2009.06.15


2009年615日号

CO2削減、中期目標は05年比で15%減
 麻生太郎首相は、6月10日、CO2削減の中期目標を発表した。2013年度以降のCO2削減目標を示すもので、2020年までに05年比で15%の削減を目指すとした。
 中期目標の策定にあたっては、政府内の専門家会議で6つの選択肢を示し、パブリックコメントや世論調査など広く国民からの意見を聞くなどした。05年比15%削減という首相が示した中期目標は、6つの選択肢の中間値で世論調査では最も支持の多かった05年比14%削減案に1%を上乗せしたもの。海外の排出枠の購入を含んでいる米国の14%、欧州の13%に比べてさらに1歩踏み込んだ意欲的なものであり、「オイルショック時のエネルギー効率の改善である30%を上回る33%を目指す」極めて野心的な目標だと説明された。
 ベースとなった14%削減の選択肢は、昨年、経済産業省がまとめた長期エネルギー需給見通しの「最大導入ケース」を下敷きとして算出した数字。首相は、その後、追加施策として示した、太陽光発電を現状の20倍とすることや、再生可能エネルギーを20%程度に拡大するなどの効果を加えて1%の積み増した。14%削減案では、太陽光発電を現状の10倍とすることや、省エネ住宅を新築の80%以上とすること。ヒートポンプやコージェネを2800万台程度普及、新エネ電力を5%程度、原子力発電比率を43〜43%にするなどの対策を想定していた。
 中期目標は年末のCOP15で国際的なポスト京都の枠組みづくりが議論されることを前提に、とりあえずの目標値として示されたもので、国際的な枠組みづくりの交渉の中で、正式な日本の削減目標が決まることになる。


太陽光戦略マップ NEDOが1年前倒しで改定
 NEDOは6月8日、2050年までを視野に入れた技術開発戦略「太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」を発表した。
 国内では今年から住宅向けの補助が再開され、余剰電力の優遇価格購入制度の導入も決められ、市場拡大が本格化しているが、世界市場でのわが国の生産量シェアは25%と大きく低下している。こうした市場を取り巻く情勢の急激な変化に対応し、04年に策定した「PV2030」を1年前倒しして、このほど改定した。
 新ロードマップでは、時間的なスパンを2030年から2050年までに拡大し、同年の国内1次エネルギー需要の5〜10%を太陽光発電でまかなうこと、海外に対しては必要量の3分の1程度を供給することを想定した。
 また発電コストについては旧ロードマップで示した10年以降に23円(kWh)、20年に14円、30年には7円という目標は維持し、その上で、50年までに変換効率40%以上の超高効率電池を開発し、7円を下回る発電コストを達成することを目標に加えた。


省エネ部会が再開 省エネ産業育成へ研究会報告など
 資源エネルギー庁は、6月8日に総合資源エネルギー調査会の省エネルギー部会を開催、改正省エネ法の施行状況と今後の取り組みについての意見交換した。
 今年度から一部施行されている省エネ法の状況と、来年度から本格施行となる法の準備状況について説明を説明し、エコポイント制度紹介や、昨年研究会を設置して検討された「省エネ化と省エネ産業の展開に関する研究会」の検討結果の報告や、新たに設置したゼロエミッション・ビルの実現と展開に関する研究会の検討課題などの報告が行われた。
 省エネ化と省エネ産業についての研究会が今年3月にまとめた報告書では、公共施設でのエネルギー利用実態の見える化や、ゼロエミッション化を進めること。また、エネルギー管理士制度を見直し、エネルギー設計が行える人材育成制度を作ること、ESCOに関する国の契約制度などの見直し、金融機関と省エネ産業の連携強化や省エネ技術の国際展開など、省エネ産業の育成を目指す提言を7項目にまとめた。特に地域産業の情勢に情報をもつ地域の金融機関を通じて、企業の省エネ化を図ることの有効性の提言に注目が集まっている。
 ゼロエミッションビルの実現に関する研究会は、坂本雄三東京大学大学院教授を委員長として今年5月に設置。11月に報告書をまとめる。オフィスビルなどの業務部門のエネルギー消費の抑制に向けて規制と支援の両面から省エネ対策の強化についてなどが検討課題とされている。


ネクストエナジーが独立電源用太陽電池を販売 中国でOEM生産
 リユースの太陽電池の販売事業などを行っているネクストエナジーアンドリソースは、独立型で低コストの太陽電池モジュールを販売すると発表した。販売するのは80W(12V)と120W(12V)120W(24V)の3種類のモジュールで、電源のない山間部や農業用、外灯、キャンプや家庭の庭などでの利用を想定している。
 太陽電池モジュールは、同社が設計したものを中国のモジュール工場でOEM生産し、価格を従来品の3分の1程度に抑えた。中国での生産に加えて、ネット販売に限定することで流通コストを省き、低価格を実現したという。価格は80W型が29800円(税込)、120Wがどちらも3万9800円(同)。3年間の保証付で販売する。
 独立電源として太陽光発電を利用するにはモジュールのほかに、蓄電用のバッテリーや充電用コントローラー、インバーターなどの周辺機器が必要となるが、ネクスト社でセット販売する場合、80Wタイプで10万円程度で購入できる。
 独立型の需要が最近拡大しており、価格の安いリユース製品が品不足となったことから、リユース製品並みの価格に抑えたOEMによる安価な製品を開発した。初年度、周辺機器も含めて1億円の販売を計画している。


富士経済がエネ市場の動向調査、燃料電池は17年に現状の40倍に
 富士経済は、太陽光発電や燃料電池など「環境に配慮したエネルギーシステム」の市場調査結果をレポートにまとめた。
 太陽光発電、燃料電池、2次電池・電力貯蔵システム、熱源機器、自家発電システム、電源品質対策機器、風力発電/バイオマス発電等、照明機器、電動自動車関連、空調・冷暖房機器、電力系統制御関連機器の11分野とその関連市場について現状と2017年までの市場予測結果をまとめた。
 電力エネルギーシステム関連市場は低炭素化対応を迫られる中で、最も伸び率の大きいのは燃料電池市場だと予測。08年度には53億円程度の市場規模だったものが、17年度には2078億円へと、約40倍の市場に成長すると予測した。国の補助制度や固定価格買い取り制度などで市場拡大が期待されている太陽光発電は17年度には6448億円と約3.5倍の市場規模に拡大。風力やバイオマスなど、その他の新エネ市場は約2倍の2064億円、電力貯蔵システムとしてにわかに注目度が高まっている2次電池の市場規模は1.25倍程度の4296億円になる。
 燃料電池については、エネファームの販売をきっかけにガス会社や石油会社の販売活動が活発化、PEFCに加えてSOFCが市場導入されることで、家庭用から業務用また事業用へと用途拡大も見通せると予測している。


その他の主な記事
・ガス事業低炭素化の中心に分散型電源 低炭素ガス事業研
・太陽光の国内出荷量は18%増に(1〜3月)
・新会長に市野東ガス会長 ガス協会が総会
・副会長に小寺、椿氏 LPガス協会が総会
・昭和電工の工場がLNGへの燃料転換を完了
・新日石が燃料電池の開発体制を見直し
・トヨタがPHVをリース販売へ
・豊田自動織機が電気自動車用の充電スタンドを販売
・三菱商事らが太陽電池コストをシミュレーション
・NTTファがエネ管理サービスを拡充
・ネクストエナジーらが百貨店販促用にG電力を販売
・家庭用燃料電池補助金説明会、追加開催
・環境省、カーボンオフセットモデルの募集を開始
・環境省、地域G電力モデルで12府県市を採択
・環境省、09年度CDM事業調査を募集
・NEDO、7月に次世代蓄電技術で報告会
・経産省がクレジットセミナーを追加開催
・農水省、バイオ燃料モデル実証、9件を採択
・カーボンフットプリント、種別算定基準原案の受付を開始 
・中国の水力などCDM39件を政府承認   etc.

<インタビュー・この人に聞きたい>
・自由民主党 逢沢 一郎/衆議院議員
・民主党 細野豪志/衆議院議員
 =中期目標とグリーンニューディール=
 政府の中期目標が発表される直前のタイミングで、自由民主党の石油資源・エネルギー調査会長の逢沢一郎衆議院議員と、政権交代で新たな中期目標の設定を模索する民主党の細野豪志衆議院議員に「中期目標とグリーンニューディール」をテーマに地球温暖化への取り組みと中期目標の位置づけなどについてインタビューした。


燃料電池新聞の主な記事
・家庭用燃料電池、自動車用燃料電池の開発の現状と展望
 −池田宏之助・燃料電池・水素基盤技術懇談会名誉会長に聞く−
 燃料電池・水素基盤技術懇談会の名誉会長である池田宏之助氏は、三洋電機の電池部門の研究開発責任者として1次電池、2次電池、燃料電池の研究開発に長期間携わり、電池の材料物性の特異性や商品化までの困難を身をもって経験。早い時期から、燃料電池の商品化には耐久性や信頼性という側面からの実証・裏付けが必要だと、繰り返し発言してきた。4年前に池田氏に燃料電池開発の課題について話を伺ったが、その後の4年間で、家庭用燃料電池の商品化が始まり、ホンダの「クラリティ」のような燃料電池自動車が登場するなど、燃料電池市場には大きな変化が見られるている。燃料電池は普及段階を迎えつつあるといえるのか、今後の展望についてあらためて伺った。
・積極化する福岡の水素戦略
・ロボットに燃料電池を搭載、ニッセイの取り組み
・家庭用燃料電池向けの最小水処理装置(オルガノ)
・三菱自動車が電気自動車の量産を開始
・荏原が燃料電池事業から撤退
・海外ニュース
 -米エネル1、電気自動車に燃料電池搭載を計画
 -独メルセデスが燃料電池ハイブリッドバスを開発
 -09年「全米水素自動車ロードツアー」が閉幕
 -独プロトン、世界初の燃料電池バスを開発
 -ノルウェーの水素ハイウェイがオープン
 -クライスラーがEV、PHEV開発計画を提出
 -米オバマ政権、バッテリーを次世代産業に
・燃料電池インフォメーション
 ■触媒学会「第2回燃料電池関連触媒の評価・解析法検討会プログラム」
  6月24日(水)13時〜17時30分 東京理科大学森戸記念館(東京都新宿区)
 ■再生可能エネルギー協議会・産業技術総合研究所「第4回新エネルギー世界展示会・産総研シンポジウム」
  6月26日(金)13時〜17時 幕張メッセ(千葉市美浜区)
 ■電気化学会「次世代を展望する固体高分子型燃料電池(PEFC)のカソード触媒と担体」
  7月10日(金)13時〜17時20

シリーズ連載
・<新>「今、なぜスマートグリッドなのか」C
 山藤 泰/YSエネルギーリサーチ代表(関西学院大学大学院客員教授)
・世界を読む(10)<ワックスマン・マーキー法案を巡る議論>
・インサイト(ソーラーシステムの普及に向けてA)


コラム
・発電論評<日本の中期目標が決まったが>
・プリズム<技術革新で差をつけるLNG複合発電>
・ちょっと一休<また、郵便局が閉鎖した>
・青空<防災に気を付けよう!>


日本の中期目標が決まったが【発電論評】

 CO2削減の中期目標が発表された。ポスト京都の枠組みづくりに向けて国際交渉のベースとなるものだと説明されている。目標値が低すぎて、国際交渉の場ではイニシアティブがとれる数値ではないという批判もあるようだが、05年比で15%削減という目標は、果たして本当に達成できるのかという意味で、決して低すぎる目標だとはいえないのではないか。
 政府の説明によれば、目標値はCDMクレジットなどの排出枠の購入は含まれない、純粋に国内での排出削減だけを積み上げた「真水」の目標とされている。
 京都議定書の6%削減の達成でさえ困難で、不足分を海外クレジットで賄おうとしている現状を見れば、海外クレジット分をそっくり国内対策で肩代わりして、さらに上乗せが必要となる15%削減の達成には、新たに有効性のある対策や枠組みが構築されなければならなないが、2020年までに残された時間は後10年余りしかないということを考えれば、現状の枠組みや技術を進化させながら削減対策を総動員する形で進めていくしかない。
 CO2排出量の大半はエネルギー起源のものだ。とすれば、削減対策は燃料の低炭素化をいかに進めていくのかということに尽きる。発電用の燃料を低炭素化する取り組みとして政府が真っ先に挙げるのは、原子力の稼働率の向上と再生可能エネルギーの拡大。しかしながら、柏崎刈羽のような自然災害や事故などによる停止リスクも否定できないのだとすると、原子力に頼りすぎるというのも問題が残りそうだ。
 再生可能エネルギーは、基本的には分散型で中小規模の電源なので、原発のような事故や故障によるマクロ的な影響は少ないといえるが、天候などの自然条件に影響を受けることを考えれば、安定化のためのバックアップが必要になる。
 再生可能エネルギーのバックアップは、系統全体で大規模に行うより、オンサイトで蓄電池やコージェネなどの機動性のあるもので個々に対策する方が、効率的で現実的だといえる。特にコージェネは廃熱利用を行うので、さらに低炭素なエネルギー利用ができる。
 1次エネルギーの低炭素化も忘れてはいけない。水素インフラの整備は間に合わないのだとすると、化石燃料の中でより低炭素な天然ガス利用の比率を高めることも必要で有効な対策だといえる。
 20年までの限られた時間の中で、実効性のあるものは限られた選択肢しかない。再生可能エネルギーの最大導入をテーマとして、それを補完するコージェネレーションや蓄電システムをどのように普及させ、有効に利用できるか、そのインフラ整備が喫緊の課題となっている。官民一体となった取り組みが必要だ。