2010.03.15


2010年315日号

低炭素エネルギー網で東工大に研究プロ
 東京工業大学は東京電力、東京ガス、新日本石油、NTTファシリティーズ、三菱商事と共同で、スマートグリッドを核にした低炭素型エネルギー需給ネットワークの構築に乗り出す。
 太陽光発電や燃料電池、蓄電池といった最新技術を中心に、10年度から5年間かけて国内外で実証試験を行う。東電など共同研究プロジェクトに参加する5社は、それぞれ研究資金として1億円を出資する。
 東工大・統合研究院に配置された「先進エネルギー国際研究センター」(AESセンター、センター長・柏木孝夫統合研究院教授)に4月1日付けで共同研究部門を設置。各社は研究者や技術者を特任教授などとして派遣し、東工大の研究者と併せ約50人体制で研究開発に取り組む。
 AESセンターでは、CO2排出を世界で50%削減するのに必要な先進エネルギーシステムの開発・実証と、15年以降の次世代エネルギー基盤の実現をビジョンとして掲げている。
 10年度からスタートさせる共同研究プロジェクトでは、@燃料電池コプロダクションAスマートパワーネットワークB交通システムC次世代空調D省エネ照明E海洋バイオマスFアジア太平洋サンベルト開発−といった研究テーマが挙げられている。
 従来の大学研究の枠を超えた、多様な主体が参加する「プラットフォーム」の構築を目指しており、5社以外にも官庁、大学、NPO、各企業などは、1社100万円程度を出資することで共同研究プロジェクトに参加できる。
 東工大では、文科省の支援を受け05年度に設立した統合研究院が、ソリューション研究の一環として先進エネルギーシステムの研究を進めてきた。09年度で統合研究院の活動が終了することから、10年度から新統合研究院(仮称)を設置し、AESセンターで研究を継続する。


高効率・低NOXの新型ガスタービンを開発 川崎重工業
 川崎重工業は3月10日、発電出力が1700kW級のガスタービン「M1A−17」(=写真=)を開発したと発表した。
 同出力クラスにおいて、最高レベルの高効率・低エミッションを実現したガスタービンで、4月から発売する計画。工場や施設向けに年間10台の販売を見込んでいる。価格は明らかにしていない。
 同ガスタービンは88年に開発、販売を開始した1500kW級の「M1A−13」型の改良機種。川崎重工が長年、培ってきた産業用中・小型ガスタービンの開発技術を基に製品化した。
 発電出力で約13%、熱効率では約10%と発電出力、熱効率とも大幅に向上させたほか、NOX排出については、低エミッションのDLE(ドライ・ロー・エミッション)技術によって、35ppm(O2=0%)と半減させた。これは、同出力クラスのガスタービンでは、最高レベルの低NOX排出値という。
 川崎重工は純国産ガスタービンの常用発電設備として、出力が600〜1万8千kWまでのガスタービンを製品化している。改良前の出力1500kw機では国内150台、海外170台の累計320台の納入実績を持っている。今回、1700kW機を追加することで、常用発電設備はさらにラインナップが拡充することになった。
 川崎重工は、76年に非常用ガスタービン発電設備の初号機を納入したのを皮切りに、約35年間で常用・非常用併せて、国内外で7千台を超える納入実績がある。この内、常用発電設備は84年に初号機を納入以来、600台超を納入している。
 国内の常用発電・コージェネレーション市場は、燃料費の高騰と、相次ぐ電力価格の低減によって低迷している。しかし、マレーシアなどを中心とした東南アジア市場では好調だ。川崎重工では国内を始めアジア、中東においては現地販売拠点を使って、常用ガスタービン発電設備の販売を積極的に進める考えだ。


温暖化対策基本法案まとまる 供給エネの10%を再生可能エネに
 政府は3月12日に開いた閣議で「地球温暖化対策基本法案」を決定した。基本法案では、2020年に90年比で温室効果ガスを25%削減する中期目標を盛り込んだ。
 また焦点となっていた国内排出量取引制度では、企業の温室効果ガスの排出上限をどのように設定するかについて、総排出量の上限を課す「総量規制方式」を基本としながらも、単位生産量あたりの排出量を削減する「原単位方式」も検討するとした。
 ただ制度の創設時期は明示しておらず、法案成立後1年以内に法的措置を講じる。総量規制方式と原単位方式がどのような形で規制に組み込まれるのか、具体的な制度設計は今後の検討にゆだねられたことになった。 
 政府は、基本法案の今国会での成立を目指すことにしており、成立後は仙谷由人国家戦略相、小沢鋭仁環境相らを中心に、具体策の工程表を作ることになる。
 基本法案では「20年までに25%削減」の中期目標が、公平な国際枠組みなどに合意した場合という前提条件が付けられた。
 一方、排出量取引制度については、環境省が作成した当初案では、企業の排出上限を排出総量のみとしていた。これは、原単位を上限にした場合、省エネが進んでも生産量が増えれば排出量も増加し、結果的に削減につながらないからだ。しかし「生産を抑制することになり経済に悪影響を与える」と主張する産業界に配慮し、原単位方式も検討することにした。
 また基本法案では、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電電力を、電力会社が一定価格で買い取る「固定価格買い取り制度」の創設が盛り込まれたほか、、2020年に一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を10%とすること、地球温暖化対策税(環境税)については、11年度からの実施に向けて検討することとされた。
 温室効果ガスを排出しない原子力発電については、関連施策を「推進する」と明記、温暖化対策の中で位置づけていくことが示された。


東京都がカーボンマイナス10年プロの進捗状況を公表
 東京都はこのほど「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」の施策化状況を公表した。
 それによると、10年度の事業数および予算案は115事業・391億円となった。プロジェクト初年度の98事業・予算額203億円から、09年度は107事業・同365億円に拡大、10年度はさらに増加することになる。
 同プロジェクトは、06年12月に策定された都市戦略「10年後の東京」の一環として進めており、20年までに、東京の温室効果ガス排出量を00年比で25%削減するのが目標。
 産業・業務、運輸、家庭の各分野で対策を進めていくほか、税制や金融を活用し、こうした分野でのCO2削減の取り組みを支える「カーボンマイナス・ムーブメント」で構成されている。
 10年度は特に、中小企業のCO2削減対策に重点的に取り組むことにしており、CO2削減量のクレジット化権利を都に無償譲渡することを条件に、高効率省エネ設備の導入費用を助成するプロジェクトに、新規に約80億円が盛り込まれた。


その他の主な記事
・バイオ燃料拡大へ経産省が報告書
・東電もスマートメーターの実証
・大和ハウスとエネサーブが省エネ監視サービスを販売
・大陽日酸が家庭向けバイオガス精製装置を開発
・日立がスマートシティの組織を新設
・東洋鋼鈑が低コスト薄膜基板を開発
・大阪ガスがバイオガス購入要領を改定
・東ガス、群馬幹線T期が完成
・富士電機社長に北澤氏
・広島ガス新社長
・固定価格買い取り実現でセミナー
・スマートグリッドでNIEFが第14回会議
・Jパワー、下水汚泥燃料化事業会社を設立
・環境省が改正温対法で説明会
・国交省が省CO2先導事業で募集
・4月に54回バイオマスサロン
・関東農政局がバイオマス報告会
・関東経産局が環境力ビジネスでフォーラム
・緑の経済と社会でシンポ
・JVER支援事業者に8プロジェクトを採択
・11月のRPS認定設備    etc.



燃料電池新聞の主な記事
・FC EXPO2010レポート(@アクアフェアリー A住友商事/ACAL Bニッセイ CFC EXPO出展社総括)
・FC EXPO専門セミナーレポート(@日産SOFC ASFCスマート B国内自動車メーカー)
・米国で話題のブルームエナジーSOFC
・先端技術情報総合研究所の自動車用リチウムイオン開発技術動向調査
・海外ニュース
 -米パイク・リサーチ、2020年までに280万台のFCVが販売されると予測
 -英AFC社、豪リンク社らと石炭ガス化プラントに燃料電池を組み込むことで合意
 -韓国政府が燃料電池自動車の早期商用化を推進
 -バンクーバー五輪で燃料電池バス、燃料電池自動車が活躍
 -米オージャ社、オージャパックTM モデルワンの生産を開始
 -豪CFC社、EUエネルギー各社に第4世代となる家庭用燃料電池CHPの販売開始
 -英国、ロンドン五輪までに燃料電池タクシーを開発
 -英キャラー社、家庭用燃料電池ボイラーは2020年までに15%を占めると発表
 -GM、バッファロー自動車ショーで新型燃料電池システムを公開
 -インドのタタ自動車、燃料電池商用車を開発
 -英SEV社、電気自動車の航続距離を伸ばすために燃料電池を利用
 -バラード、2009年の業績と2010年の見通しを発表
・燃料電池フラッシュニュース
 -IHIと米ボーイング社、ジェット機に搭載する再生型燃料電池システムの共同研究を開始
 -テック精密が家庭用燃料電池改質器向け燃焼器、プレス加工で価格を1/6に削減
 -田中貴金属がパラジウム系水素分離膜の超薄膜加工技術を確立
 -日立金属、SOFC燃料電池用セパレーター市場に参入
 -北海道電力、2009年度の「エコキュート」の販売台数が1,600台以上を見込む
 -京都大学、固体酸化物で300℃程度の低温での酸素イオン拡散を解明
 -ナノメンブレン、金属酸化物を使った電解質膜を開発
 -アストモスエネルギー、「エネファーム」寒冷地仕様機のモニター運転を開始


シリーズ連載
・世界を読む(19)<ポスト京都の合意はCOP17で>
・カーボン・マネジメント入門(27)
 =日本の排出量取引制度の可能性=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)
・新刊紹介:「美味しんぼ104巻 食と環境問題」
 (雁屋哲作 花咲アキラ画著 小学館)


コラム
・発電論評<エネルギー政策に自給率の目標を>
・ちょっと一休<1%クラブの20周年記念シンポ>
・青空<トヨタのボーンヘッド>
・ちょっと一言<サービスを売り始めるエネルギー企業>


エネルギー政策に自給率の目標を【発電論評】

 日本は、化石エネルギー資源の乏しい国であり、相変わらずエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っているままだ。エネルギー自給率は、原子力発電をカウントしないと水力発電を含めても10%にも届かないという現実がある。再生可能エネルギーの利用は1%程度とわずかなものだ。
 25%削減の次にある再生可能エネルギー拡大策。このわずかな利用率にすぎない再生可能エネルギーを大量に導入することを目的にしているが、CO2削減効果にだけ注目されがちの再生可能エネルギーを、エネルギー自給率の改善という視点でもう一度評価し直してもよいのではないか。
 エネルギー資源の太宗を国外に頼っている日本のエネルギー政策の基本は、安定供給の確保を基本としたセキュリティー対策にある。石油価格の高騰時代を迎えてますますエネルギー資源の安定確保が重要性を増してきているといえる。
 しかしながら、新政権になって示された新たなエネルギー政策といえるものは、再生可能エネルギーの拡大を目指した全量買取制度の導入方針だけだといってもよい。これも25%削減を目標とする環境政策として打ち出された色合いが濃いもので、エネルギー自給率の改善についての目標値などは示されないままだ。
 再生可能エネルギーの現状を見ると、最も導入量の多い風力発電は連系規制などの問題から、これ以上の導入拡大は困難な状況。拡大には蓄電池設備の併設などによる出力の安定化が求められているが、風力の拡大には発電した電気の流通対策、例えば系統への接続義務といったような思い切った施策が展開される必要がある。検討されている固定価格買取制度では、買い取り義務を課した場合に系統連系も合わせて義務化されることになるのかどうか全く明らかにはされていない。買い取り価格は決まっても系統連系できないのでは風力の立地は困難だという状況には変わりがないことになる。
 再生可能エネルギー拡大のエース級の扱いを受けている太陽光発電にしても、導入拡大に向けては多くの課題が出現してきている。例えば、価格。太陽光発電メーカーは、今や海外メーカーが低価格でシェアを拡大しており、かつての家電産業の様相を示し始めている。現在、関係者の間で心配されているのは、固定価格買取制度によって拡大するのは安価な輸入太陽電池ではないのかという心配だ。現に制度で先行したドイツでは、増えたのは中国製のパネルだったという報告もある。
 初めに25%削減ありきの環境政策ではなく、日本のエネルギー供給構造を高度利用も含めてどう位置づけるのか、エネルギー政策の中から低炭素化の目標を決めるという本来の姿が求められている。