2009年215日号

中環審部会が「固定価格買い取り制度」導入を打ち出す
 環境省は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大に向けて、電力会社の固定価格買い取り制度の導入を目指す方向で検討を開始した。
 政府の低炭素社会に向けた行動計画で示された太陽光発電を20年までに10倍、30年までに40倍にするという導入目標を、固定価格買い取り制度などの更なる政策支援を行うことで現状の55倍の導入量が見込まれると試算、再生可能エネルギー導入の一層の拡大を目指す。2月10日に開かれた地球環境部会で、環境省が独自に行ってきた検討会での検討結果を報告した。
 それによると、現在実施されているRPS制度に基づく導入目標量は販売電力量の2%未満と極めて低水準であり、再生可能エネルギーの拡大を図るにはRPS制度だけでは不十分であるとの考え方を示し、ドイツやスペインなどで成功したといわれる固定価格買い取り制度の導入に向けて政策的な検討を開始するよう提言した。
 固定価格買い取り制度の導入に当たっては、電力会社にコスト的な負担を押しつけるのではなく、再生可能エネルギーの買い取りコストを「見える化」した上で、電気料金に上乗せしてコスト回収できるようにする。その際の一世帯当たりの負担額は1カ月当たり260円程度と試算している。 太陽光発電が目標通りに導入された場合、2020年までの経済効果は約30兆円、30年までには約60兆円程度が見込まれること、CO2削減効果は20年時点で約5千万トン(基準年比約4%の削減効果)が見込まれ、雇用創出高価は約60万人が見込まれるとしている。
 また、導入拡大に向けては、システム価格の提言などの技術開発支援も不可欠であり、@公共部門での率先導入A20年に1kW時当たり14円、30年に7円程度の発電コストを実現する技術開発B低利融資制度などの金融支援の拡充C普及啓発活動の4項目に、固定買い取り価格制度を加えた5項目の支援策を組み合わせて実施することを提言している。


電力のCO2排出係数をCDMでオフセット
 経済産業省と環境省は温対法に基づき公表される電力事業者別の温室効果ガスの排出係数に、電力各社が購入するCDMなどのクレジットでオフセットした調整済みの排出係数も合わせて公表することにした。これによって、実際の発電に伴って排出される全電源平均の従来通りの排出係数とCDMクレジットなどでカーボンオフセットされた排出係数の2種類が示されることになる。3月に新たな基準を通達として示し、新年度から新たな排出係数を公表する。
 従来の排出係数は、0.555kgCO2/kWhのデフォルト値が標準係数として使用され、それを下回る電力会社は独自の排出係数が公表されていた。新制度によってデフォルト値は廃止され全電力会社の排出係数が公表される。デフォルト値に変わる値としては卸電力や自家発電などを合計した平均値が代替値として示され、同時に公表される。
 電力会社は、自主行動計画に基づいて、90年比でCO2排出源単位を20%削減することを目標に掲げているが、原発稼働率の低下などが原因で、目標未達成の状態が続いている。このため、電力業界として不足分については京都メカニズムに基づくCDMなどのCO2クレジットを調達することで目標達成を目指している。
 今回の排出係数の併記は、調達済みのCO2クレジットを排出係数に反映させることで、需要家の原因に拠らない見かけ上の排出量の増加を抑えることが可能となる。電力業界は当初オフセット後の排出係数に一本化することを求めていたが、ダブルカウントを避ける観点もあって2つの係数を併記することにした。


東京ガスが太陽熱利用の高効率空調システムを実証へ
 東京ガスは、太陽熱を利用した「高効率ソーラー空調システム」の実証を4月から開始することにした。川崎市中原区のある同社の「東京ガス中原ビル」(床面積約3900平方m)の屋上に約140平方mの高効率の太陽熱集熱器を設置、夏場は太陽熱駆動吸収冷温水器で冷熱に変換し冷房に、冬場は暖房に直接利用する。太陽熱が不足する場合は都市ガスで加温するが、変化する気象条件や空調負荷に対して太陽熱を優先して利用できるように同社が開発した最適制御システムを組み込み、システムの省エネルギー性を確認するとともにエンジニアリングのノウハウを蓄積、実証データを開発にフィードバック。10年度からの商品化を目指す。
 太陽熱利用は太陽光発電に比べて高いエネルギー変換率が期待できるところから、その拡大が課題となっており、東京ガスでは、熱供給を主体に行う都市ガス最大手企業として、率先して太陽熱利用技術の確立と普及に取り組む。


都がC&T導入へ制度案を公表
 東京都環境局は、昨年改正した環境確保条例に基づく新たな制度を開始するに当たってパブリックコメントの募集を始めた。改正条例では、エネルギーの大量消費事業者(原油換算1500kL以上)を対象にCO2排出量の削減計画の提出を求め、一定の削減義務を課す。
 削減計画期間は10年度からの5年間で、以降5年ごとに計画期間ごとに新たな削減基準を定めることにする。こうした削減義務制度の導入によって、都は20年度に00年度比で都内のCO2排出量を25%削減することを目標としている。
 削減義務量は、地域熱供給の割合が20%未満のオフィスビルなどが8%、それ以外のオフィスビルなどは6%。工場や上下水施設、廃棄物処理施設などはそれ以外の施設に該当する。トップレベルの事業所は削減率を2分の1に減じる。
 削減義務量の達成には都が実施する排出量取引制度も利用でき、超過削減量は制度を通じて売却譲渡もできる。また、グリーン電力証書の利用もできる。


ENEX2009 最新の省エネ省CO2システムなど紹介
 省エネルギーセンター主催の「ENEX2009」が、2月10〜12日までの3日間、
東京・有明の東京ビッグサイトで開かれ、128企業・団体による省エネ・新エネ関連の最新機器や、システム展示などが行われた。
 産業、業務用を対象としたビジネスゾーンや家庭用を中心としたスマートライフゾーンなどで、それぞれ低炭素社会に向けた取り組みを紹介。発売が目前に迫っているエネファームや高効率ソーラー空調システム、バイオエタノール・バイオガス同時回収システム、ヒートポンプを利用した省エネ機器など、再生可能エネルギーを活用した小規模の分散型エネルギーによりさらなるCO2削減を目指すシステム提案などが注目されていた。
 ENEXではこのほか、優良ESCO事業や省エネ大賞の表彰式、また省エネルギー技術講座などが行われ、多くの参加者でにぎわった。大阪会場は2月19〜21日までインテックス大阪で開かれる。


その他の主な記事
・CO2排出削減「中期目標」に6つの選択肢
・農林水産物にも省CO2をラベル表示
・カーボンフットプリント制度案を取りまとめ
・シャープが太陽光ネットモニター証書取引も
・東京ガスが家庭用省エネ診断レポートを実証へ
・NTTFがエネルギーモニタリングサービスを提案
・バイオエタ開発へ6社が研究組合を設立
・新日石がENEOSラボを拡充
・川重冷熱がグリーンジェネリンクを発売
・シャープが県庁駐輪場に太陽光充電装置
・三菱重工がベトナムにCCS技術を供与
・日立グループがCO2削減量を5%上積み
・住宅・建築物省CO2モデル事業募集
・水素インフラなど実証でNEDOが公募
・NEDOが09年度SOFC実証先を募集
・優良ESCO事業6件決まる
・エコポイント等CO2削減のためのモデル事業公募
・3月にNEFがPEFCとSOFCで報告会
・中小企業のCO2削減支援43件決まる
・高効率エネシステムとBEMS支援募集
・経産省がバイオマス利用拡大でセミナー
・バイオマスタウン構想、新たに4市町村決まる
・ブタノールの生産・利用調査は三菱テクノ    etc.


燃料電池新聞の主な記事
・特集<第5回国際燃料電池展 FCEXPO2009>
 燃料電池の最新技術、スタック部材や周辺機器、評価・測定装置、水素製造関連装置などを集めた、世界最大の燃料電池に関する総合展示会・セミナー「第5回国際燃料電池展(FC EXPO 2009)」が2月25日(水)から東京ビッグサイト西展示棟を会場にして開幕する。主催はリードエグジビションジャパン。会期は27日(金)までの3日間で、500社以上の企業が出展、海外からもスタックメーカーやスタック部材メーカーなど75社以上の企業がブースを構える。昨年を上回る規模と内容で、新規出展企業も60社以上で、昨年から併催されるPV EXPO 2009第2回国際太陽電池展とほか、二次電池フェアが新設され、昨年以上に多彩な展示会となる。主な見所などを紹介。
・本格販売目前のエネファーム =販売各社の取り組みを聞く=
 家庭用燃料電池の一般販売が今春から始まる。東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガス、新日本石油、アストモスエネルギーの6社は1月28日、東京都内で、家庭用燃料電池「エネファーム」の販売開始と普及に向けた共同宣言を発表。09年度から世界に先駆けて「エネファームで環境立国ニッポンへ」という共同メッセージを掲げ、エネファームが低炭素社会を実現する中心的役割を担うこと、日本が環境立国として世界をリードする存在になることを宣言した。経済産業省は「長期エネルギー需給見通し」の中で、家庭用燃料電池を含めた家庭用コージェネを、2030年までに累計で250万台普及させる目標を掲げている。これは原子力発電所約2基分の発電容量に相当する。09年度から、エネファームの導入支援として約61億円の補助金を予算計上し、設置者に対して導入費用の2分の1、140万円を限度額として補助金も交付される。都市ガス会社、LPガス会社、機器を製造・販売する7社のエネファーム開発状況を始め、事業化の展望や開発課題、コストダウンの見通しなどを紹介。【紹介例】○5年間で4万2千台のマイホーム発電を目指す/東京ガス○集合住宅も視野に新築住宅市場を開拓/大阪ガス○FCシステムから燃料まで一貫した事業を展開/新日本石油○FC開発で先行、家庭用に特化し商品化/東芝燃料電池システム○耐久性は4万時間、当面は都市ガス仕様で/荏原バラード○LPG特約店中心に販売網を構築/アストモスエネルギー(出光興産)○総合効率は93%、実用域で高い発電効率/パナソニック
・海外ニュース
 -米社が低温作動が可能なSOFCを開発
 -米イリノイ大が世界最小の燃料電池を開発
 -米GMがリチウム電池を内製化へ
 -08年にエフォイを約5千台販売、独のSFC社
 -独メルセデスが次世代自動車3種を同時発表
 -燃料電池の出荷台数が13年には500万台に
 -加バラード社の売り上げ08年は増、09年も倍増見込み
 -豪CFCL社など英国向け家庭用CHPを商品化
・燃料電池フラッシュニュース
 -大阪大学がギ酸から水素触媒を開発
 -「発電ヘーベルハウス」キャンペーンを実施
 -帯広畜産大と住商が牛ふんアンモニアで燃料電池
 -トヨタがPHVを09年末に発表
 -07年度のSOFC運転結果公表 新エネ財団
 -昭和電工がカーボンセパレーター事業を推進
 -新日石が100社の燃料電池代理店網100社
 -三洋電機と新日石が薄膜太陽電池で合弁会社設立
 -日清紡がセパレーターの生産を集約・効率化
 -産総研が耐久性を3倍に高める触媒担体を開発
 -東京農工大が燃料電池向け非白金系触媒を開発
 -フジクラが出力密度5倍のDMFCを開発
 -スウェーデンハウスがエネファーム付住宅を販売へ  etc.
・燃料電池インフォメーション
 ■エネルギー・資源学会「平成20年度第2回講習会 『電動車両と2次電池』」2月24日(火)9時30分〜16時50分 大阪科学技術センター(大阪市西区)
 ■水素エネルギー協会「第127回定例研究会」3月5日(木)14時〜16時40分 東京工業大学100年記念館  etc.

シリーズ企画
・キーパーソン「地球温暖化問題に関する懇談会メンバー」 環境ジャーナリスト 枝廣淳子さん
・新刊紹介:「地球の目線−環境文明の日本ビジョン」<竹村真一著 PHP研究所>

シリーズ連載
・世界を読む(7)<グリーンニューディールが後押しするIRENAの設立と意義>
・インサイト<分散型実務の話題>省エネルギー技術開発戦略@

コラム
・発電論評<オフセットされる電力の排出係数>
・プリズム<燃料電池に残される様々な課題>
・ちょっと一休<新宿・花園神社で医療論議>
・青空<民意を反映した政治とは>


オフセットされる電力排出係数【発電論評】

 電力のCO2排出係数がカーボンオフセットされることになった。経産省と環境省は、温対法の届け出に利用される電力の排出係数に実際の排出量を反映させた実排出係数とCDMクレジットなどでオフセットした排出係数の2種類を併記して使用できるようにすることにした。
 電力の排出係数は、電力業界が京都議定書の目標達成計画に基づく自主行動計画の目標値として90年比で排出原単位の20%の削減を約束している。ところが、最近の原子力発電の稼働率の低下が主な要因となって、達成はほとんど不可能になっている。これを補う手段として、電力業界ではCDMなど京都議定書で認められたクレジットを海外から調達し、不足分をオフセットするということにして、調達を進めている。
 今回の措置は、目標達成のために調達したクレジットを実際の排出係数に反映させて、電力需要家が温対法に基づいて報告書に記載するCO2排出量の低減に役立ててもらおうということだが、電力業界が求めたオフセット値への一本化ではなく実係数とオフセット係数の2本立てということになったのは、供給側と需要側でのダブルカウントを避けるという判断があった結果だといえる。
 運用に当たっては、この点の留意があらためて必要になるとともに、オフセット値を用いることで、需要側の省エネ努力が後退するという結果にならないような配慮が必要になる。需要側で、省エネを検討するに当たっては、省CO2を測る尺度は購入している電力との比較になることが多い。コージェネを導入するかどうかの判断基準も、コストやCO2排出量などを従来の電気料金や排出量とを比較して検討することになる。
 その場合、実際の削減効果は高いにもかかわらず、比較の対象がオフセット値となった場合、需要側の省エネ投資を抑制することにつながることが心配される。国外のクレジットによって、国内での削減努力が妨げられることがないように、オフセット値の運用に当たっては慎重な配慮が望まれる。
 とはいえ、電力側がCDMクレジットを活用して排出削減努力を行うという姿勢は、正しく評価されるべきもので、その成果を数値として反映したオフセット係数を認めるというのも妥当なものだといえる。
 排出係数のオフセットの手段としては、今回は時期尚早として見送られたグリーン電力証書や国内クレジット制度によるクレジットも候補に上っている。電力会社の省CO2努力を評価できる仕組みを整えることで、電力会社がこうした国内クレジットを積極的に採用して、排出係数をオフセットするという取り組みが積極化することが期待される。