2010年 新年特集号
2009年12月25日 2010年1月5日 合併号


全量買い取りにコージェネも ガス協会が要望
 再生可能エネルギーの全量買い取り制度の導入について検討を行っている経済産業省のプロジェクトチームが12月22日の第5回目の会合で、鉄鋼団体や一般消費者などの電力需要家やガス業界からのヒアリングを行った。ヒアリングでは、日本ガス協会がコージェネも燃料電池も再生可能エネルギーに準ずるものとして取り扱い、全量買い取りに加えるべきだとする要望を行った。
 ガス業界の要望は、燃料電池やコージェネは都市ガスなどの化石燃料を使用するため直接的には再生可能エネルギーの定義からは外れるものの、大規模発電所では利用されることなく捨てられている排熱を有効に活用し石油や天然ガスなどの1次エネルギーの使用量を削減する効果があり、再生可能エネルギーに準じたものとして普及促進策を講ずべきだというもの。省エネ効果が20〜30%程度あり、化石燃料の利用電源としてはCO2排出レベルが極めて低いため省CO2効果も期待できることをあげ、低炭素システムとして普及策を講ずべきだと要望した。
 さらに、欧州や米国では、買い取り制度の対象とするなど積極的な導入促進策を講じており、その結果、全発電量に占めるコージェネのシェアは10%前後に達しているのに対して、導入支援策の乏しい日本では3.5%程度と極めて低い水準にとどまっていることをあげ、全量買い取り制度の中でコージェネを位置づけ、高い導入目標を設定して積極的な拡大策を講じる必要性について説明した。買い取り制度によって余剰電力の発生を気にせず熱需要に見合った効率的な運転が行えることでさらなる省エネ化が期待できること、また、コージェネを調整電源として機能させることで大量の再生可能エネルギー電源のネットワークへの受け入れがやりやすくなることなどもメリットとしてあげた。
 需要家からのヒアリングでは、日本鉄鋼連盟と日本商工会議所、日本鋳造協会、一般消費者代表がそれぞれの立場で全量買い取り制度によって無制限に買い取りコストが拡大することに対する懸念を表明した。
 プロジェクトチームは、角界からのヒアリングを今回でひとまず終了し、制度化で先行する欧州へ調査団を派遣、論点整理を行った上で年度内に複数の選択肢を提案する形で中間とりまとめを行うことにした。


東京電力が北海道に風力発電を新規導入へ
 東京電力は、北海道電力管内で、風力発電の導入量を拡大させることを目的に、北海道電力から一定量の電力を購入、北海道電力と共同で風力発電を北海道内に新たに導入すると発表した。
 津軽海峡をまたぐ既設の電力の地域間連系線を利用して北海道電力のネットワークに空き容量を確保することで風力発電の新たな増設を可能にする。5年間に合計10万〜20万kWを目標に共同で風力の新規開発することを両社間で合意しており、新規増設する風力発電の系統連系を可能にできる電力を東京電力が購入する。購入した電力は東北電力管内を託送制度を活用して東電管内まで送電する。
 東京電力は、さらに東北電力とも同様のスキームで東北電力管内で風力発電の新規増設を目的にした電力購入を行う方向で検討しており、風力発電の導入量などの詳細が決まり次第発表するとしている。
 北海道や東北地方は国内でも風況がよく、風力発電の立地点がまだ多く残されているといわれるているが、電力の需要量がそれほど多くない北海道や東北地方では電力ネットワークの空き容量の不足から連系可能容量に制限があり風力発電の増設はほぼ不可能な状態だとされている。
 今回の北海道と東京電力の取り組みは、電力の託送によって北海道の送電線の空き容量を確保して新たな風力発電を受け入れる余力を生み出そうというもの。電力会社はこれまで、地域間の連系線を使用して風力などの電力を受け入れることは電力館の非常用電力の融通に支障がデルおそれがあるなどの理由で消極的だった。
 今回の取り組みは、そうした電力会社の姿勢を再生可能エネルギーを積極的に受け入れる方向へ転換を図るものとして注目される。


川崎重工がGT用の低NOX技術を開発
 川崎重工業は、世界最高レベルの低NOX排出値のガスタービン燃焼技術を開発した。天然ガスなどガス燃料のガスタービンに搭載するドライローエミッション(DLE)燃焼器で予混合燃焼を高度化させ、7千kW級のガスタービンで従来の25ppm以下(O2=15%換算)から世界最高レベルの15ppm以下に引き下げることに成功した。同クラスの国産DLE燃焼器としては初めて排出値15ppm以下を保証するという。
 DLE燃焼器は、燃料を空気と混合させて希薄な状態で燃焼させる予混合燃焼方式を採用することで、水や蒸気の噴射によらずに燃焼温度を低く制御することができる。経済的にNOXの排出量を大幅に削減できることから、DLE燃焼器を採用するガスタービンが世界的に増えている。
 定置式のガスタービンについては、国内外で厳しい排出基準が設けられており、特に米国や欧州ではガスタービンに対するNOX規制を25ppmから15ppm以下に引き下げる州や地域が増加しており、今後はさらに規制地域が拡大する傾向にあるとされている。
 川崎重工ではこうしたNOX規制の強化の動きに対応して実績のあるDLE燃焼器をベースにバーナーの高性能化を図り、特に追い炊きバーナーについては混合性能の高い小型バーナーを採用するなどして、さらなる低NOX化に成功した。将来的には規制値が9ppm程度まで強化されることが予想されており、川崎重工ではこうした規制への対応を図るため低NOX燃焼技術をさらに進化させ、将来的な規制強化にも対応していく方針。


新年企画特集〈バイオマスエネルギー開発の現状と課題〉
 新たな発電用燃料として期待の集まるバイオマス燃料。再生可能エネルギーであるとともに、純国産のエネルギー資源としてもその開発の意義が認識されつつある。製造されたバイオマス燃料をどのような形で利用していくのか、その利用技術の開発普及が不可欠となる。バイオマス燃料は、化石燃料の代替としてボイラーによる直接燃焼やディーゼル、ガスエンジン、ガスタービンといった内燃機関によって熱や電気に転換され利用されることになる。バイオマスを燃料として受け入れエネルギーとして利用するそうした市場をどのように形成していくのかが一方での課題となっている。国内のバイオマス開発は政府が進める「バイオマスニッポン総合戦略」に基づいて、木質バイオマスやバイオエタノールなどの燃料化に向けた技術開発とともに、「地産地消型」の地域エネルギー資源としてその利用を進めるためのモデル事業となる「バイオマスタウン構想」を両輪として取り組まれている。バイオマスタウン構想の現状について、とりまとめを行っている有機資源協会に寄稿してもらうとともに、バイオマス燃料をガス事業者として受け入れるための取り組みを展開している東京ガス、下水汚泥ガスを都市ガスとして製造する市川環境エンジニアリング、資源作物としてヤトロファを生産事業を中国で展開するバイオアグリ、また、バイオマスの利用技術を開発を発電設備メーカーの立場から取り組んでいるヤンマーエネルギーシステム、川崎プラントの5社を取材、バイオマスの燃料利用の現状と技術開発の課題などについて聞いた。
・記事構成
 -分散型発電新市場への期待<編集部>
 -バイオマスタウンの構築とバイオエネルギーへの取り組み<日本有機資源協会(JORA)専務理事 今井真治氏>
 -東京ガスのバイオマス戦略<東京ガス総合企画部エネルギー・技術グループ 担当副課長 高橋克章氏>
 -バイオガスを「都市ガス」で<市川環境エンジニアリング 常務取締役 飯田寛弘氏>
 -中国を舞台に「緑の油田事業」<バイオ・アグリ 代表取締役 梶浦唯乗氏>
 -バイオマス利用を多様な発電システムで<カワサキプラントシステムズ 理事・技術総括部長 島川貴司氏 営業本部 プロジェクト開発部長 坪井伸一氏>
 -小型バイオマス発電でもトップブランドに<ヤンマーエネルギーシステム 営業部エンジニアリング部 新エネルギーグループ課長 林清史氏>

新年特集
・新年の分散型エネルギー市場の課題(「産業革命」に比肩する「低炭素革命」の時代)<柏木孝夫東京工業大学統合研究院教授>
・関係団体・企業の新年の取組 <年頭所感>
 省エネルギーセンター/エルピーガス振興センター/新エネルギー財団/日本ガス協会/天然ガス導入促進センター・エネルギー高度利用促進本部/日本LPガス団体協議会/都市環境エネルギー協会/日本電設工業協会/エネルギーアドバンス/大阪ガス/東邦ガス/ヤンマーエネルギーシステム/川崎重工業/ハタノシステム etc. 順不同

その他の記事
大阪ガスと積水ハウスがスマートハウスを実証へ
・九州電力がオンサイト子会社を設立
・地球温暖化対策技術成果発表会
・ポスト京都の枠組みは先送り COP15
・東京ガスらがSOFCを実証運転へ
・矢野経済が風力発電の市場調査
・トヨタとアイシンが実証用SOFCを提供
・伊藤忠商事が分譲マンションでエネルギーの地産地消  etc.

シリーズ連載
・グリーン革命へのコンセプト・ノート─環境構造改革B
 「失敗だというしかないCOP15」
 竹内恒夫/名古屋大学大学院 環境学研究科教授
・日本版グリーンニューディールを考えるD
 「貨物輸送の低炭素化に鉄道を再評価 」
 石田直美/日本総合研究所 創発戦略センター主任研究員



コラム
・霞が関から<日本外交の無力さを感じたCOP15>
・ちょっと一休<御手洗経団連会長とゴルフ>
・青空<2010年、1年の計は元旦にあり>


新年の分散型、新エネルギー市場を展望する
〈低炭素エネルギー社会を担う分散型ネット−全量買い取りで市場変化も−〉


【分散型エネルギー市場】
 経済や社会活動の基盤となるエネルギー産業には低炭素化という究極の目的が示されている。今後もエネルギー供給システムの低炭素化への要求はますます強くなることはあっても後戻りすることはない。分散型エネルギーシステムにはそうした低炭素エネルギーを中心で支える新たな役割と使命が加わろうとしている。
 国内経済が低迷する中でエネルギー需要も低迷、新たなエネルギーシステムは市場形成の機会がなかなか得られない状況が続いている。新技術を搭載する再生可能エネルギー群は初期コストの回収が難しいことから市場形成が進まない。そのためには2050年に世界のCO2排出量を半減するという低炭素エネルギー社会の実現を見通した確固たるエネルギー政策のもとで、低炭素エネルギーシステムへの転換が必要になっている。
 エネルギー需要の減少が続く中で、政策支援の強化も多くは期待できない状況が続く。民間主導で実需を中心に自ら市場開拓を行う覚悟が迫られている。新たに市場形成を図るには、化石燃料を使用する大規模火力などに代わって高効率で低炭素な分散型エネルギーシステムをどう置き換えていくのかということになろう。政策支援が手厚い太陽光発電を補完する蓄電池やコージェネレーションなどが新たな役割を担う。新年はこうした動きが本格化することになるのではないか。
 電力会社がこうした分散型電源の開発を自ら手がけるという動きがようやく見られるようになった。昨年末には東京電力が自社管内ではなく北海道や東北地方に風力発電を建設するというニュースが飛び込んできた。北海道電力のネットワークの空き容量を増やすことで風力発電の受入量を増加させるという考えだ。従来再生可能エネルギーのネットワークの受け入れに消極的だった電力会社が大きく再生可能エネルギーに対する姿勢を変える動きとして注目される。
 こうした電力会社の姿勢変化の背景としては、25%に代表される低炭素化社会に向けた取り組みが後戻りできないところまで来ていること。また、特に全量買い取り制度や環境税の導入などエネルギー転換が迫られる中で、ガス業界や石油業界が太陽光発電に対する取り組みを強めるなど、電力エネルギーのシェアを浸食する動きが活発化していることなどがあげられる。
 家庭用を中心に普及してきた国内の太陽光発電も規模の大きい業務用や産業用市場への拡大が見通せるようになってきた。ビルや事業場に対する省エネ、省CO2規制が強化される中で、太陽光発電などの自家発電が標準的に採用され始め、建物内の化石エネルギーの利用を限りなくゼロに近づけるというゼロエネルギービル(ZEB)の取り組みも始まっている。


【環境規制と買い取り制度】
 分散型の新たな動きとして注目されるのが、排出量取り引き制度と再生可能エネルギーの全量買い取り制度。排出量取り引き制度は一定規模以上のCO2を排出する事業所にCO2の排出規制をかけるもので、決められた排出枠を下回ると、その分をクレジットとして他社に転売できる、枠を超えた場合はクレジットを購入して相殺できるという仕組み。排出枠をどう決めるのかが問題で、業種別、規模別、また生産量などを勘案して個別の事業所に排出枠を割り振る必要がある。オークションによって必要な枠を購入するという方法や政府が無償で枠を割り当てるという方法などがある。しかし、ポスト京都の枠組みも決まらないままで詳細な制度設計がどこまで進むのか疑問が多く、導入されるにしても相当の期間が必要となるのではないか。環境税の導入も10年度は見送られた。当面は、環境対策として導入が見通せるのは再生可能エネルギーの全量買い取り制度だけということになりそうだ。

【コージェネレーション】
 かつてのオンサイト型の分散型エネルギーシステムは石油価格の高騰から暴騰へという石油市場の激変によって、撤去されないまでも既設の常用自家発電設備の多くのものが運転を休止してしまっている。コージェネを使うオンサイトエネルギーサービスはその市場の大半を失いエネルギー産業としての位置を見失いかけている。
 そうした中で、コージェネの新たな市場として形成され始めているのが家庭用の市場。家庭用はエコウィルに代表される小型ガスコージェネからエネファームの家庭用燃料電池へとその市場を拡大しつつある。燃料電池はまだ価格も高く市場実験的な製品であるが、ガス事業者の積極的な市場化努力や燃料電池自動車の登場もあって「次世代型」の環境エネルギーシステムとしてその認知度を高めている。
 今後は実際の市場の中で普及させるための対策が問われることになるが、既に次世代型のSOFCの開発が急ピッチに行われてきており、コストダウンの可能性が高いといわれるSOFCの商品化にどのように結びついていくのかに関心が移っていくのではないか。
 従来型の自家発・コージェネには今のところ目新しいニュースは期待できないが、天然ガスの利用促進、また、化石燃料を使って唯一低炭素型のエネルギー供給が可能になるコージェネには、スマート化などの試みの中で新たな役割も見え始めてきている。出力の不安定な再生可能エネルギーの拡大には負荷追従性の高い中小規模のコージェネが利用しやすい。蓄電池と組み合わせることで、グリッド全体の効率化を図りさらなる低炭素化も可能にするという役割だ。
 また、バイオマス燃料の利用システムとしてオンサイト型の地域エネルギーシステムの中心となる可能性も開けており、エネルギーの地産地消を支えるマイクログリッドにスマートグリッドの考え方を加えることで次世代型のエネルギーシステムとして期待がかかってきている。

【新エネルギー・再生可能エネルギーの市場】
 新エネルギーという言葉は使われなくなってきた。新エネルギーから再生可能エネルギーへと時代が大きく動いたのだ。
 新エネルギーは化石燃料代替という意味合いが強かったが、エネルギーを取り巻く情勢は脱石油から低炭素へと大きく舵を切り、その結果、新エネルギーから再生可能エネルギーへとその中身を変えることになった。
 そうした再生可能エネルギーに対してもその評価に変化の兆しがある。低炭素社会へ向かうエネルギーシステムとしての一律の評価からエネルギー種別ごとの特性をそれぞれ評価するという動きが加速化している。
 太陽光発電には政策的な支援が集中する傾向にある。他の電源に先駆けて買い取り制度や導入補助の復活、自治体ベースの導入補助など手厚い拡大策が講ぜられている。それに対して風力やバイオマスなど他の電源の支援はおろそかになっているといえる状況が続いている。こうした状況が全量買い取り制度によってどう変わっていくのか。そうした意味からも今後の展開に注目が集まることになりそうだ。