2011年325日号

電力供給不足が深刻化
 東日本大震災の発生からほぼ2週間が経過したが、未だに被災の全容は明らかになっていない。まさに未曾有の大災害となった今回は、地震津波被害と原子力事故の二重被災の様相を見せ、復興支援に全力を傾けることもままならない情勢が続いている。特に、原子力発電所が停止した東北電力と東京電力では深刻な電力供給力不足に陥っており、関東一円で大規模な計画停電が実施されている。
 エネルギー需給を管轄する経済産業省の報告によると、23日現在で、東京電力福島第一が原子力事故を起こしており、事故現場での事故処理が継続中で、無事に収まるかどうか予断を許さない状況が続いている。また、放射能被害も顕在化してきている。総出力440万kWの福島第2は地震により自動停止、福島第一の事故処理が継続中の今再開のめどは立っていない。地震後一部地域で停電したがその後、復旧、3月14日からは電力供給不足による計画停電を行っている。
 電力供給力の不足は深刻で、停止中の火力発電所の復旧や再稼働を急いでも当面の解消は困難な見通し。さらに夏期の電力ピーク時には大規模な計画停電の実施が避けられない見通しだ。
 東北電力でも、総出力221.9万kWの女川原子力発電所が緊急停止、複数の火力発電所も被災し停電戸数22万戸(述べ486万戸)青森、岩手、宮城、福島の各県一部地域で停電が続いており、復旧には半年以上を必要とすると見られている。
 ガス事業では、一部または全部で供給停止となったのは、一般ガス事業の仙台市営ガスの35万8781戸を始め、塩釜ガス、福島ガス、東部ガス(土浦市、水戸市)、釜石ガス、常磐共同ガス(いわき市)、京葉ガス(浦安市)、東北ガス(白河市)、常磐都市ガス(いわき市)、気仙沼市営ガスの各社。盛岡のデパートではガス爆発事故も報告されている。また、岩手県から福島県までの広い範囲の被災地域内で25社の簡易ガス事業が供給停止に追い込まれている。
 石油精製所も、コスモ石油千葉製油所、JX日鉱日石エネルギー仙台製油所で香椎や爆発など被災地だけでなく関東地区でも製油所の稼働停止や被災が報告されている。
 東北電力管内では、23日現在で、青森県、岩手県、宮城県、福島県の一部地域で合計約21万戸の電力供給が復旧していない。


今夏は1千万kWの供給不足に エネ研がレポート
 日本エネルギー経済研究所は、3月21日現在の東日本大震災による電力供給の影響について調査レポートをまとめた。
 東京電力、東北電力、共同火力などの電力事業用の発電所では、約2710万kWの発電設備が被災し、東京電力管内では1590万kW、東北電力では556万kW,共同火力発電所では3カ所450万kWに加え、日本原電の東海第二発電所の110万kWが稼働停止となった。現在、被害が比較的少なかった火力発電所を中心に再稼働に向けた取り組みが行われている。
 深刻な供給力不足に陥った東京電力では、定期検査や補修作業で停止中だった火力発電の再稼働時期の前倒しや、卸電力事業者からの調達電力の増加、水力発電の出力増加、長期計画停止中の横須賀火力227万kWの再稼働化などの対策を進めている。
 被災後の供給力不足から東京電力が計画停電の実施に踏み切ったが、三月末までに見通せる供給力は最大3650万kW程度、四月前半には4000万kW程度にまで回復することが見込まれるものの、昨年同時期の電力需要実績では3月は約4700万kW、4月は約4600万kWに達しており、各需要家の節電協力を考慮しても、計画停電は4月下旬までは継続する必要があると見込まれている。
 さらに、冷房需要期を迎える6月から9月にかけては5千万kWから6千万kW前後委の需要ピークを迎えることになるが、東京電力の供給力は5千万kW程度まで回復するのがせいぜいであり、供給力不足は最大で1千万kW程度が見込まれるため再度の計画停電などの需要抑制が不可欠だと見通している。
 一方、東北電力でも、供給力不足は深刻であるが、被災による電力需要の落ち込みも大幅であり、計画停電の実施は見送られている。今後、夏場に向けて復興による需要回復や冷房需要の増加など最大電力の増加は必然の見通しであるものの、停止中の発電設備の回復については再稼働の目途が立ちにくく、電力の需給ギャップの程度を見通すことは困難だとしている。


東京都が電力利用規制を政府に提案
 東京都は、東京電力が実施している「計画停電」に代えて、今回の震災にともなう大規模な電力不足という未曾有の事態に対処するためには、電気事業法に基づく電力の利用規制を国の責任で行うことを緊急要望した。
 首都圏や被災地域での電力の供給力の不足が当分続くことを念頭に、社会生活、経済活動への負担がより少なく、かつ、即座に対応可能な方法として、電力事業法の政令を活用した利用規制への可及的速やかな移行を経済産業大臣宛に提言した。
 都では、電気事業法では大規模施設等への計画的な使用制限やネオンサイン等の使用禁止などの措置が告示で実施できる規定があり、昭和48年のオイルショック時にも、計画停電ではなく、電気事業法にもとづく利用規制が行われたという経緯があるとしている。
 現在、東京電力の供給エリア内では地域ごとに交代で電力供給を止める計画停電を実施して供給力の範囲内で電力需要を調整している。東京電力の供給力は他社からの融通分なども合わせて23日には3750万kWを確保した。今後、停止中の火力発電所を稼働を急ぎ、4月中には4500万kW程度を確保し、さらに上積みを図る考えだが、需要抑制措置を執らない場合は夏期の最大電力は6千万kW程度を見込む必要があり、1千万kW以上の電源不足が予想されることから、計画停電ではなく大規模な供給規制の必要が現実化している。


シャープ、被災地向けソーラー発電システムを提供
 シャープと新神戸電機は共同で、「被災地向けソーラー発電システム」(250セット)を、防衛省の協力を得て、3月25日から順次、緊急避難場所で利用できるよう提供すると発表した。
 シャープの太陽電池と、新神戸電機の蓄電池や、ACコンセントを組み合わせて独立型で安定的に電力供給が行える太陽光発電システムとして開発した。太陽光で発電した電力で携帯電話の充電などができる。
 震災後、ソーラーによる発電システムの活用を検討し、新神戸電機をはじめ関連企業が協力して「被災地向けソーラー発電システム」として製作したもので、被災地域まで届ける輸送方法が困難だったが、『都道府県からの要請に基づいた防衛省の被災地に輸送する仕組み』が決められたことから防衛省を通じて寄贈することができた。


その他の主な記事
・停止中の発電設備(東北電力・東京電力)
・9都県市がエネルギー確保を要望
・NEDOが再生可能エネルギー技術白書を刊行
・太陽光発電協会が震災後の自立運転で呼びかけ
・風力発電は震災後も順調に稼働
・排ガス対策原動機と建機、低騒音建機
・イオンの大型SCにメガソーラー
・関西電力が震災対策で非常用発電機を増設
・山洋電気がキャパシタで起動電力を抑制
・情報通信研究機構が無線式のスマートメーターシステムを開発
・新潟県が12カ所目の小水力発電所を運開
・北陸電力初のメガソーラーが運開
・埼玉県が市民協働太陽光発電の11年度の募集日程を発表
・環境省が関連行事を延期や中止震災考慮で
・NEDOが大規模蓄電池の技術開発を募集
・次世代バイオマス研究開発4月に募集開始
・新潟県が中小水力セミナーを中止
・大阪府がカーボンオフセットでセミナー
・大阪府もセミナーを中止
・空気調和・冷凍連合講演会
・JPIセミナー
・SSKセミナー  etc.


<インタビュー>
・COP17の行方と日本の気候変動政策
(環境省地球環境審議官 寺田達志氏)
 昨年、メキシコで開催されたCOP16は、カンクン合意を採択し世界各国の温室効果ガス削減に向けて一歩前進した。しかし、そこでは2013年以降の新たな枠組みについては合意に至らず、COP17へと議論を持ち越した。日本政府は京都議定書延長反対を強く主張したが、途上国や欧州では唯一の法的な枠組みとして議定書延長を望む声が強い。今年末に南アフリカのダーバンで開催されるCOP17では、日本はどのような方針で臨み、新たな枠組みの構築を提案できるのか方向性について聞いた。




シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流 G
 =日本のエネルギー産業活性化への道=
 (和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏)
・カーボン・マネジメント入門(49)
 =省エネの徹底と新しいライフスタイル=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)




コラム
・発電論評<大規模災害にも強い電力供給システムに>
・ちょっと一休<大変だった3・11>
・青空<東日本大震災に思う>
・一筆啓上<脱原発へと変わる世界>


大規模災害にも強い電力供給システムに【発電論評】

 東日本大震災による原発事故は深刻化する一方だ。地震発生からほぼ2週間が経過したが、事態は一考に好転しないばかりか、農作物や水道など社会生活を脅かす放射能汚染を引き起こす事態となっている。
 原発の停止による電力不足も深刻で、夏期の電力ピーク時には1千万kW以上の電力不足に陥ると見込まれている。災害復旧とともに、失われた電源の回復も急がれなければならない。
 今回、深刻な事故を起こし、社会不安を招いている原子力発電の再建は極めて難しいしいと考えられる今、失われた原子力に替わる新たな電源探しが急務となる。短時間で建設できるという必要条件を満たすには、大規模な火力を新たに建設するよりは、需要側に中小規模の発電設備を多数・同時に建設することが現実的で効果的な解決方法になるのではないか。ディーゼルやガスエンジン、ガスタービン発電設備を工場などの大口需要家の事業所や近隣に設置して、需要を賄うと共に、余剰電力を発生させて電力系統に送電し流通させ、系統電源としても利用する。自家消費電力を増やすことで系統側の需要電力量を引き下げ、かつ系統電源の強化にもなる。
 また、復興住宅や新築住宅には太陽光発電を設置するだけでなく、可能な限りガスコージェネや燃料電池などを併設して家庭内の電力を賄うと共に、これも余剰電力を発生させて分散型の電源として活用することにするのも同様の効果を生み出せると共に、停電対策の強化にもつながる。
 こうした取り組みを震災復興や電源回復という政策のもとで国を挙げて一丸となってやり遂げることが必要だ。
 今回の震災で明らかになったことは、深刻な事故は起きないということを前提に構築されてきた日本の原発の安全神話が崩れ去ったということであり、改めて、「事故は起こる」のだということを前提にした新たな安全対策を講ずる必要があるということだ。事故が起きても安全に復旧させるための非常用電源の再整備などの対策が講ぜられなければならない。
 さらに、今回の大震災によって、非常用電源の確保も深刻な問題として浮かび上がった。行政機関や病院、学校、工場などの重要施設や大規模施設には非常用発電機などが設置されているが、大規模でかつ長期間にわたって系統電力の停電が続くことは想定されておらず、地震直後に数時間や数日間分の燃料を使い切った後は燃料切れで停止。非常用発電設備の燃料補給ルートをあらかじめ確保しておくという新たな課題も明らかになった。
 顕在化してしまった数多くの課題を踏まえて、あらためて大規模災害時にも強い、電力供給システムの再構築を図る必要がある。