2011年65日号

電力不足対策で自家発電の規制緩和措置 防災用や可搬型も活用
 政府は、6月1日に開いた行政刷新会議(議長・菅直人首相)で、東日本大震災に伴う夏期の電力不足対策として、非常用発電設備の運転時の排ガス規制や騒音規制などの規制緩和策を決め、具体的な内容について発表した。自家発の規制緩和措置は、常用だけでなく、非常用や防災用の自家発電設備に対しても排ガス規制や騒音・振動規制を一部適用除外とするなど、積極的に運転できる方向で緩和措置が講ぜられている。
 新規に導入する自家発については、工事計画手続きから工事開始期間の短縮や、届け出期間の短縮などを図るほか、緑地への設置も認める。また、発電に使用する燃料については省エネ法の適用除外とするなどの措置も講ずる。また、自治体などが行っているNOXなどの排ガス上乗せ規制について、ピーク時間帯には適用除外とすることや、騒音・振動規制についても可能な限り運転を認める方向で配慮を求める。
 非常用の自家発電設備についても、常用の自家発と同様の規制緩和を行うほか、非常用から常用への用途変更の手続きをすることなく運転できるような運用を行う。さらに、燃料の貯蔵について、消防法による危険物の許可手続きを迅速化することや、消防用設備や建築防災設備の非常用電源として設置されている防災用発電設備についても、運転条件などについての周知を図る。
 また、可搬型発電設備を臨時的に設置して使用する場合についても、公害防止管理者の選任を求めないなどの措置を執り、使用できるようにする。
■電力需給対策に関する制度見直しについて
 行政刷新会議(議長)・菅直人総理大臣)が6月1日に開いた会合で、夏期の電力不足対策として打ち出した規制緩和策の内、防災用の非常用発電機を含む自家発電設備の運用に関連するものは以下の通り。
◇自家発電施設の工事計画に係る工事開始制限期間の短縮
 自家発(ディーゼル発電設備)の設置円滑化を図るため、技術基準に適合しないものではない等と認められる場合は、工事計画に係る工事開始制限期間を短縮する。(既に、地方産業保安監督部において要望に応じて対応中)。
◇自家発電施設の設置に係る定期事業者検査時期の弾力化
 自家発の継続運転を図るため、電気事業法上の定期事業者検査の実施時期を延長する弾力的運用を実施する(3月29日付で経済産業省から地方産業保安監督部に運用方針を通知済)。
自家発電施設の設置に係る届出期間の短縮化についての通知
 新たに自家発電施設を設置する場合に、工場立地法上の届出の事務手続を迅速化するよう経済産業省が地方自治体に対し通知を行う。
◇自家発電施設の設置に係る緑地規制等の運用についての通知
 新たに自家発電施設を設置する場合に、その設置によって工場立地法上の準則に不適合となるものであっても、当面の間は勧告の対象としないこととする旨、経済産業省が地方自治体に対し通知を行う。
◇自家発電設備の活用等に係るエネルギー使用量の計算に係る配慮
 自家発電設備の活用(運転)等、節電対策の実施に伴う原油換算エネルギー使用量の増加については、経済産業省において省エネ法の運用上一定の配慮を行い、その理由が明確な場合、省エネ法に基づく特定事業者の指定等を行わないこととする。
◇自家発電設備の活用に係るばい煙排出基準の自治体上乗せ規制につい
ての通知
 夏期の電力需給対策の一環として自家発電設備を活用する場合、大気汚染防止法の上乗せ規制の趣旨を踏まえつつ、個々の地方自治体において、地域ごとの実状を踏まえて上乗せ規制の取扱いについて適切な判断を行うよう、環境省から地方自治体に対して通知を行う。
◇非常用自家発電設備の活用に係る電気事業法の運用
 夏期の電力需給対策に配慮して、保安管理の徹底を図ることを前提に、非常用自家発電設備を需給ひっ迫が生じる時間帯に需要減少のために運転できるものとして取り扱うよう、経済産業省が地方産業保安監督部に対し通知を行う。
◇自家発電設備の活用等に係る騒音規制値の自治体上乗せ規制についての通知
 夏期の電力需給対策の一環として自家発電設備を活用する場合や、工場の早朝・夜間操業を行う場合、騒音規制法の上乗せ規制の趣旨を踏まえつつ、個々の地方自治体において、地域ごとの実状を踏まえて上乗せ規制の取扱いについて適切な判断を行うよう、環境省から地方自治体に対して通知を行う。
◇自家発用燃料貯蔵に関する消防法の許可手続き迅速化
 自家発電用燃料貯蔵に関する消防法の許可手続きについては、迅速かつ適切に行われよう、総務省から市町村に対して要請を行う。
◇災害復旧のための発電設備の設置に係る環境影響評価法の適用除外
 今回の震災により原形に復旧することが不可能となった自社の発電設備の電気供給量を補うために、東京電力・東北電力が当該発電設備に係る発電所以外の場所で行う発電設備の設置の事業については、「災害復旧の事業」として環境影響評価手続の適用除外となることを確認した。
◇非常用自家発電設備の活用に係る大気汚染防止法の運用
 夏期の電力需給対策に配慮して、気候条件等環境負荷に係る要素を総合的に勘案することを前提に、非常用自家発電設備を需給ひっ迫が生じる時間帯に需要減少のために運転できるものとして取り扱うよう周知する。(5月20日付で環境省から地方自治体に対し通知を発出)。
◇騒音規制法の騒音規制の取扱いについての通知
 夏期の電力需給対策の一環として自家発電設備を活用する場合や、工場の早朝・夜間操業を行う場合、夏期の需給状況を踏まえ、騒音規制の取扱いに関し、住民への影響に十分配慮をした上で適切な判断を行うよう、環境省から地方自治体に対して通知を行う。
◇振動規制法の振動規制の取扱いについての通知
 夏期の電力需給対策の一環として自家発電設備を活用する場合や、工場の早朝・夜間操業を行う場合、夏期の需給状況を踏まえ、振動規制の取扱いに関し、住民への影響に十分配慮をした上で適切な判断を行うよう、環境省から地方自治体に対して通知を行う。
◇自家発電設備の活用等に係る振動規制値の自治体上乗せ規制についての通知
 夏期の電力需給対策の一環として自家発電設備を活用する場合や、工場の早朝・夜間操業を行う場合、振動規制法の上乗せ規制の趣旨を踏まえつつ、個々の地方自治体において、地域ごとの実状を踏まえて上乗せ規制の取扱いについて適切な判断を行うよう、環境省から地方自治体に対して通知を行う。(5月30日付で環境省から地方自治体に対し通知を発出)。
◇移動用自家発電設備の臨時的な設置に係る公害防止組織整備法上の公害防止管理者選任要件の運用についての通知
 今夏の電力需給対策の実施に当たり、臨時に移動用自家発電設備を設置する場合であって、公害防止管理者の選任ができない場合には、適用時期の限定等を条件に、公害防止管理者の選任要件となる排出ガス量の算定除外とすることができる旨、経済産業省・環境省から地方公共団体に対して通知を行う。
◇消防用設備等の非常用発電機の活用
 夏期の電力需給対策の一環として、消防用設備等の非常電源である自家発電設備を電力需給対策に活用する場合の留意点を需要家等に明確に伝える。


エネルギー政策見直しへ、検討開始 発送電分離も検討課題に
 経済産業省は、電気事業制度そのものについて抜本的に見直すため、産業構造審議会の産業競争力部会(部会長・伊藤元重東京大学大学院教授)で、エネルギー政策の見直しの方向性について検討を始めた。東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故によって電力供給体制の抜本的な見直しが不可避となっていることを受けて、原子力はtる伝への過度な依存を改めて、再生可能エネルギーや分散型電源を活用した新たな電力供給体制のあり方について短期、中期、長期の3つの時間軸を設定して基本的な方向性を示す。検討結果については、エネルギー基本計画の見直しの議論に反映させるとともに国家戦略室でまとめるエネルギー政策の見直しに反映さることを求めて行く。
 6月1日に開かれた部会では、原発事故の発生により電力の安定供給に対する懸念の拡大や、国際的にみて割高な電気料金、原油価格の高騰など燃料費の増大による火力発電コストの上昇、原発停止によるCO2排出量への影響などを、現状の「エネルギーの制約問題」としてとらえ、産業競争力の観点からエネルギー政策を根本的に見直すことにした。
 見直しの方向として示されているのは、短期、中期、長期といった時間軸に沿って対応策を示し、今後1、2年の短期については、原子力事故原因の徹底究明を図り、電力需給の安定に向けて省エネと自家発の活用など分散型電源の活用を図る。その後3年から10年程度を中期として、効率的な需給構造の構築に向けた環境整備として発送電分離や家庭部門も含めた自由化範囲の拡大などを図る。電力供給システムとしては電力ネットワークのスマートグリッドかを図り分散型や再生可能電源を利用しやすくすること、また、需要家が購入電力の電源を選択できるなど、電力の需給体制を抜本的に変化させていく。その後の長期対策として、再生可能エネルギーのコスト削減を目的にした技術開発や化石燃料のクリーン利用を目的とした革新的なエネルギーの技術開発を進める。


新型エコウィルを発売 都市ガス大手4社とホンダ
 家庭用のガスエンジンコージェネレーションシステム「エコウィル」が、さらに発電効率を向上させた新型モデルにリニューアルされて発売された。
 コアユニットを開発製造しているホンダが、エンジン効率を向上させた新モデルのコージェネユニットを開発、それを搭載した新型エコウィルは、発電効率が22.5%から26.3%まで3.8ポイント高められ、排熱回収も含めた総合効率は90%を超える超高効率のコージェネシステムとして発表された。大阪ガス、東邦ガス、西部ガスが6月1日から販売を開始、東京ガスは7月に入ってからの販売開始となる。発電効率が向上したことで、燃料消費量が低減でき、環境性や経済性がさらに高められた。さらに本体の小型化によって設置スペースの低減も図られている。


大阪ガスグループ、太陽光発電でオンサイトエネルギーサービス
 兵庫県洲本市は大阪ガスの子会社、エナジーバンクジャパン(EBJ)が提供する太陽光発電設備導入スキーム「ソーラー・エコウエーブ」を活用し、停電時にも自立運転機能を持つ、約10kWの同設備を、洲本市防災センター鳥飼会館に設置。6月1日から発電を開始した。都市ガス事業者である大阪ガスグループが、ガスコージェネなどのガス関連機器を使用せず、太陽光発電だけを使ったエネルギーサービスを行う初めての事例として注目されている。
 大ガスでは初期投資を行わず、使用エネルギー量に応じた料金を支払うだけで、ガスコージェネなどを導入できるエネルギーサービス「エコウエーブ」を01年から運用しており、昨年4月からは、より幅広く供給エリア内外の需要家に、太陽光発電などの新エネルギーや省エネルギー設備の導入を進めるEBJを設立していた。今回の鳥飼会館への導入はEBJの第1号契約案件となる。
 同スキームを使えば、余剰電力買い取り制度を利用することで、1kW時あたり25〜60円程度の料金負担で太陽光発電設備を導入できる。休日・昼間の電気使用量が少なく、多くの余剰電力が生じる防災センターや公民館、学校などが導入することで、安価に自然エネルギーを普及させることができる。
 今回の太陽光発電設備の導入は、兵庫県と淡路島3市の「あわじ環境未来島構想」の関連事業として位置付けられている。また国や県の補助金を利用しないで、防災施設へ自立運転機能を持つ太陽光発電設備導入の国内初の事例となる。


その他の主な記事
・経産省が電力使用制限を発動
・地球温暖化防止展を開催
・電設工業展に約10万人
・東京電力、引き続き自家発余剰電力を積極購入
・東急不動産、大阪ガスのエネ管理システムを採用
・三洋電機が西友全店舗対象にエネルギーマネジメントを実施
・東芝韓国企業と提携して風力発電に参入
・東芝が蓄電池付き太陽光を販売
・パナソニックが藤沢市にスマートシティを建設
・昭和機器、高精度液麺計を発売
・6月に風力施設の見学会を実施
・新エネ設備の補助募集を開始
・廃棄物エネルギー導入事業公募
・JVETS第7期27件採択
・新しい省エネ大賞を募集
・見える化報告会を開催
・エコリース促進事業決定と公募
・集光型PV、NEDOとEUで共同開発  etc.

<インタビュー>
・省エネルギーのポテンシャルと技術の可能性
(省エネルギーセンター 産業省エネ推進・技術本部 本部長 判治洋一氏)
 東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力の事故は、わが国の原子力推進に大きな影響を与えた。脱原発ではなくとも、少なくとも短期的には新増設は難しい状況だ。電力の供給力不足が予測される中、期待されているものがコージェネレーションシステムであり、自然エネルギーであり、そして省エネルギーである。中でも、節約・抑制型の省エネから使用効率を向上させることによる省エネの重要性が指摘されて久しいが、例えば省エネ推進役として期待されたESCO事業の国内への導入は遅々として進まない。省エネルギー課題と展望について省エネセンターに伺った。


シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革--R ドイツの脱原発ガバナンス=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授


コラム
・発電論評<電力不足対策と自家発活用について>
・プリズム<12年以降、すべての原発がストップ>
・青空<サマータイム制って?>


電力不足対策と自家発活用について【発電論評】

 電力不足対策として自家発電設備の活用がクローズアップされている。政府は6月1日の行政刷新会議で自家発電を活用する電力不足対応策を公表した。
 その内容は、常用の自家発電設備だけでなく、非常用・防災用までフル動員して電力ピーク時に発電運転を促すというものだ。そのために、排ガス規制や騒音規制などの緩和措置を特例的に講じて、自家発電設備の新たな導入や積極的な発電運転が行えるようにするという。さらに、非常用だけでなく、建設機械などの仮設電源として使用されている可搬型発電設備も、本来なら認められない敷地内に仮置きして自家発電設備として使用することも認められる。
 非常用発電設備を、緊急電源として使用するという考え方は、評価できるが、示された規制緩和措置が緊急特例的なもので、いつまで続けられるのかが明示されていないということには問題がある。非常用の自家発をピーク時に運転するために、障害となる法令手続きや規制基準などに特例を設けて、今夏の電力不足をとりあえず乗り切りたいということなのだろうが、今夏が乗り切れたとしても、その後、いつまで同様の措置が継続されるのかがわからないのでは、運転するために必要な設備の改造にはなかなか踏み切れないということになってしまう。
 非常用、特に防災用の自家発は、消防用設備や避難設備などの専用電源として設置されており、それ以外の負荷に給電することは消防法などで規制されている。そのため、規制が適用除外になっても、系統電力との連系や回路設計の変更など、それなりの改造工事が必要になる。燃料についても、非常用負荷に必要なだけの最低限の燃料タンクしか装備されていない。ピーク用に3時間とか4時間とか「長時間」の運転を毎日のように行うには燃料をどう確保するのかという問題もある。今夏の数ヶ月のためにそれだけの改造工事を行うというのは、あまり現実的とはいえず、まさに絵に描いた餅ということになりかねない。
 原発事故の収束の見通しがつかない今、電力不足の懸念が今夏以降も当面続くのだとすれば、緊急避難措置として自家発の運転を奨励するという場当たり的なその場しのぎの策ではなく、将来にわたってピーク用電源として非常用の自家発の運転が行えるという明確な方針を打ち出して、排ガス規制などの必要な規制基準をクリアできる、低炭素で高効率の発電設備として活用できることを考えるべきなのではないか。
そのためには、過剰な規制を排除して、恒常的な緩和措置として実施される必要がある。自家発活用に向けて、抜本的、恒常的な対策を求めたい。