2009年75日号

分散型エネシステム中心に低炭素ガス事業を展開 研究会が報告書
 2050年を見通した都市ガス事業の姿を描き出すことを目的に検討を続けていた「低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会」が、6月30日に開いた第6回の会合で中間報告書をとりまとめた。
 報告書は、現状から60〜80%のCO2排出量の削減が実現する2050年のエネルギー供給システムの中核として、コージェネレーションシステムや再生可能エネルギーを利用する分散型ネットワークを描き出し、都市ガス事業が総合エネルギーサービス事業へと展開するシナリオを描き出した。
 低炭素社会を担うエネルギーネットワークには太陽光やバイオガスなどの再生可能エネルギーを最大限活用し、電気と熱のベストミックスを可能とする分散型エネルギーシステムを需給の両面から有機的に結合するスマートエネルギーネットワークや天然ガスのインフラ整備などを必要な課題として提言した。報告書は、都市熱部会に提出され、「部会の認知」を求めた上で公表され、今後の政策展開の基本的考え方として活用される。
 低炭素社会にふさわしい都市ガス事業として必要な取り組みとして@分散型エネルギーシステムの展開A水素エネルギー社会の構築B産業部門での天然ガスの高度利用C再生可能エネルギー等の導入Dインフラ整備などの基盤的取り組み、の5項目を挙げ、燃料電池を含むコージェネシステムの普及・開発や電気と熱の需要面と供給面を相互管理できるスマートエネルギーネットワークの構築。また水素関連インフラや天然ガス供給インフラの整備などを具体的な課題として整理した。


RPS義務量から買取太陽光を除外
 RPS法小委員会が6月29日に第9回の会合を開き、太陽光発電の固定価格買取制度導入に伴う利用目標量(義務量)の見直しについて検討を開始した。
 この日の会合では、新たな買取制度の導入を踏まえた利用目標量の設定にあたっての基本的な考え方や、太陽光発電の2倍カウントの取り扱い、一般電気事業者とPPS等との間の公平性の確保についての3つを論点として示して議論を行った。
 新たな利用目標量の基本的な考え方としては、固定価格買取制度の対象となる太陽光発電を従来の義務を伴う利用目標量から切り離し、それを除いたその他の新エネを対象に新たに義務を伴う新目標量として整理すること、買取対象の太陽光を含んだものを義務を伴わない利用目標量として別枠で示すという整理方法が事務局案として提案された。
 買取制度に移行する太陽光を義務量から外すことについては、国が価格をコントロールする買取制度では電気事業者が導入量をコントロールできる余地が少ないため、義務量を下回った場合に履行勧告を行うことは適当ではないという理由を挙げ、従来の枠組みでコントロールできるそれ以外の新エネだけを対象に新義務量として新たに設定するという方向が打ち出された。
 11年度から始まる太陽光発電の2倍カウントについては、利用義務から外れる太陽光については2倍カウントの対象からも外し、それ以外のメガソーラなど義務対象に残る太陽光についてのみ2倍カウントを行う方向で制度を残すことで合意された。
 新たな目標量の考え方など結論が得られなかった点については次回以降も引き続き議論が行われる。


排出権の損金化は結論盛り込まず 経産省が報告書
 経済産業省は、排出権取引として利用される京都クレジットの税制上の取り扱いの課題などについて検討した報告書をまとめ公表した。
 企業が自主行動計画に基づく目標達成のために売買する場合や自主的なカーボンオフセットなどに利用するCDMなどの京都クレジットの流通上の課題などを整理した。要望の多いクレジットの損金扱いなどのを会計上の課題については、さらに取引実態を把握した上で、実務的な処理の扱いにの方針について引き続き検討していくとして先送りされた。また、カーボンオフセットで活用されるグリーン電力証書や国内クレジットなどの京都クレジット以外のクレジットについても会計・税務上の取り扱いについて今後の検討課題とするよう提言した。
 報告書は、@政府の口座制度A京都クレジットの会計・税務上の取り扱いB金融関連商品としての取引ルール整備Cクレジットの法的性格の明確化と国際的観点からみた取引ルール整備の4項目について課題を整理し、提言として取りまとめた。


エネファーム燃料処理装置の小型化・低コスト化技術を開発 山梨大学
 山梨大学・燃料電池ナノ材料研究センター(センター長・渡辺政広教授)は、家庭用燃料電池「エネファーム」の燃料処理装置向け新高性能触媒を開発したと発表した。
 燃料処理装置のコストが約20%削減され、また容積も3分の2まで小型化できる可能性があるとしており、エネファーム全体システムのコストダウンと小型化に大きく貢献することが期待される。
 燃料処理装置は都市ガスを水素に変換する装置。現在のエネファームの燃料処理装置では、変換する際に生じるCOは、CO2に選択的に酸化する触媒や膜フィルターを使って処理している。
 今回開発された新触媒は、COをメタン化して処理するもので、0.6〜1.0%という高いCO濃度でも99.9%以上のCO除去率を達成することに成功した。
 メタン化処理の過程では、外部空気を導入する必要がなく空気ブロアが不要となるほか、空気とガスを混合する必要もないため燃料処理装置の大幅な簡素化と、制御システムの簡略化を実現できる。今回の成果はNEDOプロジェクトの一環。


その他の主な記事
・エネ関係2法が成立、買取制度など具設計へ
・低炭素電力システム研が報告書
・IRENAに日本が参加署名
・灯油1日分を国家備蓄
・九州と沖縄でマイクログリッドを実証
・新エネ世界展に5万人
・都23区内にEV充電スタンド14カ所設置
・日機連が優秀省エネ機器を表彰
・エコ燃料利用促進事業者の公募開始
・大阪ガスが太陽熱で空調システム
・三井物産が木屑で国内クレジット事業
・島根三洋が太陽光生産能力を増強
・三井住友銀がクレジットの売買業務を開始
・東京ガス、熊谷支社にも太陽熱利用システム
・日本風力開発が電力管理事業に進出
・深井総研が水から水素を製造
・パナソニックがスターリングエンジンの実証開始
・NEDO09年度省エネ革新2次公募で説明会
・NEDO次世代風力発電研究で追加公募
・NEDO新エネ・未利用エネ調査の委託先を募集
・改正温対法で環境省が説明会
・中小水力補助東北電力など15件決まる
・NEDO09年度エネ使用合理化に278件決まる  etc.

<インタビュー・この人に聞きたい>
・資源エネルギー庁次長 本部和彦氏
 =CO2削減の中期目標について=
 6月10日に政府が発表した温室効果ガス排出削減の中期目標は、05年比マイナス15%というものだった。この数値は昨年、取りまとめられた長期エネルギー需給見通しにおける「最大導入ケース」をベースしたものだが、目標達成の敷居は極めて高い。次期温暖化国際交渉の本番となるCOP15は年末に開かれる。日本のエネルギー政策を牽引する資源エネルギー庁の中心にあって交渉担当者の一人である本部次長に、中期目標のそもそもの意味や政策の方向について語ってもらった。

シリーズ連載
・「今、なぜスマートグリッドなのか」E
 山藤 泰/YSエネルギーリサーチ代表(関西学院大学大学院客員教授)

・公共施設の新エネ・省エネモデルプラン
 高仲日出男/市町村情報ネットワークセンター事務局長
 =第4回 バイオマス利用事業=

コラム
発電論評<低炭素に向かう2つの報告書>
・プリズム<燃料電池自動車の普及遅れに勧告>
・ちょっと一休<初めて聞いた映倫の話>
・青空<役所との協働事業で思う>


低炭素に向かう2つの報告書【発電論評】

 低炭素社会へ向かうエネルギー産業の方向性や課題についてまとめた2つの報告書が相次いで公表された。
 一つは低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会がまとめた中間報告。2050年までの中長期にわたる都市ガス事業者の目指すべき方向性について、分散型エネルギーシステムや再生可能エネルギーを組み合わせて、低炭素で効率的なエネルギー供給のあるべき姿を描き出している。
 もう一つは、低炭素電力供給システムに関する研究会がまとめた報告書。こちらは2030年までの長期エネルギー需給見通しや政府の「低炭素社会づくり行動計画」などの各種目標を達成するために必要な課題や取り組みなどについて、電力事業者の立場から必要な対策を取りまとめている。
 2つの報告書を並べてみると、電力とガス事業の低炭素社会に向けての取り組みの姿勢の違いが浮かび上がっていて、なかなか興味深い。
 ガスの報告書は、CO2排出量の少ない天然ガスなどのガス体エネルギーは、低炭素社会の中でも主要なエネルギー源として活用されることを想定。コージェネレーションを活用した高効率の分散型エネルギーシステムをスマートネットワーク化し、家庭や集合住宅、工場、地域・都市等の様々なレベルで展開することで、電力や熱を効率よく利用できる総合エネルギー産業へ向かう積極的な姿を描き出している。まるで、低炭素社会の中でこそガス事業者の活躍の場が広がると、極めて肯定的に低炭素社会を迎える方向が示されている。
 電力の方は、これとは逆に低炭素社会は様々な課題を電力事業者に押しつけるものだと受け止める内容になっていると読める。2020年に原子力や再生可能エネルギーなどの「ゼロ・エミッション電源」の比率を50%以上にすることや、20年に太陽光発電を現状の20倍、30年には40倍などとする目標の達成には、原子力の稼働率の向上や蓄電池の増設などによる系統安定化策が必要になるとして、それに必要なコストについても試算した。電力需要がピークアウトする中で、電力事業者にとっては多くの課題の克服が必要だと深刻に受け止める姿が描き出されている格好だ。
 低炭素社会に向かうために電力にもガスにも取り組むべき多くの課題があるのは同様だが、それを次の発展に向けた取り組みと位置づけるのか、新たな負担としてネガティブにとらえるのか、考え方の違いが報告書の印象を際だたせていると言うのは言い過ぎか。
 低炭素社会に必要な発電手段として新エネを捉え、電力事業の中で有効活用する方法を考えることはできないのだろうか。