2008年85日号 夏期特集号

分散型エネルギー市況は停滞、より省CO2指向へ −本紙がアンケート調査
 本紙は、恒例となった分散型エネルギーの市況についての事業者アンケート調査を昨年度に引き続き実施した。今年の調査は、長期化する原油価格の高騰で、コスト競争力を失った分散型発電市場の市場環境が急激に悪化する中で、オンサイト型のエネルギーサービスの事業撤退が相次いだことや、エネルギー分野での低炭素化が目指され、再生可能エネルギーに注目が集まっていることなど、分散型エネルギーシステムの激変する市場環境が色濃く反映された回答結果となった。
 コスト重視のオンサイト発電から環境エネルギーシステムとして如何に脱皮を図るのか。特に、アンケート結果で、課題として浮かび上がってきているのは、環境負荷のより小さい燃料の利用方法と、新エネルギー機器とのコラボ化ということ。発電用燃料としての石油を使うディーゼル型のオンサイト電源は、ほぼ市場から撤退を余儀なくされ、ガスコージェネ市場だけが唯一の将来性があるものとして期待が集まっている。また、今後、拡大が期待できるものとして、太陽光発電と燃料電池に期待が集まり、旧来型ではガスコージェネに一層の期待が高まってきている傾向が浮き彫りとなっている。
 アンケート調査は、177社に調査票を送付し、回答のあった44社の回答結果を集計した。回答率は24.9%。


集合住宅へのコージェネ導入テーマに開催 =本紙連続セミナー最終回=
 都市ガス業界などが展開する「マイホーム発電」の普及戦略を探る本紙主催の「連続セミナー」の第4回(最終回)を7月30日、東京都港区の航空会館で開催した。最終回のテーマは「集合住宅のコージェネレーションシステム」で、マンションなどへの導入のポイントなどが紹介された。
 エコウィルだけでなく、来年からは家庭用燃料電池「エネファーム」の導入も本格化する。これに合わせてガス会社は、これまでの戸建て住宅を対象にしたマイホーム発電の普及だけでなく、今後は集合住宅、いわゆるマンションにおいて各戸へコージェネレーションの電気と熱を供給する新たなビジネスモデルの構築を急いでいる。
 01年には国内で初めて北海道ガスが、札幌市で大和ハウス工業によって竣工した大規模マンション「ロイヤルコート大谷地」(223戸)で、各戸に電気と熱の供給を開始している。同日のセミナーでは、北海道ガスがマンションコージェネ導入に到った経緯と今後の展開を、また東京ガスが将来的には「エネルギーサービス」をも視野に入れた事業スキームについて、大阪ガスは各住戸間でのエネルギー融通を目指し取り組んでいる実証試験を中心に説明した。
 北海道ガスの村瀬光則係長は、マンションコージェネは入居者にとって初期投資は多くかかるものの、電気とガスの一括契約で光熱費の削減を図れるため、40年のライフサイクルコストで見た場合、個別ガス方式と同程度になるとして、今後は熱源システムの集約化に伴う省スペースの利点を評価してもらい普及を図っていくとした。
 東京ガスは同社がコージェネや受変電設備を所有し、エネルギーを一括調達したうえで各住戸に電気や熱、水を供給するエネルギーサービスの形態を目指している。坂倉淳マネージャーは既築物件(72戸)では07年9月に導入を開始。また新築では、共用部に温浴施設が設置されるなど熱需要の多い大規模物件で、09年度から事業を展開していくと話した。
 大阪ガスの村松慎司マネジャーは、実験集合住宅「NEXT21」で進めている「隣組コージェネ」という7戸を対象とした熱融通試験において、シングルループ配管を使ってガスエンジン(10.7kW)排熱と補助ボイラーで、各戸に安定した温水供給が行えることを確認したことなどを説明した。


国内排出量取引にVERを活用 環境省が認証基準など策定へ
 環境省は、今秋から試行開始予定の国内排出量取引制度で、国内取引だけを想定したクレジットとしてカーボンオフセットなどで用いられるVERを活用する方向で検討を始めた。7月29日に開かれたカーボン・オフセットのありかたについて検討を進めている第4回の検討会で、具体的な認証基準の策定に向けて検討を開始した。
 京都メカニズムに基づいて国際認証の仕組みがあるCDMなどのクレジットがCERと称されるのに対して、VERは京都メカニズムの認証に拠らないで独自の認証基準で認証されるクレジットを指すもの。国内の排出量取引をするために必要な排出権を開発・確保する必要があることから認証基準を独自に定めクレジットを創出することにする。
 既に国内でカーボンオフセット用として流通し始めているグリーン電力証書や経済産業省が今秋から導入する中小企業を対象としたCO2削減事業で創出されるクレジット、森林バイオマスなどが対象として想定されている。認証機関としては、既に設立差済みのカーボン・オフセットフォーラム(末吉竹二郎チーフアドバイザー)とすることが予定されている。


新エネ総合展で太陽光シンポなど開催
 太陽光発電に関する総合イベント「PV Japan2008」(SEMI、太陽光発電協会主催)が、7月30日から8月1日にかけ、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。「第3回新エネルギー世界展示会」(再生可能エネルギー協議会主催)と併催して開かれたもの。
 PVジャパンでは太陽光発電に関して、各社ごとに多様なタイプのものが開発されてきたということと、発電システムを支える基礎技術が大きく進歩したということが、全体的な特徴だった。
 新しいタイプの太陽光パネルとしては、一つはアモルファス型のものに微結晶を付着させた2重構造のタンデム型で、アモルファス型より高い発電効率と、結晶型の100分の1近いシリコン使用量が特徴。また、非シリコン系の太陽光パネルを紹介するメーカーも注目を集めていた。ドイツの太陽電池メーカー・Qセルズも含め、日本の今後の普及政策などに期待を寄せている。
 会期に併せ、太陽光発電協会は「第25回太陽光発電システムシンポジウム」を開催。国の政策紹介からメーカーの技術動向まで充実した内容で、多くの参加者を集めていた。


その他の主な記事
・省エネ判断基準小委が検討開始
・ガス制度改革の議論開始
・政府が低炭素社会へ向かう行動計画
・総合エネ調が総会
・石田エネ庁長官が就任会見
・松下電器が関電発電所跡地にリチウム電池工場
・富士フイルム、新日石のコージェネが稼働
・大日本スクリーン、太陽電池業界へ本格参入
・三菱電機、太陽光発電モニター用ユニットを発売
・東電、塩原発電所の緊急使用も
・東京ガスが16ブロックで値域新社を設立
・川重が炉頂圧回収発電設備を受注
・エコキュートなど蓄熱フェア08開く
・三菱商事の宮崎のバイオチップ事業が開始
・ガス空調講習会とヒーポン見学会
・省エネ連携推データ解析委託先募集
・JHIFが第10回会議を開催へ
・9月にGT教育シンポ開催
・9月にバイオマス利活用講座 有機資源協
・太陽光FT2次説明会を開催へ  etc.

<企画・特集>
◆特集1◆ <座談会>低炭素社会へ向かう電力、都市ガス、石油業界の戦略
洞爺湖サミットも終わり、政府は低炭素社会へ向かう行動計画を発表、2050年までに国内のCO2排出量を現状から60〜80%程度削減するという方向性があらためて示された。1次エネルギーのほとんどを海外に依存する日本にとって、必要なエネルギーを確保し、低炭素に供給できる仕組みをいかにして作り上げていくかということが求められている。低炭素社会へ向かうために必要なエネルギー供給の目指すべき方向性などについて国内のエネルギー供給の太宗を担う電力、都市ガス、石油業界を代表する方々に集まってもらい語り合ってもらった。<座談会の出席者>=順不同= 木村滋東京電力取締役副社長 前田忠昭東京ガス代表取締役副社長執行役員 松村幾敏新日本石油代表取締役副社長執行役員 司会 柏木孝夫東京工業大学当方研究院教授
◆特集2◆ 分散型エネルギー市況アンケート調査結果報告
本紙が毎年この時期に行っている、分散型エネルギー関連事業者に市況感について聞くアンケート調査の結果を集計。原油価格の高騰や天然ガスの供給不安などの燃料問題を背景に、新エネとガスコージェネに環境エネルギーシステムの将来性を見て、特に太陽光発電と燃料電池にの新たな市場展開に期待が集まっている様子が明らかになった。

シリーズ連載
・解説 カーボン・オフセットE<グリーン電力証書に追い風>
・コージェネレーション わが人生A

コラム
・プリズム<電気料金値上げで太陽光発電に注目>
・ちょっと一休<
イスラエル筆頭公使の送別会
・青空<寝苦しい夜に誰を思う?ナンテ>


【コージェネレーション:わが人生】
 東京大学名誉教授・日本コージェネレーションセンター会長 平田 賢


◆第1回:日本コージェネレーション研究会の設立
◇はじめに
 今年4月10日、日本コージェネレーションセンター関係者有志の発起人および事務局が労をとってくれ、小生の「喜寿を祝う会」を近くのアルカディア市ヶ谷で催してくれた。わが国のコージェネレーション黎明期からのメンバーや、またアジア天然ガスパイプライン研究会で一緒に活動してきた方々も参集して下さった。
 懐かしい方々に囲まれて、往時の思い出が一気に蘇り、感激ひとしおであった。苦労も共にしたが、思えば多くの素晴らしい方々に恵まれ、まことに楽しく幸せな人生であった。
 この機会に、わが人生とコージェネレーションとの歩みを振り返ってみたい。
◇日本コージェネレーション研究会の設立
 手元に、1985年に発行された「CRS NEWS」第1号がある。当時の日本コージェネレーション研究会の発足記念号である。巻頭に当時の会長・向坊ヘ先生の意欲あふれるごあいさつが載っていて、発足時の興奮が伝わってくる。
 また、機関誌第1号にも、「石油の需給状況は極めて複雑な形で世界の政治経済情勢に関連している。従って、この問題には産油国、消費国、先進国、開発途上国のいずれに属するかを問わず、世界の問題として協力して、長期的に取り組むべきであり、需給量、価格のいずれについても協力して妥当な値に落ち着くよう努力すべきである。(中略)本研究会の目標とするところは、エネルギーの利用率を高めることにあるから、基本的に今後も変わるものではない。成果を挙げればそれは我が国のみでなく世界に貢献できる技術的課題である。」と書いておられる。昨今の石油情勢を鑑みると、昨日頂いたような文章である。
 まず、この発足までの歩みをたどってみたい。  1984年5月15日、エネルギーの利用効率を高める技術の一つとして当時注目されつつあった”コージェネレーション(熱電併給)”に関心を持つ学識経験者および企業が、東京大学の向坊ヘ教授を中心に、情報交換と親睦を目的として東京・霞ヶ関ビルに集まった。
 当面、「日本熱電併給技術懇談会」と名づけて活動を開始することとしたが、以降、慎重に討議を重ね、翌年2月15日の第3回懇談会で、この組織を「日本コージェネレーション研究会」と名称を改めて正式に発足させた。当時、小生はこの研究会の事務局代表幹事を務めていたが、発足に当たってのあいさつを、機関誌「CRS NEWS」から転載させて頂く。  「山の上にダムを作り・・・・」というのが当時の小生の常とう句であったが、当時日本コージェネレーション研究会事務局メンバーの一人であった西尾征郎氏(東京ガス)はそれを「山の上のマダム」と揶揄(やゆ)した。実際、後に我々のミッションが訪問した山の上の旅館には、美人マダムがいたのである。
(第1回は平成20年7月5日付紙面に掲載しました)

◆第2回:『親亀の上に子亀、子亀の上に孫亀』論
◇コージェネレーション技術の確立を目指して
 1985年4月に日本コージェネレーション研究会(CRS)は発足したが、まずは「コージェネレーション技術」を確立する必要があった。研究会としては、事務局代表幹事代行垣田行雄氏(日本システム開発研究所)をトップに調査研究分科会を設置し、エネルギー需要の調査、システムの評価、システム設計手法の確立などに着手した。また、会員を対象とした大がかりなアンケートを実施した結果、会員からは「コージェネレーションシステム評価手法の確立」を望む声が極めて高いことも判明した。
 それを受けて当分科会では@コージェネレーションシステムの評価手法A現状導入システムの評価手法Bコージェネレーションの機器評価C法規制と対応技術Dコージェネレーションの市場性調査Eコージェネレーションの社会的評価などの確立を活動テーマに掲げて精力的に会合を重ねた。
 当時の監督官庁である通商産業省資源エネルギー庁長官官房総務課長山本貞一氏からは、コージェネ側がクリアすべき次のような問題点が指摘されている。
 1.一般電力系統への併入におけるコージェネ設置者が講じねばならない措置=電力品質の維持、系統保護、保安の確保等 
 2.予備電力制度の設定=コージェネに対する予備電力の適正料金水準の検討
 3.余剰電力の問題=当事者間の協調と連携体制
 4.特定供給の問題=供給条件は供給者と需要家の間に特定関係がある場合に限定しており、電力の供給秩序を維持する観点からみて基本的には変更不要
 これらの問題に関しては当時の同庁公益事業部林昭彦計画課長から、同年秋の当会シンポジウムにおいて、「そう遠くない時期に結論を出したい」との積極的な取り組み発言があった。
◇フォーラムと視察団
 同年9月には第1回コージェネレーション・フォーラムを開催した。三菱重工業の川口巌氏からは、欧州、日本、米国のコージェネレーションの現状比較がなされた。欧州は「既に地域暖房と連携した大型コージェネレーションプラントが普及して積極的に推進していたが、公害問題や環境規制が推進上の問題となっている」。それに対して日本は「民生用暖冷房熱負荷に対応した大型コージェネレーションプラントのFSが実施中であり、産業用コージェネレーションも広範に実施されている。また中小地域コミュニティ用コージェネレーションの実用化も強力に推進されつつある」。
 他方、米国は「事業用発電優先のためコージェネレーション実績は少なかったが、PURPA(Public Utility Regulatory Powers Act)法の施行以来、コージェネレーション推進が活溌化しており、同時に石油代替新エネルギー利用も推進されつつある」との報告があった。
 同年10月には、北米へ”エネルギー有効活用視察調査団”を派遣、総勢42名の大部隊であった。この調査団は、行程中にニューオーリンズで開催されていた第5回ICS(産業用コージェネレーションシンポジウム)に出席したが、この会議では”規制緩和”を主テーマとして掲げており、コージェネレーション普及促進の為に”規制緩和の必要性”を訴えていた。
 日本も同様の問題意識を抱えており、この会議は一つの方向性を示すものとして有意義であった。また併設されていた展示会でも、多くのヒントが得られた。当時の米国DOE(エネルギー省)の予測では、アメリカの産業用コージェネレーション市場規模は4万数千MW、10兆円に達するものと見ていたが、現行導入量は予測量をほぼ上回るレベルに至っている。
◇第1回シンポジウム
続いて同年11月には経団連ホールにおいて、第1回日本コージェネレーション・シンポジウムを開催した。米国PURPA法の起草者であった国際コージェネレーション協会ロス・D・エイン氏の招待講演に始まり、東邦ガスの本川正明氏、東京ガス西野光重氏、ホリデイ・イン豊橋の大神正幸氏、大阪ガス東野耿二氏、東京電力小林道夫氏の各位から研究発表が行われ、400名近い聴講者を迎えて大盛況であった。
 またパネル討論には、通産省薦田康久氏、建設省松川隆行氏、自治省消防庁鈴木徳五郎氏、大阪大学鈴木胖氏、東京電力原口一幸氏、東京ガス虎頭健四郎氏、同社垣田行雄氏をパネラーに迎え、小生の司会で「コージェネレーションの将来と問題点」と題して活溌な討論を行った。建設省や消防庁からはコージェネを住宅に導入した場合の安全性についての危惧(ぐ)が指摘されたこともあった。しかしそれらの危惧は、初期の頃としては当然の心配であるが、機器の信頼性・安全性は年を重ねるごとに増して行くものである。
 このように発足の1年は破竹の勢いであり、皆それぞれに日本の将来のエネルギー確保を模索して燃えていた。まだまだ世界のエネルギー事情は今日ほどひっ迫しておらず(現実が見えていなかっただけであるが)、努力をすれば先には明るい未来があると信じて疑わなかった時代であった。
 コージェネレーションを標榜する小生は、時には電力会社から「天敵」と呼ばれたこともあった。日本のエネルギー供給の根幹は、電力会社の原子力など大型発電所に負うところが大きいことは重々に承知しているものの、「コージェネレーションなど高効率・中小分散型発電とのベストミックスを図ってこそ、日本のエネルギー供給体制の柔軟な将来の姿が描ける」との確信は今も変わらない。つまり、親亀の背中に子亀が乗り、子亀の上に孫亀が乗って”共に平和に歩んで行く”というのが理想の姿だと信じている。
(第2回は平成20年8月5日付紙面に掲載しました)

 ※「コージェネレーション わが人生」は毎月5日付紙面に掲載しています。