2006725日号

環境エネルギーへのシフト強める−本紙が分散型エネルギー市況アンケート
 燃料費の高騰によるオンサイト型エネルギー市場は本格的なCO2削減対策が始まる中で市場形成の大きな転換点を迎えている。本紙が例年行っている、分散型発電市況アンケート調査によってこうした分散型エネルギー市場の動向が改めて浮き彫りとなった。市場停滞の理由として約80%のものが燃料費の高騰を、また、約70%のものが電気料金の値下げをあげた。コージェネ、特に石油系の分散型市場は原油価格の高騰と電気料金の値下げがダブルパンチとなり、急速に市場競争力を失っている様子を示している。しかしながら、今後の市場予測としては市場は拡大するをあげたのが37.3%、横ばいが32.2%で、現状は厳しいものの、環境対策や省エネ対策として自然エネルギーや燃料電池などとともに、環境エネルギーシステムとして市場拡大に期待する向きが多い。
 今後、有望な用途としては、工場などの産業用で42.4%のものがこれをあげ、省CO2や省エネ対策で天然ガスへの燃料転換によるガスコージェネの拡大に期待している。また、小規模店舗や家庭用の市場は近年ようやく機種開発が進み、電力会社が攻勢をかけるオール電化に対抗するガス側の有力なツールとして、更なる市場拡大への期待感が見える。さらに、マイクログリッドなどの面的利用分野はまだ市場ができておらず、事業モデルも提供されている段階ではないが、新エネルギーや未利用エネルギーの拡大手段として地域社会での小規模分散型ネットワークや都市再生地域での熱電併給型の地域エネルギーサービス事業の形成が期待されている。
 将来性のある発電システムとしてあげられたのは、ガスエンジンと燃料電池に、人気が集中している。ガスエンジンの他のエンジン系のシステムに対する期待度は低い。石油や天然ガスに代わって将来性のある燃料には、バイオマスと水素をあげたものが多く、石油代替エネルギー開発の高まりへの期待や、CO2削減対策の一環としてバイオマス系燃料開発への期待が高まっている。ハード面での課題については、燃料の多様化、熱効率の向上をあげたものがともに50%を超えている。また、環境対策も半数近くのものが必要な課題としてあげている。熱効率の向上をあげたものは前年度に比べ9.1ポイント増と大幅に増加しており、省CO2に向けた分散型システムの技術開発の課題として、高効率化が現実的な課題として突きつけられている様子が見える。
 今後の分散型市場の動向に大きな影響がありそうな環境税と電力自由化についての評価では、環境税の導入には税収を新エネなどの導入支援に使うことを条件に賛成するものが55.9%と過半数を超えており、電力自由化については、マイナスの評価をするものが多いという結果となっている。
 本紙が毎年行うアンケート調査は今回で4回目、分散型エネルギー関連事業を営む全国223社に対してアンケート調査した。回答したのは59社で、回答率は26.5%。回答企業の内訳は、設備機器(コージェネや発電設備など)メーカーは25.4%、周辺機器メーカーが11.9%でどちらも前年度に比べて10ポイント前後減少、今回の回比率が高かったものはESCOコンサルタント事業、工事メンテナンス事業、エネルギーサービス事業など。


神奈川大がディーゼル用エマルジョン燃料を開発、排ガス規制値をクリア
 神奈川大学の産官学連携プロジェクトチームでは、中心メンバーの田嶋和夫工学部教授の「三相乳化技術」の研究開発によって、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOXやPMを大幅に低減できる画期的なエマルジョン燃料を開発したと発表した。6月末に群馬県内で行った30トンダンプを走行させる実車テストやベンチテストで開発したエマルジョン燃料が国土交通省の次期排出ガス規制値(3次規制)をクリアできることを確認した。
 開発したエマルジョン燃料は、界面活性剤を使用せず、柔らかい親水性ナノ粒子を使用した新しい乳化法(三相乳化法)によるもので、物質固有の性質に依存せず粒子の大きさや形だけに依存するという従来の乳化法とは全く違う画期的な乳化方法で@異種類の乳化粒子で広範囲の油剤を乳化できるA多種油剤の混合エマルジョンの調整ができるB界面活性剤の水と油の神話性を表すHLB値を考慮する必要がなく製品開発や製造時間の短縮化が図れる。混合する水も工業用水が使用できる。また、排ガス中のNOx、PMについても大幅な削減ができ、NOxの場合、軽油100%燃料に比べて約3分の1以下に低減できることが確認されているという。エマルジョン燃料は環境特性に優れるだけでなく燃料としての安定性や燃料消費率も10%以上向上することが期待できるなど画期的なディーゼル燃料として実用化が期待される。


NEDOがCO2クレジット購入を開始、京メカ活用が本格スタート
 京都メカニズムの本格活用に向けて、国のCO2クレジットの取得制度が開始された。京都議定書の目標達成計画に基づいて、国内の削減対策ではなお不足すると見込まれている約1億トンのクレジットを取得するため、クレジットの取得機関としてNEDOに委託して、7月21日からクレジットの公募を開始した。京都メカニズムに基づくプロジェクトは途上国におけるCDM事業と、CO2排出枠がある先進国間で行われるJI事業などで発効するCO2クレジットをNEDOが購入する。対象となる事業はNEDOが直接CDM/JI事業に参加する直接取得型とプロジェクトそのものにはNEDOは関与せず、事業者等からクレジットだけを購入する間接取得型の2タイプがある。直接型の場合CO2クレジットは25万トン以上、間接型の場合は50万トン以上を募集の対象として、拘束期間である08年度から12年度までの5年間に日本国内の削減計画だけでは不足すると見込まれている約1億トンのCO2クレジットの購入を目指す。
 購入事業の初年度となる06年度は122億円の予算枠で、このうち54億円をクレジットの購入費に充てる。応募に関しては特に締め切りは設けず随時受け付けるほか、購入事業者の選定に当たっては@取得費用の効果性Aクレジット量の拡大可能性B提案者の信用力事業管理能力CカントリーリスクDプロジェクトリスクE京メカリスクF環境等に関する影響配慮の7項目を重点評価項目として審査する。購入量や選定プロジェクト、事業者などは公表するが価格については非公表とする。
 CO2クレジットの取引はまだ始まったばかりであり、クレジットの相場形成は進んでいない。また、実際の削減義務を負うのは2年先であり、拘束期間中のクレジット相場がどうなるのか、最大のクレジット購入先といわれる日本の購入動向がクレジット相場に大きな影響を持つことになりそうだ。

ESCO活用で適切な営繕管理目指す−国交省建築分科会が建議
 国家機関の建築物を良質なストックとして維持管理するための方策について社会資本整備審議会の建築分科会が建議をまとめた。既存の官庁施設等の適切な維持管理について、保全責任者を明確化すると共に、ライフサイクル全体を通して適切な維持管理を行う視点の導入を求めている。具体的には、@グリーン庁舎の整備、運用段階のエネルギー利用効率化の一層の高度化A重点的・計画的な耐震改修の促進Bユニバーサルデザインの考え方に基づく多様な利用者の参加に配慮した営繕C周辺のまちづくりなど地方公共団体と連携した営繕といった社会的な要請に対応し、ESCO事業の導入など合理的かつ適切な営繕を推進することを目指す。
 現在、国家機関の建築物のストックは約2万施設、約5200万uある。このストックを適正に管理しするために、昨年8月に建築分科会に「官庁施設部会」を設置して良質なストックとして整備・活用するための官庁営繕行政のあり方について建議を取りまとめた。建議では、エネルギー利用については、その利用効率の行為場を図ることで境負荷低減対策の推進を図る観点から、より効果の高いグリーン庁舎の整備を推進することとし、LCEM手法を活用してESCO事業を活用するなど効果的なグリーン改修の実現を目指す

高効率エネシステム導入支援、33件決まる
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「高効率エネルギーシステム導入促進事業」で、33件の補助金交付先を決めた。事務所ビルなどの建物に高効率のエネルギーシステムを導入する建築主に、NEDOがシステム導入費の3分の1を補助する。事業者は3年間、導入による省エネ効果をデータ化し、NEDOに報告する。今回の採択による省エネ効果は、原油換算で年間約6300klが見込まれる。採択された事業の内、コージェネレーションシステムを導入した省エネ事業は次の通り(事業名、申請者名の順)。
▼ユーエフジェイセントラルリース本社ビルESCO事業(横浜市)=千代田化工建設▼沼津市立病院ESCO事業=静岡ガス、ユーエフジェイセントラルリース▼大阪警察病院省エネシステム導入事業=ガスアンドパワーインベストメント▼下関市中央病院ESCO事業=日立キャピタル、日立製作所▼東刈谷サービスステーション移転省エネ工事(愛知県知立市)=豊和▼城北病院エネシステム導入事業(京都市)=康生会

その他の記事
 <特集>
@シンポジウム「新エネルギーの新たな展開」
・講演とパネルディスカッション
A分散型エネルギー市況調査−事業者に聞く(アンケート集計結果)
 <その他の主な記事>
・石油コージェネ導入補助で石連が2次募集
・NEDOが太陽光システム実用化と中小水力2次募集
・PEFC高効率化や低コスト化で委託先募集(NEDO)
・9月にLPG振興センターが研究成果発表会
・地域バイオマス熱利用も6件を選定
・蓄熱のつどいを開催−ヒートポンプ・蓄熱センター
・ヒートアイランド対策点検、政府が第2回結果を公表
  etc.
     
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グリーン電力にCO2価値付加を【発電論評】

 NEDOが、CO2クレジットの購入事業を開始した。京都メカニズムの本格活用を行う政府のクレジット取得事業の受託機関として、CDMやJIなどのCO2削減事業から発生するCO2クレジットを購入する。京都議定書の発効により、日本は90年比で6%のCO2排出量の削減義務を負う。08年から12年までの5年間で、国内での排出削減事業だけでは削減量の不足が見込まれる1億トンのCO2クレジットの取得を目指している。
 08年度からの拘束期間の開始が目前に、昨年、政府の目標達成計画をまとめた。削減量は90年比マイナス6%だが、その後の増加分を加えると実際には2倍以上の削減が必要となる。京都メカニズムはその一部をまかなうだけで、大半は国内での排出削減が必要だ。NEDOのクレジット取得事業の開始で注目されるのは、CO2削減クレジットが取引されることで、CO2に商品価値が生まれるということである。CO2取引は、これによって今後本格化することになるが、具体的な市場形成はこれからで、CO2の価格相場の形成もこれからである。NEDOでは個々の購入するクレジットについて、購入量や事業者などのデータは積極的に公表するが価格については非公開の方針。しかしながら具体的な取引量が増えるにつれて取引相場がやがて形成されることは必定で、CO2が事業者間で転売取引される市場もすぐに立ち上がることになろう。
 CO2が商品として流通するようになれば、やがて国内取引を求める声が強まってくるのではないか。京都メカニズムで認められるのは国際間のクレジットの移転だけであるが、商品CO2として、削減したCO2を販売したい事業者とそれを購入したい事業者による市場を求める声が当然強まることになる。CO2取引とにたような仕組みのものに、電力のグリーン証書とRPS電力取引があるが、これとCO2価値は連動していない。最近これを連動するべきではないかという議論が高まってきている。PPSが風力やバイオマスなどのRPS電力を購入しても、CO2価値の移転は認められていないので、PPSの電力原単位にCO2削減価値は加えられない。グリーン電力も同様である。CO2を減じようとすれば自らが風力やバイオマス発電を行わなければならない。これは、他社からの購入を認め自然エネルギーの普及に弾みをつけるとしたRPSやグリーン電力制度の趣旨に反するのではないか。省エネ法、温対法の改正によって事業所での省エネやCO2管理が厳しくなっている。成果の上がりやすい制度とするためにも、国内事業者間のCO2クレジットの移転制度を真剣に検討すべきではないか。