2010年125日号

スマートグリッド実証へ 経産省の協議会が報告書
 経済産業省は1月19日、次世代エネルギー・社会システム協議会の7回目の会合を開き、スマートグリッドなど次世代エネルギーネットワークの導入に向けて基本的な考え方を報告書にまとめた。
 報告書では、再生可能エネルギーが大量に導入されても安定供給が保たれる強靱な電力ネットワークと地産地消モデルが相互補完しあう姿を「日本型スマートグリッド」と位置づけ、技術的課題や社会コストの最小化の観点から導入に向けての課題についての検証を進めることの必要性を指摘した。
 検証の具体的な取り組みとして、国内数カ所でモデル地区を選定して実証事業を数年がかりで行うほか、関連企業などの実務者が参加するスマートグリッド協議会(仮称)を設立して国際標準化や海外展開に当たってのフォーメーションづくりなどを行う。
 日本型モデルの追求では、電力の有効利用や系統安定化に加え、排熱の有効利用も含めることで、さらなるエネルギーの効率利用や低炭素化を目指す。特定地域内で電力と熱のスマートエネルギーネットワークを構築するだけでなく、複数のエリア間で相互融通を行い一層の省エネ・省CO2の実現を図る。さらに、地域の交通システムや都市計画、消費者の行動なども複合的に組み合わせて、総合的な省エネや省CO2効果を高めていく社会システムとして導入することを目指していく。
 国内数カ所を選定して進める地域実証では大規模な再生可能エネルギーの導入が可能であること、電気だけでなく熱や未利用エネルギーも活用できること、地域レベルでのエネルギーマネジメントや情報通信システムの構築ができること、交通システムでのエネルギーの有効利用や自治体、エネルギー関連企業、システムメーカー、地域企業などの積極的な参加が期待できることなどを目標として実証地域を選定する。実証地域は2月から公募によって選定し3から5年程度の期間をかけ検証していく。
 また、実証事業などを通じて得られるスマートグリッド関連技術については、国際標準化を目指す方向で取り組む。分散型電源関連の制御技術や電気自動車充電インフラ関連機器など26のアイテムを特定して国際標準化に向けたロードマップを作成するなど戦略的に取り組む。


温暖化対策基本法案3月に国会へ
 政府は、2020年に90年比でCO2排出量を25%削減するという中期目標などを盛り込む地球温暖化対策基本法の概要をまとめた。3月上旬までに通常国会への提出を目指す。
 基本法は、昨年民主党が野党時代に国会に提出した基本法案をベースに、再生可能エネルギーを1次エネルギー供給量の10%程度とする目標値や排出量取引制度の導入についても盛り込む。また、環境税の導入や再生可能エネルギーの買取制度なども盛り込む。


5年間の研究成果を報告 東大のホロニック講座
 分散型エネルギーを電力系統に連系した全体システム、ホロニック・エネルギーシステムの構築を目指す「東京大学ホロニック・エネルギーシステム学(東京ガス)寄付講座」が1月15日、東京・本郷の東京大学で第5回目のシンポジウムを開いた。
 シンポでは研究に携わった講師がホロニックシステムの具現化などについて、それぞれ講演した。
 同講座は、今年度で最終年度を迎える。開会のあいさつに立った丸山茂夫東大教授は「関心の高さの表れ」とし、「ホロニックなど環境・エネルギー関連は需要が高まっており、裾野が広く、学生も夢を持てる分野」と、システムの将来性に期待を寄せた。同講座の運営委員長を務めた笠木伸英東大教授は、ホロニック講座設立の目的を「系統とは違った分散型システム特有の価値を世の中に位置付けたかった」とし、この5年間で具体的な姿が見えてきたと評価。こうした産学連携について「1業界のための技術開発というより、日本のグランドデザインを描ける枠組みを作りたい」と述べた。シンポには約150人が参加した。


沖縄のマイクログリッドを一括受注 東芝
 東芝は1月18日、沖縄電力が宮古島で今秋から実証実験を開始するマイクログリッドシステムを一括受注したと発表した。4千kWの太陽光発電システムを新設するなど国内最大規模の設備で、東芝では初の受注となる。
 東芝が受注したのは、経済産業省の「09年度離島独立型系統新エネルギー導入実証事業」に採択されたもの。宮古島では既設の風力発電(計4200kW)や火力発電(計6万1500kW)、ガスタービン(1万5千kW)に加え、太陽光発電などを新設。出力変動が大きい太陽光発電を既存の電力系統に連系した場合の影響や系統安定化対策に関する検証などを行う。
 基本設計を含むエンジニアリング全般、監視制御システム・蓄電池などの主要機器の納入、太陽光発電システムの建設を含めたプロジェクト全体を一括受注した。太陽光パネルはシャープ製を採用するほか、同社の最新のパワーコンディショナーや監視制御システム、2次電池を導入する。
 東芝では、電力を効率よく運用するマイクログリッドやスマートグリッドの市場規模が今後も拡大することをにらみ、昨年10月、スマートグリッド事業の専任組織を設立。国内外で受注拡大を図り、15年度には売上高1千億円を目指すとしている。


その他の主な記事
・新エネシンポを開催
・環境配慮契約、4月から新基準で
・環境NGOがCOP15報告会
・10月のRPS設備の認定状況
・自家発から系統電力へ 国内クレジット認証結果
・富士経済が世界の風力と太陽光市場を調査レポートに
・豊田通商がアルゼンチンでリチウム開発事業に参画
・新日石が温暖化ファンドに出資
・トステム工場に大規模太陽光を導入
・三菱化学がコンテナ野菜工場を販売
・三菱自動車が電池組み立てを内製化
・中日本高速道路が太陽光を導入
・川重が住金和歌山に蒸気タービンを納入
・カーボンオフセットで基本講座
・川崎で国際環境技術展開催へ
・EV・PHVシンポを開催
・スマートハウスなど SSKセミナー
・2月のJPIエネ・環境セミナー  etc.


シリーズ連載
・日本版グリーンニューディールを考えるE
 =公共交通拡充に利便性追求へ=
 (石田直美・日本総合研究所 創発戦略センター主任研究員)
・カーボン・マネジメント入門(24)
 =自治体が先行する排出量取引=
 (大串卓矢・スマートエナジー代表取締役社長)
・新刊紹介:「地球温暖化の最前線」
 (小西雅子著 岩波書店)



コラム
・発電論評<低炭素時代の自家発電設備の役割>
・ちょっと一休<「墜落した日航」で思い出す人達>
・青空<漠たる不安>
・霞ヶ関から<新成長戦略の13億トンの内容は>


低炭素時代の自家発電設備の役割【発電論評】

 国内排出量取引制度の試行制度として運営されているクレジットモデルに、A重油を燃料とする低効率の自家発電設備から系統電力に切り替えてCO2削減を図るという削減モデルが追加されることになった。これについては少しばかりの居心地の悪さを感じてしまう。
 通常、公共インフラであるネットワーク電力は誰でもが利用できるものであり、それを使うことを前提にして削減目標や拡大目標を決めることが一般的だ。つまり、系統電力と比べてどれだけCO2が削減できるかということで削減モデルの創出に知恵と技術が競われるというのが当然のことだといえる。
 系統電力の場合、電力会社が保有するあるいは調達する電力は様々な方法で発電される。原子力、水力、火力、新エネルギーなど複数の1次エネルギーから転換された電力である。その時々の気象条件や燃料コスト、何よりも電力の需給バランスなどを加味しながら運転する発電所が選択されるため、CO2の排出係数は前もって予定的に算出できるものではなく、あくまでも事後的にしか算出されることはない。さらに、最近では海外のCDMクレジットなども排出係数の算出に利用できることになったため、排出係数だけを単純に比較するだけで、どれだけの削減効果がクレジット化できるのかということに疑問を感じてしまうのである。
 コージェネレーションの省エネ性の議論の場でも以前から似たような議論が続けられてきた。比較する電源を特定するべきではないかという議論である。コージェネレーションによって置き換わる電源は主に昼間のピーク時に運転される石炭などの火力発電なのであるから、全電源ではなくて火力電源と比較すべきであるというものである。
 今回の、自家発から系統へというモデル認証にもそれと同様な問題があるのではないか。自家発を停止した結果、系統火力の運転が増えるというのであれば、どれほどのCO2削減効果が実際にあったのかということは算定が難しかろう。
 本来の削減モデルというのは、低効率の自家発を系統電力に切り替えることに頼るのではなく、低効率の自家発をより高効率なコージェネレーションなどに置き換えることによって削減効果を期待するというものであるべきで、高効率な設備への更新をいかにして支援、促進していくかという方向で制度設計が進められるべきではないか。
 キャップ&トレードの本質は削減努力するものにインセンティブを与えるということにあるのであり、化石燃料の利用を全てネットワークにゆだねてしまうことにつながりかねない今回の削減モデルの追加には、強く異を唱えたいと思う。