2010年42555日合併号

エネルギー基本計画で見直しの基本方針示す
 経済産業省は総合エネルギー調査会の基本計画委員会(委員長・黒田昌裕東北公益文科大学学長)で、エネルギー基本計画見直しにあたっての基本方針案を審議しとりまとめた。
 示された基本方針は、原子力や自主開発権益のある化石燃料も含めた「自主エネルギー比率」を2030年には現状のほぼ2倍の70%程度まで高め、欧米各国並みにすることや、メタンハイドレートなどの海洋資源開発を進めるなどエネルギー資源の国産化率の向上を大きな目標として掲げたことが特徴。また、「一層の省エネや電力供給システムの低炭素化の徹底を前提にゼロエミッション電源比率を約70%」に高めることを目標として、再生可能エネルギーの導入拡大や、化石燃料の高度利用、電力ネットワークのスマート化などを促進することを掲げる。
 化石燃料の高度利用や、再生可能エネルギーの大量導入を可能とする電力ネットワークの構築などの推進にあたっては、現在のエネルギー産業構造の変革も必要になることも指摘されているが、それについては、「エネルギー大競争時代」が到来するという認識のもとで、エネルギー産業の将来像として、エネルギー源別の垣根を超える「ガス・アンド・パワー」や「オイル・アンド・ガス」といった総合エネルギー企業の出現も視野に入れ、「国内市場が縮小する中で、安定供給・低炭素投資・競争力強化を図るためには、エネルギー企業の集約化や事業エリアの広域化も視野に入れる」として、国内エネルギー産業の再編や新たな事業スタイルの構築に向けた事業環境の整備の必要性などを強く打ち出している。
 今回の基本計画の見直しにあたっての新たな視点は、低炭素エネルギー社会の構築をいかに成し遂げるかということに重点があり、そのため、原子力発電や再生可能エネルギーの拡大に必要な需給システムの構築に向けてエネルギー産業構造の変革に踏み込んだ点が特に注目されるところ。
 経済産業省では、とりまとめられた基本方針に対して広く国民から意見を公募し、6月をメドに新たなエネルギー基本計画として策定する。


品種改良したサトウキビから大量のバイオエタノールを製造
 アサヒビールと農研機構九州沖縄農業研究センターは、製糖用のサトウキビに比べて1.5倍程度の収量がある品種改良した新品種のサトウキビを使って、低コストで大量のエタノールが製造できる製造法を開発した。
 アサヒビールの持つ醗酵・エタノール抽出技術と農研機構のサトウキビの新品種育成技術を組み合わせて、従来と同等の砂糖生産量を維持しつつ、耕作地の面積当たりで5倍以上のバイオエタノールの生産量が見込めることを実証プラントで確認した。
 従来は、砂糖を精製する結晶化の工程を3段階実施していたものを、1回だけに減らしても、従来と同量の砂糖が回収できる。さらに、従来なみの砂糖を製造した後の原料には大量の糖分が残されており、それから大量のエタノールの生成できる。
 また残渣であるバガスを燃料として利用することで、製造プラント全体でのエネルギー自給を行うことが可能で、砂糖の製造からバイオエタノールの製造までの全行程でカーボンニュートラルの実現できることも確認できた。これによって製造段階で全くCO2を排出しないカーボンフリーエタノールとしての普及も期待できる。
 両者は、研究成果を基に今後2年間程度で実用化のメドを付けたい意向。


08年度は京都議定書の削減目標を達成
 環境省は、08年度の国内CO2排出量の確定値を発表、京都議定書に基づく90年比でマイナス6%という削減目標を、初年度の08年度は達成したことを明らかにした。
 温室効果ガスの総排出量は12億8200万トンで、90年比では1.6%上回る結果となったが、これに目標達成計画の森林吸収分3.8%、CDMなど京都クレジット購入分1.6%、それに電力会社など産業界の自主行動計画未達分のクレジット充足分などを加えると基準年比で8%以上の削減ができた見込みで、京都議定書の第1約束期間初年度の08年度について、日本は目標を達成したことになる。
 目標達成できた最大の要因は、前年度に比べて純粋な排出量が6.4%減と大幅に減少したこと。これは世界同時不況による国内景気の低迷により経済活動が大きく落ち込んだことが主な原因で、特に産業部門の10.4%減という大幅な落ち込みが大きく影響している。その他の部門でも、運輸部門が4.1%減、業務部門でも3.3%減、家庭部門でも4.9%減と全部門で前年度に比べて排出量が減少した。運輸部門の減少は自家用車やトラックからの排出量が減少したこと、家庭部門では電力消費の減少が、排出量の削減に貢献した結果となった。
 また、08年度は原子力発電の稼働率が低迷したまま推移しており、ピーク時の稼働率に復帰できたと仮定すれば、削減量はさらに5%程度の上積みが期待できることになるという。
 09年度以降も厳しい経済状況が継続していることを勘案すれば、09年度分についてもほぼ目標達成の見通しは立っているといえそうだ。


その他の主な記事
・温暖化で2つの小委員会
・九州電力が6島でマイクログリッドを実証へ
・東京工業大AESセンターが本格始動
・経産省が独法の事業仕分け結果を公表
・1月末のRPS認定状況
・新エネ財団が恒例の提言
・東北電力が連系風力候補を発表
・スマグリEXPO説明会に1千社集まる
・IBMが説明会
・ライティングジャパン開く
・NTTデータがオンライン排出権仲介サービス
・扇島パワーが運開
・有明水素ステーションが移転完了
・スギノと産総研がバイオマス分解装置を低コストで
・三菱重工業がアイスランドで地熱開発
・東亞合成と三井化学がリチウムイオン電池材料で新工場
・三井造船が天然ガスハイドレート輸送を実用化へ
・富士経済がスマート関連機器の市場予測
・三菱系リチウムイオン電池を大増産へ
・新日鉄エンジニアリングが食品廃棄物からエタノール製造プラントを販売
・天然ガスハイドレート22年4月
・JORAがバイオマスサロン
・DME燃料利用で補助募集
・都が中小企業対象に省エネ設備の導入補助
・NEDOが地熱開発庁咲いた草木を募集
・秋田のプロジェクトを認定
・NEDO ビジョン策定事業の効果検証で募集
・5月のJPIセミナー  etc.


<インタビュー・スマートエネ時代の企業戦略>
・大阪ガスが進める、スマートエネルギー
(大阪ガス株式会社 理事・エンジニアリング部長 池島賢治氏)
化石エネルギーでもある天然ガスを使って低炭素エネルギー社会に立ち向かう都市ガス会社。大阪ガスは都市ガス事業者の先頭グループの一員として、化石燃料の高度利用と低炭素化の要請に、W発電やスマートエネルギーネットワークで新たな時代を切り開こうとしている。都市ガス事業の枠を超えて10年後を目指した新たなサービス事業を構想する大阪ガスの未来の姿を聞いた。



シリーズ連載
・日本版グリーンニューディールを考えるH
 =情報戦で遅れをとる日本企業=
 (井熊 均・日本総合研究所 創発戦略センター所長)
・カーボン・マネジメント入門(30)
 =都のCO2削減義務への対応法=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)



コラム
・発電論評<削減目標は達成したが>
・ちょっと一休<西安は観光資源でいっぱい>
・青空<鳩山政権が大変なことになってきた>
・霞ヶ関から<終わっていない京都議定書目標達成計画>


削減目標は達成したが【発電論評】

 京都議定書の第1約束期間の初年度に当たる08年度の温室効果ガスの排出量が発表された。国内の総排出量はCO2換算で12億8200万トンで、90年比1.6%増となった。日本の削減義務量はマイナス6%だが、政府の目標達成計画では、森林吸収やCDMクレジットの購入などの京都メカニズムの活用によって5.4%相当量を充当させる計画なので実質削減分は0.6%。差し引きすると目標達成計画の超過分は2%余りということになるが、産業界の取り組みとして電力会社などが自主行動計画によって京都メカニズムを活用し大量のCDMクレジットを調達しており、その無償償却分を加えると目標を2%以上上回って達成できたことになるという。
 一昨年までは絶望視されていた目標達成があっさりとクリアできた背景には未曾有の経済危機による国内経済の低迷があった。
 07年度に比べると国内排出量は6.4%減となった。産業分野の10.4%減を始めとして運輸部門4.1%減、業務部門3.3%減、家庭部門4.9%減など、軒並み排出量が減少している。
 排出量の減少は、もちろん景気の低迷だけが原因ではない。各方面で活発化してきている省CO2の取り組みの広がりも大幅な削減に少なからず貢献しているはずだ。目標達成計画には盛り込まれていない民間のカーボンオフセットの取り組みや、グリーン電力証書など、低炭素エネルギーを使うことで省CO2に貢献するという取り組みも活発化してきている。
 京都議定書の約束期間は12年までの5年間だが、08年度に続く09年度も厳しい国内の経済環境にあったことを考えると、08年度以上の排出量の減少が期待できることになりそうで、京都議定書の目標達成は難しく見通しがついたといえそうだが、目標達成は経済との両立ということが大前提であったということを考えると、手放しで達成感を満喫するという訳にはいかない。
 ポスト京都を決める国際的枠組みづくりは難航している。今や2大排出国となった米国と中国は、国別の削減目標の受け入れには後ろ向きであり、日本の提唱した全ての主要排出国が参加するということを前提とした25%削減という中期目標は宙に浮いた存在になりかねない状況になっている。このままでは、13年以降の国内の排出量の目標は決められないままに迷走することになりかねない。
 低炭素社会を構築するという目標を堅持するためには国際政治に左右されない別の新たな自主的な国内目標が必要なのではないか。25%削減という数字にとらわれないで、再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの拡大目標や省エネ目標などを積み重ねることで国内で独自に取り組める新たな排出目標を定め直すことを考えてみたい。