2010.04.15


2010年415日号

国内スマートグリッド実証4地域決まる
 経済産業省は、国内でのスマートグリッドの実証地域(次世代エネルギー・社会システム実証地域)として横浜市、豊田市、京都府(けいはんな学研都市)、北九州市の4カ所を選定した。
 1月末から2月いっぱいかけて提案募集を行い、応募のあった20地域の中から4地域を選んだ。5年間かけてスマートエネルギーシステムを地域で展開する社会実証を実施する。
 横浜市では、みなとみらい地区で2万7千kWの太陽光発電の導入や4千世帯の住宅・ビルのスマート化などによって電力・熱の地域エネルギーシステムと大規模ネットワークの相互補完を検証する。また、2千台の次世代自動車を導入して次世代交通システムの構築を行うなど都市型モデルの実証研究を行う。
 豊田市のモデルは、家庭で20%、交通で40%のCO2削減目標を掲げ、地元の有力企業や自治体が協調してエネルギーの有効利用や低炭素交通システムの構築と連携を試みることが主要なテーマ。けいはんな学研都市のモデルは、家庭やオフィス内の発電・蓄電装置を知的制御するシステムを導入し家庭単位、ビル単位で「ナノグリッド」を形成。エネルギーの地産地消モデルを構築して「地域ナノグリッド」と「ナショナルグリッド」の相互補完の実証を行う。北九州市のモデルは、民間主導で取り組んできた太陽光や水素などの新エネルギー基盤を活用して、スマートグリッドを中核とした住民地域全員参加型のエネルギーエリアマネジメントを実現し、CO2の50%削減を目指す。
 4地域のほかに、次の16地域から応募があった。◇札幌市 青森県 つくば市(茨城県) 柏の葉(千葉県) 東京都江東区 大手町・丸の内・有楽町(東京) 岐阜県 南砺市(富山県) 京都市 大阪府 神戸市 室戸市(高知県) 福岡市 五島市(長崎県) 水俣市(熊本県) 糸満市(沖縄県)


太陽光併設住宅に蓄電池を導入 伊藤忠と静岡ガスが実証
 伊藤忠商事は、静岡ガスと共同で国内では初めて燃料電池と太陽光発電が併設されている住宅に蓄電用のリチウムイオン電池システムを導入し、住宅内でエネルギーの最適な需給管理が行える「エネルギーの「地産地消」モデル」として実証利用すると発表した。
 対象となるモデル住宅は、静岡県三島市の分譲住宅で、静岡ガスの三島支店跡地に建設される低炭素型タウン「エコライフスクエア三島きよずみ」の22棟のうちの2棟。11年3月の入居開始が予定されている。環境省の「チャレンジ25地域づくり事業」にも採択されており、三島市が掲げる環境先進都市計画の一環として導入する。
 利用する蓄電池システムは米国製で、つくば市で実施された低炭素交通社会システムの共同実証プロジェクトで車載用蓄電池として搭載したものと同様のものを定置用の蓄電池システムとして利用する。
 伊藤忠商事は車載用のリチウムイオン電池の2次利用先として定置用モデルの構築を推進しており、コンビニやガソリンスタンド、分譲マンションでの蓄電用などで導入実績がある。今回の戸建て住宅用も含めてシステムの運用状況をリモート監視することでデータの収集・解析を行い、大規模導入時の蓄電池システムの最適運用システムの構築に役立てていく。
 太陽光発電システムや燃料電池システムは、太陽光は晴れた日の昼間に発電するという特性があり、また、燃料電池システムは給湯用途を優先して運転されるけースが多いことから、蓄電池システムを併設することで、発電した電力が余剰となっても蓄電しておき、電力が不足する時間帯に利用できるようにする。建物内でのエネルギー需給が最適化できることになり、電力系統へ負担をかけない自立型の電源として運用できるほか、系統側へ必要なときに電力供給する「発電所」として運用できる可能性も秘めたモデルといえる。


福祉施設で太陽光オンサイト発電サービス ネクストエナジー
 ネクストエナジーは、公共施設に対するグリーン電力サービスを開始すると発表した。長野県宮田村の老人福祉施設向けに、施設の屋根を借りて太陽光パネルを設置して発電した電力を道施設内に供給、電気料金を回収するというオンサイト発電サービスを開始する。太陽光発電設備はネクスト社がリース契約し、電気料金に上乗せしてコスト回収する形態で、施設側は施設の屋根を提供するだけでイニシャルコストの負担がない。
 施設の屋根に10kW程度の太陽光発電を設置して、施設内で使用する年間電力の40%程度がまかなえる。
 ネクスト社が進める太陽光発電によるオンサイト発電サービスでは、供給する電力は「環境付加価値」を切り離した非グリーン電力とすることも可能で、この場合の「環境付加価値」はネクスト社に帰属する。環境付加価値を切り離すためその分グリーン電力よりも安価な電力料金で利用できる。ネクスト社は切り離した環境付加価値をグリーン電力証書として販売することで、電力料金の値下げ分に充当させる。


カーボンオフセット用クレジットに1万kW以下の小水力発電を追加
 環境省はカーボンオフセットクレジット(J−VER)制度の対象となる削減事業として小水力発電を追加することにした。
 小水力発電による発電電力で、系統電力に置き換えることによって生じるCO2削減分をオフセットクレジットとして認証し、カーボンオフセット制度の中で流通利用もできるようにする。パブリックコメントなどの手続きを行い正式にクレジットとして追加する。
 対象となる水力発電は1万kW以下で、河川に新たに設置されるものと既存設備等に府かする形で設置される小水力発電設備。RPS法の対象となるものはRPS法の認定を受けることも条件に加えられる。また、採算性が低いため導入が困難で、オフセットクレジットの創出によって3年以上かけて投資回収が行えるものが適格性の要件とされている。
 取り引きされる電力はRPS法など他の制度と重複する場合はそれを差し引いたものをクレジットとして認める。
 小水力発電はRPS法では1千kW以下の施設が対象だが、対象外の1万kW以下のものまで含めることで、経済性の観点から導入されない小水力発電の活用を図ることが目的。


その他の主な記事
・発受電量は2年連続で減少 電事連発表
・石油製品高度利用へ重質油分解装置拡大を義務づけ
・石油国家備蓄量は現状を維持
・次世代自動車で経産省が戦略
・農水省が再生可能エネ補助先を募集
・国際工業が宮崎ソーラーウェイに参加
・エコハウスEXPO説明会に400社
・IBMが集光型太陽光で海水淡水化プラント
・三菱商事が熊本県と新エネ産業育成で協定
・三菱重工が米国に大型風車工場
・日立がリチウム電池の寿命を2倍に
・伊藤忠と日揮がフィリピンでバイオエタノール事業
・コマツが新エンジン技術を開発
・新日石が丸紅、物産へLPG事業を統合
・デンヨーがベトナムに発電機製造子会社
・NEDOが洋上風力募集期間を延長
・バイオマスタウンに31市町村を追加
・6月に東京でスマートグリッド展 
・6月に横浜で再生可能エネ展
・太陽電池展も横浜パシフィコで
・バイオマスエキスポ6月に開催
・オフセットクレジット地域興しなど募集 環境省
・温泉熱利用のコージェネなど補助 環境省が募集
・経産省が環境エネで国民対話    etc.



燃料電池新聞の主な記事
・全米水素協会
・SOFC実証研究報告会レポート
・家庭用エネファーム
・日産自動車リーフ
・海外ニュース
 -中国BYDと独ダイムラー、共同で中国市場向け電気自動車を開発
 -トヨタ、ドイツの水素・燃料電池実証プロジェクト(CEP)に参加
 -現代自動車、ジュネーブ自動車ショーで燃料電池自動車を公開
 -独SFC社の燃料電池、火災監視システムに採用
 -バルチラ社と日立造船、燃料電池CHPの共同開発で合意
 -GM、量産を前提にした小型化した燃料電池スタックをテスト
 -国内燃料電池メーカーの家庭用燃料電池のターゲットはヨーロッパ
 -米プラグパワー社、2009年決算発表
 -英ロンドン、2012年までの水素ネットワーク計画を発表
 -米オージャ社、メタノール燃料による5kW級小型燃料電池システムを開発
 -BMW、米UTC Power社の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車を発表
 -英エネルギー・気候変動特別委員会、水素燃料電池自動車への投資を要求
 -北米日産、米国での電気自動車「リーフ」の販売価格を発表
 -米環境保護局と運輸省、自動車の燃費規制強化、2012〜2016年モデルの燃費基準を発表
・燃料電池フラッシュニュース
 -福岡県庁、「福岡水素タウン」150世帯の省エネルギー効果などを公表
 -産総研、パラジウム薄膜を利用する水素ガス精製モジュールを開発
 -テック精密、家庭用燃料電池改質器向け燃焼器、プレス加工で価格を1/6に削減
 -田中貴金属工業、パラジウム系水素分離膜の超薄膜加工技術を確立
 -村田製作所、世界最薄のモバイル用燃料電池向けマイクロポンプを開発
 -東邦ガス、70MPaの水素ステーションの耐久試験を開始
 -産総研、太陽光利用の水素製造システムに利用できる高性能光触媒開発
 -野村総研、2020年までのエコカー販売市場を展望
 -大阪市立大学、燃料電池で動くロボットフィッシュを開発
 -大阪ガス、セラミック・フューエル・セルズ社の家庭用SOFCをテスト
 -日清紡、中期経営計画で燃料電池部材に注力
 -ノリタケ、ニッケル微粒子をコアに採用したPEFC用コアシェル触媒を開発
 -双日、台湾社から燃料電池用ガス拡散層の販売権を獲得
 -経済産業省、2010年度の太陽光発電余剰電力の買取価格を決定
 -トヨタとマツダ、ハイブリッドシステムの技術ライセンス供与に合意
・燃料電池インフォメーション
 ■電気化学会燃料電池研究会「第107回燃料電池研究会セミナー」4月21日(水)13時30分〜16時30分 電気化学会会議室(東京都千代田区) 固体高分子型燃料電池(PEFC)の電解質開発の現状など)
 ■燃料電池開発情報センター(FCDIC)「第17回 燃料電池シンポジウム」5月19日(水)〜20日(木)9:00〜17:00 タワーホール船堀(東京都江戸川区) ロバスト、電解質膜、電極触媒、セル計測などに関する53の講演と3つの特別講演
 ■自動車技術会:人とくるまのテクノロジー展 2010 5月19日(水)〜21日(金)10:00〜17:00 横浜国際会議場(パシフィコ横浜) 自動車メーカー、自動車部品メーカー365社による展示。特別フォーラム、テクニカルレビュー、フォーラムなど
 ■電気化学会 燃料電池研究会 「第107回燃料電池研究会セミナー」 4月21日(水)13:30〜16:30 電気化学会会議室(東京都千代田区) 固体高分子形燃料電池電解質開発の現状

シリーズ連載
・世界を読む(20)<シェールガスが変えるエネルギー地政学>
・カーボン・マネジメント入門(29)
 =グローバルカーボンマネー構想2=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)


コラム
・発電論評<スマートグリッドとオンサイト発電>
・ちょっと一休<バブルに踊る西安の不動産事情>
・青空<希望に満ちた春到来のはずなのに>
・ちょっと一言<戦略不在の日本の太陽光発電>


スマートグリッドとオンサイト発電【発電論評】

 経済産業省が計画しているスマートグリッドの国内の実証地域が横浜市、豊田市などの4地域に決まった。
 太陽光や電気自動車など小規模な再生可能エネルギーを大量に導入し、次世代自動車などを地域内に一定程度普及させ、地域内で低炭素型のエネルギー需給が行える仕組みが検証される。いずれも、小規模で出力の不安定な再生可能エネルギーを電力系統に受け入れて安定的に利用できるようにすることが地域実証の主な目的だ。
 かつて、オンサイトエネルギーサービスが低コストな電力利用のスタイルとして相当規模で広がった時代があった。燃料価格の高騰で、今ではすっかり下火になってしまっているが、オンサイトエネルギーサービスの目新しさは、ディーゼル発電やガスエンジン発電といった古くからある技術を最新のコンピューター制御技術と組み合わせることで、遠隔地のコントロールセンターで複数のオンサイト発電サイトの運転管理や負荷制御を集中的に行えるということにあった。遠隔地でのコントロールにはインターネット回線を使い、発電機や負荷設備からも起動や停止など運転制御に必要な情報をセンサーによってリアルタイムで把握できるようにしていた。
 現在でもその技術は十分に新しく、需要側と供給側の間にたって最適な需給管理を行うことで最も効率のよい電力供給が行えるというオンサイト技術が「スマート」の名を冠して新たな社会システムとしてその実用性が試されるということになる。対象が複数の施設や一定地域にまで広がり、様々な規模や種類の電源と需要設備をリアルタイムでコントロールし、最適な電源管理が行われる。さらにそれを、電気だけでなく、熱や自動車も加えて総合的な地域エネルギーシステムの構築へと発展させようとしている。
 必要な技術やシステム、製品には特に目新しいものはない。既にある技術や設備機器を組み合わせることで、全く新しい仕組みが生まれ、新しい社会制度に発展できるという格好のモデルになる。
 電力などのエネルギーは発電所などの上流から家庭やオフィスなどの下流の需要先へ、一方通行で流れるというこれまでの常識が、家庭やビルに太陽光発電やコージェネレーションシステムが導入されることで、水平で双方向の流れに変わることになる。不足するエネルギーは外部から受け入れ、余剰が出れば外部に送り出す。グリッドの単位も個々の家庭やビル単位から複数施設、街区などのマイクログリッドから地域、また広域まで様々な規模にまで広げられる。それらを有機的に結びつけていくことで国全体をスマートグリッド化でき、エネルギーを相互融通し合うことにより、低炭素型のエネルギーシステムを最優先で使えることになる。