり方が問われている>
・プリズム<歴史的転機を迎えたエネルギー政策>
・青空<UIA東京大会で感嘆する>
・ちょっと一休<卒業50周年の高校同期会>


電力ネットワークのあり方が問われている【発電論評】

 新たなエネルギー政策の展開に向けて議論が始まっている。
 大規模集中型型の電力供給システムを分散型中心のシステムに組み替えて、再生可能エネルギーなど低炭素型電源の最大導入を目指していく。進むべき方向性は明確だ。
 そのためには、まず現在の電力ネットワークのあり方が問われなければならない。電力ネットワークは、現在は各電力会社が整備して保有・運用している。部分自由化以前の時代にはそれが当然の姿だった。
 部分とはいえ、電力需要の60%以上にあたる自由化市場ではPPSも参入している。PPSは基本的には自社でネットワーク整備はできない仕組みなので、電力会社のネットワークを使って「託送」してもらう。託送は有料サービスだ。基準負荷率が高すぎるなど細かな問題も別にあるが、最大の問題はサービスを受けるPPSは託送料金が必要だが、ネットワークを管理運営する電力会社は託送料を支払わないという現行の仕組みそのものにある。
 託送部門は会計分離されているが、そのコスト構造は不透明なままだ。会計分離というのなら電力会社も託送料金を公平に負担すべきではないか。
 託送問題の他にも、整理されるべき課題はある。電力ネットワークは電力会社が必要に応じて整備するもので、PPS側の都合で整備するわけではない。このことが、風力発電の連系抑制などの問題として顕在化している。風況のよい場所に風力発電を建設しようとしても、近くに送電線がなければ接続できない。送電線のある場所まで連系線を引くのは風力発電事業者側の負担になる。発電事業者が送電線を引く場合公益特権はなく、電力会社には求められない規制も受けることになる。
 電力販売が一部とはいえ自由化されている現在では、電力会社だけがネットワークを自由に使えるという仕組みは最早時代遅れだと言うこともいえる。例えば道路は公共整備が原則だ。電力ネットワークも道路と同じ公共インフラとして考えて、電力会社の都合ではなく、需要家側の要望によって整備されるという仕組みが必要になってきているといえるのではないか。
 東日本大震災による電力の供給不足の側面では、被害を受けなかったPPSの電力が一般消費に回されると言うことも問題となった。PPSの需要家だけに送電できるという仕組みがないためである。電力の総量管理を誰が行うかと言うこともネットワーク問題の基本的なところに存在している。需要側が必要としている電源を確保するためにネットワークが整備されていく。そうした本来のあり方に向けた議論が必要だ。