2011年 新年特集号
2010年12月25日 2011年1月5日 合併号


再可エネは15年間20円で買い取り 小委が報告書
 経済産業省は、12月22日に買取制度小委員会を開催して、検討している再生可能エネルギーの全量買取制度の詳細について中間報告を行った。
 小委員会では、6月の制度の大枠に従って、買取制度の詳細設計の議論を始め、買い取り対象や買取期間、価格、またRPS制度の取り扱いなどについて議論を重ねてきた。その結果を、詳細設計を法案としてまとめるための提言という形で一部の修正箇所を残して取りまとめた。
 買い取り価格については、具体的な踏み込みを行わず、大枠で示された15円から20円と幅を持って示されていたものを20円に、また、買取期間についても15年を基本として考えるべきだと提言した。そのほかの論点については、ほぼ大枠で示されたフレームの内容を再確認したものにとどまっている。
 RPS制度については、買取制度の導入と引き替えに廃止すること、その際にバンキング電力については補償措置を設けないことなどを提言として盛り込んだ。
 また、太陽光発電については、現在の余剰電力買取制度を継続すること、現制度の対象外の大規模な太陽光や事業用太陽光については、再生可能エネルギーと同様に全量買取制度の対象とすることなどと整理された。
 また、小型の風力発電については、家庭用などとして導入されることが予想されるため、家庭用の太陽光発電と同様に余剰電力買取制度として太陽光と同様の取引が行われるようにする。その際に、系統接続を円滑にすることや不良製品を排除するなど導入者保護の観点から、太陽光発電でも実施されている民間の第3者認証制度をスタートさせることなども盛り込まれている。
 報告書は、パブリックコメントの後、経産省内で法案化に向けて具体的な制度設計を行い、12年度からの新制度への移行が目指される。


排出量取引の制度設計は見送り
 環境省は、12月22日に地球環境部会を開き、排出量取引制度の制度設計を委託していた小委員会の報告を受けた。
 小委員会は、部会が温暖化対策基本法案の成立に向けて中長期ロードマップと排出量取引の制度設計に向けて制度案の検討を行うために設置していた。
 国会で継続審議となっている温暖化対策基本法案で、25%削減の中期目標の成立を前提に、目標達成の新たな政策手段として環境税の導入と再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、それとこの排出量取引制度の導入を新たな主要3施策として位置づけている。
 小委では、これを受けて具体的な制度設計に着手したが、産業界側委員の制度導入に対する慎重な意見もあり、制度によるメリットやデメリットなど制度の課題を中心とした議論が展開された結果、3つのオプション案を検討課題として整理した上で、具体的な制度設計先送りし、判断を地球環境部会に委ねていた。
 同日の部会では、小委員会の検討結果の報告を受け委員の意見が聴取されたが、制度導入の前提となる基本計画が成立していないことや、制度導入に慎重な意見が政府部内にもあり、基本法が成立していない状況などを踏まえて、基本法の成立をまって、具体的な制度設計の検討を行うことにした。


2011年度のエネ需給はほぼ横バイ エネ研が需給見通し
 日本エネルギー経済研究所は、2011年度までの短期エネルギー需給見通しを公表した。世界経済は回復テンポが鈍化傾向が見られるが中国などアジア地域の回復振りが突出しており、日本も製造業を中心に回復傾向にありエネルギー需要も総じて増加していると分析。11年度は、国内景気は緩やかに拡大するが、エネルギー消費は横ばいから微減すると予測している。

新年企画特集〈天然ガス「新時代」の事業戦略〉
  昨年6月に改定された「エネルギー基本計画」では、温暖化対策の強化のため化石燃料の天然ガスへのシフトが唱われ、安定供給の確保、産業部門の燃料転換、コージェネレーション利用などを推進すべきとされた。燃料転換部門では、ボイラーや工業炉などの需要設備については、2020年までにガス比率の5割以上に、またコージェネレーションについても、20年度までに現状から5割以上の増加となる800万kW以上の導入目標が目指される。エネルギーの低炭素化、それに伴う化石燃料の「高度利用の実現」に向けて、今後、産業用・業務用分野でのガス事業をどう展開していくのか。また、それを支える設備メーカーはどう見ているのか。東京ガスと大阪ガス、川崎重工業の3社に聞いた。
・記事の構成
 -部門間横断組織でスマート市場に参入<川崎重工業・代表取締役常務取締役 ガスタービン・機械カンパニープレジデント 浅野雄一氏>
 -総合エネルギーソリューションをワンストップで<東京ガス・代表取締役副社長執行役員 エネルギーソリューション本部長 村木茂氏>
 -「効用を売る」エネルギーサービスを<大阪ガス・取締役常務執行役員 エネルギー事業部長 久徳博文氏>

新年特集
・新年の分散型エネルギー市場の課題(スマートシティ構築へリーダーの出現に期待)<柏木孝夫東京工業大学ソリューション研究機構教授>
・関係団体・企業の新年の取組 <年頭所感>
 日本ガス協会/省エネルギーセンター/エルピーガス振興センター/天然ガス導入促進センター・エネルギー高度利用促進本部/日本LPガス団体協議会/都市環境エネルギー協会/日本電設工業協会/日本風力発電協会/エネルギーアドバンス/大阪ガス/東邦ガス/ヤンマーエネルギーシステム/ハタノシステム etc. 順不同

シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流 D
 「米国と中国に地球の未来を任せられるか」
 和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏



コラム
・プリズム<スマートコミュニティ実証の実態>
・ちょっと一休<高校の後輩のハープ>
・青空<2011年の年が明けた>


新年の分散型、新エネルギー市場を展望する
〈分散型が実現する低炭素エネルギー社会 −システムはハイブリッド型に−〉


【2011年の市場展望】
 2010年は、環境エネルギーに向けて大きな舵を切った年であった。
 昨年6月に取りまとめられたエネルギー基本計画を中心として、エネルギーの低炭素化に向かう方向性がはっきりと示され、今後利用できるエネルギー源としては再生可能エネルギーと原子力、それと天然ガスなど一部の化石燃料に限られるということが明らかになり、分散型エネルギーシステムに新たな役割が与えられることになった。
 2011年の国内エネルギー市場は、ますます、環境色を強めながら展開していくことになると思われる。基本的な方向性としてはエネルギー基本計画や新たな温暖化対策3点セットを中心に昨年引かれた基本的なレールに従って進むということになりそうだ。

 温暖化対策基本法の成立にはメドが立っていないとはいえ、ポスト京都の目標として掲げた25%削減という中期目標をどのように達成していくのか具体的な道筋が示される年になる。新たな国内対策としては、環境税と国内排出量取引制度、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の3施策が温暖化対策の主要な追加施策として位置づけられており、新年はこれら3施策の具体的な内容が明らかになってくる。
 3施策の内、環境税については石油石炭税に税率を上乗せする形で11年度から導入する方向がきまった。固定価格買取制度は、風力発電や大規模太陽光などを含めた全量買取制度として12年度からの導入が目指されており、11年度中に法整備が行われる。買取制度によって、どの程度再生可能エネルギーの拡大に弾みが付くのか、はっきりとしない面がある。新制度は10から15年程度で導入コストが回収できる水準で価格設定されることになるが、制度の導入を見越して関連の補助制度が大幅に縮減されるためだ。新制度が、再生可能エネルギーの拡大に向けて思惑通りに効果を発揮できるのかどうか、多くの疑問が残されている。
 もう一つの排出量取引制度についても、導入によってそれほど大きな削減効果が期待できないといってよい。排出量取引制度の具体的な姿はまだ見えない状況で、政府内でも制度の詳細を詰め切れていない。いずれにしても、ポスト京都の国際的な枠組みが決まらない中では、国内対策を優先させるという雰囲気は薄れており、年末に予定されているCOP17を経ないと、具体的な内容は決まりそうもない。
 これらの温暖化対策については、いずれもが料金の値上げにつながるものとして需要家の立場、つまり追加のコスト負担を迫られる立場からは制度導入への抵抗も大きい。いずれにしても今後の温暖化対策は、規制色を強めながら展開されることになるのだが、さらにエネルギー価格の上昇は日本経済の再浮上の足かせになるのではないかという懸念も示され、制度設計の難しさが浮き彫りになってきている。
 エネルギー利用の規制色が強まる中で、導入支援については買取制度に集約されてしまうことになるが、一方で掲げられている2020年に一次エネルギー供給の10%以上を再生可能エネルギーにするという目標を、果たして買取制度だけで達成できるのかどうか大いに疑問が残るところではある。
 しかしながら、制度の導入は12年度からであり、目論んだ通りの成果が上がらなかった場合、その見直しはさらに数年後ということになるのであれば、とりあえずは新制度の成果を見守るしかないが、いずれ追加的な促進措置が必要となることは目に見えていると思われる。新年の市場は、そうしたエネルギーの低炭素化に向けた新たな導入促進制度の最終的な整理が進められることになる。


【再生可能エネルギー】
 買取制度の導入による促進効果と補助制度の大幅な縮減という相反する政策展開によって市場は混乱し、時期制度に向けた準備の年と言うことになりそうだ。
 風力発電:風力については、10年度までに国内に300万kW導入するという、かつての導入目標は達成できないままに終わってしまった。
 新年もRPS制度の廃止と固定価格への移行の準備とで、明け暮れることになりそうで、環境アセスの義務づけなど新たな規制強化の動きや、相変わらず系統連系問題も抱えており、当分の間は大幅な拡大は望めそうもない。次世代市場として期待される洋上展開だが、これについてはまだ実証段階に止まっており、導入に向けた環境整備が終わったとは言いにくい状況が続いている。
 太陽光発電:太陽光については、補助制度も買取制度も継続されることになっており、市場も現在の好調さを当分は継続することになるのではないか。
 太陽光発電の国内市場は、手厚い補助制度や買取制度の選考実施などの手厚い支援制度を背景に家庭用を中心に拡大している。現在太陽光発電の補助制度は国の補助制度に加えて主要自治体では国の補助制度に上乗せする形のものが実施されており、太陽光の急激な普及に貢献している。
 今後の太陽光発電の市場を展望するとき、新たな市場として普及の遅れてきた業務用市場の拡大がようやく期待できる段階になってきた。その後押しとなるものが、買取制度の導入だ。
 新制度は、家庭用については余剰電力買い取りを継続するが、他の再生可能エネルギーと同様に発電電力の全量買い取りが行われる。これによって、余剰電力が発生しなかった工場やビルなどに導入される太陽光も対象となり、購入する電力料金と売電する電力料金の差額が導入コストの回収に回せることになる。発電電力の環境価値は購入した電力会社側に移ることになる仕組みだが、太陽光で発電しているPR効果が損なわれることはないので、工場や事業場などで大量の太陽光発電の導入の大いなる追い風になると思われる。

【コージェネレーション】
 太陽光発電などの分散型の再生可能エネルギーシステムの登場によってコージェネレーションシステムにも新たな役割が与えられようとしている。太陽光とのダブル発電という言葉もすっかり定着してきた。再生可能エネルギーの出力調整用としてコージェネの有効性が改めて認識されてきているということだ。
 また、化石燃料の中でもCO2排出量が少ない天然ガス利用の拡大が目指される中で、その高効率利用の観点からもコージェネ拡大の機運が高まっている。
 今後、従来のようにビルや工場に単独で導入されるよりも、再生可能エネルギーなど複数のシステムを組み合わせたハイブリッド型が指向され、単独の施設で完結するという自家発型から複数の施設や地域内で電力や熱を融通しあう面的なハイブリッド型としての展開が期待できると思われる。
 従来型のエネルギーは電力会社などエネルギーを作り供給するものと、それを購入して消費するという一方通行だったものが、太陽光発電によって家庭でエネルギーを創り送り出すという新たな形態が急速に広がろうとしている。
 それは、これまでの電力エネルギーは発電所から需要先までの一方通行の「直流型」であったものが、需要側が過不足をコントロールし電気を受け入れたり送り出したりする「交流型」へと構造変化するというということだ。かつては、電力会社は工場などの大規模な自家発電力が系統側に逆潮流することには極めて慎重で、実質的には逆潮流を拒んできたという側面もあったが、家庭用の太陽光発電が契機となって、電力ネットワークの双方向利用に道が開かれようとしていることは画期的なことだと言える。
 そうした双方向型のネットワークを可能にする技術として最近急に注目を集めているものが、スマートネットワークである。しかしながら、そうしたエネルギーの双方向時代に対応できる姿からはほど遠い、一方通行型の現在のネットワークを双方向型に作り替えるには莫大なコストと時間が必要になるため、短期間にネットワークのスマート化を実現するには、必要に応じた規模の地域のマイクログリッドを作り、それを既存の電力ネットワークにつなげるということが現実的な対応だと考えられる。再生可能エネルギーの受け入れを考える上でもその方が極めて効果的である。
 現在行われているスマートグリッドの実証では、そういう方向性はまだ打ち出せてはいないが、ネットワークのスマート化を現実的な視点で考えていく中で必然的にそうした方向が目指されるようになると思われる。

【新たな電力市場】
 現在国内の電力市場はピークを過ぎていると言われる。つまり電力需要は右肩上がりの時代は既に終わっているということだ。こうした中で、新たな電力市場が形成されつつある。それは、電気自動車の出現であり、その充電用という新たな電力市場が形成されようとしている。
 電気自動車の充電用の電力には、もちろん従来型の系統電力を供給するのが最もありきたりだが、自動車の低炭素化を目的に導入される電気自動車に石炭や石油などによる電力は使いたくないという考えから、電源には太陽光を使うという試みが既に始まっている。駐車場や建物の屋根や屋上に太陽光発電を設置して充電設備の電源にする。あるいは、遠隔地で発電した太陽光の電力を託送して使うということもある。こうすることで、電気自動車はまさにCO2排出ゼロの移動手段とすることができる。こうした電源の低炭素化へのこだわりが、分散型の低炭素電力市場を新たに拡大する原動力となることが大いに期待できる。

 これまで展望してきたように、新年の分散型エネルギー市場は、太陽光発電と電気自動車、マイクログリッドの研究開発などの進展が期待できる。燃料としては、バイオマスと天然ガス利用の拡大を目指す動きも、より顕在化してくると思われる。
 市場でより強く求められてくるのは、低炭素であることは最早当然であり、低炭素であってかつ低コストであるという両立が求められてくる。これまでは新エネルギーが割高なのは仕方がないという言い訳がある程度許されてきた面もありるが、今後、本格的な普及を目指す市場では「安くていいもの」を提供しあうという、普通の市場競争が求められる段階に入ってくると言えるのではないか。
 補助制度も大幅に縮減される中で、政策の後押しはまだ続くとしても、低コスト化がシステムを提供するメーカーや事業者に課される最大のテーマになってくると総括できる。