2010年325日号

全量買取でオプション示す 買取コストは最大1兆6千億円に
 経済産業省は、3月24日に再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチームの第4回の会合を開き、試案を示して国民から意見募集を行うなどして最終案を絞り込んでいくことにした。
 全量買い取り(一部余剰)の場合の再生可能エネルギーの導入量は、制度導入の10年後に3773万kW以上から3102万kWと予測。買い取りコストは最大で年額1兆6083億円から4622億円となる。このほかに、系統強化費用として蓄電池の増設などで年間約2千億円から2兆円程度の費用が発生するという試算も併せて示した。試算の前提では、対象を再生可能エネルギー、特に現在実用化されている太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電に限定して考えるべきことや、再生可能エネルギー熱利用、燃料電池、コージェネなどは買い取り制度の対象外としてこれらの支援策については別途検討するなどの条件を付けて試算結果をまとめた。
 示されたオプション案は、@大規模水力や潮力発電などあらゆる再生可能エネルギーを新設、既設を問わず全量買い取るプランから発電事業用も含めて実用化されているものに限定する場合に分け、さらにA住宅用太陽光を全量買い取る場合と余剰電力だけを買い取る場合、B新設既設を問わず買い取る場合と新設だけを対象とする場合などに分けてそれぞれCO2削減効果や買い取り費用などを試算した。
 導入可能性の高い試案として示されたのは4案。実用化されている再生可能エネルギーで、新設のみを買い取り対象として全量買い取りする案と住宅用太陽光は余剰買い取りとする3つのケースで、買い取り価格は太陽光は現行制度並みとし、太陽光以外は20円と15円で固定する場合と太陽光以外のものを発電コストをまかなえる水準として風力12円、中小水力22円、地熱17円、バイオマス15円で買い取る場合の試算結果を示した。
 この場合の買い取り費用は年間8873億円から4622億円と倍額近くの差が出るものの、導入量は3773万kWから3102万kW、CO2削減量は3075万トンから2382万トンと買い取り費用ほどの差が出ない。また、CO2削減コストは1トンあたり2万8854円から1万9407円で約1.5倍の差がある。標準家庭のコスト負担も月288円から150円とほぼ2倍の差が出る。
 経産省は試案を示して意見公募を行い、6月頃には最終案のとりまとめを行う。


アオコから「緑の石油」を抽出 電中研が低コスト、高収率で
 電力中央研究所は、藻類のアオコから「緑の原油」の高収率の抽出方法を開発した。NEDOの助成事業としてエネルギー技術研究所の神田英輝主任研究員が開発に成功したもので、液化ジメチルエーテル(DME)を使ってアオコから常温で従来の手法に比べて60倍の高収率で油分を抽出することができる。
 液化したDMEが水にも油にも混ざる性質があることを利用したもので、従来の方法に比べて脱水や乾燥に必要なエネルギーを大幅に低減できるだけでなく、抽出段階で必要だった有機溶剤も不要になるため、低コストで環境に優しい油分抽出システムとして実用化できる可能性があるとしている。
 神田氏が開発した新たな抽出方法は、電力中央研究所が高含水率の石炭を脱水して発熱量を向上させる技術として開発した液化DMEを用いる「水分抽出技術」を応用したもので、脱水・乾燥処理に必要なエネルギーを大幅に低減につながることも期待できる。
 有機物であるアオコを予め脱水して泥状になったアオコに液化DMEを加える方法で、従来の乾燥させたアオコから抽出する方法にくらべて約60倍の高収率で「緑の石油」が抽出できることを確認した。
 抽出した「緑の石油」は液化DMEと混合した状態であり、DMEとの分離行程が必要だが、液化DMEは常温で減圧すると簡単に蒸発するため、気体として回収することで容易に分離でき、分離回収したDMEは再度液化すれば抽出剤として循環再利用もできる。
 また、DMEは50度C程度の熱があれば気化熱として利用できるため、工場の未利用排熱などを活用することで低コストで効率よくDMEの蒸発回収を行えるシステム構築も可能で、用材回収の面からも従来技術より格段に優れたシステムが構築できる。


太陽光発電5千万kW、風力発電1100万kWなど 環境省が中長期削減ロードマップ案を公表
 環境省は、温室効果ガスの削減に向けた中長期のロードマップのシナリオ作りを始め、検討会での議論を公開した。
 中長期ロードマップは、閣議決定された温暖化対策基本法案で2020年の中期目標が1990年比25%削減と掲げられたことや、50年の長期目標80%削減も盛り込まれたたことを受け、この中長期の目標達成のために必要な対策を分野別にロードマップ化して示すことを目的としている。議論は昨年末に検討会を設置してすでに開始していたが、基本法案が閣議決定されたことを受けて検討会の議論も公開して行うことにした。
 当日示された素案では、住宅・建築、自動車、地域づくり、農山村、エネルギー供給の5分野に分けて必要な対策をロードマップとして示している。
 エネルギー供給分野で示されたのは、再生可能エネルギーの拡大によるエネルギー自給率の向上とCCS技術などによる化石エネルギー利用の低炭素化、原子力利用の拡大などで、再生可能エネルギーについては20年までに1次エネルギー供給の10%以上に拡大すること、CCSは20年以降には本格導入できるようにする。具体的な目標としては、20年までに太陽光発電を最大で家庭用と産業用などで5千万kW、風力発電を1110万kW、バイオマス発電を761万kW、中小水力を600万kW、地熱発電を171万kW導入するという姿を描いた。
 また、再生可能エネルギーの大量導入を可能にするための電力ネットワークの強化やエネルギーの地産地消の促進など電力の効率利用を図るためネットワークをスマート化、スマートメーターの導入率を20年までに80%以上を目標として普及させ、30年までにスマートグリッドの普及率を100%にするというシナリオを描いている。
 また、50年までに再生可能エネルギーさらに拡大して50年にはゼロカーボン社会を実現するということもシナリオ化する。
 3月末にはシンポジウムを開催するなど公開の場でロードマップを作り上げていく。


太陽光の販売やスマートハウスも加速 大阪ガスが10年度計画
 大阪ガスは3月12日、ビジネスフィールドの拡大と強じんな事業構造の確立を図ることで、現中期経営計画の着実な実現に向けた「10年度グループ経営計画」を発表した。
 太陽光発電の販売目標を初めて公表。目標台数を09年度見込み比約6倍となる1800台としたほか09年度、約1300台だった家庭用燃料電池「エネファーム」は1700台以上の販売目標を掲げた。ガスエンジンコージェネ「エコウィル」は5千台以上の販売を目標に、累計で7万台規模にまで拡大する。
 特に太陽光発電は、千里万博公園の商業施設に関西最大級の太陽光発電ショールームを設置、併せて直営ショールームにもコーナーを設け「W発電」の普及を目指す。10年度からは既築住宅市場も積極的に開拓していく。
 またスマートエネルギーハウスの開発も加速させる。W発電と蓄電池を組み合わせた実証試験に続き、10年度は家電メーカーや住宅会社と組んで、実際に人が住む戸建て住宅での検証に乗り出す。
 10年度の収支計画は連結ベースで増収・減益を予想。連結売上高は1兆1750億円(09年度比7.7%増)、経常利益655億円(同13.8%減)、純利益370億円(同18.7%減)。
 ガス販売量は、工業用需要の伸びを中心に82億200万立方m(同1.0%増)、電力販売量は泉北天然ガス発電所が4基通年稼働することで67億6700万kW時(同25.4%増)など、ガス販売量については燃料転換需要などで3期振りに増加するものの、スライド差損の発生などによって利益を圧迫すると見ている。投資は既存事業関係に500億円、新規事業で850億円を投じる計画。


その他の主な記事
・行刷新会議、第2弾に新エネ財団など50法人
・ロードマップに基づく中長期の排出量試算も公表
・中長期ロードマップの主な対策と課題
・2月電力需要大幅回復もまだ低水準
・環境アセス法改正案を閣議決定
・ディーゼル特殊車両のPM規制を強化
・産機工が10年度の受注見通し
・宮崎ソーラーが太陽光エネファンドを利用
・東芝が柏崎に新電池工場
・ジャパンエナジーがバイオガソリンを増販
・日立産機がオフセット権つきでモーターを販売
・風力/太陽光発電の蓄電池容量適正化は伊藤忠テクノへ
・イワタニがLPGモニターで新監視サービス
・ネクスト社がグリーン電力で販売ネットワーク
・伊藤忠と戸田工業が北米でリチウムイオン材料工場
・三菱電機がパワコン用半導体モジュールの小型化に成功
・三洋電機がリチウムイオン電池開発で新技術棟
・柏市で公衆電源サービスを実証
・低炭素社会ロードマップでシンポ開催へ 
・NEDOがPEFC実用化推進技術で公募
・能率協会が7月にテクノフロンティア2010
・スマートグリッドやCCSなどでJPIセミナー
・排出量取引テーマにSSKセミナー  etc.


シリーズ連載
・日本版グリーンニューディールを考えるG
 =国の枠組みをはずした削減目標を=
 (井熊 均・日本総合研究所 創発戦略センター所長)
・カーボン・マネジメント入門(28)
 =グローバルカーボンマネー構想=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)
・新刊紹介:「新エネ幻想」
 (御園生誠著 エネルギーフォーラム)



コラム
・発電論評<25%削減にはコージェネの活用>
・ちょっと一休<ユーモアのある柏木教授>
・青空<錯覚十戒>
・霞ヶ関から<温暖化基本法論議にも省庁間のタテ割>


25%削減にはコージェネの活用【発電論評】

 温暖化対策基本法の内容が議論になっている。議論の中心は、25%削減が条件付きで盛り込まれたことと、排出量取引や環境税の導入などに集まる。
 環境税の導入は11年度からの導入を検討すると導入年度が示されたこと。また、排出量取引については、総量規制のほかに原単位規制も検討するとされた。環境省サイドの意見は総量規制以外は認めないとするものが多く原単位規制はまるで規制の後退といわんばかりの扱いとされる場合が多い。
 原単位規制派の言い分は、景気が回復して工場の稼働率が上がり生産量が増えるとそれに比例して排出量も必然的に増える。それを抑制するには、生産量ではなく、原単位で規制し排出量の増加を抑えることにすれば結果的に世界全体での排出抑制にもつなげられると考えるもの。
 温暖化対策は経済との両立を目指すというのも最も重要な前提条件のはず。経済規模が縮小して、削減目標が達成できたという愚は何としても避けなければならない。排出量の削減はできても経済はますます縮むという問題提起は、昨今の経済情勢を見るにつけ説得力が増していると思うのだがどうだろう。
 初めに25%削減ありきではなく、可能なことから着実に始めていくという取り組みの姿勢が今こそ求められているといえる。
 例えば、家庭やオフィスなどの業務部門では電力需要と建物の断熱による省エネが主要な対策だといわれる。だとするならば、カーボンフリーの電力が豊富に使えればそれだけで大幅な改善が見込めることになる。
 再生可能エネルギーが最も一般的な解決策だが、これには絶対量の不足と高コストという2つの大きな課題があるが、これらを積極的に解決するには、エネルギー利用の省エネ化や高効率化を図っていく方法がある。
 出力の不安定な再生可能電力を蓄電や蓄水素によって必要なときにいつでも使える電源とすることや、需要設備の高効率化も図られなければならない。それと忘れてはならないことは化石燃料の高効率利用だ。再生可能エネルギーの出力安定化にも貢献できる高効率のコージェネレーションによって化石燃料由来のCO2が大幅に削減できることは周知のことではあるが、ともすれば忘れられがちになる。熱利用だけに限られている化石燃料をコージェネ化することによってどれだけの電力が利用可能となるのか。それこそが、コージェネ利用によるCO2削減効果を最も正確に計ることができると思うのだが、残念ながらそうした統計データや研究データはない。
 環境税や排出量取引を検討する前に、そうしたエネルギー供給のあり方をまず正確に把握することが必要なのではないか。