2009年415日号

ガス事業の低炭素に向け研究会が始動 資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁は、都市ガス事業の温暖化対策を進めるために、「低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会」(座長・柏木孝夫東京工業大学統合研究院教授)を設置して4月6日に初会合を開いた。
 研究会は、都市ガス事業の供給構造を天然ガスの高効率利用技術の開発や、低炭素化などに向かわせるために必要な課題を抽出しガス事業の将来像を描くとともに、家庭や業務部門でのコージェネレーションの拡大や面的利用、産業部門のインフラ整備など、各部門ごとの事業展開の具体的な方向性やバイオガスなどの新エネルギーの利用拡大策などを検討する。また、熱と電気を組み合わせるエネルギーの有効利用や燃料電池を中心とした水素利用社会の構築などを低炭素社会へ向けた具体的な対策として検討する。
 3、4回程度の会合を集中的に開いて、6月中をめどに中間報告をとりまとめる。
 同日の会合では、日本エネルギー経済研究所の小山堅理事、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰首席エコノミスト、日本ガス協会の高橋晴樹副会長・専務理事の3氏によって、天然ガス・LNGを巡る世界の情勢や、天然ガスの資源量、高度利用と低炭素化に向かう都市ガス業界の取り組みなどのプレゼンテーションが行われた。
 プレゼンテーションでは、今後のエネルギー価格の動向・水準によっては、利用可能な天然ガスの資源量は更に拡大し、将来的にも豊富な供給量が期待できることや、メタンハイドレートの開発によって国産エネルギー資源として大量供給が期待できること、そのためにも、天然ガスの高効率利用や面的利用などの高度利用技術の開発が重要であること。インフラ整備によって水素利用社会に向けた中核エネルギーとして期待できることなどが説明された。


太陽光10年で20倍に 麻生首相が新提案
 麻生太郎首相が4月9日、「新たな成長に向けて」と題する新成長戦略を発表した。低炭素革命、健康長寿社会、日本の魅力の発揮の3つを成長に向けての柱として、当面する3年間で累計40兆〜60兆円の需要と140万〜200万人の雇用の創出。2020年には実質GDPを120兆円押し上げ、400万人の雇用創出の実現を目指す。
 第1の柱として掲げた低炭素革命では、地球温暖化問題を21世紀の最大の課題の一つと位置づけ、2020年までに太陽光発電の規模を現在の20倍にし、太陽光導入量を世界一にすることや、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーを新車の50%にするなど、具体的な目標を掲げた。
 実現を目指す低炭素社会では、太陽電池、電気自動車、省エネ家電を新たな「3種の神器」と位置づけ、国内のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20年までに20%に引き上げるという新たな目標を掲げた。特に、太陽光発電については、昨年の福田ビジョンで示された20年までに現状の10倍にするという目標を更に前倒しで加速させ、20倍という目標に書き換えた。現状の2倍の固定価格買い取り制度の導入や、全国3万6千の公立の小・中・高校に、今後3年間で集中的に設置するなど、新たな政策の実行などによって5年以内に太陽光発電システムの製品価格を半減させ、普及に弾みを付ける。
 日本の再生可能エネルギーの導入政策はRPS法を中心として進められているが、導入量は販売電力量の2%未満にすぎないのが現状。新たな目標が具体的に示されたことで、今後のRPS法の運用などを含めて、日本の新エネ政策は抜本的な見直しを迫られることになりそうだ。


低温水から蒸気を回収 東京ガスなど3社で共同開発に成功
 東京ガスと荏原製作所、三浦工業の3社は、工場内で発生する90度C程度の温水を、加熱や殺菌に利用できる160度C程度の蒸気に変換するシステムを開発した。
 システムはガスコージェネの冷却用温水にも適用でき、排ガスボイラーから得られる蒸気と合わせることで蒸気量が増大し「コージェネ全体システムの効率を5%程度押し上げる」(三浦工業)。
 3社は実証導入を経て10年度の商品化を目指すことにしており、システムの規模にもよるが「5年以内で導入コストの回収が可能な価格にする」(東ガス)考えだ。
 90度C程度の温水は工場のさまざまな工程で発生する。ただ温度が低く利用方法が限られるため、多くは未利用のまま廃棄されていた。
 開発したシステムは、こうした未利用温水を低圧化することで蒸気に変換し、従来の蒸気ボイラーから得られる蒸気と混ぜることで160度C程度の蒸気にする。蒸気ボイラーの稼働を抑えることができるため、エネルギーの使用量を26.5%削減できるほか、CO2排出量も年間で434トン減らせるという。
 荏原が温水の低圧蒸気化技術、三浦が低圧蒸気の昇圧技術とシステムし制御技術、東ガスが試作機試験を担当する。


グリーン電力活用へ取引所の設立を 新エネ財団が提言
 新エネルギー財団は4月10日、水力、地熱エネルギー、太陽エネルギーの3分野について導入促進に関する提言を行った。
 3万kWクラス以下の中小水力発電開発の支援や温泉熱、地中熱を利用したヒートポンプの推進、また、住宅用太陽光発電の普及に向けたグリーン電力証書の活用や、同証書のための取引所創設を提言している。
 3月17日に開催した新エネルギー産業会議(議長・荒木浩・東京電力顧問)で取りまとめた。昨年の提言は燃料電池やバイオマスなども含め6分野を対象にしていたが、今年度は3分野に絞り込んで提言した。
 水力発電については、低炭素社会構築に貢献する純国産の再生可能エネルギーとして、新規開発と既設水力の有効活用を重点課題としたエネルギー施策の確立を提言。
 政策支援として、1千〜3万kWの水力に対する送電設備を含めた建設費助成や、1千kW未満の水力への電源3法交付金の交付、老朽水力の更新工事への助成拡大、河川法、自然公園法の許認可手続きの簡素化を求めた。
 地熱の分野では、地熱発電は新エネルギーの対象となっているものの、実質的には「バイナリー発電」に限定されていることから、この制限的取り扱いの廃止を盛り込んだほか、電気事業法の規制緩和、環境影響評価の効率化、さらに、温泉熱の直接利用や地中熱利用ヒートポンプを新エネルギーとして推進することが必要だとした。
 太陽エネルギーについては、グリーン電力基金やグリーン電力証書の普及を加速するための方策として、環境付加価値を取り扱う「住宅用太陽光発電グリーン電力証書取引所」と、最低価格保証制度の創設を提言。
 また集合住宅や公共・産業用、メガソーラーの普及促進や、太陽電池産業の育成・強化策として、シリコンなど原材料の戦略的調達支援、世界市場への対応などを求めた。


その他の主な記事
・国内排出量取引協議会が設立総会
・環境省がカーボンオフセット推進ネットを設立
・産総研がメタン開発にセンターを設立。
・東ガスなど未利用温水の蒸気化システム開発
・大京が京都大学でESCO
・昭和シェルが日立宮崎工場を買収へ
・新日石がバイオガソリンを拡大
・ネクスト社が太陽光の中古販売事業
・伊藤ハムの工場に30kWの太陽光
・ジャパンエナジーと出光が水素と燃料削減で連携
・三菱電機が太陽光発電で独立型電源
・ミサワホームが太陽光住宅を標準化
・旭化成ケミが木質バイオマス発電
・日本生命がグリーン電力契約を1年間延長
・凸版印刷が太陽電池用バックシートを量産
・全国5カ所で地球温暖化の中期目標に関する意見交換会
・東京都の排出削減義務制度対策で緊急セミナー
・国交省が建設業・運輸業省CO2モデルを募集
・太陽光発電工事で研修会
・市民風車の出資者を募集
・欧州バイオDMEの勉強会
・石油連盟が09年度環境対応型ボイラー補助募集
・風力発電システムの普及基盤整備事業を公募
・07年度温室効果ガス排出量集計結果を公表
・バイオエタノール革新的生産システムの開発委託先決まる
・5月27日からビッグサイトで電設工業展   etc.

<インタビュー> 低炭素時代の経営戦略
・エネルギーアドバンス 三浦千太郎 代表取締役社長
 =天然ガスコージェネでグリーンジョブ=
 東京ガスから分社化、設立して7年目を迎えるエネルギーアドバンス(ENAC)は、事業規模も事業内容もともに急拡大を続け、エネルギーサービスプロバイダー(ESP)という事業モデルの発達とともに進んできている。サブプライムショック以降の景気低迷の影響は避けられないが、低炭素経済に向かう長期的なトレンドが変わらないのであれば次の事業展開に向けた準備期間と割り切ることができる。三浦社長はインタビューの中でそのように語った。


燃料電池新聞の主な記事
・家庭用SOFCの最新動向
 次世代の家庭用燃料電池として実用化開発が急がれるSOFC。NEDOプロを中心とした開発の最新状況をレポート。
・NEDOがPEFCの技術課題を整理・公表
・ワイヤレステクノロジー2009 5月にパシフィコ横浜で開催
・海外ニュース
 -伊ベニスで燃料電池水上バスを開発
 -米カンサス州で燃料電池列車の走行試験開始
 -ダイムラーが夏から欧州で燃料電池車を限定販売
 -独バクシ社、家庭用燃料電池を開発
 -08年のマイクロ燃料電池市場調査
 -日産、英バーミンガム市で燃料電池車の走行試験開始
 -GM、PHEV、EVの開発を加速
 -シェルがクリーンエネルギー投資から撤退
 -米リンデ社がイオン液体を使った水素圧縮機を開発
 -米プラグパワーの2008年決算
 -英ロイヤルメールが燃料電池配送車を統一化
 -米プロトン社が電解で高圧水素を製造
 -マレーシアのプロトン社、電気自動車を開発
 -米エアプロダクツ社、配送センターに水素ステーションを設置
 -中国政府、ハイブリッド車と電気自動車で世界の主導権を握る計画
 -ホンダ、秋から欧州で「FCX Clarity」の走行実証試験を開始
 -米セントラルグロッサーズ、配送センターに燃料電池パレット車を配備
 -米サバンナリバー国立研究所、アオコ(藍藻)などから大量に水素を製造する方法に注目
 -米DOEの水素プログラムマネージャ、水素エネルギー投資継続と講演で
 -フォード、燃料電池車からHEV、EVへ開発をシフト
・燃料電池フラッシュニュース
 -日産自動車、リチウムイオン電池の生産拠点をポルトガルに建設
 -三菱自動車とプジョー、欧州向け電気自動車を共同開発
 -NEDO、家庭用燃料電池の新しい補機プロジェクトを実施
 -NEDO、次世代自動車用蓄電池のロードマップを公表
 -ノリタケ、PEM燃料電池の電極向け混合ペーストを事業化
 -東北大、圧力制御だけで水素を吸脱着する炭素物質を開発
 -新日本石油、市販灯油仕様の家庭用燃料電池を開発
 -マイクロ燃料電池、日本規格が国際標準として採用
 -福岡県、10年3月に「水素エネルギー製品研究試験センター」を開設
 -タイガースポリマー、燃料電池スタック向けシールパッキンを増産
 -サッポロビール、ブラジルの石油会社とバイオ水素の共同開発
 -マツダ、「プレマシー ハイドロジェン REハイブリッド」のリース販売を開始
 -積水ハウス、環境配慮型住宅「グリーンファースト」の販売開始
 -日清紡、白金代替のカーボンアロイ触媒を開発
 -東京理科大、中温域で作動する電解質を開発
 -昭和シェル石油と岩谷産業が運営する有明水素ステーション、充填累計3,000台を達成
 -東京ガス、水素の製造効率を落とさずにCO2排出量を減らす技術を実証
 -名古屋大など、化学反応をライブで観察できる大型電子顕微鏡を開発  etc.
・燃料電池インフォメーション
 ■水素エネルギー協会 第128回定例研究会(平成21年5月14日(木)14:00 〜17:10タワーホール船堀小ホール(江戸川区)
 ■電気化学会 第69回新電池構想部会(平成21年5月21日(木)13:00〜17:00東京国際フォーラム会議室(G409)(東京都千代田区)
 ■燃料電池開発情報センター 第16回燃料電池シンポジウム(平成21年5月12日〜13日)

シリーズ連載
・世界を読む(8)<ボンで開かれた作業部会>
・<新>カーボン・マネジメント入門J
 「クレジットの環境価値と税務問題」
 大串卓矢・日本スマートエナジー代表取締役社長
・<シリーズ企画>プラントメンテナンスの現在
 その5=公益事業のIT化を支援するEAM=

コラム
・発電論評<電気は運ばず、創り出す>
・プリズム<充電、商社が強化する環境エネ部門>
・ちょっと一休<埼玉の飯能に久しぶりに行く>
・青空<太陽光発電を思い…>


電気は運ばず、創り出す【発電論評】

 2050年までにCO2排出量を60〜80%削減する。再生可能エネルギーなどのCO2フリー電源を50%以上にする。再生可能エネルギーを2020年までにエネルギー消費量の20%以上に引き上げる。
 いずれも、この1年ほどの内に、官邸主導で進められた低炭素社会へ向かうエネルギー政策として示されたものだ。低炭素社会でのエネルギーシステムは、再生可能エネルギーと原子力発電という図式が描かれている。原子力発電は、事業用電源設備の30%を超えており、今後の増設計画では40%程度が目指されているが、電力需要の伸びが期待できない今、それ以上の大幅な増設は難しい。残りは大規模水力を含む再生可能エネルギーと石炭、石油、天然ガスの火力発電だが、CO2削減対策は、原子力の稼働率の向上と、火力の効率向上、CO2の回収貯留などが示されているばかりで、目新しい低炭素対策はみられない
 これが、供給サイドの対策といわれるものだが、もう一つの対策は需要サイドの省エネ。省エネによって、エネルギーの使用量を抑えることで削減効果が期待できる。
 最近になって、太陽光発電の大量導入が打ち出されて、再生可能エネルギーの拡大への突破口として、また新たな産業創出として期待を集めている。
 太陽光発電の拡大は、事業用電力の抑制=省エネ効果=と余剰電力の受け入れによる系統電力の排出係数の低減=火力発電の利用率の抑制=効果が期待できることになっている。しかしながら、受け入れ側の電力事業者からは、大量の逆潮流電力による系統への悪影響を懸念する声が圧倒的で、歓迎する声は全くというほど聞かれないのはどうしたことか。
 電気は事業用の他にも自家発によって作られるという観点に立てば、全く違った世界が見えてくる。遠くの発電所で発電され、送電線を使って運ばれてくるというこれまでの常識にとらわれず、電気は自ら手軽に発電するものという新たな「常識」である。
 レジャー用などの携帯発電機、家庭用のエコウィルやエネファーム。さらに、太陽光発電と、生活に身近な場所で「自家発」が普及し始めている。それでも、不足する分は系統電力で補われており、まだまだ補完電源という役回りに抑えられている。電気は系統によって運ばれてくるという常識が、自家発を補完電源としてしか見られなくしているのではないか。
 もう一つのネットワークである都市ガスやLPガスからも手軽に発電できる時代になった。系統を利用せず電気を創り、貯めることもできる。エネルギーの流通や消費のスタイルが一変する。そんな時代が、もう間もなくやってくる。