2008年715日号

低炭素電力システム研究会が初会合
 福田ビジョンで示された、低炭素社会の構築に向けて、資源エネルギー庁は「低炭素電力供給システムに関する研究会」(座長・山地憲治東京大学大学院教授)を設置、7月8日に第1回の会合を開き、国内のCO2排出量の約30%を占める電力供給分野での低炭素化の取り組みについて検討を開始した。
 研究会は、資源エネルギー庁の電力・ガス事業部長の私的諮問機関として設置されたもので、「2020年までにゼロエミッション電源比率を50%以上に引き上げる」という福田ビジョンで示された目標を着実に達成するために必要な課題等を整理し、来年春頃を目標に報告書をとりまとめる。
 検討課題として提示されているのは、@新エネルギー・再生可能エネルギーの導入量や出力安定化に必要な蓄電池などのコストの算出、高コストな新エネ電力のコスト負担のあり方A原子力発電の稼働率の向上や国民理解の向上への取り組みのあり方B火力発電、とりわけ石炭火力の位置づけやCCSの活用の可能性C省エネルギーの進展を前提とした負荷平準化のあり方。深夜の原子力の活用拡大に向けての蓄熱システムや電池技術の活用、電気自動車の導入の拡大等D卸電力取引所でのCO2フリー電力の取引効果の検討Eゼロエミッション電源比率50%以上へ向けた課題など。


07年度のRPS電力供給量は74億3千万kW
 資源エネルギー庁は、07年度の電気事業者のRPS義務履行状況をまとめ公表した。6月1日までに同庁に届け出られたRPS電力の利用義務のあるPPSを含む36社の全てが達成。このうち21社が義務量以上を消化し、超過分の次年度へのバンキングを行った。電気事業者の義務量の合計は60億6783万9千kWhで、バンキング量の合計は65億1354万2千kWhと義務量を上回る電力量が次年度へ繰り越された。また、RPS電源として設備認定を受けている発電事業者でも販売量以上に発電したRPS価値についてバンキングが認められているが、発電事業者のバンキングは15社によって行われ、合計のバンキング発電量は2億4525万kWhだった。
 一方、認定されたRPS電源から電力事業者に供給された1年間の電力供給量は74億3052万9902kWhで、前年度を9億2315万kWh余り上回っている。
 電源種別ごとの電力供給量は、風力が27億4412万706kWh。太陽光が6億6062万5835kWh。水力が8億4661万2178kWh。バイオマスが31億6546万6680kWhなどで、風力とバイオマスで約80%を占めている。家庭用を中心に件数の多い太陽光発電の電力量の割合は8.9%と10%未満の水準にとどまっている。前年度に比べた電力供給量の伸び率は、風力が28.0%、太陽光が22.0%、水力がマイナス9.5%、バイオマスが10.8%で、風力と太陽光の伸びが大きい。水力は認定設備が増加したにもかかわらず、供給電力量が減少している。


バイオコージェネに高い関心・第2回バイオ燃料製造装置&材料展
 バイオエタノールやバイオディーゼルなど、CO2排出削減につながるバイオマス燃料をテーマとした、「第2回バイオ燃料製造装置&材料展」が7月9〜11日の3日間、パシフィコ横浜で開催された。
 目立ったのはバイオディーゼル製造関連の展示で、パーム油やヤトロファなどのエネルギー作物の栽培紹介から製造設備まで、多数が展示されていた。中でも、ヤンマーバイオガスマイクロコージェネレーションに高い関心が集まっていた。天然ガスで3千台以上の実績があるマイクロガスコージェネシステムでバイオ燃料を使用するというもの。食品残さや畜産ふん尿、下水汚泥などバイオガス源は多様で豊富なため、汎用性も高いことに関心が集まったようだ。また、サッポロビールによるバイオエタノール製造施設も関心を集めていた。
 出展は74団体。来場者には電力会社やガス会社といったエネルギー事業会社など、燃料としてではなく、CO2削減手段として関心を持ち訪れる企業も多かった。


伊藤忠商事、丸福水産とエマルジョン燃料製造装置の製造・販売でライセンス契約
 伊藤忠商事と丸福水産(最上賢一社長・本社 北九州市)は、エマルジョン燃料製造装置の製造、販売に関してライセンス契約を締結したと発表した。丸福水産が特許を持つラモンドミキサー技術を使って開発したエマルジョン燃料製造装置を、伊藤忠が商品化を決め、事業会社である伊藤忠プランテックが今夏から発売する。
 伊藤忠が1年間実施した実証試験では、C重油使用の10トン級ボイラーで、5%の重油使用量の削減、また、ディーゼルエンジンでは10%の燃費の向上と40%以上のNOXと70%以上のばいじん量の削減が確認できた。
 エマルジョン燃料は、分離防止のための乳化剤の添加を必要とするなどの理由で普及していないが、丸福水産が開発したラモンドミキサー技術では、水粒を1μm以下に微細化し、乳化剤の添加無しでも長期に安定なエマルジョン燃料の製造が可能となった。
 大型ボイラーを使用する工場や舶用エンジンを取り扱う造船各社、船舶会社向けに営業展開を図る。定価は1台2千万円で、初年度は10億円の売り上げを見込んでいる。


革新的太陽光発電の国際研究2拠点選定
 資源エネルギー庁は7月2日、革新型太陽光発電の時限に向けた「国際研究開発拠点」を選定した。
 研究拠点として選ばれたのは▼東京大学先端科学技術研究センター(東京・駒場)と▼産業技術総合研究所つくばセンター(茨城県つくば市)の2カ所。民間企業からシャープ、新日本石油、三菱重工業などが参加し、米国や欧州からの研究機関との連携も予定している。
 国内外の大学や民間企業などと連携し、50年までに変換効率が40%(現在の3〜4倍)で、発電コストが7円/kWh(現在の7分の1)の太陽光発電システムの実用化を目指した技術研究を行う。今後は、NEDOを通じて研究開発を進める。研究期間は15年度までの7年間。


その他の主な記事
・電気事業分科会が報告書
・洞爺湖サミットで中期目標示せず
・リチウムイオン電池にPSEマーク
・バイオマスタウン構想4市町村を公表
・東電管内の夏期の電力供給を確保
・バイオ燃料の認知度下がる。石油連盟がアンケート調査
・富士経済がエネ関連システムの市場調査発表
・伊藤忠がエマルジョン製造装置
・関西電力がニュージーランドから風力クレジット
・中国電力と新日石が岡山で天然ガス導管事業
・三菱重工がドイツでCO2回収を実証へ
・昭和産業、鹿島工場にバイオマスボイラー導入
・三井物産がブラジルでバイオエタ製造・販売
・横河がガスプロムネプチと協定
・東電と東芝キャリアがヒートポンプチラーを高効率化
・7月30日にバイオ燃料セミナー
・DME燃料利用設備導入補助金募集開始
・新エネ導入支援交付先30件決まる
・新エネ関連4事業決まる(中小水力、洋上風力、太陽熱高度利用FT、地域バイオマス熱FT)
・CDM・JI、7件を政府承認
・イオンが越谷でエコSC、大規模太陽光やEV用充電装置
・新エネ部会の緊急提言(要旨)    etc.


燃料電池新聞の主な記事
・燃料電池自動車の開発動向
・特許から見た携帯・小型・マイクロ燃料電池
・ハイブリッド車の現状と今後の市場展望
・海外ニュース
 -BMW、新しい液体水素タンクを開発
 -IEA、2008年版「エネルギー技術展望」を公開
 -ルノー、電気自動車の普及に手ごたえ
 -現代自動車、2011年までに燃料電池バスを開発
 -ラピード社、SFC社の燃料電池を標準装備
 -セレスパワー社、燃料電池CHPの実証試験結果を公開
 -GM、クリーンエナジーと共同で水素供給のインフラ整備に取り組む
 -バラード社、デンマークのダンサームパワー社に燃料電池システム60台を納入
 -ダイムラー、2010年に燃料電池車を市場投入
 -プラグパワー社、バラード社からのスタック調達期間を延長
 -プラグパワー社、燃料電池CHPを開発
 -UTC社、リン酸型燃料電池を拡販
・燃料電池フラッシュニュース
 -
物質・材料研究機構、DMFC用負極材の合金の界面制御により電流密度が20%向上
 -住友電工、世界初の超電導電気自動車を公開
 -日産自動車、2015年にリチウムイオン電池で航続距離400kmが可能
 -三洋ホームズ、太陽熱と大気熱を組み合わせたハイブリッドソーラー給湯機を開発
 -日立製作所、シリコン・トランジスタ型水素センサの長寿命・高感度化技術を開発
 -日産自動車と東大、電気自動車普及にむけた異業種研究会を設立
 -マツダ、プレマシー ハイドロジェンREハイブリッドの国交大臣認定を取得、2008年度中にリース販売を開始
 -住友化学、新エネ関連部材の開発を加速。燃料電池電解質膜を年度内に事業化
 -特殊電極、固体酸化物形燃料電池のインターコネクタの表面処理技術で特許出願
 -富士電機システムズ、ビル施設向け災害対策用リン酸型燃料電池システムを開発
 -昭和シェル石油、2011年に太陽電池の生産能力を100万kWまで引き上げ
 -三菱自動車、PSAプジョー・シトロエン社へ電気自動車技術を供与
 -東京電力や三菱自動車、2009年中にEV用急速充電器を首都圏に100〜200台設置
 -三菱電機、太陽電池セルをハニカム構造とすることで発電効率18.6%を達成  etc.

・燃料電池インフォメーション

シリーズ連載
・インサイト(環境改善技術革新C)
・書評:「カーボン・オフセット」<國田かおる編著・工業調査会>
・<新>:世界を読む(環境・エネルギーとその周辺)<第1回WTO交渉と気候変動>
・キーパーソン(望月晴文 経済産業省事務次官)

コラム
・発電論評<低炭素を実現する新エネビジネス>
・プリズム<「焼け石に水」だったサミット結果>
・ちょっと一休<不思議な冒険家ウィロビーさん>
・青空<洞爺湖サミットを振り返って>


低炭素を実現する新エネビジネス【発電論評】

 低炭素社会を構築する鍵は、自明のことながら、低炭素なエネルギーをいかに効率よく利用するシステムを作り上げられるかどうかにかかっている。
 低炭素なエネルギーシステムとして、多くの人たちに認知・支持されているものには、新エネルギーや原子力発電などがあるが、どちらにも欠点はある。原子力にはアレルギーが強く、社会的な受容力に限界が見えること、特に地震国日本ではそういう傾向が強い。新エネルギーも、低炭素で環境にはよいがコストが高いことなどが指摘される。逆説的だが、日本の電力需給が質量ともに安定的に推移していることも、高コストな新エネ電源の導入を後ろ向きにしているといえるかもしれない。
 低炭素社会のエネルギー源として電気への期待が高まっている。例えば自動車。リチウムイオン電池など、高性能で低コスト化が期待できる蓄電池技術の開発が進展し、石油の高騰を背景に電気自動車の普及が現実化してきている。自動車の動力が電気になれば、走行中にCO2は排出されない。自動車のエネルギー源が石油から電気に代われば劇的に低炭素社会が現実化してくる。また、家庭や職場でも電気を使用する限り、その場所でCO2を排出することはないということになる。電力エネルギーは新たな市場拡大の局面を迎えており、低炭素な新規電源の導入の必要性が高まっているといえるかもしれない。
 問題はどこで、何を使って発電するかということになる。低炭素なエネルギーを利用して低炭素な発電を実現する電力需給のシステムを根本的に見直す必要がある。例えば、家庭用の発電機器の普及もその一つになる。
 家庭用の発電機といえば、ガスコージェネや最近話題の家庭用燃料電池、太陽光発電などがある。家庭で発電するのが当たり前になるのにはまだまだ時間がかかりそうだが、家庭用の発電機器の普及は、発電という手段を身近にし、電力の流通市場を革新的に変革する力を秘めているといえるかも知れない。
 家庭での発電機器の普及のための手段として、エネルギーサービスの手法の適用も有効だと思われる。家庭用の電力市場はまだ自由化されてはいないため、家庭向けに電気を売ることはできないが、発電機器を自家発として設置して余剰電力を購入し、業務用として販売するということは可能だ。既に、太陽光では、家庭用の自家消費分の電力を対象に、「環境価値」をグリーン電力証書化して販売するというベンチャービジネスも始まろうとしている。「低炭素」という環境価値が付加されることで電力ビジネスに新たな視点を持ち込むことが可能になるということだ。
 低炭素電力の拡大を需要面から考えてみることも必要ではないか。