2007年525日号

中小企業のCO2対策で「国内CDM」を検討
 経済産業省は、遅れがちな中小企業のCO2削減対策として、「国内CDM事業」とでもいうべき新たな制度の構築を行う方向で具体的な検討作業を開始した。自主行動計画によってCO2削減に取り組んでいる大企業の省エネ技術と資金を活用して、中小企業が燃料転換やコージェネ導入などの省エネ投資を実行し、それによって削減されたCO2量をクレジット化して、投資を行った大企業側が取得、自主行動計画のCO2削減量の一部として活用できるというもの。
 制度の基本的な考え方としては、CO2排出枠を定めて削減するといういうキャップアンドトレード方式ではなく、現状の排出量からどれだけ削減できたかを評価してクレジット化するという仕組みを考えており、排出量の算定や評価には京都メカニズムによる小規模CDMの仕組みを参考にして、第3者による削減量の認証やクレジット認証などを制度化する。
 経団連の自主行動計画の枠外になる中小企業や業務部門のCO2削減を前向きなものとするため、大企業が資金的、技術的な支援を行い、その成果を協力した大企業側がCO2削減量としてカウントできることによって、目標達成が困難な大企業が海外のCO2クレジットを購入する代わりに利用できるようになれば、CDM投資の一部が国内に振り向けられ、結果的に国内のCO2削減が進むということがこの制度のねらい。中小企業側のメリットとしては設備投資のコストが削減できることや高効率の省エネ機器を導入することで燃料費の削減などのコスト低減ができる。また、CO2のキャップアンドトレードを行わないことで産業界にも抵抗なく受け入れられる制度にしたい考え。
 経産省は、国内CDM制度の導入に向けて、中小企業CO2排出削減検討会(委員長・松橋隆治東京大学大学院教授)を設置して、具体的な制度設計に向けて検討を開始した。検討会は5月15日に初回の会合を開き制度の概要について説明し、複数のモデル事業を実施して、実行可能性を具体的に検討していくことにした。併せて「国産クレジット」の創出や流通に関する制度化も検討する。
 国内排出権取引は、環境省が実施している自主参加型の制度がすでに実証制度として実施されているが、本格的な施行時にはCO2のキャップアンドトレードが実施されることになるとして、経産省や日本経団連などが導入に反対している。


電力自由化拡大を容認へ
 総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会が再開後2回目の会合を5月18日に開き、電力事業者やPPS、卸発電事業者などからのヒアリングを中心に全面自由化に向けた議論を行った。会合では、電気事業連合会の勝股恒久会長(東京電力社長)が一般電気事業者の立場から自由化拡大は慎重に行うべきだとしながら、PPSなどの新規参入事業者にインセンティブを与える「非対称規制」を行わないことを条件に自由化には反対しない意見を述べ注目された。また、PPSなどが求めているCO2排出量がカウントされない原子力発電の電力の切り出しについては応じられないとの従来からの主張に沿った発言を行った。PPSの立場からはエネットの武井務社長が全面自由化による市場の拡大の必要性や原子力発電電力の公平な利用措置などを求めた。また、現行制度の問題点として託送料金の算定のより一層の透明化やイコールフッティングの確保、インバランス料金が高額なためPPSだけでなく発電事業者が濾紙電力取引への参入する場合の障害となっている点などの改善を求めた。
 発電事業者の立場からは東京ガスの鳥原光憲社長が、卸電力取引市場に参入する場合のインバランス料金やバックアップ処理の煩雑さなどが参入リスクとなっていること、取引量や参加事業者が少ないことなどが新規の電源開発意欲を削いでいることなどの問題点を指摘し、需要地近接性の託送料金への反映や電源種別ごとのCO2排出係数の取扱や環境性の評価などを新たに制度化することなどの要望を行った。その他、電力系統利用協議会と卸電力取引所からのヒアリングも行われた。
 分科会は6月15日に次回の会合を予定し、これまでの議論を踏まえて論点を整理、自由化問題を中心に新たな電力事業制度の構築に向けての議論を本格化させる。


環境配慮契約法が成立 電力購入はCO2係数で裾切り
 国や行政機関が電力などの購入契約を行う場合に、価格だけでなく温室効果ガスの排出量についても配慮した契約を行うことを定めた「環境配慮契約法」が5月17日に衆議院本会議で可決、成立した。6カ月以内に施行される。
 同法は議員立法として自民、公明、民主各党が共同で提出していた。国などが電気や自動車などその使用に当たって温室効果ガスを発生する物品を購入する場合、価格だけでなくCO2排出量が一定以下であることを条件に追加し、環境に配慮した物品が優先的に採用されることを目的にしている。具体的には、電気の購入や公用車の購入、ESCO事業、庁舎の設計などに関する契約などが対象となる。
 電気の購入契約に当たっては、CO2の排出係数等を入札参加資格に追加して、資格を満たした入札者の中から価格によって落札者を決める「裾きり方式」を採用する。庁舎などの設備改修時には省エネ改修が行えるよう、ESCO事業の採用を前提に、会計年度にとらわれない長期契約もできるようにする。


環境省の自主参加型排出量取引に53社が参加
 環境省は、自主参加型国内排出量取引制度に参加する事業者53社を採択した。第3期分となる今年度の参加者は、省エネ設備の補助を受けCO2削減を行うものが47社で、設備補助を受けないで自主的に削減に取り組むものが6社。
 採択された53社のCO2削減事業の内、半数以上の28社が石油系燃料から天然ガス系燃料への転換によってCO2削減を目指すもので、そのうちガスコージェネレーションを導入するものは4社という内訳。コージェネを導入するモデルの比率は少なくなっている。A重油を使用した自家発から系統電源へ切り替えて、他の省エネ投資と併せてCO2削減を図るモデルが2件含まれている。 
 採択された53社のプロジェクトは07年度に設備整備を行って08年度に約束したCO2削減に取り組むことになるが、設備補助を受けない6社の内3社は07年度にも1%以上のCO2削減を行うというモデルで参加している。

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コラム
・発電論評<国内CDMとコージェネレーション>
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・青空<社員教育の基本は「人間力」>


国内CDM制度とコージェネレーション【発電論評】

 経済産業省が中小企業のCO2削減対策として「国内CDM制度」の導入に向けて検討会を立ち上げた。自主行動計画のCO2削減の目標を達成するために海外のCDM事業に投資したり排出権を購入したりする大企業に、その投資の一部を国内に振り向けてもらって、コージェネなどの省エネ設備を省エネ投資が遅れている中小企業に導入し、削減できたCO2を投資した大企業側に成果として取得してもらうというもの。さらにクレジット化して流通できるように国内の取引市場を整備するということも視野に入っている。
 京都メカニズムのCDMは国際間の排出権の取引で現地政府と投資側の政府、さらに国連の承認という厳密で複雑な手続きが必要だが、それとは別の国内制度として整備する方向が目指される。
 CO2削減量の算定には企業や事業所ごとに排出枠を与えるという、経団連など産業界が導入に強固に反対している、いわゆるキャップアンドトレード方式は採用せず、現状からの削減実績をクレジット化する方向が考えられている。中小企業側にとっても高額なイニシャルコストの必要がなく最新の省エネ投資が実行できて、省エネ効果でランニングコストの削減も行えるなどメリットの大きい制度であるといえる。
 さらに、CO2クレジットの取引市場が整備されれば、大企業の直接投資ではなく、ESCO事業者やエネルギーサービス事業者などの参入も期待できる。従来のESCO事業やエネルギーサービス事業は、コスト回収の大部分を省エネ効果による他はなかったが、CO2クレジットの売買ができればメリットが高まることになる。
 示されている制度モデルでは、中小企業向けの省エネ投資として燃料転換やコージェネ導入など6つの削減モデルがあり、一件ごとのCO2削減量は小さいが、30%以上の削減効果も期待できるという試算も示されている。新たなガスコージェネ活用の場として期待も高まる。
 いいことずくめの制度のようだが、問題はCO2クレジットを誰が購入するのかということ。自主行動計画の実施期間が終了すれば購入者がいなくなるという懸念や国内限定のクレジットでは市場の広がりが期待できないことなどが根本的な課題として残る。
 しかしながら、対策はある。国内CDMを実施することは国内のCO2削減が確実に進み、その分だけ海外CDMクレジットの購入が削減できるわけで、京メカクレジットの購入費用が削減できた分を国内CDMクレジット購入枠として国が購入する制度を作れば、京メカ投資資金の一部を国内CDM市場に呼び込むことも可能になるのではないか。検討する価値がありそうだ。