2010年1025日号

排出量取引、1万トン以上の大規模排出企業にキャップ 排出枠は無償配布に
 環境省は、10月18日に国内排出量取引制度小委員会を開き、既に示されている3つの制度オプション案の評価を行うとともに、排出規制を行う事業者を年間1万トン程度以上の大規模排出事業者として、排出枠を無償配布することを制度試案として今後の議論を進めていくことを提案した。
 また、温暖化対策として導入を目指している環境税と排出量取引制度、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の3つの施策によるポリシーミックスについて、それぞれの役割などを示して意見を求めた。
 今国会に再提出された地球温暖化対策基本法案に盛り込まれている3つの施策が導入されることを前提として制度設計を進める方針をを示したもので、取引制度については、@大規模排出源に対して排出量の上限を設定することで公平で透明な削減の取り組みが担保できるA義務達成の手段として排出枠の取り引きも選択できることで履行手段の多様性、柔軟性が高められるB費用の少ない排出削減手段が選択されることにつながり、社会全体での効率的な削減が進み、低炭素型の技術や製品の開発が促進されることなどを制度導入の効果として示した。
 小委員会では、委員として参加している東京電力、トヨタ自動車、東京ガスの3社からの意見書が提出され、「制度の導入意義やその効果、他の施策と合わせた国民生活や産業への影響について不明確なまま議論が進められていることに危機感を持っている」として、制度が満たすべき大前提を@経済の成長A雇用の安定Bエネルギーの安定的な供給の確保。また、制度の果たすべき役割としてC地球規模の排出削減への寄与D技術開発・普及の促進ELCA的観点からの事業者の貢献の促進。さらに、制度設計に当たり配慮すべき事項としてF海外企業を含めた企業間の公平性G効率的な競争の確保H透明性の確保Iマネーゲームの防止J行政コスト・認証コストなど、CO2削減に寄与しない費用の最小化の11項目について、制度設計にあたっての評価基準とすることを求めた。
 小委員会の議論は、排出枠の設定は行わず、制度の各論の議論に移っており、対象ガスをCO2とすることや対象期間を20年までとして、規制を段階的に行うことなどが確認された。


経産省はボトムアップ型の取引制度を提案
 経済産業省は、排出量取引制度について検討している政策手法ワーキンググループの会合で、京都議定書の目標達成計画で産業界が取り組んだ自主行動計画を発展させる形で、国内の排出削減の取り組みを発展させるという「ボトムアップ型」の取り組みを提案した。
 環境省などがEUの排出量取引制度などを参考に国内制度として提案しているキャップ&トレード型の排出量取引制度を「トップダウン型」と位置づけ、それに対して、事業者が自主的に排出削減を宣言する自主行動計画型の取り組みを制度化する方が、より有効な削減効果が期待できるという考え方。自主行動計画では目標未達成の場合や、アウトサイダー企業に対する削減担保策がないなどの批判があることに対しては、削減目標を社会契約として公的なものとするなどの考え方が示された。


京都市が地球温暖化対策条例を改正し公布
 京都市は、地球温暖化対策に特化した全国初の条例である「京都市地球温暖化対策条例(2004年12月公布)」を改正し、10月12日付で公布した。
 温室効果ガスの総排出量を1990年度比で、2020年までに25%削減することや30年までに40%削減するという削減目標などを新たに盛り込んでいる。改正条例では、京都議定書が採択された都市にふさわしい削減目標を持つことをうたい、持続可能なCO2排出量を90年度比で80%削減することを掲げ、当面の削減目標として20年度25%、30年に40%とすることを盛り込んでいる。
 具体的な対策としては自動車の共同使用の促進や森林整備・森林資源の活用、廃棄物のエネルギー資源化、公共施設への再生可能エネルギーの導入などをあげ、また、自動車の低炭素利用を促進するため、CO2を排出しない自動車の販売実績の提出を販売事業者に義務づけることや、大量排出者に対して排出削減計画を義務づけ、削減事業の実施や再生可能エネルギーの活用などを求めて行く。改正条例は一部を除いて11年4月から施行される。


再生可能熱利用、研究会で検討始まる
 経済産業省は、再生可能エネルギーの熱利用の促進を図るため「再生可能エネルギー等の熱利用に関する研究会」(事務局・産業技術総合研究所)を設置して、再生可能エネルギーによる熱利用の実情や可能性について検討を始めた。10月18日に第2回の会合を開き太陽熱、バイオマス、バイオガス、雪氷熱など各分野での熱利用の実態やポテンシャルなどについて業界団体などからヒアリングを行った。
 研究会は、燃料電池や、コージェネ地中熱、大気熱工場廃熱などの残された再生可能エネルギーの利用状況などについて個別にヒアリングを進め熱証書制度などの利用促進策や熱源ごとの課題整理を進め、年度内に検討結果を報告書に取りまとめる。


その他の主な記事
・中長期ロードマップで排出量試算を見直し
・買い取り小委を開催、対象電源や範囲など
・カーボンオフセット認証案件3件を追加
・建築設備技術会議が11月16日から
・産総研が関西でフェア
・千葉県が廃棄物処理でシンポ
・中長期ロードマップで排出量試算を見直し
・ソーラーフロンティアがGEと提携
・ソーラーフロンティアがIBMと共同でレアメタル不使用の太陽電池を開発
・ヤマト運輸が宅配トラックをEVに
・丸紅が米国で大規模洋上風力の送電線建設に参画
・宮古島のマイクログリッド実証、メガソーラーの建設終える。
・三菱化学がリチウムイオン電池電極剤の製造能力を増強
・三菱重工が舶用ディーゼルで排ガス対策
・三洋電機が次世代エネモデル工場
・産総研と明電舎が中国で低温脱硝装置を開発
・太陽電池とリチウム電池でソーラー街路灯
・東芝が中国電力のメガソーラーを受注
・日立がジョンソンと提携
・11月24日に風力エネルギーシンポ
・11月2日に21世紀のエネルギーを考えるシンポ
・スマートエナジーが無料セミナー
・経産省が再可エネシンポジウム、買取制度を説明
・建築設備技術会議が11月16日から
・新エネ財団がエコプロで新エネセミナー
・神奈川県 地球温暖化大賞を募集
・神奈川県が太陽光充電スタンド整備で補助
・千葉県が廃棄物処理でシンポ  etc.


<インタビュー>
・スマートハウスや集合住宅での熱融通に取り組む
(東京工業大学特任教授 荒木和路氏)
 スマートという言葉が使われるのは、グリッド(送電網)に対してだけではない。むしろ情報技術を駆使して、あらゆるものがスマートになる。電力だけではなく熱エネルギーも情報か技術によってスマート化することで多様なサービスの可能性が広がるる。スマートハウスからスマートコミュニティーまで、研究者はさまざまなレベルのスマートを考えている。東京工業大学のAESセンターの取り組みを紹介する3回目のインタビューは、荒木和路特任教授にスマートグリッドを拡張した概念である「スマートエネルギーネットワーク」をテーマに聞いた。




シリーズ連載
・エネルギーと世界経済の潮流 B
 =再び起こるエネルギー価格高騰に政府の成長戦略はあるのか=
 (和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間剛一氏)
・カーボン・マネジメント入門(41)
 =2国間クレジット制度とは=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)
・キーパーソン
 =太陽光発電で飛行機が飛ぶ=
 (ソーラーインパルス会長 ベルトラン・ピカール氏
  同社CEO兼共同創設者 アンドレ・ボルシュベルグ氏)
・新刊紹介:『「スマート革命」の衝撃 図解スマートグリッド』
 (エネルギーフォーラム編)




コラム
・発電論評<環境と経済の両立が実現できる取引制度に>
・ちょっと一休<ビックリした鈴木忠雄さんの死>
・青空<めっきりテレビを見なくなった>
・霞ヶ関から<エネ特会は一般財源化されるのか>


環境と経済の両立が実現できる取引制度に【発電論評】

 排出量取引制度の導入是非について議論が煮詰まってきている。導入に反対する産業界側と排出規制の仕組みを導入したい環境行政側との溝は埋まりそうもないままに推移している。
 国会に再提出さた地球温暖化対策基本法は、温暖化対策の政策手法として環境税と排出量取引制度、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の3つを新たな国内でのCO2削減対策としている。
 3つの政策手法はいずれもが国内での削減に結びつく施策として考えられている。京都議定書の削減目標のように、海外でのクレジット調達に頼るのではなく、国内での実際の排出削減に結びつけるのが目的ということなのだが、国内で削減することが地球規模ではどの程度の効果をもたらすのか、またエネルギーコストや削減コストが上乗せされる結果、経済にどのような影響をもたらすのかが、まず第一に判断材料とされる必要がある。
 日本の温室効果ガスの排出量はかつて世界の6%程度であったものが、最新のデータでは3%台に減じ、さらに、数年前には目標達成が絶望視されていたマイナス6%という京都議定書削減目標の達成にも目途がついている。日本は削減対策をルールの従って着実に実施した成果が現れているということも忘れないで、これからの制度設計が行われることが望まれる。
 京都議定書の目標達成計画では、産業界は自主行動計画に取り組み、ほぼ目標に見合った成果を上げた。電力業界は電力の排出係数を20%削減するという原単位目標を掲げ取り組んだが、こちらは未達成のままだが、CDMクレジットの購入などで対処した。しかしながら、目標が達成できたのはリーマンショック後の経済情勢の停滞が一番大きい要因なのだとしたら、環境と経済の両立という目標からは不本意な結果だと言える。
 そうした視点で排出量取引制度を見直してみると、制度の導入によって規制を受ける側に必要となる削減コストがどのような形で回収できるようにするのかが制度導入を成功に結びつけるカギとなってくるのではないかと思われる。
 規制を受ける側の産業界側が取引制度に反対する最大の理由は、コストアップにつながるということと、生産量の拡大が排出総量の増加につながる結果、排出枠をオーバーしてしまいかねないということ。つまり現在検討されているキャップ&トレード型の排出量取引制度は環境と経済の両立には結びつきにくいことに強い反発がある。
 だからといって、環境対策がおろそかにされていいわけではない。CO2削減に取り組んだ企業には経済的にもメリットがある、そんな制度設計が求められているのである。