2011年45

風力アセスは1万kW以上で検討
 風力発電に関する環境アセス基準について検討を進めている環境省の検討会は、4月1日に開いた第7回の会合で、騒音・低周波音と動植物の生態系に与える影響、景観、シャドーフリッカーの4項目についてアセス基準を定める方向で報告書をまとめることにした。注目の規模要件については、発電所の総容量で1万kWから2万kW程度をアセス対象とする方向で、次回以降に議論が集約される。
 風力発電に関しては、これまで環境アセスの対象ではなかったものの、NEDOが自主基準を定めたガイドラインを公表しており、事業者はこれに基づいて環境影響調査を実施している。また、福島県や長野県など一部の地域では条例でアセス基準を定めているところもある。
 風力発電は、現在、国内では約230万kW程度の設備が導入されているが、導入量の拡大に伴って回転する風車に鳥が衝突するバードストライクの問題や、風切り音などの騒音苦情が寄せられる事例が発生しており、環境省が昨年実施したアンケート調査では、64カ所の風力発電所で騒音苦情が発生していることが報告されている。
 検討会では、騒音・低周波音についての基本的考え方として、風力発電を導入することにより現況からの増加分について基準化する方向で、増分についての予測・評価の手法について検討されている。また、動植物の生態系に与える影響についても特に問題とされており、バードストライクなどの直接的な影響と移動経路の阻害、工事による水の濁りなどの間接的な影響などについても予測基準を設ける方向で検討されている。
 景観についてもアセス対象となるが、環境省では自然公園内で立地する場合のガイドラインを公表しており、評価基準はこれに沿ったものになる。また、風車が回転することで断続的に日照が遮られるシャドーフリッカー現象についても、影響を最大限回避・低減される方向で基準化される。
 検討会は、次回4月28日に予定されている会合で報告書案を検討する。


メタンハイドレート開発、海洋産出試験へ
 国のプロジェクトとして進められているメタンハイドレート開発で、研究コンソーシアムの23年度事業計画が承認され、メタンハイドレートが大量に存在していることが確認されている熊野灘沖で、世界で初めての海洋産出試験が開始される。
 メタンハイドレートは日本の天然ガス使用量の100年分以上に相当する大量の資源が日本近海の海底化に存在していることが明らかになっており、国産の天然ガス資源として注目されている。この資源開発に向けて2001年度から国が開発計画を策定し、昨年度まで陸上での産出試験を行うなど掘削・回収技術の研究開発を行ってきた。
 プロジェクトは昨年度から熊野灘沖などの海底で、実際の産出試験を行う第2フェーズに入っており、1年間の準備期間を経た後、今年度から世界で初めての海洋産出試験が開始されることになる。
 本格的な産出試験は来年度後半から開始されることになるが、今年度は3本のモニタリング井と生産井の部分的な掘削などを行い、メタンハイドレートの濃集帯からコア資料を採取して分析などが行われる。
 メタンハイドレートは水深1千b程度の海底下の一定の圧力と温度の下で、水の結晶の中にメタンガスが閉じ込められている状態で賦存していることが確認されており、これをメタンガスとして回収するには、温度や圧力のバランスを変えることでガス化して回収できる。カナダの凍土地域で行った陸上産出試験では坑井内の圧力を減圧して回収する減圧法を適用することで効果的に回収できることを確認している。
 熊野灘沖の試験でも減圧法によって産出試験をおこなう計画で、2015年度までの第2フェーズで工法の有効性など産出技術を確立し、16年度から始まる第3フェーズでの商用化に向けた最終の研究開発につなげていく。


経産省とNEDO、省エネ技術戦略を策定
 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、今後の省エネルギーを効果的に推進するための重要技術や導入シナリオをまとめた「省エネルギー技術戦略2011」を策定し、公表した。
 昨年6月に策定した「エネルギー基本計画」では、30年にCO2排出量を90年比25%削減する目標などを掲げている。だが、東日本大震災による原子力発電所の事故の影響の大きさから同計画の見直しは必至であるため、同省では省エネ技術の開発を加速させる。
 今回公表された同戦略では「産業」「家庭・業務」「運輸」の3部門と「部門横断」に分け、13の技術を選んだ。組み合わせや新たな切り口により大きな省エネ効果を発揮する技術、また、長期的に大きな効果や広範な適用が見込める技術を重点的に取り組むべき重要技術として選定し、ロードマップを策定。システム化による全体最適や、従来にない視点・切り口から、新たな省エネの可能性を明示している。
 産業部門では▼蓄熱や熱輸送を用いた熱活用の柔軟化を図る「省エネ促進システム技術」▼製造プロセス内でのエクセルギー(有効仕事)の観点から見直し、損失を減らす「エクセルギー損失最小化技術」▼製品使用段階での省エネ効果を狙う「省エネプロダクト加速化技術」など。
 家庭・業務部門では、節電対策に有効な技術として▼住宅・建築物のエネルギー消費量を限りなくゼロに近づける「ZEB/ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル/ハウス)」▼IT機器の個別のデバイスや機器の省エネ化を進展させる「省エネ型情報機器・システム」▼定置用燃料電池(SOFC、PEFC)なども盛り込んでいる。
 運輸部門では▼電気自動車や燃料電池自動車などの「次世代自動車」▼ITなどを駆使して交通システムの最適化を図る「ITS(省エネ走行支援技術)」などが示されている。
 また部門横断では▼熱融通や再生可能エネルギー導入などの次世代送配電ネットワークを構築する総合的省エネ技術「熱・電力の次世代ネットワーク」▼「次世代型ヒートポンプシステム」▼電気電子機器に備わる電源の高効率化を行う「パワーエレクトロニクス」を選定した。


大和ハウス、可搬型リチウムイオン電池と太陽光発電で電源装置を開発
 大和ハウス工業は、可搬型のリチウムイオン電池と太陽光発電パネルを組み合わせた電源装置の販売を開始した。移動用電源や停電時の非常用電源としても活用できる。520Wの太陽発電パネルと2kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載しており、日中、太陽光で発電した電力を蓄電池に蓄え、商用電源に頼らない独立電源システムとして利用できる。販売価格は252万円から。年間500台を販売する計画。
 リチウムイオン蓄電池は、大型リチウムイオン電池の量産および製造を行っているエリーパワー社製のシステムで商品名は「パワーイレ」。商用電力と太陽光発電の直流電力も蓄電でき、地震などが発生した際には、揺れが到達する前に音声と液晶画像で 緊急地震速報を伝える機能もあり、運転状況を24時間集中管理センターで遠隔監視する。
 充電時間は、約5〜6時間。稼動時間は、商用電力と接続しない独立運転の場合、満充電状態で約1.1kWh分の電力が使用でき、45Wの照明3灯と携帯電話の10台分の充電とノートパソコン3台を約3時間使用することができる。


その他の主な記事
・風力発電の立地、自然公園ガイドラインを公表
・京都市も環境計画、バイオマス計画も
・大阪府が新環境計画
・新潟市がピークカット訓練
・静岡県が温泉発電の可能性調査 6地域が有望
・非住宅用太陽光の買い取りにも設備認定
・環境省09年度国家機関の非出場強をまとめ
・11年度京都メカニズムクレジットの結果
・震災で見直される太陽熱利用機器
・ミサワホームが家庭用太陽光で初クレジット
・ユーラスジャパンは国内専業に
・東芝が被災地に太陽光発電などを提供
・日立と三菱2社が水力発電事業を統合
・三菱重工が太陽光事業で台湾企業と提携
・シャープが新型太陽電池の量産を開始
・Jパワーが風力発電事業会社を統合
・7月に再生可能フェア
・環境省が政策提言で優秀事例を表彰
・NEDOが電力需給対策の即効的な研究開発を募集
・環境省が自然冷媒補助の募集を開始
・水素製造・輸送・貯蔵システム技術開発公募
・省エネ革新技術開発第1次開始
・太陽熱エネ活用型住宅の委託先募集
・バイオマスエネ先導技術公募  etc.

<インタビュー>
・COP17の行方と日本の気候変動政策
(気候ネットワーク 平田仁子氏)
 COP16で、日本政府は京都議定書の延長には反対する姿勢を示し、延長を主張する欧州諸国や途上国などの反発を招いた。日本政府に化石賞を贈った国際環境NGOのグループもあった。来るべきCOP17では日本はどのような提案を国際交渉の舞台に持ち込むべきなのか。気候ネットワークの平田氏に話を伺った。


シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート
 =環境構造改革--P 経済・雇用効果が大きい「地域ベースのCO2削減策」=
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授
・スマートグリッドビジネス そのB
 =工場・施設において進む省エネ、CO2削減技術=
 コラボレート研究所 エコロジー事業部 主任研究員 前田 タ
 *連載記事に関する詳細動向は、スマートエネルギー産業振興会、発行:株式会社 スマート・エコロジー企画、による『2010〜2011年 急進するスマートグリッドの開発動向とビジネスチャンス』を活用ください。



コラム
・発電論評<電力供給不足に非常用自家発の活用を>
・プリズム<エネルギー政策に歴史的転機>
・ちょっと一休<3・11で続々と中止や延期>
・青空<地獄絵の東日本大震災の被災地>


電力供給不足に非常用自家発の活用を【発電論評】

 福島第1原子力発電所の事故処理が深刻化している。遅々として進まない原発処理とともに、電力の供給力の不足の解消もメドが立たない状況が続いている。最大1千万kWといわれる今夏の供給力不足は、このままでは、計画停電や利用規制といった格好で耐乏することが求められることになりそうだ。
 電力の供給力不足の解消には、短期的な対策と長期的な対策に分けて考える必要がある。長期の対策は、震災を教訓に抜本的なエネルギー政策を見直し、電源構成やエネルギー利用のあり方などを考えればよい。問題は足下の数年間をどう乗り切るかということだ。
 電気のない生活や社会活動が不可能とさえいえる今、夏・冬の需要のピークを乗り切る具体的な対策が求められている。耐乏を強いるだけでは長続きはしない。新規の発電所建設が間に合わないのであれば、既存の自家発電設備をフル稼働させることが最も現実的で有効な方法となる。
 活用できる自家発電として見落とされているのに非常用の自家発電設備がある。その多くのものが消防・防災用の非常電源として設置されている。
 消防・防災用の自家発電設備は、毎年90万kW前後が国内に新設されており、東京電力の供給エリアである1都6県に限ってみても毎年40万kW前後の発電設備が新設されている。10年間のストックとしてみれば400万kW。20年としてみれば800万kW程度の非常用発電設備がスタンバイしていることになる。このうち半分の設備が稼働できたと仮定しても400万kW程度の大きな供給ポテンシャルが望める。これがピーク用電源として活用できれば相当の効果が期待できるのではないか。
 こうした非常用発電設備を使うには少しばかりの工夫が必要だ。まず、燃料保有量の問題で、運転時間が1〜2時間程度に限られること、それ以上の運転を行うには頻繁な燃料補給が必要になる。また、発電した電力は消防用設備に供給されるような回路設計になっているため、それ以外の負荷設備に電力供給するためには改造が必要になる。
 非常用発電設備を計画的な停電にあわせて運転するためには、電力事業者と設置者、また、燃料補給路の確保など関係者の連携が不可欠で、運用時には、発電設備の設置者に停電対策として使える発電設備の容量と時間を登録してもらい、計画停電時間にあわせて運転できるような工夫も必要だ。そうすれば間接的にピーク電源としてカウントすることができる。運転時間の問題は、例えば、停電時間を3時間から1時間程度にできれば解決できそうだ。
 まさに緊急・非常事態だといえる今、電力のピーク対策の一案として提案したい。