2011年125日号

再可エネ全量買取制度導入へ法整備  住宅用以外は全量買い取り
 経済産業省は、1月24日に電気事業分科会を開催し、2つの小委員会がまとめた再生可能電力の全量固定価格買取制度や、それに伴う電力事業制度の見直しについての報告を受けた。
 報告を行ったのは、買取制度小委員会と制度環境小委員会。買取制度小委員会は、昨年経産省が示した全量買取制度の大枠に従って、制度の詳細設計に向けた議論を行い、@住宅太陽光発電については現行の余剰電力買取制度を残し、他については基本的に全量買取制度に移行するAバイオマス発電については、既存用途の原材料として供給不足や価格高騰が起きないことなどを条件に買い取り対象の詳細条件を決めるB買い取り対象となる再生可能電源については、的確性について担保する検証制度を設けること。また、買い取り価格は住宅用の太陽光や風力以外は一律価格とし20円を軸に、買取期間は15年を軸に具体的な制度設計を行うことなどを提言した。また、小型風力については、太陽光発電と同様の扱いとして、設備の認証制度を設けるほか太陽光と同様の余剰電力買取制度として運用する。
 RPS制度については既定方針通りに廃止し、全量買取制度に移行することとし、買い取り価格や期間についてはRPS設備として運用された期間や買い取り価格を参考にして別途定められる。既存設備を増強(リパワリング)する場合は、新設設備と見なして買い取り対象とされる。
 新制度については、再生可能電源の普及状況や制度の運用状況などを判断し、機動的に制度の見直しを図ることが必要だとされ、制度開始後3から5年をメドに検証・見直しを行うことも盛り込まれている。
 また、再生可能電源の大量導入を円滑に進めれうため必要な電気事業制度を見直す観点から検討を進めた電気事業制度の改革では、@全量買い取りを行うのは電力会社のほか特定地域に電力供給を行う特定電気事業者や特定規模電気事業者(PPS)A国が定める買い取り価格は「基準価格」と考え、それ以上の価格での買い取りや期間や電力量を分割する買い取りも認めるB全量買い取りのほか卸供給も行える選択制とするC買い取りコストは電気料金に上乗せする付加金(サーチャージ)として、全需要かが公平に負担するよう地域間調整を行って決める。また、再生可能電源の導入を円滑に進めるため、ネットワークへの優先接続や優先給電の規定を設けることや、再生可能電力の有効活用の手段として地産地消型の小規模ネットワークの普及拡大を目指して、特定電気事業制度の規制緩和を行い、供給区域内の安定供給を図る手段として外部からの補給電力の利用を可能にすることや、余剰電力の託送などについても認める方向で規制緩和する。
 分科会の結論を受けて、経産省では、12年度からの新制度の導入に向けて、今通常国会で必要な法整備を図る。


「太陽光サーチャージ」は1kWh当たり1銭から7銭
 電力10社は、2011年度から電力料金に上乗せされる、太陽光発電の余剰電力買取制度による「サーチャージ」料金について、経済産業省に認可申請を行った。
 09年度秋に開始された現行の余剰電力買取制度では、買い取りコストを翌年度の電力料金に上乗せして回収する仕組みとなっている。回収初年度となった10年度は買取期間が短かったことから「0円」と算定され、実質的には11年度が最初のコスト回収年度となる。
 申請されたサーチャージ料金は、各電力会社ごとに太陽光発電の設置状況が異なるため、1kWh当たりの単価では北海道、北陸の0.01円から九州電力の0.07円までの幅がある。電力会社が標準家庭モデルとして設定している1カ月あたりの家庭の負担額は、2円から21円までの幅がある。
 申請されたサーチャージ料金は1月25日に開催される買取制度小委員会の審議によって決定する手続きが踏まれる。会社ごとの申請サーチャージ料金は次の通り。
▽北海道電力(0.01円)▽東北電力(0.03円)▽東京電力(0.03円)▽中部電力(0.06円)▽北陸電力(0.03円)▽関西電力(0.03円)▽中国電力(0.06円)▽四国電力(0.06円)▽九州電力(0.07円)▽沖縄電力(0.06円)


北九州水素タウンプロジェクトが始動 純水素型燃料電池も実証
 経済産業省は、将来的な水素社会の構築に向けた「水素利用社会システム構築実証事業」の一環として行う「水素タウンプロジェクト」の運用を開始する。
 プロジェクトは、北九州市で市街地を経由するパイプラインによる水素供給と本格的なコミュニティ規模での純水素燃料電池の運転実証を行う。新日本製鐵の工場で製造した水素を用いる「北九州水素ステーション」から、近隣の集合住宅・戸建住宅や商業施設、公共施設までパイプラインを敷設し、家庭用・業務用の純水素型燃料電池の実証運転を行う。
 実証運転では、パイプラインによる水素供給の事業化の観点から必要となる「安定供給」、「安全性確保」、「適切な課金方法」の見通しを得るため、水素を安全に利用するための付臭・脱臭技術、将来水素に課金するために必要となる水素ガス計量システム、純水素型燃料電池の運用性等について、総合的に検証する。一般家庭、商業施設、公共施設といったコミュニティレベルでの本格的な実証運用は世界で初めてのもの。
 経産省では、燃料電池バスや燃料電池自動車が高速道路を定期運行する「水素ハイウェイプロジェクト」とパイプラインを通じて一般家庭等に供給した水素を利用する「水素タウンプロジェクト」を実施し、水素を安全・簡便に製造・輸送・貯蔵・利用する社会的な実証事業を行っており、先月スタートした水素ハイウェイに引き続いて、水素タウンプロジェクトについても実証運用が開始される。


電力CO2排出係数、国内クレジットでも低減
 経済産業省と環境省は、電力会社が供給する電力のCO2排出係数について、国内の認証制度に基づく国内クレジットについても反映できることにする。これまでは、電力会社が購入する京都議定書に基づくCDMなどのクレジットについては、実際の排出量からマイナスできることにしていたが、国内での排出削減事業として取り組まれたクレジットについても同様に利用できるようにする。
 具体的には、政府の関係機関が制度運用を行っている「国内クレジット」制度や「J−VER」制度によるクレジットについても電力会社が販売する電力の排出係数に反映できることにする。クレジットを利用して低減された排出係数は「調整後排出係数」として公表されるが、使用されたクレジットの種類については公表されない。


その他の主な記事
・再可エネ優先取り扱いをルール化
・水素インフラ整備で13社が共同声明
・ガス制度改革で報告書
・東京都がトップレベル認定申請状況を発表
・東京都が中小事業者のCO2排出状況を集計
・宇部興産とマクセルがリチウム電池事業で合弁
・京セラが家庭用太陽光の大規模化に成功
・三菱グループらがインドでスマートコミュニティを建設
・産総研が低温作動のSOFCを開発
・神戸製鋼と電力3社が水冷媒の冷凍機を開発
・川重が鉄道揚陸電池システムを実証
・双日がナミビアで風力事業に参画
・中国電力が回収CO2でコンクリートを製造
・10年度第3回中小水力研修会
・J−VER、対象プロを追加
・LPG国際セミナー2011開催迫る
・新エネセミナーin大阪
・東京都が太陽熱テイクオフ大会
・東京都が中小企業の温暖化対策でセミナー
・名古屋でエネルギー講演会  etc.


<AES連続インタビュー>
・電気自動車が中心のエネルギーマネジメント
(東京工業大学特任准教授/三菱商事地球環境事業開発部門 CEOオフィスR&Dユニット産学官連携チーム次長 中井康博氏)
 商社が参画する電気自動車を中心としたエネルギーマネジメントシステム。交通と電力という別個のエネルギー分野の接点に電気自動車がある。電気自動車が社会をどのように変え、どのような新しいビジネスを作るのかをテーマに、東京工業大学と連携を行っている三菱商事の中井康博准教授に話を伺った。




シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流 E
 =エネルギー専門家の必要性=
 (和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏)
・カーボン・マネジメント入門(45)
 =環境政策はCOP17待ちなのか=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)




コラム
・発電論評<全量買取制度と環境価値>
・ちょっと一休<山下努さんの出版記念>
・青空<情報の真贋>
・一筆啓上<システム輸出の主役は民間>


全量買取制度と環境価値【発電論評】

 再生可能エネルギー電力の全量買取制度の12年度から導入に向けて準備が整ってきた。再生可能エネルギーの全発電量を1kWhあたり20円、15年間程度買い取ることを電力事業者に義務づけ、電力料金に付加してコスト回収するというのが経産省で取りまとめられた原案。家庭用の太陽光発電は余剰電力買取制度が継続される。
 全量買取制度では、再生可能エネルギー電力の環境価値も電力に付随して電力会社に買い取られることになるので、発電者側には環境価値は残らない。
 特に問題はないと思われるが、環境価値だけを取り出して流通させてきた例えば、グリーン電力証書などは影響を受けることになる。新制度で再生可能エネルギー電力のほとんどが電力会社に環境価値ごと買われてしまうことになると、証書化する電源がそもそも無くなってしまう。そうなるとグリーン電力証書を使ってCO2削減を行ってきた需要家の取り組みは手段を失ってしまうことになる。
 一方で、全量買取制度には、電力コストの負担増を伴うことから電力多消費型の産業需要家から特に反対の声が強い。他方で、高くてもよいから風力や太陽光などの自然エネルギー電力を使いたいという需要家も少なからずいる。
 全量買取制度の導入に特に反対するものではないが、こうしたそれぞれの需要家に選択の余地も残す方法はないのだろうか。例えば、全量買取制度で買い取った電力を電源別に販売するメニューを作ればどうか。電源ごとに発電や調達コストに見合った電源種別ごとの料金メニューを作り、需要家が選択できるようにする。現状の全ての電力を混合する「全量ミックス」や自然エネルギーだけに限定する「自然ミックス」、また、原子力や水力、火力、太陽光、風力など特定電源だけを指定して購入できる「電源指定」メニューもあればいいかもしれない。そうしたメニューが普及していくと究極の「北陸の風力」や「九州の太陽」などの電源の地域ブランドも生まれるかもしれない。
 たとえ一部でもそうした電気がプレミアム価格で販売できるようになると需要家が一律に負担しなければならない「サーチャージ」の減額も可能になり、負担増の反発も少しは抑えることができるのではないか。逆に、CO2価値の低い火力発電は環境税の負担分を上乗せしてしてもいいかもしれない。
 自然エネルギー電力は出力が不安定で、希望通りの電力量が供給できないという危惧もあるが、1年間単位での発電量は余り大きな変動はないので、年間の販売電力で契約する仕組みにすれば可能ではないかと思われる。
 再生可能エネルギー電力を円滑に利用する仕組みの一つとして考えられるのではないか。