2008年1115日号

グリーン電力の卸取引を開始
 経済産業省は、11月17日から、卸電力取引所で「グリーン電力」の取引を開始する。発電過程でCO2を発生しない原子力、水力、風力、太陽光など、発電過程でCO2を排出しない電力を「グリーン電力」と規定して一般の電力とは別枠で取引できるようにする。グリーン電力を取引所で購入できるのは一般電気事業者やPPSで構成される取引所の会員企業に限られるが、グリーン電力の販売は風力や水力などの発電事業者も参加できる。
 また、これと合わせて、電力事業者間の取引を目的としてCDMクレジットも卸電力取引所の取引商品に加え、売買できるようにする。
 7月に総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会がまとめた「今後の望ましい電気事業制度の詳細設計について」を受けて、来年度からの開始を予定していたものを前倒しして実施することにしたもので、取引する「グリーン電力」には、クレジットを使ってCO2排出係数をゼロに調整した「カーボンオフセット電力」も対象に加えることにしているが、これについては、来年4月からの取引開始を予定している。
 「オフセット電力」として使用できるクレジットは、京都メカニズムに基づくCDMクレジットに限定する考えで、JIクレジットや、「国内クレジット」については取引の対象としない方針。
 グリーン電力取引は、取引所の電子掲示板を使用して、取引単位は月間1万kWh以上とする。取引手数料は、売り手と買い手が、それぞれ1kWh当たり0.03円(税抜き)を負担する。
 CDM取引は、取引所会員限定の取引とし、京メカクレジットのCDMクレジットに限定し、電子掲示板を使って売買できる。取引単位は1万トンCO2で、売り手と買い手が、それぞれ単位当たり2千円を負担する。
 CO2排出係数ゼロの電力が取引所を通じて、一般電力とは異なる価格が形成され流通することで、これまでエネルギー取引で経済的価値が認められていなかった「電気の環境価値」が顕在化することになることや、電力事業者が販売する電力のCO2排出係数の削減やなどに役立つことなどが期待されている。


コージェネシンポ開催、パネルディスカッションや講演で今後の市場展望など
 「コージェネレーションシンポジウム2008」(日本コージェネレーションセンター主催)が11月5、6の両日、東京・大手町の経団連会館で開かれた。コージェネ関連技術の開発動向の紹介やアジアのコージェネ動向の解説、また今後のコージェネの将来を展望したパネルディスカッションなどが行われ、2日間で500人を超す参加者が集まった。
 技術開発の紹介では、実証試験で連続運転1千時間を達成したダイハツディーゼルとJFEエンジニアリングのDME燃料ディーゼルエンジンや、ガスエンジンでは初めて2流体サイクルシステム要素技術開発などを行い、発電効率50%超を達成した三菱重工業らの8千kWガスエンジン・コンバインドシステムなどが報告された。
 また、エネルギーサービス会社であるダルキアアジアの氏岡庸士・アジア事業開発部長が、アジアにおけるコージェネ普及の現状などをテーマに講演した。中国で地域暖房を導入する場合、省エネ法によるコージェネ利用促進の動きや都心部の高密度開発など導入の追い風は吹いているものの、インフラが老朽化しており料金規制が不明確な上、経営システムが遅れているなど課題が多く、投資もかなり必要だとした。
 このほか「分散型エネルギーを支えるコージェネシステムの展望」と題したパネルディスカッションでは、山藤泰・YSエネルギー・リサーチ代表をコーディネーターに、京セラ、コージェネテクノサービス、川崎重工業、NTTファシリティーズ、日建設計総合研究所の5社をパネラーに迎え、議論が交わされた。
 導入拡大が期待される再生可能エネルギーに関しては、出力が不安定な部分はコージェネがバックアップするという意見で一致したが、再生可能エネはコスト面で割高なため、普及に時間かかるという課題も残された。また、10月から試行された国内排出権取引市場の参加については、各社とも制度の動向を見ながら検討していくという慎重な姿勢を示した。


J−VER制度が発足、カーボンオフセット用に国内クレジット
 環境省は、カーボンオフセットに使える国内のCO2クレジットを発生・流通させるための仕組みとしてJ−VER制度を発足させた。同制度の創設に向けて検討を行ってきた「カーボンオフセットに用いられるVERの認証基準に関する検討会」の第6回の会合を11月11日に開き、「オフセットクレジット(J−VER)制度案」を取りまとめ、制度の発足に踏み出した。14日には第1回の認証運営委員会を開催しクレジット創出のモデル事業の募集を開始した。
 J−VER制度は、カーボンオフセットの取り組みが国内でも活発化してきていることを踏まえ、オフセット用のクレジットや流通・販売の市場を創出することで、国内でのCO2削減に向けた民間ベースの自主的な取り組みを促す仕組みとして考え出されたもの。現在流通しているクレジットの中心が信頼性の観点から京都メカニズムに基づくCDMクレジットや、グリーン電力証書に頼っていることから、新たに信頼性のある国内クレジットの創出をめざす。
 クレジットは、環境省が設立するJ−VER認証委員会が認証したプロジェクトによって発生したものを検証機関による検証を受け、管理登録簿に登録して利用できる。クレジットの移動はWeb上の登録簿を通じて行い、購入・譲渡されたクレジットは個人や企業がカーボンオフセット用のクレジットとして利用でき、商品などにその旨の記載ができる。
 10月に発足した、排出権取引の国内統合市場で用いられる「国内CDM」クレジットと内容的にはほぼ同様の仕組みのものだが、互いに整合性はなく、J−VER制度は国内統合市場とは別枠で独立したオフセットクレジットの創出制度として運用される。
 認証プロジェクトは、あらかじめ示された事業例(ポジティブリスト)に基づくものを認証する方式で、モデル事業などを通じてリストを順次拡張していく。


07年度国内排出量が増加、基準年比8.2%増に
 環境省は11月12日、2酸化炭素やメタン、1酸化2窒素といった温室効果ガスの07年度の総排出量(速報値)が、過去最高となる13億7100万トンだったと発表した。06年度実績より2.3%伸び、京都議定書で定められた基準年(90年)を8.2%上回る結果となった。
 京都議定書目標達成計画では、森林吸収源対策で3.8%、京都メカニズムで1.6%の削減分を見込んでおり、それを除いた9.3%の排出量削減が必要となる。
 前年度に比べ排出量が増加した原因としては、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の全面停止など原子力発電の利用率の低下や、渇水による水力発電電力量の減少に伴う火力発電の電力量が大幅に増加したことによる電力の排出原単位が悪化したことが主な要因としてあげられている。原子力発電の利用率や水力発電の出水率が計画通りで、電力の排出係数が目標値の0.34kg−CO2/kW時だったと仮定した場合には、06年度比で0.8%の減少、基準年比では0.5%の微増だったという試算結果を合わせて公表している。


アブダビで、日本の産学協同の集光式太陽熱発電を実証試験
 三井造船は、コスモ石油らがアブダビで実施する集光式の太陽熱発電実証プラントを受注したと発表した。実証設備は、コスモ石油とアラブ首長国連邦アブダビ政府機関のMASDARが共同で東京工業大学と締結した共同研究契約で使用する設備。
 100kWの集光太陽熱発電実証プラントをアブダビ国際空港の隣接地に建設し、商業化へ向けた課題抽出などを行う。建設する集光太陽熱発電プラントは敷地全体に反射鏡を敷き詰めて、中央のタワー上部に搭載した中央反射鏡に集光、地面に設置した太陽炉に再反射させて高温の液体を作って発電するもので、東京工業大学の玉浦裕炭素循環エネルギー研究センター教授が研究してきたもの。すでに商業化されている他の方式の太陽熱発電以上の低コスト化が目指される。


その他の主な記事
・太陽光拡大へ政府がアクションプランを公表
・総合エネ調・政策小委で代エネ議論を中間整理
・国内CDMに5件が応募、ヒートポンプや天然ガス利用など
・北海道電力が風力募集期間を延長
・中国電力が風力連系で募集再開へ
・伊藤忠商事が米国でバイオマス発電事業
・日立がレアメタル無用のモーターを開発
・川重が韓国からコージェネ用発電設備を受注
・JパワーがCO2分離回収試験を開始
・ユーラスエナジーが里見風力を買収
・東北大が地域分散型エネを研究
・竹中がジャガイモ残渣からバイオエタノールを製造
・富士経済が業務用エネルギーの需要調査レポート
・JSRがリチウムキャパシタで新工場
・07年度エネルギー需用、3年連続でマイナス
・HPでエコ・アクション・ポイント Tカード社
・エコ燃料利用促進2次2件決まる
・電設工業展2009出展者募集
・4期自主参加型排出権取引制度参加者募集
・有機資源協会、熊本でバイオマス視察
・1月に東芝本社でGTセミナー
・政府が中国の再植林プロのCDM案件を承認
・ブタノールの生産・利用で調査委託先募集
・蓄電池の市場ニーズと研究開発の方向性に関する調査募集
・全国8地区で国内クレジット制度説明会    etc.


燃料電池新聞の主な記事
・コージェネシンポでの燃料電池の市場展望
・日本原子力が技術開発、アルミに直接水素貯蔵
・アクアフェアリーが携帯機器用の燃料電池重電機を開発
・フレインエナジーが英国の水素インフラ構築に協力
・富士電機システムが燃料電池事業を強化・拡大へ
・海外ニュース
 -中国で電気自動車の普及とインフラ整備推進
 -独SFC社「エフォイ」累計出荷台数1万台を突破
 -加バラード社がインドの通信会社にバックアップ用燃料電池
 -インド・バラと石油が家庭用燃料電池で新日石と交渉
 -家庭用燃料電池実証試験、独、英で開始
 -インドの国立研究所が高温作動で安価な電解質膜を開発
・燃料電池フラッシュニュース
 -日清紡、燃料電池用カーボンセパレーターを増産
 -東京ガス、都市再生機構が実施する団地の省エネ化研究に参加
 -NECトーキン、リチウムイオンキャパシタのサンプル出荷開始
 -京セラソーラー、住宅用太陽光発電システムの販売網拡大
 -和泉プロパン、燃料電池と太陽光発電を複合させた家庭用発電システム実証に着手
 -三菱化学、リチウムイオン電池部材事業を拡大
 -GEリアル・エステート、オール電化マンションなど環境対応を加速
 -北海道ガス、10年度から寒冷地仕様の家庭用燃料電池を発売
 -旭化成、出力を5倍以上高めたリチウムイオンキャパシタ開発
 -トヨタ、10年発売の新型ハイブリッドミニバンにリチウムイオン電池搭載
 -新日石「福岡水素タウン」で家庭用燃料電池「エネファーム」1号機を設置
 -福岡県、自治体で始めて水素ステーションを設置
 -マツダ、ノルウェーで水素ロータリーエンジン車の公道走行を開始
 -日本合成化学、水素などのガス透過量を大幅に減らすビニール樹脂を開発
 -三菱電機、オール電化機器の系列販売店での拡販を支援強化
 -新日石、地方の都市ガスにも家庭用燃料電池システムを供給
 -三菱自動車、PHVをEVベースで開発
 -日立、米イートン社から商用車向けハイブリッドシステムを受注
 -北陸先端大、カーボン触媒の働きを解明
 -東京理科大、内部が3分の1以上空洞のナノカーボン物質合成
 -ダイキン工業、新聞紙1枚のスペースに貯湯ユニットが置けるエコキュートを発表
 -武田薬品工業、営業車両に電気自動車をリースで導入
 -ホンダ、クリーンディーゼル車の市場投入を延期
 -経済産業省、住宅用太陽光発電の導入で7万円/kWの補助額を決定  etc.
・燃料電池インフォメーション
 ■化学工学会関西支部「水素・燃料電池ワークショップイン姫路2008」 11月17日(火)ホテル日航姫路(兵庫県姫路市)
 ■電気化学会「第44回境界領域における電気化学セミナー」 11月28日(金)明電舎大崎会館(東京都品川区)
 ■水素エネルギー協会「第28回水素エネルギー協会大会」 12月11日(木)〜12日(金) タワーホール船堀5階小ホール(東京都江戸川区)  etc.

シリーズ連載
・<新>カーボン・マネジメント入門B
 「温室効果ガスの算定基準」
 (大串卓矢・日本スマートエナジー代表取締役社長)
・インサイト・分散型実務の話題(温室効果ガスの大幅削減戦略A)
・世界を読む(5)<オバマ米次期大統領の再生可能エネルギー政策>
・<トップクラスに聞く>
 低炭素時代の経営戦略
 =ニーズにベストフィットしたエネルギーソリューション・川崎重工業=
川崎重工業はより優れた製品の開発と、自社からのCO2排出削減を両立させることに挑んでいる。高効率の純国産ガスタービンや世界最高の発電効率48.5%のグリーンガスエンジンを始めとするクリーンな製品群は、環境エネルギーの時代を担うエネルギーシステムとしてますます注目が高まっている。低炭素社会に向かう川崎重工業の経営戦略を長谷川聰常務取締役・ガスタービン・機械カンパニープレジデントにインタビューした。
・キーパーソン
 「クールでポップな環境ムーブメントを」
 GREENSTYLE事務局 kick―o伊藤(伊藤吉幸)さん

コラム
・発電論評<グリーン電力取引が顕在化させるもの>
・プリズム<太陽光アクションプランの持つ意味>
・ちょっと一休<自動車殿堂入りした美安達子さん>
・青空<幼なじみとの再会>


グリーン電力取引が顕在化させるもの【発電論評】

 グリーン電力の市場を通じての取引が開始されることになった。証書取引とは違って、発電者が直接取引所にグリーン電力を持ち込んで販売することも可能になる。
 グリーン電力の市場取引の持つ意味は、初めて電力の環境価値に値段が付くということだろう。発電過程でCO2排出がないという価値、すなわち、CO2ゼロに対する経済的価値が市場で数値化されるということだ。CO2の経済的価値を計る仕組みとしては排出量取引制度も並行的にスタートしており、こちらは、CO2を削減した価値が経済的価値として市場で取引される。
 排出量取引の場合は、1トンあたりのCO2の削減量がクレジット化され取引されるが、グリーン電力の場合は、少し価値基準が異なっていて、比べるものによってグリーン電力の持つ環境価値=CO2価値が異なってくる。
 環境価値の比較対象となるのはグリーン電力が置き換えることになるエネルギー、つまり、通常の場合は電力会社が供給している電力の排出係数ということになる。ところが、これが結構複雑で面倒なことになっている。
 電力会社の供給している電力の排出係数というのは一つではないからだ。
 電力会社は、毎年前年度の供給電力の排出係数を公表している。省エネ法での届け出に使用するためであるが、これとは別に全国平均の排出係数として使用できるデフォルト値というものもある。これらの排出係数は、全ての電源を平均した、いわゆる全電源平均という係数である。排出係数は、電源ごとの算出も可能で、火力平均の排出係数もある。特に、グリーン電力やコージェネレーションなどによって置き換える電力は昼間のピーク時のものが多いため、比較の対象は火力平均にできるようにするべきだという考えも相当強くあり、長期間にわたる論争になっている。
 グリーン電力の環境価値を計る尺度としては、全電源平均か火力平均か、どちらがふさわしいのかということなのだが、さらに、グリーン電力を使って、空調や給湯などガスや石油の代替エネルギーとして熱に転換して使う場合も考えられ、置き換える対象が異なることで環境価値も変化することになり複雑だ。
 また、グリーン電力の環境価値が、取引価格として顕在化することで、風力発電や太陽光発電、バイオマス発電など今まで考慮されていなかったRPS法に基づく取引でも、現在は価格に反映されず、電力会社に無償で移行されているグリーン電力の環境価値があらためて問われるという問題もある。
 グリーン価値の顕在化は、使用するエネルギーの選択を需用者側にわかりやすく示すという観点からの整理が、あらためて必要になってくるのではないか。