2008年815日号

新エネ導入コストは12兆円、エネ庁が2020年までの試算を公表
 低炭素電力供給システムの構築に向けて資源エネルギー庁は、再生可能エネルギーの導入が政府の見通し通りに進んだ場合には、2020年までに12兆円、その後の10年間でさらに20兆円程度の導入コストが発生するという試算をまとめた。8月8日に開催した第2回の低炭素電力供給システムに関する研究会で公表した。
 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーシスのシステム導入コストに加えて、系統安定化に必要な蓄電池設備などの設置コストを加えた。2020年までの12兆円の内、6兆円分は太陽光発電を1千万kW導入した場合の併設蓄電池の導入コスト。
 研究会では、新エネルギーを大量に導入した場合の系統安定化対策やこれに伴うコスト負担のあり方について検討の重点を絞り込み、あらためて小委員会を設置して検討を進めることにした。小委員会は初会合を8月末にも開く。
 検討課題となるのは、系統安定化のために必要になる系統強化費用や、出力の不安定な新エネルギー電源の出力安定化対策。後者は蓄電池の併設費用などで、蓄電池併設費用としては、新エネ設備を導入する発電側が蓄電池を併設する場合と系統に受け入れる電力会社側が導入する場合が考えられている。
 また、太陽光発電が大量導入される場合に必要となる系統対策としては、家庭など導入側での対策や、配電系統の強化、蓄電池の設置、揚水発電の活用、火力等によるバックアップと調整、地域間連系線の活用などをあげ、具体的なコストなどを検討する。
 各対策の内容と必要となるコストなどを検討して、最終的なコスト負担をユーザー側にどのような形で負担を求めていくのか検討することになる。


東京ガスが木質バイオマス発電事業に参画
 東京ガスは、木質バイオマス発電事業を予定している「吾妻バイオパワー」(群馬県前橋市)に出資し、同発電事業に参画すると発表した。
 吾妻バイオパワーは木くずチップを燃料とした発電事業を行うため、木質バイオマス発電所の建設を今月から開始しており、10年度からの運転開始を目指している。
 同社の資本金は7億5千万円で、オリックスが95.56%、東ガスは4.44%出資する。
 同県東吾妻町に循環流動層ボイラーを利用したバイオマス燃料専焼の発電設備(1万3600kW)を建設し、年間約13万トンの木くずチップ(せん定枝など生木50%、建築廃材50%)を燃料に発電する計画。木くずチップは県内などのチップ業者約20社が供給する。
 事業期間は15年間。発電電力は新エネルギー電力として認定されることになっている。東ガスは発電電力の全量を購入し、PPSのエネットなどに供給していく。


RPS価格は4・9円、前年度と変わらず
 資源エネルギー庁は、RPS電力の07年度分の取引価格の調査結果をまとめた。電力会社やPPS各社が購入している取引価格をアンケート調査によってまとめたもので、調査は今回で5年目。07年度に義務量があった電力会社とPPSを合わせた電気事業者28社の回答結果を集計した。
 RPS電力価格は「RPS相当量のみ」は平均で4.9円(加重平均価格・回答数83件)で、前年度と変わらず。「電気のみ」の取引価格は9.3円(同・22件)だった。電気のみの取引価格はPPSだけの調査結果で、前年度に比べて1.5円のプラス。電力会社分の平均価格は集計されていない。
 また、「RPS相当量+電気」では、最も回答数の多かった風力が10.4円(同・221件)、水力7.2円(同・102件)、バイオマス7.8円(同・180件)という結果だった。前年度に比べて風力は値下がりし0.3円のマイナスだった。水力も1.2円のマイナス、バイオマスは0.1円プラスだった。
 太陽光は電力会社によって売電価格と同価格で買い取り制度が設けられているが、07年度の家庭用の最高価格は24.1円、最低価格は18.8円、業務用は最高12.9円、最低8.7円で前年度と変化がなかった。
 RPS電力は、義務量の超過分を余剰として翌年度の義務履行に充当できるバンキングが大量にあるところから、取引価格も低いままに安定した状態が続いている。
 風力の最高価格は21.0円(相当量+電気=以下同じ)、最低価格は7.0円で、最高、最低ともに前年度と変化がなかった。水力は最高が13.0円、最低は3.5円で最低価格が1.0円のマイナスだった。バイオマスは最高が13.5円で、最低は4.0円。最高が1.5円のマイナスだった。
 RPS相当量のみの最高は、7.0円、最低は2.0円。最高、最低と前年度と変わらなかった。


防災用自家発は4年ぶりに90万kW台を回復【07年度の設置状況】
 防災用自家発電設備の07年度の国内設置状況がまとまった。消防用設備などの非常用電源として設置される自家発電設備の認定を行っている日本内燃力発電設備協会(竹野正二会長)が、毎年この時期に前年度の設置状況をまとめ発表しているもので、07年度は前年度に比べ台数で2.6%増、設備容量では7.9%増の5975台、90万4737.5kWが設置され、単年度の設置量では03年度以来四年ぶりに90万kW台を回復した。
 100kW〜500kWまでのMクラス、500kW〜1千kWまでのLクラスでの増加幅が大きく、旅館・ホテル、共同住宅、工場・作業場など向けが好調だった。
 メーカー別では、最も導入台数が多かったのは、ヤンマーエネルギーシステム。次いで東京電機、西日本発電機、三菱電機、三菱重工業が上位5社。設備容量順では、ヤンマーに続くのは、川崎重工業の10万7230.0kW。10万kW以上の設置量があるのは、ヤンマーと川崎重工業、三菱電機の3社。
 原動機別では、ディーゼルが台数で95.9%、設備容量で67.6%を占める。残りはガスタービン。別統計で発表されている常用発電との兼用機はディーゼル7台(5250kW)、ガスエンジン7台(5580kW)、合計14台1万830.0kWで、前年度に比べ台数で51.7%減、設備容量で31.5%減と大幅に減少している。


〈特集〉低炭素社会に向けた自治体と企業の新エネルギー技術開発事情
 自治体や企業が中心となって取り組む、地域のエネルギー開発の最新事情を、単なる技術開発だけではなく、低炭素型のまちづくりや地域振興の視点から特集する。国の新エネ導入拡大の支援策として注目される「次世代エネルギーパーク構想」をテーマとして、実際の地域の取り組み例として、7月2日に開催された、水素エネルギー産業会議から、愛知県の「あいち臨空新エネルギーパーク」および青森県の「六ケ所村次世代エネルギーパーク」について、担当者の講演を収録した。そして、愛知県にフォーカスを当て、新エネルギーパークにとどまらない、地元企業の低炭素社会への取り組みを紹介する。

その他の主な記事
・石連がボイラ2次補助
・経産省電力落札は今年もエネット
・都が太陽熱証書で基本方針
・政府が総合経済対策で省エネ新エネを加速
・環境対応型ボイラー2次募集
・羽藤省エネ・新エネ部長の就任会見
・地銀41行がG電力を共同購入
・三菱重工がブルガリアで風力事業
・富士経済が太陽電池調査
・三菱重工が韓国から太陽光を受注
・三洋電機が太陽光で新工場
・5月のRPS認定設備
・エコ燃料拡大補助5件決まる
・エネ合理化戦略2次公募説明会
・08年度太陽光FT委託先決まる
・国内バイオマス視察、東京で
・カーボン・オフセットモデル事業公募9件決まる
・08年度業務部門別導入補助24件決まる
・バイオマスタウン構想、2町村決まる
・LPG研究成果発表会
・IHIがGT発電機を4基を豪から受注
・大ガス、泉北天然ガス発電で子会社2社設立
・日本ガイシ、NAS電池生産能力を増強    etc.


燃料電池新聞の主な記事
・白金を使わない電極材
・日産自動車が燃料電池を開発
・ガス給湯器の最新事情
・米国における燃料電池車普及シナリオ
・家庭用燃料電池は何台売れるか?
・海外ニュース
 -北京オリンピックに20台の燃料電池車が登場
 -世界の燃料電池の市場規模は415億円
 -バラード、アイダテックにDMFCスタックを5千台供給
 -米郵政公社、集配を代替燃料車両に切り替え
 -米MIT、水の電気分解で酸素を効率的に安価に発生させる新触媒を開発
 -シーメンス、SOFC事業を売却
 -英ITMパワー社、安価な家庭用水素供給装置を開発
 -米MTI、韓国ネオソーラー社とUMPC用燃料電池を共同で開発
 -独SFC社、高いエネルギー密度を有するDMFCを開発
 -ポリフューエル社、ノートPCに装着したDMFC開発
・燃料電池フラッシュニュース
 -九州大学、小型燃料電池向けに白金使用量を半減できる触媒を開発
 -日本精線、パラジウム薄膜を使った水素分離膜を開発
 -三菱自動車、09年夏から電気自動車の一般販売を開始
 -ルノーと日産自動車、ポルトガル政府と電気自動車で協力
 -日清紡と東工大、白金触媒を代替できるカーボン触媒を開発
 -トヨタと物材機構、次世代2次電池などの共同研究を開始
 -JFCC、電極材料の改良でSOFCの出力を20%向上
 -豊橋技科大学、交互積層法によるDMFCセル、水素ガスセンサーを開発
 -NEDO「水素の有効利用ガイドブック」をホームページで公開
 -産総研、フレキシブルCIGS太陽電池を開発
 -日清紡、千葉にセパレーターの新工場を建設
 -NTT環境エネルギー研究所、1kW級SOFCで発電効率54%
 -トヨタや日産など、リチウムイオン電池の規格統一に向けて動き出す
 -東京ガスなどガス事業者、15年度をメドに給湯器をすべて省エネ型に転換
 -日本ガイシ、NAS電池の生産能力を年間15万kWに増強
 -新日鉄、廃棄物を高温で分解して水素を取り出す技術を開発
 -日産、電気自動車でテネシー州と協力、インフラを整備  etc.
・燃料電池インフォメーション
 ■電気化学会 燃料電池研究会第101回セミナー 9月17日(水)電気化学会会議室(東京都千代田区)
 ■電気化学会 第74回SOFC研究会 9月26日(金)笹川記念会館(東京都港区)
 ■炭素材料学会 第4回スキルアップセミナー 9月5日(金)全林野会館 プラザ・フォレスト(東京・文京区)  etc.

シリーズ連載
・インサイト(環境ビジネス)
・書評:「電力ビジネスの新潮流」<桑原鉄也著・エネルギーフォーラム>
・<新>:世界を読む(2)<米国の低炭素社会へのシナリオ>
・<インタビュー>低炭素時代の経営戦略@=ガス事業から総合エネルギー事業へ向かう東京ガス=
 高騰するエネルギー価格や地球温暖化対策。サービスの質の向上・高付加価値化といった課題も突きつけられ、エネルギー企業各社は新たな経営戦略の展開を迫られる。国内エネルギー企業の経営戦略について聞くシリーズ。第1回目は、東京ガスの村木茂・取締役エネルギーソリューション本部長に「地球温暖化対応とガス事業の役割」について聞いた。

コラム
・発電論評<自動車も電気で動く時代に>
・プリズム<”猫の目行政”ではいけない太陽光支援>
・ちょっと一休<アジアユースオーケストラを聴く>
・青空<北京オリンピックに思う>


自動車も電気で動く時代に【発電論評】

 低炭素社会へ向かう切り札となる技術として電気自動車に注目が集まっている。最近の技術開発情報として出色なのは蓄電池技術の急展開であろう。
 リチウムイオン電池の出現が電池の世界を根本的に変えようとしているように見える。貯められないはずの電気が貯められるようになると、自動車も電気で走り出す。というわけで、エネルギーの世界は産業革命以来の大変革を遂げることになりそうな雰囲気をかもし出している。
 蓄電池技術の革新で、電気自動車の走行距離もガソリン車並に近づき、現在の技術でも1kWhで10kmの走行ができる。500km走るには50kWhの電気でよいので、電気代は家庭用の20円から25円で計算しても1000円から1200円程度で良いことになる。ガソリンと比べてなんと安価なことか。
 電気自動車が充分なコスト競争力を備えつつあり、普及に向けたインフラ整備が今後の緊急課題として浮かび上がってきている。
 電気自動車の残された大きな課題としては、充電時間の問題がある。
 家庭用のコンセントで充電することを考えているプラグインハイブリッド車は、一晩中コンセントにつなぐことを想定している。充電スタンドなどでは5分から10分程度で充電できる急速充電技術の開発も急がれている。
 電気自動車のもう一つの興味深い利用方法として、家庭用の蓄電池として機能させるということも考えられている。電気料金の安い深夜電力を自動車に充電し貯めておき、料金の高い昼間に使用するという、家庭内負荷平準化の考え方である。深夜電力を使うことで、電気料金が節約でき、一方、電力会社は余剰気味の深夜電力の負荷率が上がり、昼間のピーク電力が抑えられ、発電設備の利用効率が高められることで、負荷平準化が可能になる。余分な予備電力の負担が軽減できることになり、需要家にとっても電力会社にとってもプラスの効果が期待できることになる。
 自動車が電気で走る時代になれば、運輸部門のCO2対策は、ほぼ終結することになりそうだ。残された課題は何から電気を作るのかということだ。
 電気自動車の時代は、「電気は貯められる」ということを前提として考えられるので、発電の方法や考え方もこれまでとは違ってくる。太陽光や風力などの自然エネルギーによる出力の不安定な電力も蓄電することで、安定的な出力が得られることになる。それだけでは足りない分は、系統電力や低炭素なコージェネレーションなどで賄っていくことが考えられる。集合住宅や戸建て住宅に太陽光発電や燃料電池などが当たり前のように設置されている。そんな時代の入り口が現実に見えてきている。