2011.04.15


2011年415日号

電力不足に自家発を活用 政府が夏期の電力需給対策で骨格
 東日本大震災の影響による夏の電力不足に対応するため、政府は4月8日に開催した電力緊急対策本部で、1千万kW以上の供給力不足が予測されている東北電力と東京電力管内での夏期の電力需給対策について「対策の骨格」を決めた。
 火力発電の復旧や前倒し運転、自家発の活用などの供給力の上積みを図ってもなお、ピーク時には1千万kW以上の電力が不足すると見て、37年ぶりにる電力の使用制限を行うなど節電対策を強める。これに伴って計画停電は実施しない。
 具体的な需要対策としては、「大口需要家」「小口需要家」「家庭・個人」に分け、最大使用電力を例年より各々「25%程度」「20%程度」「15〜20%程度」抑制してもらう。大口需要家には抑制計画の策定のほか、電気事業法27条に基づく電力使用制限を行う。小口需要家や家庭に関しては節電を求め、具体的な節電策などをわかりやすく例示するなどする。需要抑制は平日の10時から21時まで実施することにして、4月末までに全体としての政策パッケージをとりまとめる。
 供給面の対策としては、原子力発電の稼働増が困難な状況から、火力発電所の再稼働やガスタービン発電機の緊急調達、揚水発電の活用などで、500万kW以上回復させる方針だが、それでも深刻な電力不足が懸念されるため、電力を調達できる供給エリア内の自家発電設備の調査を行い、売電するよう働きかける。
 また、今夏以降の対策として、引き続き火力発電の拡大をIPP電力も含めて追求することや、分散型電源の拡大、再生可能エネルギーの導入促進などを緊急的に進めていくことにする。

【「骨格」であげられた供給面の対策】
■今夏向けの対策
◇火力発電所の復旧・立ち上げ(ガスタービン等の緊急設置電源を新設。環境影響評価の適用除外)◇自家用発電設備の活用(電力を調達できる自家発電設備を調査。設置者に対して売電を要請)◇揚水発電の活用
■今夏以降の対策
◇火力発電の復旧・新設◇緊急設置電源の新設(海外からも含めガスタービンのさらなる設置)◇地域間連携線の増強(既設FCの増容量の早期実現。更なる地域間連携増強に関する中期的なマスタープランを策定)◇再生可能エネルギーの導入促進◇分散型電源の導入促進◇関連の研究技術開発


規制制度改革で閣議決定 再可エネ、ガスコージェネなど規制緩和
 政府は、規制・制度改革に関する分科会の「中間とりまとめ」や、3月6日と7日に実施した「規制仕分け」の結果などに基づいて、規制制度改革の方針を閣議決定した。風力発電の立地に関する規制緩和や再生可能エネルギーの部分取引などを可能にする規制緩和など20項目が「グリーンイノベーション分野」として盛り込まれ、2011年度中に措置や結論などの対策が所管する省庁に求められることになった。
 グリーンイノベーション分野としてあげられたのは、再生可能エネルギーの活用や電気自動車の普及、ガス導管の普及拡大に関するものなど合計では20項目。分科会の報告書に盛り込まれていた63項目の中から20項目に絞り込まれて規制・制度改革が行われることになった。
 このうち再生可能エネルギーの導入・立地を促進する観点から規制緩和として取り上げられたのは、@市街化区域での風力発電機器の設置を都市計画法の開発許可から外すものA小水力発電について水利使用許可の手続きの簡素化などを図るB小水力のダム水路主任技術者の外部化C下水熱や河川熱などの未利用エネルギーの活用ルールの整備の4項目。また、再生可能エネルギーの設置場所の拡大として、都市緑地法の緑地地域への太陽光発電の導入や道路への設置許可対象として太陽光発電や電気自動車用充電器を加えることのA項目。さらに、再生可能エネルギー期限の電力を需要面で利用しやすくする措置として、再生可能エネルギーを選択して受給契約を行えるようにすることを目的に「電力取引指針」の運用面で一般電力を補完電力として利用できることを明らかにすることを求めたほか、電気主任技術者制度の解釈や運用を見直してマンションなどの集合住宅で高圧の一括受電サービスの普及促進ができるようにすることも求めている。また、遠隔地の再生可能エネルギー電力を利用できる仕組みとして低圧託送料金制度の創設も求められている。
 その他、電気自動車の普及のための環境整備として、現在認められない複数の電力の需給契約を認めて、急速充電器の設置をやりやすくすることや道路への充電器の設置が認められることの明確化を求める。また、家庭用電気料金メニューを拡充して、電気自動車やスマートメーターの導入をやりやすくする観点から料金の選択肢を多くする。
 また、低炭素エネルギーとして今後も普及拡大が目指される天然ガスについては、道路占有許可の円滑な取得や減価償却費の算定方法の緩和などの措置が求められる。

【閣議決定されたグリーンイノベーション分野の分散型エネ関連項目】
◇市街化調整区域における風力発電機付随設備に係る設置許可の柔軟化
◇小水力に係る従属発電に関する許可基準の見直し
◇ダム水路主任技術者の取り扱い
◇緑化地域等における太陽光発電設備導入に係る取扱いの明確化
◇都市公園における地域冷暖房施設の取扱の明確化
◇下水道・河川熱等の未利用エネルギーの活用ルールの整備
◇潜熱回収型給湯器ドレン排水処理に関する行政手続きの統一化
◇温室効果ガス排出量に関する報告の一元化・統一化
◇道路への設置許可対象の範囲拡大
◇電気自動車の急速充電器の設置に係る電力契約の規制の緩和
◇需要家による再生可能エネルギーの選択肢拡大に向けた部分供給取引の明確化
◇マンション高圧一括受電サービスの普及促進に向けた規制の見直し、高圧一括受電サービス普及促進に係る電気事業法に基づく「主任技術者制度の解釈及び運用)」の見直し
◇家庭用電気料金メニューの拡充
◇低圧託送料金制度の創設
◇ガス導管事業の用に供する導管の道路占用許可
◇行政によるガス工事・通信工事跡の受託復旧費用の抑制
◇ガス事業託送約款料金算定規則における減価償却費算定方法の緩和
◇準工業地域におけるバイオガスの製造の適用除外


富士電機、リン酸型燃料電池の寒冷地屋外運転で機能実証
 富士電機は4月11日、下水消化ガスを燃料とする燃料電池の寒冷地冬季屋外における実証試験に成功したと発表した。
 山形市浄化センターに新型の100kW級リン酸型燃料電池「FP−100i」を設置。今年1月から3月までの約2千時間の運転を通じ、起動停止試験やパターン運転試験を行い、運転性能に問題がないことを確認した。
 新型機では燃料電池に必要な周辺機器をワンパッケージに収め、設置工事の簡略化を図った。このため従来、配管工事などで1週間程度かかっていた設置工事が半日で済み、設備を納める建屋が不要となるなど設置工事費の大幅な削減が図れる。
 また、新型燃料電池はパッケージ内の機器配置を最適化し、−20度Cから40度Cの環境に対応できることも確認した。発電効率は40%、総合効率は温水を55度Cで回収する場合、90%に達する。
 3月11日の東日本大震災の際にも、商用電力系統の復旧まで消化ガスで発電を継続し、2日後の電力系統復旧と同時に通常運転に入った。今後も電力不足が長期化することが予想される中、災害時には、備蓄LPガスによる燃料供給も可能な点も活かし、国や自治体に積極的にPRしていく。


川崎重工、名古屋第一工場と明石工場に太陽光発電設備を導入
 川崎重工業は、航空機部品を製造する名古屋第一工場と、二輪車やガスタービン発電設備、産業用ロボットなどを製造する明石工場に、それぞれ750kWと100kWの太陽光発電設備を導入した。
 名古屋第一工場の太陽光発電設備は、工場全体の電力消費量の約5%が賄える容量。両工場をあわせて年間約400トンのCO2削減効果が見込める。国の補助制度を活用して導入した。
 川崎重工業では、国内工場への太陽光発電設備の設置を順次進めており、今回の2工場での設備導入により、国内工場の太陽光発電設備の総出力は約1460kWになった。
 さらに、神戸工場では、太陽光発電設備に加えて、グループ会社の日本飛行機が開発した小型風力発電設備や、自社開発のニッケル水素電池「ギガセルR」を組み合わせた新エネルギー複合システムの導入も計画しており、国内工場で使用するエネルギーの低炭素化や効率利用をさらに進めていく。


その他の主な記事
・エネルギー基本計画抜本的に見直し
・NEDOが京都クレジットの取得状況を報告
・2011電設工業展開催決まる
・エネ研が再生可能熱利用で報告書
・自然エネで被災地支援 NPOがプロジェクト
・ミサワホームが家庭用太陽光で国内クレジットを初取得
・2012年に車載用バッテリーは6千億円市場に
・日立建機が電動建機を使って削減事業
・マイクロソフトと豊田が戦略的提携
・ソーラーフロンティアがイタリア企業と太陽電池の販売契約
・東芝、ニュージーランドの地熱発電設備を受注
・東大、鉄系超電導体の高温メカニズムを発見
・2011電設工業展開催概要決まる
・エネ管理士試験の日程を変更
・太陽光発電実務研修の受講者を募集
・埼玉県が太陽光発電や燃料電池導入などで補助募集
・福岡市がエネファームと太陽光の補助募集
・広島市が環境エネ関係研究を補助
・京都市が低炭素化パートナー企業を募集
・横浜市がYGPモデルの提案者を募集
・環境省が温泉発電を補助、工事業者の紹介も
・NEDOアブダビの太陽熱実証を募集
・NEDO中国のスマコミ実証を募集
・次世代高効率エネ実証で報告会
・11年度水素供給インフラ実証決まる
・11年度次世代エネ実証決まる
・地球温暖化対策技術普及事業の公募開始
・バイオマスタウン構想303地区に   etc.

<特別企画>
・見直される分散電源としての燃料電池
(富士電機株式会社 エネルギー事業本部 発電プラント事業部 燃料電池プロジェクト部部長 腰 一昭氏)
 東日本大震災がもたらした教訓の一つは、間違いなく集中した電源、単一のリソースによるエネルギーインフラのぜい弱性だった。その結果、災害地での非常用の電源としてだけではなく、首都圏における計画停電への対応として、分散電源の重要性が見直されている。そうした中、高効率の分散電源として燃料電池が再び注目されている。業務用の燃料電池システムとして100kWのリン酸型燃料電池を製造販売している富士電機に分散型の低炭素電源として燃料電池システムの市場性について話を伺った。

<インタビュー>
・地方都市ガス会社に聞く新時代の経営戦略
(大多喜ガス取締役営業本部長 梶田 直氏)
 大多喜ガスは1957年に、関東天然瓦斯開発の都市ガス部門を分離・独立させた千葉県を地盤とする都市ガス会社。国産天然ガスという安定した資源をベースとして、事業を展開し、最近では、東京湾内の工業地帯における大口需要の獲得により、事業規模を飛躍的に拡大させている。こうした大多喜ガスのこれからの戦略について、話を伺った。

燃料電池新聞の主な記事
・燃料電池自動車の開発と水素ステーション
・家庭用SOFCの最新動向
・海外ニュース
 -岩谷産業に固体水素貯蔵技術を提供 仏マクフィー社
 -カリフォルニア州の高校に燃料電池を設置 米クリア社
 -寒冷地仕様の水素ステーションがオープン スウェーデンで
 -米PEFCバックアップ電源のOEM販売を開始 独ホッペケ
 -燃料にアンモニアボランペレットを開発 インドパデュー大ら
 -PEFC、500万時間の運転を達成 米オールタージー
 -カーボンナノチューブで白金代替触媒を開発 米ケース大
 -6重量%の水素貯蔵材料を開発 米ローレンス研究所
 -共同で都市ゴミガス化発電を実証 バラードと韓国GS
 -カナダにFCVのスタック製造工場を建設 独メルセデス
 -アンモニアボランのリサイクル技術を開発 米LANL
 -イスラエルでEVインフラ配備計画を発表 米ベタープレイス
・燃料電池フラッシュニュース
 -欧州市場向けガスエンジンコージェネを共同開発 ホンダとバイラント
 -水素ステーション集中管理システムを構築 富士通とHySUT
 -MIMによる燃料電池セパレーターを開発 アテクト
 -白金触媒を高速で生成する技術を開発 アリオス
 -DMFC緊急・災害対応システムを試作 東洋紡
 -家庭用燃料電池部品など新規事業に進出 フタバ産業
 -燃料電池スクーター、EUで型式認証を取得 スズキと英インテリ社
 -25年の燃料電池自動車市場を予測 富士経済
・燃料電池インフォメーション
 ■燃料電池開発情報センター(FCDIC)「第18回燃料電池シンポジウム」
5月18(水)〜19日(木)9時〜17時 タワーホール船堀(東京都江戸川区)○概要=燃料電池全般と水素製造精製の技術開発動向・市場動向に関するセミナー。44の講演と、特別講演「トヨタの燃料電池自動車の開発と挑戦」(トヨタ自動車 河合大洋氏)、「水素インフラの構築に向けて」(JX日鉱日石エネルギー 吉田正寛氏)を予定   etc.

シリーズ連載
・カーボンマネジメント入門 (50)
 =夏場の停電は回避されるのか=
 大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長
・世界を読む(32)<東京電力は国有化されるのか>



コラム
・発電論評<復興電源に必要な分散型の視点>
・ちょっと一休<歌舞伎と赤坂をどりで大忙し>
・青空<余震が続いている>
・ちょっと一言<原子力不在でも気候変動対策>


電源復興に必要な分散型の視点【発電論評】

 震災による原発事故を受け、復興電源はどうあるべきかの議論が始められる。政府は、今後の電力需給の方向を「需給対策の骨格」としてまとめたが、対策の柱の一つに自家発の活用が掲げられた。
 戦後日本の電力政策の中で、電力の供給は電力会社にゆだねられてきた。供給エリアを9分割して事業独占を認める代わりに供給義務を課し、必要な電力を安定的に供給する担保としてきた。そのため、自家発は余剰電力を系統側に送電することを原則的には禁じられ、事業用電源の枠外にとどめられ、電力会社は電源のほとんどすべてを大規模火力や原子力などの自社電源によってきた。
 その結果が、今回の大規模電源の喪失による圧倒的な電力の供給力不足という不測の事態を招いたといえなくもないが、電源の回復を、従前通りのスタイルで進めることは、もはや許されることではない。電源の新設が短期間に行える分散型電源を供給力として期待する方向性が明確に示されたことは正しい判断だと評価できる。
 電源回復を進めるに当たっては、低炭素化の視点も欠かせない。原子力の代替となるものについては、極力低炭素化するという視点が必要になる。再生可能エネルギーの最大限の拡大や、火力の場合はコージェネ化などの高効率利用の視点が不可欠だ。そのためには、再生可能エネルギーと蓄電池、天然ガスコージェネなどを組み合わせた高効率で低炭素な電源を効果的に整えていくという視点が重要になる。これを安定供給電源としてカウントできるようにするためにはスマートグリッド技術を活用して、系統電力コントロールできるようにすれば、失われた原子力の代替電源として十分な役割が果たせるのではないか。国の電源計画の中にこうした分散型電源をきちんとカウントできるようにするという視点が盛り込めるのかどうかが問われることになる。
 現状の分散型電源として多くのものは、非常用の自家発電設備として社会的に退蔵されている。こうした非常電源をピーク用の電源として活用する仕組みも作りたい。それには自家発からの電力を買い上げる仕組みも必要になる。短期間に大量の電源を確保するには、例えば、発電設備のイニシャルコストを電力販売で補えるようなリース制度や投資インセンティブが働く電力買取制度や販売制度の導入などが必要になろう。再生可能エネルギーや低炭素なコージェネ電力を買い取って販売するグリーンPPSの育成を考えることも大きな効果が期待できるのではないか。
 電源回復によって電源の低炭素化が後退するということがないよう、原子力に替わる代替電源をどのように作り上げていくのかが問われている。