2007年1215日号 ※次号(12月25日、1月5日合併号)は1月1日発行です。

東京都がキャップ&トレードを具体化 大規模事業所に排出枠
 東京都が国に先駆けて導入を検討している地球温暖化防止対策としてのCO2のキャップ&トレードの仕組みが明らかになった。都の環境審議会・環境確保条例改正特別部会が12月3日に開いた第2回の会合で条例改正案で制度の骨格についての大枠をまとめた。10年度からの制度導入を目指す。
 キャップ&トレード制度は、都内に事業所を持つ大企業に対して、排出枠を定めてCO2削減義務を課し、不足分については排出権を購入することで充足することを認める。購入する排出枠は他社の余剰削減分や削減義務を課されていない中小事業者が自主的に取り組んだ削減分についても認める。中小企業者も参加できる枠組みとすることで、全体の削減量の拡大を期待している。また、グリーン電力証書の購入分も利用できる仕組みとする。
 対象となるのは、原油換算のエネルギー使用量が1500キロリットル以上の大規模事業所。削減量は20年に00年比で25%を削減を目指す都の削減目標や事業者の削減余地、今後、新規の建築床面積の増加等があっても排出量が増加しないことなどを考慮して決める。また、トップレベルの削減対策を行っている事業所には義務水準の引き下げなどの配慮を行う。
 排出枠の算定はガイドラインを策定し、第3者機関による検証を行うことやトップレベルの事業所の認定ルールについても定める。
 都は、排出量取引制度の導入によって、事業者の削減手段の選択肢を拡大し、よりコストの安い削減対策が選択できるようにする。また、削減コストが経営上のコストとして明確化することで省エネ対策が現場レベルから「経営者が真剣に考慮すべき課題」へと変わる契機となることも期待している。
 中間とりまとめでは、キャップ&トレードの他、中小企業の削減対策の強化や地域冷暖房制度の見直し、建築物環境計画諸制度の強化、省エネ型ボイラーの普及、自動車CO2対策の強化などを盛り込んでいる。


コージェネシンポ07開催 バイオマスや燃料電池など
 日本コージェネレーションセンター主催の「コージェネレーションシンポジウム2007」が12月5、6日の両日、東京・大手町の経団連会館で開かれ、2日間で800人を超す参加者が集まった。今回のシンポジウムではバイオマス発電や燃料電池などを中心に、最新の技術動向が紹介された。
 特別講演を行った井熊均・日本総合研究所創発戦略センター所長は、原油価格の高騰でエネルギー転換の必要が迫られる中、資源の少ない日本に最も合う燃料として、静脈(廃棄物系)バイオマスを取り上げ、「バイオマス事業が本格化すれば、収集エリアの面からもオンサイトが効率がいい。そうすれば分散電源事業のニーズは高まるだろう」と、新たな事業展開の可能性について展望。また、バイオマス関連の技術開発では、中部電力から木質バイオマス燃料のスターリングエンジン実証試験について紹介があり、「燃料を選ばず小規模でできるが発電コストが高く、エンジンに灰が付着し出力低下の原因になるなどの課題もある」ことなどが報告された。また東京ガスからは、03年度から取り組んでいる海藻バイオマスプラントの実証で実用化にメドをつけ、事業化に向けた動きを進めていることの発表があった。
 燃料電池関連では、家庭用固体酸化物型燃料電池(SOFC)の実証事業を今年度から実施しているNEDOが、事業概要を説明、「採択された29台のSOFCは関西地区を中心に設置を進めており、来年1月には本格的な実証運転を開始する」予定を示した。
 そのほか、三菱重工業からは、SOFCとマイクロガスタービンを組み合わせた200kW級コンバインドシステムの実証で安定運転を確認できたため、商用化に向けシステム改善を行い、100MW級の発電プラントの開発を目指すと報告。大阪ガスは集合住宅での水素供給燃料電池コージェネ実証について、住棟全体の1次エネルギー消費量を10%削減できたことなどが報告された。


富士電機「太陽電池」でシンポジウム
 富士電機グループは12月9日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで「太陽電池の未来」と題したシンポジウムを開いた。会場には休日とあって、家族づれの姿も多く見られた。
 富士電機システムズ社長の矢内銀次郎氏が「太陽電池の研究を始めて20年になり、ここ数年では立派な製品も完成した。今度のコンテストには多くの優秀な理科系学生に応募していただき、心強く感じた。これからも環境問題に企業として発信し、環境対応製品を通じて社会貢献したい」とあいさつ、この後、第1部として同社のフィルム型アモルファス太陽光電池を携帯し、今年5月にエベレストの中国側・ネパール側(チョモランマ)からの登頂に成功したアルピニストの野口健氏が「自然エネルギーへの期待」をテーマに、清掃活動を通じた環境問題を熱く語った。
 第2部は、同社の太陽電池F―WAVEを活用した研究作品コンテスト「太陽電池の未来」の表彰が行われた。112の応募作品の中から、グランプリには三重大学大学院・玉置泰三氏の「M―wave Campus Life」が選ばれた。携帯電話の電池切れに着目し、それを解決するためのフィルム型アモルファス太陽電池を活用した「e―Bag」を大学全体に普及させ、大学生の環境に対する意識改善を提案したとして高く評価された。このほか4点が入選作品に選ばれ、表彰を受けた。

JパワーがSOFCで国内最大出力運転に成功
 Jパワー(電源開発)は12月6日、今年1月から技術開発センター・茅ヶ崎研究所(神奈川県茅ヶ崎市)で試運転を行ってきた「常圧150kW級SOFC(固体酸化物型燃料電池)システム」において、11月に国内最大出力(DC発電端)となる100kW超での運転に成功したと発表した。
 運転時間についても、連続運転約1050時間を含む累積約3300時間を11月末に達成した。
 今後は08年度末まで約1年間にわたる本格試験を行い、発電出力150kW級、累計運転時間1万時間を達成するなどして商品化を目指す。
 使われているSOFCは都市ガスを燃料としたもので、三菱重工業製の円筒横縞形タイプ。発電効率は45%(LHV)が見込まれている。
 燃料には都市ガスやメタノールのほか、石炭ガス化ガスやバイオガスなどが使用できる。また作動温度が約900度Cと高いことから、排ガスを利用したガスタービン複合発電の場合、格段に高い発電効率が期待できる。
 Jパワーは91年からSOFC開発に乗り出し、昨年には「常圧25kW級SOFCサブモジュール」の検証試験を成功させていた。将来的にはコージェネ市場への導入や、電気事業用の大型システム、IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電システム)への適用を視野に入れて開発を進める。


低炭素社会に向け論点整理
 中央環境審議会・地球環境部会は、12月7日の会合で低炭素社会づくりに向けた取組についての論点整理を行った。
 基本理念では、カーボンミニマムの実現として、社会のあらゆるセクターで温室効果ガスの最小化を目指すことや、豊かさを実感できる簡素な暮らしへの指向、CO2吸収に不可欠な森林等の維持・再生など、自然との共生を掲げ、実現のための戦略について具体策を検討することにした。


企画特集
・京都議定書時代を生きる企業戦略〈ナットソース編〉
ゲスト:ナットソース・ジャパン代表取締役 高橋庸夫氏 聞き手*都市エネルギー協会会長 吉田武治氏
2008年から京都議定書の第1約束期間に突入する。これは、CO2を削減するということが、そのまま経済的価値に結びつく時代になった、ということでもある。こうした時代を見据え、一足早く、温室効果ガスの排出権ビジネスに取り組んできたのが、米国ナットソース社であり、わが国においてはナットソース・ジャパンである。ナットソースジャパンの議定書時代の排出権ビジネスについて聞いた。


その他の主な記事
中小企業CO2検討会が報告書
・産総研が分散型でシンポジウム
・有機ハイドライド研究会が講演会
・ソニーが自然エネコムからG電力、パソコンから可能
・富士経済が電力・ガス市場調査
・建築環境コンペ入賞者決まる
・カネカ、太陽電池の生産能力を増強
・ミツウロコが神栖で風力発電運転開始
・丸紅が北米で風力発電事業に参入
・ソニーがCO2削減量4倍に
・トヨタ自動車らFTD燃料の試験開始
・三菱商事と岡本硝子が集光型太陽光発電を開発
・三洋電機が岐阜に太陽光発電開発センター新設
・三井造船がバイオ発酵技術でスウェーデン社と提携
・京メカクレジットに係るデリバリーリスク調査募集
・燃料電池関連3事業委託先募集
・次世代電力供給システム、三菱総研と四国総研に
・バイオマス利用のスターリングエンジン開発調査募集
・使用合理化支援3次開始
・1月に大阪でコージェネ基礎セミナー  etc.

 
燃料電池新聞の主な記事
・日本ミクロコーティング
・FCVホンダ
・新日石が三洋電気の燃料電池事業を買収
・SOFC開発の現状と展望 日本特殊陶業
・海外ニュース
 -バージニア大学、水素貯蔵に極めて有望な材料を発見
 -上海市で燃料電池バスプロジェクトが進行中
 -フォルクスワーゲン、燃料電池車を公開
 -英ヴェイルスウッド社、燃料電池自転車を開発
 -水素に未来はない
 -トヨタの燃料電池車、アメリカ大陸を横断
 -米クライスラー社、来年のデトロイトモーターショーで燃料電池車コンセプトカーを公開
 -米ミレニアムセル社などポータブル燃料電池開発
・燃料電池フラッシュニュース
 -松下電工、超小型ベーン式ポンプを開発
 -日立マクセル、MEAの寿命を2倍に延ばした小型燃料電池を開発
 -ホンダ、太陽電池の生産能力を27.5MWに引き上げ
 -太陽化学、燃料電池の性能向上に寄与するシリカ多孔体を量産
 -日清紡、2008年からキャパシタを増産
 -松下電器、家庭用燃料電池の量産工場を建設
 -ホンダ、カリフォルニアルで家庭用水素供給システム「HES W」の実験稼動を開始
 -中国工業、200MPaの高圧水素タンクを開発
 -オートイーブィ、伊製の電気自動車の販売開始
 -三菱化学、リチウムイオン電池の原材料であるエチレンカーボネートを増産
 -シーアイ化成、携帯用燃料電池向けの燃料供給用マイクロポンプを開発
 -東邦ガス、導電率高め、作動温度を低くしたSOFCセルを開発
 -京都市、京大などと共同で生ごみから水素を抽出する技術開発へ
 -東海カーボン、リチウムイオン電池の負極材の炭素粒子の表面を電子顕微鏡で観察することに成功
 -経済産業省、セルロース系バイオエタノール燃料の本格導入、技術開発を加速
 -新日本石油、簡易ガス団地に燃料電池システムを集中設置
 -住友化学、リチウムイオン電池材料「セパレーター」を増産
 -旭化成ケミカルズ,リチウム電池用セパレータ「ハイポア」の設備を増強
 -大阪ガス、家庭用燃料電池用の改質器で使用する改質触媒で貴金属の使用量を1/3に削減
 -経済産業省、省エネルギー法改正案の骨子を提示
 -東燃化学、リチウムイオン電池部品の韓国での生産を検討
 -旭化成など、DEFC用白金代替触媒を開発
 -東北大、リチウムイオンが流れる固体電解質を発見
・燃料電池インフォメーション
  etc.

シリーズ連載
・建築計画・工事ニュース
・分散型発電用語の栞<バイオ系燃料A>
・大変化する米国の新エネビジネスD
・再生可能エネルギー新潮流S
   
コラム
・発電論評<環境エネルギーの新時代に向けて>
・プリズム<「原油高騰」から「温暖化対策」まで>
・ちょっと一休<懐かしいオムロンの立石一族>
・青空<太陽はどっちから昇る?>


環境エネルギーの新時代に向けて【発電論評】

 今年も、この1年を振り返る季節となった。今年を振り返るとともに、新年の見通しを行わなければならないが、さて、新年の市場はどうなっていくのか。京都議定書の約束期間の開始の年に当たり、最近の地球温暖化問題の異様ともいえるほどの盛り上がり方といい、来るべき08年が、地球温暖化対策で始まることは間違いなさそうだ。
 現在の、地球温暖化問題は、化石燃料を人類社会が大量に消費し始めた、産業革命以降の大気中の温室効果ガスの増加に主な原因を求め、その削減が地球規模の共通の課題として認識するよう求められている。地球温暖化問題を議論するCOPやIPCCなどの国際会議も活発化しているが、現在の議論の有り様は、まるで前世紀の軍縮会議を想起させるようで、各国の利害や駆け引きが交錯し、どのような形で議論が行き着くのか見通しが困難な様相だ。
 国内のエネルギー市場環境も大きく変化している。原油価格の高騰からエネルギー価格が高騰、また、原子力発電の長期停止問題が現出し、電力の安定供給に黄色信号がともった。この問題は、原子力発電の稼働率の向上に重点を置いてきた電力セクターにCO2削減対策の見直しを迫るとともに、安定供給を担保するための電源の多様化や広域流通の必要性などの再認識が進んでいる。
 また、石油製品価格の急激な上昇が、社会問題にもなりそうな雲行きになっている。この解決策として、代替エネルギーの開発や更なる効率利用技術の開発などが必要になると思われるが、いずれも解決には相当の時間を要するもので、足下の対策は特に見あたらないというのが現状だ。
 一方で、環境対策の重要な手段となることが期待されている新エネルギーの導入には、勢いがない。かつて国が示した10年度の新エネルギーの導入目標は話題に上ることもなくなり立ち枯れの状況だ。風力発電や燃料電池などの開発、導入も遅々として進まない。技術が未成熟で価格も高く、新エネルギーは、強固な政策支援が無ければ普及が難しいということは世界共通の認識といえるが、欧州や、中国などで導入が急激に進んでいる背景には強力な新エネ拡大政策があることは常識だ。
 こうした国際的な取り組みとは裏腹に、国内では、新エネ支援政策は停滞気味で、再生可能エネルギーやコージェネ、燃料電池などの高効率のシステムへの支援にも積極性が見られない。しかしながら、環境エネルギー時代が本格的に始まる、来年以降を「環境技術大国」として乗り切るためには、新エネやコージェネの利用技術の開発に、今一度目を向ける必要がある。