2010.06.15


2010年615日号

エネルギー基本計画案まとまる 2030年に30%超削減
 経済産業省は、エネルギー基本計画案の取りまとめを行った。2030年を目標年度に新たなエネルギー政策の基本方針をまとめたもので、省エネ設備機器や再生可能エネルギーの拡大などの対策を進め、90年比でCO2排出量が30%以上削減できるという姿を描き出している。民主党政権下でまとめた初めての基本計画で、温暖化対策を前提とした低炭素時代のエネルギー需給のあるべき姿としてとりまとめられた。
 基本計画では、温暖化対策の中期目標の20年度については具体的な数値は示されなかった。これについては、中期目標には国際的枠組みなどの前提条件や、国内対策で削減するいわゆる「真水」の量などの不確定要素があるためあえて示さなかったと説明された。
 新たな基本計画は、環境エネルギー分野を成長産業としてとらえ、エネルギー産業の構造の転換を目指し、海外での化石燃料の自主開発比率の2倍程度に引き上げることや国産資源である再生可能エネルギーの大量導入、原子力の稼働率の向上などを通じて、自給率の拡大と低炭素エネルギーを普及させる環境エネルギー産業へと転換させるという方向性を打ち出している。
 また、再生可能エネルギーの拡大については、固定価格買取制度や規制改革、また大量受け入れのための電力ネットワークのスマート化の推進などを主な対策として進める。需要側ではZEBやZEHなどによる低炭素化や次世代型自動車の普及などを目指す。また、化石燃料の低炭素化も進め、天然ガスへの燃料転換やコージェネレーションなどによる高度利用、CCSの導入などを現実的な主な対策として考えている。
 基本計画は閣議決定され、政府の新成長戦略に反映される。


経産省も排出量取引制度案を検討へ
 経済産業省は、地球温暖化対策として導入される国内排出量取引制度について、独自案をまとめる方向で検討作業を始めた。
 国内排出量取引制度については、政府の統合制度が試行されているほか、環境省が先行する形で制度化に向けた検討作業を始めている。
 環境省での検討は、11年度からの導入を前提にキャップ&トレード型の排出量取引制度として、無償か有償かといった排出枠の割当などの具体的な制度設計を行っている。
 しかしながら、制度の導入については産業界を中心に、環境税や再生可能エネルギーの固定価格買取制度など導入が検討されている他制度もあり、排出量取引だけを単独で検討することは議論が先走りすぎるおそれがあるなどの懸念が示されている。
 経済産業省では、こうした産業界の懸念が環境省で進められている検討作業の中では必ずしも反映されないおそれがあることを考慮して、具体的な排出量取引制度について経産省としての考え方をまとめる必要があると判断したもので、議論を広く公開して行う観点から産業構造審議会に政策手法WG(座長・寺島実郎日本総合研究所会長・三井物産戦略研究所会長)を設置して6月10日に第1回の会合を開いた。
 WGでは、成長戦略の議論や産業の国際競争力、雇用や国民生活への影響などの観点から政策手法としての制度のオプション案を提示することを目標として議論を進める。
 同日の会合では、導入することになる排出量取引制度が@省エネ投資を始めとした実際の削減行動に結びつくかA排出量削減に向けた技術革新を促すものかB国際競争力・雇用の安定・炭素リンケージの防止等に配慮した環境と経済を両立させるものかなどを評価の基準として制度案をとりまとめることにした。


川崎重工、低温排水や排ガス利用の小型バイナリー発電設備の製造・販売を開始
 川崎重工は、温排水や排ガスを利用した小型バイナリー発電設備の製造・販売を開始する。80度C〜120度C程度の低温熱源からエネルギーを取り出し発電できる。新たな低沸点媒体を採用したことで、これまで利用できなかった100度C前後の工場廃熱などをエネルギー源として利用できるため、極めて高い経済性が実現できることや排ガスを有効利用して発電することから、CO2排出量も削減できる。
 開発した小型バイナリー発電設備の販売に先駆け、神戸工場で250kW級の小型バイナリー発電設備の試運転を今年4月から実施し、所期の性能を確認した。
 新たに製造・販売する小型バイナリー発電設備は、同社のフロンタービン発電設備で培った技術を活用したもので、新たな低沸点媒体を採用することで優れた環境性能と高い経済性が実現できた。
 システムの主な特長はオゾン破壊係数(ODP)がゼロ、地球温暖化係数(GWP)も非常に小さいこと。また、熱回収効率の大きな媒体を採用したことや直結高速タービン発電機を採用したこと、熱交換器の高性能化により、コンパクトなパッケージ化が実現できた。また、独自に開発した流下液膜式蒸発器を採用したことで、媒体保有量の最小化も実現した。さらに、軸封装置が不要なキャンド型タービン発電機の採用により、媒体の外部漏洩を防止したなど、多くのアイデアや新技術によって製品化が可能となった。
 小型バイナリー発電設備は、工場、ごみ焼却場、下水処理場、発電所等における排熱や地熱、温泉熱水といった分散低温熱源の有効利用を可能とするシステムであり、川崎重工業では今後、50kWから250kWの出力範囲でラインアップ化し、本格的な販売活動を開始する。さらに、新たな低沸点媒体を使用する4MW級までの大型バイナリー発電タービンのラインアップも予定している。


その他の主な記事
・次世代送配電システムWGが始動
・全量買取プロが再開、最終のヒアリング
・川重がウラジオストック向けGTを3台受注
・新日石が岐阜の新エネパークに創エネシステム
・三洋電機が太陽光を中心に欧州でスマートエネ事業を展開
・三洋電機が米カリフォルニア大と提携
・ローソンが太陽光で災害対応型店舗
・三菱重工中国工場でUE機関を製造
・カネカが薄膜太陽光を増産へ
・伊藤忠がGEと共同で米国で風力事業
・日産リーフの予約が6千台超に
・NHKが排ガス対策基準をクリアした中継車用発電機を開発
・日本ガス協会が総会
・LPガス協会が総会
・環境省がJVERで講師の派遣支援
・地中熱利用ヒートポンプの実証実施者を募集
・7月に北海道でコージェネセミナー
・近畿経産局が人材育成プロを募集
・再生可能エネルギーの熱利用調査の委託先を募集
・7月に産総研が研究施設を一般公開
・リン資源リサイクル推進協議会シンポ開催
・グリーンエネパートナーが総会
・7月にGT教育シンポ    etc.


<特集・再生可能エネルギー2010国際会議>
・日本に集う再生可能エネルギーの最新動向を紹介する世界フェア2010の概要
6月27日〜7月2日にパシフィコ横浜で「再生可能エネルギー2010国際会議」が開催される。6月30日〜7月2日には「第5回新エネルギー世界展示会」と「PV Japan2010」の、2つの展示会も開催される。これらのイベント全体が「再生可能エネルギー世界フェア2010」として開催される。開催を前に、共同委員長である黒川浩助・東京工業大学特任教授と「PV Japan2010」の共同主催者(太陽光発電協会との共催)のSEMIジャパンの宮風z子氏、安部尚子氏に、世界フェアの開催意義や見所などについて、インタビューした。



燃料電池新聞の主な記事
・技術研究組合FC Cubic設立
・人とくるまのテクノロジー展2010
・成果報告など中心に第17回燃料電池シンポジウム
・海外ニュース
 -米UTC社のリン酸形燃料電池「ピュアセル・モデル400」がCSA認証を獲得
 -米ローレンスバークレイ国立研究所が白金触媒を代替する金属錯体触媒を開発
 -豪ビクトリア州政府が家庭用燃料電池30台による実証試験を2年間実施
 -米小売大手ウェグマンズが燃料電池パレットトラック50台を倉庫作業用に導入
 -ヨタ自動車が仏でPHEVの大規模実験
 -米デルファイが大型トラック用燃料電池APUの実証試験を開始、2012年に実用化
 -米カミンズ社がSOFCを利用した大型トラック用補助動力装置を開発
 -米CaFCPが燃料電池車の普及プログラムを発表
 -加バラード社が米電力会社のファーストエナジー社の発電所に1千kWの燃料電池を納入
 -米H2テクノロジーズグループらが水素を燃料にした芝刈り機を開発
 -米グリッドシフト社がガソリンと同等のコストを実現するアルカリ水電解装置を開発
 -韓国起亜自動車が2015年までに燃料電池自動車の生産台数を1万台に引き上げ
 -ハルピン工科大学とPNNLがギ酸から効率的に電気を取り出す白金・金触媒を開発
 -英フューエルセルトゥデイが調査レポート「ポータブル燃料電池市場2010」を公開
 -米プラグパワー社が燃料電池事業を再編、物流機器分野に集約・特化
 -米ブラウン大学らがパラジウムナノ粒子をコアに、鉄・白金をシェルとする触媒を開発
・燃料電池フラッシュニュース
 -NEDOと独NOWが燃料電池・水素分野で情報交換に関する覚書を締結
 -トクヤマがDMFC型などの電解質膜の試作ラインを新設
 -デュポンが耐久性を20倍に向上させたフッ素系電解質膜「XL-100」の販売を開始
 -住友金属工業が700Wのスタックで金属セパレーターの650時間運転を実証
 -ポーライトが米ブルームエナジー社向けに焼結セパレータの量産供給を計画
 -田中貴金属工業が刈谷市に自動車用貴金属触媒の技術開発拠点を設置
 -日産自動車が2013年に電気自動車を8車種品揃え、ゴーン社長「量産で低価格に」
 -産総研がリチウムと水の反応を制御してクリーンな水素を製造するコンセプトを実証
 -トヨタが米テスラと電気自動車や部品、生産システムの開発などで業務提携
 -日本計画機構が下水汚泥から水素を取り出す汚泥処理プラントを実用化
 -茨城大と原子力機構が重水素を燃料とする高効率な燃料電池を開発
 -日清紡ケミカルの燃料電池セパレーター最新工場が千葉で稼働
 -トヨタ自動車の増田常務、燃料電池車の価格設定5万ドルも可能と語る
 -経済産業省の行政事業レビュー、燃料電池自動車と水素ステーション実証事業を見直しと判定
 -日立造船とバルチラ、SOFC燃料電池システムを共同開発
 -菊池製作所が燃料電池向けマイクロポンプを開発      etc.


シリーズ連載
・カーボン・マネジメント入門(32)
 =環境ビジネスの本質=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)
・世界を読む(22)
 <京都議定書はまだ続くのか>
・新刊紹介:「資源を読む」
 <柴田明夫・丸紅経済研究所編 日本経済新聞出版社>


コラム
・発電論評<排出量取引制度の基本的な考え方>
・ちょっと一休<梅屋庄吉さんの「富貴在心」に感激>
・青空<沖縄を見捨てるな!>
・ちょっと一言<スマートメーターの可能性>


国内排出量取引制度の基本的な考え方【発電論評】

 国内排出量取引制度の導入に向けた議論が活発化している。通常国会で審議中だった温暖化対策基本法案は審議未了で廃案となるが、次期以降の国会に再提出される見通しだ。
 基本法案には国内排出量取引制度の法施行後1年以内の導入が明記されており、それに向けて環境省がいち早く制度設計の議論を始めているのに対して、経産省でも独自の制度案の検討を始めた。昨年の中期目標の策定にあたっても両省はともに独自案で議論を戦わせた経緯がある。
 基本法案ではキャップ&トレード型の制度を導入することとされている。環境省側の議論では、無償割当とするのか有償割当とするのかといった排出枠の設定など具体的な制度設計が行われているのに対して、経産省が産構審で始めた検討では、そもそも市場化された排出量取引制度の効果を疑問視する意見が多く示されており、制度を導入する場合でも環境と経済成長の両立を可能とする範囲での制度設計の必要性が指摘されている。
 排出量取引制度は、排出削減を自ら行えない企業などに、その代替手段として他者の削減実績をクレジット化して売買することで、低コストで効率よく全体での削減効果を生み出そうという仕組みであるが、取引市場で金融商品化してマネーゲーム化してしまう懸念や海外クレジットを取引対象とすれば国内での削減には結びつかないなどの多くの懸念や疑問が示されている。
確かに、海外クレジットを認めるということになると、国内での削減対策がおろそかになるという考えにはうなずけるものがある。省エネの進んだ国内での削減コストは割高だといわれる。それに対して安価で大量の海外クレジットが「輸入」されると国内での排出削減事業はコスト的に駆逐されてしまうということになりかねない。
 国内での排出削減効果を上げるための一つの手段として制度の導入が必要だとしても、海外の排出量取引市場とは全く独立した閉ざされた国内市場の形成を目指すべきだという考え方に賛同したい。国内での削減目標をまず決めて、それを税や支援制度でまかなえる部分と取引制度が担うべき部分を切り分けて、実際の排出削減効果が期待できるような制度にする必要がある。
 排出量取引制度の導入は、クレジットを金融商品化して取引市場を活性化させることが目的なのではなく、国内での削減効果をあげるための手段の一つだということを再度思い起こして、再生可能エネルギーや省エネ努力、化石燃料の高効率利用など、実際の削減効果が期待できるまじめなクレジットが取り引きされる制度となることが望まれる。