2006915日号

エネルギー基本計画の改定に着手、分散型は長期的取組に
 総合資源エネルギー調査会・総合部会の基本計画小委員会(委員長・黒田昌裕経済社会総合研究所所長)が9月8日、初会合を開き、エネルギー基本計画の見直し作業に着手した。エネルギー基本法に基づいて04年に策定された現行のエネルギー基本計画を見直す。5月末に策定した新・国家エネルギー戦略に基づいて今後10年程度のエネルギー政策の基本的な方向を打ち出す。先月開催された総合部会で示された基本方針に基づいて検討を進め、10月3日に予定されている次回の会合で改定案のとりまとめを行うことにした。
 見直しにあたっては、「新戦略」との整合を図ること、京都議定書目標達成計画による対策・施策を盛り込んだ内容とすること、原油価格の高騰など、最近のエネルギーを巡る環境変化に対応することなどが留意点となる。改定案では、戦略を踏まえて基本計画の構成も一部変更し、石油や天然ガスなどの資源の安定確保などセキュリティー面での強化や原子力の重視、エネルギー環境分野での国際協力の推進、また、新エネルギーの開発利用などエネルギー源の多様化、省エネ対策の強化などを盛り込んでいる。
 分散型エネルギーについては、、発電所やガス導管などのインフラ整備面でのコストや非常災害時のリスク回避の手段として有効であること、需要地近接であり高効率利用が可能であること、国民がエネルギー技術を身近に感ずることができることなどを利点としてあげ、エネルギーの需給構造についての長期展望を踏まえた取組の中で引き続き、分散型エネルギーシステムの構築に向けた取組を行うとしている。


環境省がメガワットソーラーの補助先決める
 環境省は、高価格なため普及が進んでいない事業用分野で太陽光発電システムの導入促進を図ることを目的に、今年度から「メガワットソーラー共同利用モデル事業」の補助制度を創設しているが、本年度の助成先3件を公募によって決定した。補助事業として採択されたのは、長野県佐久市、飯田市、高知県香南市で実施される3件。佐久市の案件はLLP(有限責任事業組合)を設置して、地域企業や自治体等が所有する施設等を活用してシステムを設置、施設所有者や電力会社に電力を販売する。飯田市では市の周辺を含め銀行やガソリンスタンド、保育園・幼稚園等にシステムを設置して設置事業所や施設に電力を供給・販売する。設備は市民が出資する共同利用発電所として運営する。また、高知県の案件は、自治体や企業の施設等にシステムを分散設置して電力会社と施設所有者に電力を供給・販売するとともに、企業や住民などに新たな環境価値を提供する事業を実施する。3件とも今年度から3カ年計画で合計1千kWの太陽光発電システムを設置する計画。補助金額は佐久市が1億7100万円。飯田市が1億5200万円、高知県が5700万円。
 同制度は、地域での共同利用に根ざした太陽光発電システムをモデル的に立ち上げ、多様なメガワットソーラー事業の可能性を示すことが目的に今年度から実施されているもので、地域での共同利用によって全体で1千kW程度の太陽光発電設備を設置し、事業化する民間団体などに1kWあたり40万円を上限に補助を行う。


ENEOS水素基金の補助先決まる
 新日本石油は今年3月に創設した「公益信託ENEOS水素基金」(規模15億円)の初の助成先として6件を決めた。水素製造技術分野で斉藤信雄(長岡技術科学大助手)、谷生重晴(横浜国立大教授)の2氏。水素貯蔵・輸送媒体技術分野で杉本学(熊本大助教授)、中原勝(京都大教授)、宮崎則幸(同)の3氏。CO2固定化技術分野で生越専介氏(大阪大助教授)。各氏に1千万円以内で助成される。独創的な基礎研究を助成することで、水素社会の早期実現を図る。
IHIが新潟原動機を100%子会社に
 石川島播磨重工業は、日本政策投資銀行が保有していた新潟原動機と新潟トランシスの株式を取得し、両社を100%子会社としたと発表した。両社は旧新潟鐵工所の主力事業を分離し、02年10月から出資比率70%で日本政策投資銀行と共同で会社更生法により事業単位での再生を図ってきた。新会社設立から3年半を経過し、経営が軌道に乗ってきたことから石播側が全株式を取得して子会社化した。
 現在新潟原動機は、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスタービン、Z型推進装置などの製造販売を行い450億円の売り上げがある(18年3月期実績)。最近では市場が活性化している大型ガスエンジン分野に注力している。

新たにグリーン電力証書255万kWhを契約−日本自然エネルギーが発表
 東京電力のグループ会社でグリーン電力証書事業を営む日本自然エネルギー(三野治紀社長)では、この度新たに17団体と年間254.8万kWhのグリーン電力証書の委託契約を締結したと発表した。新たに契約したのは中野区(100万kW)を始めサントリー(50万kW)、はてな(30万kW)など16団体。また、東京ガスが15万kWhの水力発電を追加契約した。日本自然エネルギーは、受託した発電の再委託先として稚内市水道部と風力発電(660kW×3基)、銘建工業(本社岡山県真庭市・中島浩一郎社長)と木質バイオマス発電(1950kW)、東京都水道局とマイクロ水力発電(110kW×2台)の発電委託契約を行った。今回契約した17団体は、風力発電が3社、水力が2社で残り12団体・社はバイオマス発電を利用する。風力発電を利用する「はてな」は、インターネットの検索システムやブログなどを提供するサーバーの電力をすべてグリーン電力化することで「風で動くインターネットサービス」を実現する。また、松山油脂(本社・東京都墨田区 松山剛己社長)は、富士河口湖工場で使用する電気を全てグリーン電力化し、無添加石けんなどの様々な製品が風力発電によって製造されることになる。 マイクロ水力の電力を利用するサントリーは同社のサントリーホールの電気の約4分の1をグリーン電力化する。
 今回の契約により、日本自然エネルギーのグリーン電力契約数は合計91団体、6420万kWhとなり、削減できるCO2排出量は約2万4900トンになる。

弁当廃食油からバイオディーゼル−プレナス
 持ち帰り弁当店ほっかほか亭や定食やなどをチェーン展開するプレナスは、店舗から廃棄される廃食用油のリサイクルによってバイオディーゼル燃料(BDF)を製造し、商品を各店舗に配送する車両の燃料として再利用することにした。
計画では、福岡市内にバイオ燃料製造の専用施設を建設し、九州・山口地区936店舗の廃食用油年間約150万リットルを回収し、約135万リットルのBDFを製造、同地区の配送用車両111台の約70%分の燃料として利用する。同社では、これによって自社廃棄物の20%を減量あるいはリサイクルすることを求めている食品リサイクル法の努力目標をこのシステムによって達成できる見込み。07年中には埼玉県の同社物流センター内にBDF製造施設を建設し、東日本地区でも同様の取り組みを拡大実施することにしている。
 現在、弁当店2229店舗と定食店142店舗併せて2371店舗があり、年間約370万リットルの廃食用油を排出している。これをBDF化し、車両燃料として利用することで現在、日本全体で製造されているBDFの全体量に相当する年間約330万リットルのBDF燃料が製造でき、約8600トンのCO2が削減できることになる。

その他の記事
制度改革、原子力小委報告など−電気事業分科会
・経産省、次世代自動車用電池で提言
・三井造船が岡山バイオ研究会に参画
・電中研、販売電力量予測
・環境省、省エネ製品CO2削減効果算定手法開発へ
・環境エネルギーを強化−川崎重工が中期経営計画
・東洋エンジが中国でDMEプラント
・京セラが軽量化太陽光と発電モニタ
・日本通運がCO2算出ソフト
・三菱電機が海外向けソーラー
・中部電力が新型冷凍機開発
・双日がCDM事業に進出
・新日石が横浜市風力事業に協賛
・燃料転換319件、ガス協会が調査
・日本ガイシNAS電池が富士通で稼働
・燃料電池ターレット車を共同開発
・新エネシンポ、幕張メッセで開催
・NE−EXPO開催する
・省エネ連携推進事業決まる
・上海での民生分野省エネモデル事業調査を開始
・バイオマス転換要素で9件決まる
・秋田市営住宅PFI
・明石舞子団地再生PFI
・横浜市ESCO
・大阪プールESCO
・6月の産業機械受注状況
・富士経済が業務分野のエネ需要予測   etc.
     
シリーズ連載
・分散型エネルギー再生へ@
・グリーン電力で復活するエネルギーサービス(最終回)
・建築計画・工事ニュース
・分散型発電用語実務の話題<毎月15日に掲載>

コラム
・発電論評<エネルギー供給に欠かせない高効率利用の視点>
・プリズム<実は環境に優しくないオール電化>
・ちょっと一休み<気さくな在日米海軍司令長官>
・青空<9月/自民党総裁選2006


【分散型エネルギー再生へ 〜エネルギー政策を問う〜 】
 第1回 リーダーの撤退


 エネサーブは基幹事業である自家発電販売事業からの撤退を発表した。
 エネサーブは価格競争力の高い定型の発電機を用いて安価な電力を供給することで急成長した会社だ。量産効果が利き、性能的にも安定した中型の発電機を用い、燃料には安価な重油を用いた同社のビジネスモデルは高い競争力を持ち、8千台近い発電機を納入するまでに成長した。その総発電容量は実に150万kWにも達する。
 2000年にはナスダック・ジャパンへの上場、2001年には東証一部への上場を果たし、まさに、電力自由化時代のエネルギービジネスの雄と言うに相応しい存在であった。そのエネサーブが基幹事業からの撤退を発表した。これは単に分散型電源の事業だけでなく、電力自由化、新エネルギー政策を追い風に立ち上がった全ての事業者に対して将来の方向性を問うものと言える。

 エネサーブが主幹事業から撤退した理由は、言うまでもなく原油高である。電力自由化により自家発電代行事業が解禁された当時、20〜30ドルでしかなかった原油の値段が今では70ドルを超すようになっている。電気だけを供給するモノジェネレーションをベースに価格で勝負してきた同社にとって、予想を超えた原油高の影響は耐え難いほど大きかったのだろう。
 そして、長年手塩にかけて育て上げた基幹事業から撤退せざるを得なくなったもう一つの理由は、今般の原油高が一過性のものではないことだろう。中国などでのエネルギー需要の急騰、払拭できない中東地域の不安要素、あるいは油田開発費用の高騰などにより、将来石油価格が低落すると考えている人は殆どいない。一方で、原油価格が100ドルを超える日も遠くはない、という人もいる。
 オンサイト発電事業で苦戦しているのはエネサーブだけではない。特に、重油を燃料とする事業を展開する事業者はどこでも厳しい事業運営を余儀なくされている。採算が合わずに停止されている発電施設も数多くある。原油価格の高騰は、モノジェネレーションだけでなく、コージェネレーションによるエネルギー効率の改善すらをも呑み込む可能性がある。

 効率的な分散型電源を引っさげ、事業を拡大したエネサーブの撤退は分散型電源事業の限界を示唆するものなのだろうか。国際的に見ても、エネルギー価格の持続的高騰が避けられない中で、オンサイト発電というビジネスモデルは過去のものになろうとしているのであろうか。
 この点に関する明確な示唆が得られないのならば、エネサーブの撤退はオンサイト発電マーケットの劇的縮小の始まりにもなりかねない。エネルギー産業の時間は巻き戻され、1995年以降、幾多の努力により築き上げられたマーケットは瓦解し、オンサイト電源は非常用などのセキュリティー用に留まってしまう。
 今、はっきりさせておかなくてはいけないのは、需要家の側に電源を置き、エネルギー効率を80%にも高め得る分散型電源には、エネルギー問題を解決するための大きな可能性がある、ということだ。にもかかわらず、予想を超えた石油価格の高騰で分散型電源ビジネスが危機に直面しているのには理由がある。
 1つ目は評価の問題だ。ある意味、コストに偏重したエネルギーの評価が国内外での需給バランスの歪みを生んだといえる。エネルギーに依存した現代社会を継続していくためには、環境面での評価が需要家のインセンティブのつながる社会的な仕組みが必要だ。しかし、京都議定書時代の本格的なエネルギーの評価軸はできていない。
 2つ目は技術面での過渡期にあることだ。一定以上の発電効率とコストを克服することができれば、分散型電源に大きな優位性があることは自明である。昨今、中小型発電機の性能向上は目覚しいものがあるが、いまだこれらの課題を払拭し切ってはいない。
 3つ目は、エネルギーのハイブリッド化の過渡期であることだ。環境面で見ても、セキュリティー面で見ても、安定したエネルギー基盤を作るにはハイブリッドなエネルギーシステムを作り上げることが必要だ。また、それは化石燃料や原子力だけで達成できるものではない。ハイブリッドなエネルギーシステムが正しい方向で作られていくのであれば、分散型電源は必須のシステムになるはずだ。
 つまり今、分散型電源を使ったビジネスが危機的な状況に直面しているのは、分散型電源という将来性のあるシステムを普及するための基盤が完全でないうちに、燃料価格の予想外の高騰という事態が発生したからである。
 ここをどのように切り抜けることができるかで、エネルギー・産業政策と企業戦略の見識が問われることになる。

                 井熊 均 <日本総合研究所創発戦略センター所長>