2011年85日号

電力不足対策には自家発を活用 エネ環境会議が当面の対策
 エネルギー基本計画の見直しなど今後のエネルギー政策のあり方について、経済産業省に変わって検討している政府のエネルギー・環境会議が、当面3年間のエネルギー需給安定策と、「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理をとりまとめた。
 エネルギーの地産地消を目指し、自家発電設備の活用や、ネットワークの早急なスマート化などを通じて、再生可能エネルギーの最大限の活用を図る。また、現在の供給構造の有効性や電源別の発電コストなどを白紙から見直して、エネルギー基本計画を策定し直す。今後3年間の工程表と、必要な規制・制度改革について秋までに具体化する。
 ストレステストの実施など定期検査後の原子力発電の再稼働が見通せない中で、電力の安定供給の確保については、節電の継続と天然ガス火力を中心とする火力発電の増強、自家発電設備の活用、再生可能エネルギーの拡大の4つを主な対策として乗り切る。
 供給面では、これまでの大規模集中型の電源構成から、効率性と環境性に優れた分散型電力システムへの転換を目指し、再生可能エネルギーの拡大や高効率火力発電、コージェネシステムの拡大を重視して取り組む。再生可能エネルギーについては固定価格買取制度、系統への優先接続、立地規制の見直しなどを行って導入拡大を図る。
 ピークの電力供給力を強化するため、自家発電力による揚水発電の活用や、分散型電源をフル活用するために、スマートグリッドや面的利用の促進など、自家発や分散型のエネルギーシステムをフル活用して効率のよい電力供給システムを目指す。
 発送電分離も視野に、公益事業である創・配電事業の中立性を高め、発電事業や小売り事業については多様な主体が自由に参加できるような仕組みを構築する。


来年2月に海洋産出試験開始、メタンハイドレートPT
 経済産業省のプロジェクトとして取り組まれている、メタンハイドレートの開発プロジェクトがいよいよ、来年2月に海洋産出試験に取り組むことになった。
 8月2日に開いたメタンハイドレート開発実施検討会で、熊野灘沖の南海トラフで行う海洋産出試験のスケジュールや、産出試験の内容についてプロジェクトチームの計画案を検証し承認した。
 メタンハイドレートは、氷のかご形の結晶の中にメタンガスが閉じ込められており、燃える水とも呼ばれるもので、常温下では簡単にメタンガスを分離回収することができる。日本近海など水深1千メートル程度の海底化に世界的に賦存していることが確認されており、日本の経済水域の範囲だけでも日本の年間の天然ガスの使用量の100年分以上の賦存量があると推計されている。世界的には、海洋だけでなく、カナダなどの凍土地帯でもメタンハイドレートの賦存が確認されている。
 世界的な開発競争が始まっており、陸上産出試験については、日本も昨年まで、カナダの凍土地帯で共同産出試験を実施してきた。今年度からは米国との共同研究も予定されている。海洋での開発試験は日本が独自に行うもので、実際に海底からメタンガスを採取できれば世界で初めての成果となる。


東京都が100万kW級の天然ガス火力を建設へ 電力不足対策
 東京都は、震災に伴う原子力発電の停止に伴って顕在化している電力供給力不足に対する取り組みの一環として、独自に100万kW規模の天然ガス発電所の新設を目指すことにし、庁内にプロジェクトチームを発足させた。
 プロジェクトチームは2日に初会合を開き、東京湾岸に都が土地を提供し、建設や運営などの主体は民間から募る形で天然ガス火力発電所を建設する方針を打ち出した。
 都は、石原慎太郎知事が、他の自治体がソフトバンクと協議会を発足させているメガソーラーについては原子力発電の代替は困難だとして消極的で、東京湾の埋め立て地に100万kW規模の発電所を独自に設置する意向を示してきた。プロジェクトチームは環境、財務、都市整備など8局で構成。今後は、民間の有識者もメンバーに加えて、建設場所や資金調達の方法、託送料金の透明化や発送電分離など電力事業のあり方についても国の対応などを検討していく。


川崎重工、大型ガスエンジン発電を受注 工場の自家発用
 川崎重工は、トヨタ自動車の子会社であるセントラル自動車宮城工場向けに7800kWのガスエンジン発電設備を受注した。また、沖縄電力の石垣島向けに受注していた1万8千kWのディーゼル発電設備の納入も行ったと発表した。
 受注したガスエンジン発電設備は、世界最高の発電効率のガスエンジンとして同社が開発した「グリーンガスエンジン」を搭載し、発電出力7800kW、発電効率49.0%の高効率ガスエンジン発電設備。エンジニアリング会社であるエネ・ビジョンを通じて受注したもので、川崎重工は、ガスエンジン発電設備、電気・制御装置およびエンジン補機を供給する。
 セントラル自動車の宮城工場はトヨタグループの最新工場で、東日本大震災によって一時操業を停止していたが4月18日には新本社工場の操業を再開している。トヨタ自動車の東北 地区における重要な生産拠点として位置付けられており、自主電源の確保やエネルギー使用合理化を目的として ガスエンジン・コージェネレーションシステムの採用を決めた。都市ガス振興センターの「ガスコージェネレーション推進事業費補助金」の採択を受けている。
 稼動開始は2012年1月の予定。発電した電力は全量工場内で使用される。
 電力供給不安が全国的に広がる中で、自家発電設備の導入が全国的に拡大しており、川崎重工も分散型発電システムの受注・拡販に積極的に取り組んでいく。


その他の主な記事
・環境省、2013年以降の取り組みを検討
・経産省、自家発の活用状況をアンケート調査
・RPS取引価格を公表
・指定都市自然エネルギー会議が発足
・大阪市、散水で太陽光の効率を向上
・東京都が省エネ・再エネ仕様を策定
・東電財務調査で調査委が指導
・NEIFが17回会議
・世界のマイクログリッドを調査レポート
・NECが見える化システムを販売
・ソーラーフロンティアが太陽電池生産100万kW体制に
・森ビルが六本木再開発でガス発電を導入
・東ガス、鹿島火力に天然ガスを供給
・日立化成がカーボン負極材の生産体制を増強
・富士経済がヒートポンプ市場を調査
・環境省、低炭素化事業者連系を二次募集
・経産省、次世代エネルギーパークを募集
・東京都が家庭用ガスコージェネに導入補助
・カーボンオフセットEXPO大阪
・次世代バイオマス利用開発4件決まる
・地域主導型再生可能エネ事業検討の公募
・新エネ大賞も新たに募集  etc.

<インタビュー>
・節電社会とスマート化
(システム技術研究所所長 槌屋治紀氏)
 東京電力福島第一原子力の事故の連鎖反応によって、来年春にも全原子力が停止する可能性が出ている。当面の新増設は難しく、稼働再開が難しい原発も少なくない。これからのエネルギーシナリオを描く試みが、さまざまな機関によって行われている。先頃、発表されたWWFジャパンの脱炭素社会に向けた省エネシナリオも、その一つ。シナリオをまとめたのは、以前から分散型エネルギーの研究を行ってきたシステム技術研究所所長の槌屋治紀氏だ。氏は80年代から、エネルギー耕作型文明への転換を主張しているという。


シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革--S 脱原発・脱温暖化公共事業=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授

・災害に強いエネルギーシステムを目指して(下)
 前田タ/スマートエコロジー企画主任研究員


コラム
・発電論評<自家発の拡大はエネルギーサービスの活用で>
・プリズム<地に落ちた原発への信頼性>
・青空<為にする報道の危うさ>
・ちょっと一休<不安と楽観と共に入院>


自家発の拡大はエネルギーサービスの活用で【発電論評】

 電力不足で、自家発の活用がにわかにクローズアップされている。 政府がまとめた当面のエネルギー需給安定策でも3年間にわたって夏・冬の電力ピーク対策は節電と緊急火力の積み増しと自家発電の拡大によるというのがその内容となっている。大規模な火力発電をすぐに拡大することは困難であることを考えると、自家発への期待は非常に大きい。
 自家発については、系統依存度を下げることでピーク電力の低減に役立つことや、余剰電力を作り、売電する役割も期待されている。さらに、発電能力に余裕のある夜間にも運転し、原子力発電に変わって揚水発電の電源としても活用することも盛り込まれている。
 しかしながら、経済産業省の調査では、自家発の余剰能力は最大でも450万kW程度に過ぎない。自家発の余剰能力の拡大には、相当に大きな政策的な支援が必要になってくると思われる。
 自家発に対する様々な規制については、必要な緩和措置の必要性は考慮されており、その内容次第ということになるが、導入後の運転・維持管理についても専門的な技術者が欠かせない。自家発の運転には運転免許は必要ではないが、事故や故障に備える日常点検や、また燃料管理が行える程度の専門知識は当然必要だからである。
 また、近年、自家発電市場が不活性化している最大の要因は、燃料費が高騰していることであり、その点についても何らかの負担軽減策が必要になる。経済性がなければ、導入拡大は思うに任せない。
 そうした様々な課題を解決するためには、自家発運用の専門知識を持つエネルギーサービス事業を活性化させるという方法が近道だ。かつて、電力自由化拡大の局面で自家発電設備を使ったオンサイト発電サービスという業態が確立され、工場や大規模店舗などで自家発の運用サービスが拡大した。その後、自由化による電気料金の引き下げや燃料費の高騰などで市場は沈静化してしまっているが、現在は、市場規模は、まだ大きくはないものの再生可能エネルギーや熱供給なども加えた総合エネルギーサービス事業へと発展してきている。
 自家発電の運用は需要家が自ら発電設備を導入して運用するというよりも、こうしたエネルギーサービス事業者に任せて、安全で効率的に低コストの運用を行った方が国益にかなう。事業者の手に委ねることで、設備の安全な維持管理が図れ、なおかつ雇用の場も創出できる。
 使用するエネルギーシステムのエネルギー効率や省CO2性能などに一定の基準を設け、システムを運用する事業者に対する支援措置を設けるというのはどうか。自家発の活用には切り札的な対策となると思うのだが。