2008年1025日号

国内排出量取引制度を創設、参加企業の募集を開始
 政府は、CO2クレジットの国内排出量取引制度の統合市場を創設し、試行的実施に踏み切った。10月21日に地球温暖化対策推進本部(本部長・麻生内閣総理大臣)を開催し具体的な制度内容を取りまとめ、参加企業の募集を開始した。
 排出量取引の国内統合市場は、京都議定書目標達成計画に基づいて、国内の温室効果ガスの排出削減に寄与することを目的に試行的に実施されるもので、自主行動計画に基づいてCO2削減に取り組んでいる企業の参加を促し、排出枠の融通を市場を通じて行うことで、国内でのCO2削減活動に弾みを付けることを目的としている。
 市場で取引されるのは参加企業が自主的に掲げた目標以上に削減できた国内クレジット(今回新たに制度化)や京都メカニズムの基づくCDMなどの「京都クレジット」で、削減目標を上回って削減できた排出量をクレジットとして売却・流通させることや、目標の不足分を市場を通じて購入することで、京都クレジットと同様に自社の目標達成に利用できるようにする。
 参加企業の削減目標は自主目標として定めるが、自主行動計画の目標と排出実績を比較し、厳しい方を削減目標とすることを求めるなど、国内全体の排出量の実質的な削減が進む方向で制度が運用できることを前提とする。
 また、市場がマネーゲーム化することを排除するために、「安易な売りすぎ」防止策として排出枠の9割以上を償却時期前に取引するのを禁止することや、排出枠の翌年への繰り越し(バンキング)や借り入れ(ボローイング)の措置を認める。また、取引価格指標の提供や価格暴騰対策として政府の介入も認めるなどの対策を講じている。
 参加は事業所、個別企業、企業グループとし、業界団体の参加は原則として認めない。参加企業の削減目標は、目標設定や、期間中の排出量の検証などを認証機関などの第3者認証を受ける。
 政府は制度の開始に伴って、12月中旬まで参加企業を募集する。未達成企業に対する罰則などは特に設けられていない。


国内クレジット制度も創設
 国内排出量取引制度の発足に合わせて、国内クレジット制度も創設された。
 国内クレジット制度は、自主行動計画などの削減目標を定めていない中小企業等が自主的に削減したCO2排出量をクレジット化して売却できるようにすることで、削減事業に必要な省エネ投資のコスト回収に役立てることを目的としている。省エネ投資を行う上で資金や知識が不足している中小企業に、削減目標を持つ大企業などが資金や技術を提供し、共同でCO2削減事業を実施、大企業側は削減分をクレジットとして回収し、削減目標の達成に利用したり、市場で売却したりできるようにする。
 省エネの進んだ大企業が自社で削減事業に取り組むよりも、低コストで排出削減が行えるなどのメリットが期待でき、省エネ法の対象外で、削減対策が遅れている中小企業での対策を促す取り組みとして期待されている。創出されたクレジットは、国内取引市場の対象クレジットとして扱われる。
 国内クレジットの創出のため、政府は具体的な削減事業として「国内クレジットアイデア事例集」として、オンサイトエネルギーサービスやESCO事業の活用、太陽光発電やバイオマス燃料の活用、コージェネシステム利用によるCO2削減などを具体的な削減モデルとして100のアイデアを事例集にまとめ公表した。モデル事業を参考にして中小企業などの削減事業への取り組み意欲の向上に役立てる。


ヤンマーと大ガスが35kWのミラーサイクルガスコージェネを開発
 ヤンマーエネルギーシステムと大阪ガスは共同で、35kWマイクロコージェネレーションシステムを開発した。11月から販売を開始する。
新たに開発したミラーサイクルガスエンジンを採用し、クラス最高の発電効率34%を達成している。インバーターの並列運転機能を拡張し、停電時に最大8台までの並列運転ができるなどの独立運転の機能も高め、非常用電源としての電力供給能力も大幅に向上させた。通常運転の場合は最大16台まで運転制御ができる。台数制御運転により35kWから560kWまできめ細かい負荷追従運転が行うことが可能で、部分負荷運転による効率低下が避けられ、システム全体の高効率運用が可能となるなどのメリットもある。
 ヤンマーエネルギーでは、マイクロガスコージェネレーションシステムとして5kW〜25kWまで5機種をラインアップ化しており、これまで、福祉施設、病院、飲食店、温浴施設、店舗、工場、ホテルなどに向けに4132台、このうち大阪ガスでは2330台の販売実績がある。
 両社は、今回、上位機種として高効率の35kW機を加えたことで、病院やホテルなどの給湯負荷の大きい既存の設置先に加え、停電対策などの電源セキュリティーの強化や、既設の中小型のコージェネシステムの更新用など向けに販売活動を強化していく方針。


東京電力が川崎市と共同でメガソーラーを建設へ
 東京電力は川崎市と共同で、神奈川県川崎市の浮島、扇島地点において、合計出力約2万kWの太陽光発電所を建設するメガソーラー計画を進めていくことで合意した。11年度の運転開始を目指す。
 川崎市は、太陽光発電所の一部土地の提供や太陽光発電の普及啓発活動を推進し、東京電力は、電力供給設備としての太陽光発電所の建設・運転を担当する。
 浮島地区には、川崎市が所有する浮島1期廃棄物埋立処分地に約7千kWの太陽光発電所を、扇島地区には、東京電力が所有する土地に約1万3千kWの太陽光発電所を建設する。また、太陽光発電等のPR施設として、川崎市が浮島処理センター内にPR施設を設け、川崎市民をはじめ、広く太陽光発電等の普及啓発活動を行う。
 2つの発電所の合計出力約2万kWは、太陽光発電所としては国内最大級で、年間の発電電力量は約2100万kWhを見込み、CO2排出量削減効果は年間約8900トンを見込んでいる。
 東京電力など、電力10社は2020年までに国内30地点で合計14万kWの電力事業用のメガワットソーラーの導入を順次行うことを表明している。既に、九州電力と関西電力が合計3万1千kWの導入計画を公表している。東京電力では、初めてのメガソーラー建設となる。


その他の主な記事
・ビルのベンチマーク案、省エネ判断基準で検討
・電気、ガスの燃調制度など見直し開始
・バイオ燃料品質確保で事業者登録制に
・九州電力のオール電化に排除命令
・日本経団連が温暖化防止の取り組み状況をアンケート
・ポーランドからもクレジットを購入
・フレイン・エナジー、英国研究センターと提携
・コスモ石油がエタノール生産に進出
・パナソニックがモバイル燃料電池(日経記事)
・京セラ、家庭用太陽電池モジュールも大型化
・帝人がバイオマス発電
・積水ハウスと住友信託が温暖化防止ローン
・電中研が連系装置を開発
・三菱EVを京都府で実証
・日立建機が林業機械をオフセット
・海外排出量取引動向セミナー
・都市環境エネシンポ開く、カーボンニュートラル都市がテーマ
・排出権実務セミナーを開催
・CDM案件、新たに20件を承認
・ESCO事業で説明会
・エコ・アクション・ポイントモデル事業始まる
・Gエネルギー利用拡大セミナー、全国で開催
・びわ湖環境ビジネスメッセ2008
・海外排出量取引動向で講演&パネル  etc.

シリーズ連載
・<新>カーボン・マネジメント入門A
 「見えないCO2排出量を意識する」
 大串卓矢・日本スマートエナジー代表取締役社長)
・原油価格高騰の真相
 =金融危機はいつまで続くのか=
 寄稿:岩間剛一和光大学経営学部教授)
・メーカーの今を探る
 =可搬型発電機でシェア60%・デンヨー=
・書評:「飛躍するドイツの再生可能エネルギー」書評
 「 飛躍するドイツの再生可能エネルギー」<和田武著・世界思想社>

コラム
・発電論評<国内排出量取引制度が始まった>
・プリズム<「公共料金」に回帰する電気料金>
・ちょっと一休<ウズベキスタンのホテル>
・青空<株価の乱高下が止まない>


国内排出量取引制度が始まった【発電論評】

 国内排出量取引制度が、いよいよ始まった。福田政権の置きみやげともいうべきこの制度は、環境省や経産省が独自に取り組み、あるいは取り組もうとしていた自主参加型の類似制度を国内市場として統合し、整備されることになった。制度の目的は京都議定書の目標達成ということとされており、期間限定の試行的取り組みとなる。このため、クレジットの買い手は、目標達成計画の中で自主行動計画の削減目標を持つ大企業中心の産業界であり、クレジットの出してとして想定されているのは、具体的な削減目標を負っていない中小企業や、CDMなどの海外から調達された京都クレジットの保有者、自社の削減目標以上にCO2排出量を削減した余剰排出量などである。
 日本の排出削減目標である、90年比マイナス6%のうち、目標達成計画では、そもそも1.6%分は京都クレジットによって賄われることになっている。また、産業部門の自主行動計画でも、各セクターの不足分は京都クレジットで補うことが前提となっており、産業構造上、エネルギーの使用量を減らすことに限界がある電力や鉄鋼などを中心に既に大量の京都クレジットの調達が始まっている。
 国内排出量取引制度は、こうした海外に流出するクレジット調達資金の一部を国内の削減事業に振り向けることで、資金を国内に環流させることで、国内での削減活動の活発化を促し、先進的であるとされている日本の省CO2技術をさらに進化させることにつなげるという期待も込められている。
 取引の最大の成果として期待されるのは、「CO2に経済価値をつける」ということになると思われる。これまで、省エネ投資による経済的価値は、使用エネルギーが削減できることによるランニングコストの低減というだけであり、省エネ投資の回収条件が厳しいことも設備更新が進みにくい原因だとされていた。これに削減したエネルギー分のCO2排出量の売却益が見込めるようになれば、省エネ投資意欲を後押しする有効なツールとして期待できるという訳である。
 先行する、欧州の取引市場では、1トン当たり20〜25ユーロ程度で取引されている。昨今の為替市場の激変で、円換算は難しい状況だが、2500円〜3千円程度といったところか。日本の先行市場として試験的に数年間取り組まれている環境省の自主参加型の取引市場での取引価格実績ではその約半分程度であった。
 省エネ設備機器だけでなく、エネルギーサービスやESCO事業者にとっても、CO2削減量をコスト削減資金として計算できることになる。新たなマーケットの広がりにつながることを期待したい。