2007年42555日合併号

自由化拡大には慎重意見が大勢 電気事業分科会の議論再開
 今後の電気事業制度のあり方について検討することを目的に、4月13日、電気事業分科会が再開された。家庭用までを含めた電力の自由化対象の拡大が主要な検討課題であるが、この間のわが国のエネルギー情勢の変化を踏まえて改めて、「電力の安定供給及び環境適合を効率的に達成しうる公正かつ実効性のあるシステムの構築に向けて今後の電気事業制度はいかにあるべきか」が検討課題として諮問された。
 同日の委員会では、事務局からこれまで3次にわたって行ってきた電気事業制度改革の内容と現状について報告が行われ、電気事業制度改革についてエネルギー基本計画や制度改革小委員会、規制改革・民間開放推進会議、公正取引委員会など外部の関係機関の指摘事項についても紹介された。
 前回の3次改革の申し送り事項として、小売り全面自由化について@供給信頼度の確保Aエネルギーセキュリティーや環境保全等の課題との両立B最終保障、ユニバーサルサービスの確保C実務的課題等について検討を行った上で全面自由化を行うなどがあげられており、エネルギー基本計画では、長期投資、長期契約のリスク、特に、原子力の新、増設等に関する投資への影響についてなどが指摘事項としてあげられている。さらに、公正取引委員会からの指摘事項として、卸電力取引所の活性化、常時バックアップの維持、連系線の制約問題、託送料金設定方法の問題、同時同量制度やインバランス制度の合理化、CO2クレジットの活用、また、原子力や水力の先行者既得権問題、電力会社間競争の促進などの指摘事項も検討課題に加わる。規制改革・民間開放推進会議が昨年12月にまとめた第3次答申での指摘事項としても、卸電力取引所の活性化や託送制度等の見直し、新規原子力発電へのPPSの関与、新エネの普及拡大など環境問題への対応や安定供給との調和などについて検討が求められている。
 同日の委員会の議論では、これ以上の自由化拡大を求める意見は少なく、安定供給やセキュリティー対策、原子力の促進の観点から自由化のデメリットとして電力事業者の経営の安定を不安視するものや、供給信頼度の低減を危惧する意見などが目立った。


電力託送収支で超過利潤が発生
 4月13日に開かれた、電気事業分科会では、電気事業制度改革についての議論が行われたが、その中で、託送部門収支でで超過利潤が発生していることが明らかにされた。
 PPSなどの新規電力事業者や管外の他の電力事業者などが、ユーザーへの電力供給を電力ネットワークを利用して供給する場合、管内のネットワークを保有する地域の電力会社に託送料金を支払うことになっているが、その託送部門で05年度に超過利潤が発生している電力会社が東京、関西、中部電力をはじめとして10電力会社中8社に上ることが報告された。
 託送料金は、自由化導入時に、既存電力会社の事業を部門毎に切り離し、発電、送電、配電・小売りの部門毎に分割するといういわゆるアンバンドリングを導入しない代償措置として、競争環境の担保措置として導入されたもので、電力会社内で送電部門の収支を切り離して会計し、ネットワークの維持管理に必要なコストを電力会社と新規参入者が公平に負担する仕組みとして説明されている。この部門収支では超過利潤の発生は本来あってはならないこと。05年度の超過利潤額が最も大きい東京電力が709億円、中部電力が554億円、最も少ない沖縄電力でも21億円で、北海道電力と東北電力はマイナスだった。
 託送料金は00年度に特別高圧部門の自由化開始以来、数次にわたる段階的に料金の引き下げが行われており、現状の水準は特高部門が10社の平均で2.02円、高圧部門が4.52円と発表されている。超過利潤の内訳や内容については明らかにされていない。
 託送料金については、料金の算定根拠や国に届け出られている部門収支の明細なども明らかにされておらず、PPSなどからは算定根拠の明確化や電力会社自身の負担状況などが明らかでなく公平な競争条件が整備されていないとして不満が示されている。


エネ庁が「自治体ESCOモデル公募要項」を公表
 温室効果ガスの排出量削減に向けて積極的な取り組みを進めている経済産業省・資源エネルギー庁は4月23日、公共部門の省エネルギー対策をさらに推進するため「自治体ESCO事業モデル公募要項集」をまとめ、公表した。
 同庁の省エネルギー対策課は、地方自治体のESCO導入に関する知見不足を補うため今年1月、学識経験者や自治体関係者、ESCO事業者で構成する検討委員会(委員長・高村淑彦東京電機大学教授)を設置し、自治体がESCOを導入する際に障害となる課題点を整理して、契約書やリスク分担表の見直しを全3回にわたって行った。
 検討委では、これまでESCO導入に対する事務的な障壁が高いことや、ガイドラインでのリスク分担が有効利用されていないことが指摘され、公募要項を新たに自治体とESCO事業者が「ウィン―ウィン」の関係になるようなモデル公募として作成することとした。作成した公募要項集は@自治体がESCOを導入する際のメリット・デメリットの解説AESCO導入の際の事業計画から公募、契約までの一連の手続きについて解説B簡便でそのまま利用可能な公募要項モデルを作成する―などを骨子としている。
 ESCO事業は、大阪府や横浜市、三鷹市など主要な都市で多数の事業が実施され、05年度で38件、06年度で50件と増加傾向にあるが、公募入札に参加する企業は02年度に平均10.4件あったのに対し、06年度では平均3.5件に低下している。これは、公共部門のESCO市場での整備不足が原因であると見られている。しかし、自治体のESCO導入実績は着実に伸びており、他の自治体にも省エネルギーのポテンシャルを持つ公共建築物が数多くある。エネ庁では今後全国の自治体にESCO導入を拡大させるためには、公募や契約ルールの標準化が重要な課題になっていると指摘。今回の要項集を公表するとともに国土交通省や自治省などの関係省とも協議を行い、自治体のESCO導入に弾みをつけたいとしている。


京セラが太陽電池生産量を3倍に拡大
 京セラは4月18日、太陽電池の基幹部品であるセルの生産量を、2010年度に現在の約3倍となる50万kWに引き上げると発表した。太陽電池セルを製造する滋賀八日市工場(滋賀県東近江市)に今後4年間で約200億円を投じ順次、設備を増強するとともに、三重県伊勢市、チェコ、メキシコ、中国にあるモジュール組み立て工場でも計100億円かけて設備を拡充する。
 同社は現在、滋賀八日市工場で年間18万kWのセルを生産している。05年9月には新工場棟を増設したが、原材料のシリコン不足でフル稼働できなかった。このほど、複数のシリコンメーカーから長期的に安定供給を受けることが可能になったことで、大幅な増産に踏み切ることにした。
 京セラは多結晶シリコン太陽電池を製造している。シリコン原料の鋳造からセル製造、モジュール組み立てまですべて自社で完結しており、同太陽電池の生産規模として年産500kWは、世界最大となる。

天然ガスハイドレートの輸送会社を設立
 三井造船と三井物産は、天然ガスハイドレートの輸送会社を4月13日付で設立したと発表した。天然ガスが水分子の中に取り込まれたシャーベット状の物質が天然ガスハイドレートで、天然ガスの輸送や貯蔵の安全性が高く、経済的に輸送できる。両社は、天然ガスの新たな輸送手段として天然ガスハイドレートによる天然ガスの輸送事業を始めるため新会社を設立した。新会社は「NGHジャパン」で、出資比率は三井造船が80%、三井物産が20%。
 三井造船が持つNGHの製造・貯蔵・ガス化技術と三井物産がLNGで実績を保有する天然ガスバリューチェーンの構築力や事業展開力を融合し、日本発の技術で世界に先駆けてNGHの事業化を目指す。
 天然ガス輸送はLNGが一般的だが、NGHで輸送流通が可能となれば、これまで開発が困難視されていた中小ガス田の開発が可能になるとともに、ガス供給が困難だった地域へも長期にわたり安価にガス供給が行える。また、日本近海の海底に大量に賦存しているメタンハイドレートの抽出や輸送手段としてや、CO2貯留技術としても転用できる。

移動式水素ステーションの実証運用を開始
 岩谷産業は、関西電力と共同で、完全車載型の液化水素型移動式水素ステーションを開発した。トラックの荷台に水素ステーションを装置して、必要な場所に水素を巡回供給する。サテライトの蓄圧器とディスペンサーの簡易型水素ステーションへの水素補給用としても利用する。
 水素の利用はまだ、ごく初期段階で小規模の水素需要しかないため、水素ステーションの急激な建設、整備はすぐには難しく、移動式の水素ステーションや簡易型のステーションで需要に見合った水素供給網を整備していくことが現実的であると考え、移動式の開発を行った。国が進めるJHFCプロジェクトの研究開発テーマとして岩谷と関西電力が共同で開発を進めているもので、JHFCプロジェクト・第2期として関西地区での実証試験として有用性が検証される。
 開発した移動式水素ステーションは、液化水素タンクや充填設備、ユーティリティー設備など主要構成機器がセミトレーラー上に全て搭載され、機動的な水素供給が行えるよう工夫されている。また、液化水素を使用しているため、2千リットルタンクが搭載でき、燃料電池車15台分の充填が1回に行えることや、35MPaの直接供給と40Mpaでのサテライトステーションへの水素充填ができる。また、トレーラー部分を切り離して定置式の水素ステーションとしての利用もできる。

ファーストエスコの社長が交代
 大手都市ガス3社が発表した05年度のガス販売量は、3社とも過去最高を記録した。
 東京ガスは前年度比6.6%増の130億2371万立方mと28年連続して増加、販売量で初めて130億立方mの大台に乗った。大阪ガスも4.9%増の84億4800万立方mと4年連続で過去最高を更新、東邦ガスは工業用需要が大幅に増加したことで15.8%増の34億4041万立方mと2ケタの伸びを示した。3社とも、年間を通じて気温が低めに推移したことで家庭用が伸びたことに加え、工業用で新規需要の開拓や顧客企業での稼働増などが進んだ。
 ファーストエスコは5月15日付けで、筒見憲三・代表取締役社長が取締役に降格、齋藤晴彦・専務取締役が代表取締役社長に就任すると発表した。
 今期の業績が低迷していることから、97年5月の設立以来社長を続けてきた筒見氏に代わって、齋藤氏が社長を務めることで成長軌道への回帰を目指す。新たな成長のためのビジョンは後日、公表する。齋藤氏は丸紅出身。02年にファーストエスコの顧問となり、03年からは専務取締役として主にグリーンエナジー事業を管掌していた。65歳。

その他の主な記事
国内排出権取引C型参加者を募集
・トヨタとヤマトが燃料電池車で宅配便
・日本特殊陶業が高性能水素センサーを開発
・環境配慮契約法案の成立が濃厚に
・NEDOが京メカクレジットを初購入
・東邦ガスが2つの地冷をネットワーク化
・自然エネ・コムが環境イベントにグリーン電力証書
・ユアテックが風力を受注
・鳥取ガスがオールガス化モデル住宅を公開
・06年度のガス販売量
・NTTファが新エネサービス
・東京電力が中国の風力CDMを取得
・丸紅が米国でバイオマス発電を買収
・5月23日から電設工業展
・機械学会がVOC抑制講習会
・環境工学総合シンポ2007、大阪で
・有機資源協がバイオマス視察の研修会
・NEDOが高所風況調査の委託先を募集
・NEDOがPEFC次世代技術開発を募集
・蓄熱センターで高効率空調機導入、募集始まる
・ヒートポンプ協会が先導的負荷平準化モデル事業公募   etc.

企画・特集
・エネルギーアドバンスの事業展開の方向性
 −三浦千太郎新社長に聞く−

シリーズ連載
・再生可能エネルギー 新潮流B<原子力拡大路線の危惧>
・建築計画・工事ニュー


コラム
・発電論評<電気事業分科会で話し合われたこと>
・プリズム<第4次電力制度改革が幕を開けたが>
・ちょっと一休み<荒木弁護士の出版記念会>
・青空<ダイエーの凋落を物語る逸話>


電気事業分科会で話し合われたこと【発電論評】

 4月13日、再開された電気事業分科会の審議の様子を傍聴した。
 分科会の審議の最重要課題は家庭用までも含めた完全自由化に踏み切るべきかどうかの判断をすること。現在の高圧の全需要家までを対象にした部分自由化の実施を決めた時には、今年度からその是非について検討を開始するということだけが決まっていた。
 検討を再開するに当たって分科会には、「セキュリティーと環境問題が両立できる電気事業制度のあり方について」という検討課題が改めて諮問された。
 この2年間の情勢変化は驚くほどのものがあり、自由化という言葉は死語に等しいほどに色あせて見える。同日の委員の発言のほとんどはこれ以上の自由化の拡大は慎重にあるべきだとする意見に集約されたように見えた。
 エネルギー基本計画の方針に則って、原子力立国を目指すべきで、そのためには電力会社の事業体力を削ぐような制度改革は避けるべきだというものや、自由化が安定供給や電力価格の高騰などの事態につながらないように危惧する意見も述べられた。
 自由化拡大を求めたものは少数だったが、「全面自由化されることを前提に市場参入を果たしてきたPPSの事業意欲を削ぐことの無いように」との要望が述べられた。
 それでも中には、注目される意見もあった。有識者の委員からは、全面自由化の前に、現状の部分自由化の評価や検証を行うべきで、アンバンドリングも含めた電力市場のあり方について根本的な議論を行った上で、次期の自由化のあり方についての検討に進むべきだというものや、喫緊の最重要課題となりつつある環境対策として、市場に供給される電力のCO2排出係数を低減する手段としてCO2クレジットを活用できるような方策を考えるべきだとする意見などが述べられた。
 CO2のクレジット利用については、先行者利得と化している原子力や水力などの電源について、市場競争の公平さを担保する観点から、CO2価値を利用が不可能なPPSに対して、クレジット化して提供することや、CDMクレジットも排出係数の低減に活用できるようにするなど、PPSがCO2競争力を確保する制度を整備することや、現在はCO2クレジットとして活用策が講ぜられていないRPS価値についても、CO2クレジットとして利用できるようにすることも検討するべきだという意見も述べられ注目された。
 議論は始まったばかりで、結論を出すのはまだ先のこと。自由化の本質は、自由で公平な競争環境の下で電力が市場に豊富に供給され、需要家が求める良質な電力が選択できるようになることだということを忘れず、多角的な視点から検討されることを期待したい。