2006615日号

公取が電力自由化拡大を促す提言
 公正取引委員会は、6月7日、電力市場の自由化の進展を促す提言をまとめ発表した。「電力市場における競争状況と今後の課題について」と題するもので、先頃経産省が電力制度改革評価報告書をまとめたのに合わせて公取委側の考え方を示し、引き続き自由化市場の健全性を担保する課題と方向性を指摘した。公取委の提言は、電力小売り自由化市場の現状を特高産業用、特高業務用、高圧産業用、高圧業務用の4つに分類し、それぞれでの自由化の進捗状況などについて評価した。新規参入者の参入状況については参入シェアが2%程度と極端に低い状態が続いていること、供給区域をまたぐような電力会社間の競争が起きていないこと、電力料金についても比較的競争が行われている特高業務用については25%程度の下落がみられるものの全体では10%程度の下落にとどまっていること、また電力会社間の料金格差(地域格差)も依然として10%程度あることなどを指摘し自由化の成果に大きな不満を示している。また、電力会社の経営状態についても経常利益が全産業平均の4.2倍、非製造業平均の5.2倍であることを指摘して経営効率化や高利益体質の改善余地がまだ大きいことなどを指摘している。
 公取委の提言が市場競争の個別課題として、取り上げているのは卸電力取引所、常時バックアップ、連系線の制約、託送料金、インバランス制度、省CO2化、電力会社間の競争促進、全面自由化に向けての課題の7項目。このうち、卸電力取引については、市場が有効な電源調達の場として機能していない現状を踏まえて常時バックアップ制度の維持することの必要性、また、託送料金については現行制度による料金設定が必ずしも透明性がないことなどをあげ、認可制への移行や第3者による検証制度の創設を提言している。
 自由化開始後の新たな課題として、最近の地球温暖化対策問題を取り上げ、省CO2の観点から温室効果ガス削減のクレジット取引制度の導入や、既存の原子力や水力による電力利用についてイコールフッティングの観点からの検討を求めている。さらに、来年度から開始される全面自由化に関する検討についても需要家の利益と事業者間のイコールフッティングに十分留意することを求めている。


三菱重工がエンジン販社2社を統合、業務体質を強化
 三菱重工業は中量産品部門であるエンジン販売会社2社を統合し、販売力を強化すると発表した。自家用発電システムを手がける三菱重工エンジン発電システムを存続会社とし、エンジン単体を扱う三菱重工エンジン販売を7月1日付けで合併する。原油価格高騰や電力料金の引き下げなど事業環境の大きな変化に対応、業務の効率化・集約化を図って事業体質を強化する。
 新たに設立するのは「三菱重工エンジンシステム」。資本金は4億5千万円で三菱重工が全額出資する。本社は現在の両本社所在地である東京都品川区西五反田に置き、エンジン及び発電システムの本体・周辺機器の販売・据え付けからアフターサービス、エンジニアリングまで手がける。発足時の従業員は約350人。初代社長には外池正氏(現・三菱重工エンジン発電システム社長)が就任する。三菱重工は04年4月に、エンジンを始めとする中量産品の販売体制を、地域別総合販社体制から製品別の販社体制に再編した。その際、エンジンは舶用・陸用エンジン単体の機器売りと、店舗や工場の常用発電設備として使用する発電セット販売とで販社を分け、専業2社体制で事業を展開してきた。今回、2社を統合することで総合的な営業力を強化する一方、管理部門をスリム化する。


4万時間耐久PEFCスタックを開発−荏原と荏原バラード
 荏原製作所と荏原バラードは、4万時間の耐久性を持つ新たな固体高分子型燃料電池(PEFC)スタックのプロトタイプが、加・バラードパワーシステム社で開発を終了。東京ガスと新日本石油に対して、このプロトタイプを搭載した家庭用燃料電池の試作機を今年度中に提供すると発表した。第3世代機となる同スタックは、バラード社の加速試験の手法によって4万時間の設計耐久寿命を確認したほか、第2世代機と比べて重量で40%、容積で26%の小型・軽量化も実現している。
 製造コストの大幅な削減と日本市場向け機種の開発を目的に昨年9月、荏原製作所と荏原バラードは定置式PEFC用スタックの製造・開発などの権利をバラード社から取得。契約の一つとして、バラード社が開発中の耐久性4万時間の1kW級スタック開発において、1800万ドルを負担している。今後、荏原バラードは荏原の製造技術も活用し、スタックを自社で製造することで、システム全体のコストダウンに取り組んでいく。

岩谷産業が燃料電池電源車開発へ
 岩谷産業は純水素型燃料電池を搭載した移動電源車の開発に乗り出す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、燃料電池の利用分野拡大を目的に実施する新プロジェクトの助成事業として3年後をメドに開発を進める。純水素型燃料電池は起動が早く騒音や振動も少ないため、単独運転が可能な分散型電源の切り札として期待されている。また、この燃料電池を搭載する移動電源車は災害時の非常電源、密閉された場所での工事用電源、イベント用電源などとしての利用が見込まれる。
 今回、岩谷は国内初となる10kW純水素型燃料電池の開発、35MP充てんFRP容器など小型・軽量水素供給システムの開発を行い、安全性や実用化に向けた課題を抽出。その上でさまざまな分野で利用できる移動電源車としてシステム化する。

三菱重工が米国で風力発電設備を大量受注
 三菱重工業は6月8日、米国最大級の風力発電ディベロッパー、バブコック&ブラウン(B&B)グループから1千kW級の大型風力発電設備443基(総発電出力44万3千kW)を受注したと発表した。三菱重工として過去最大規模の大量受注となり、受注総額は300億円程度と見られる。今回の大量受注によって、三菱重工の風力発電設備の累計受注台数は2626基(184万3170kW)となった。
 B&Bが米国で展開する新たな4つの大規模風力発電プロジェクトに採用される。ブエナビスタ・プロジェクト(カリフォルニア州)へ38基、アラゴネ・メサ・プロジェクト(ニューメキシコ州)へ90基、スウィートウォーター4、5期拡張プロジェクト(テキサス州)へ135基。このほかコロラド州に建設されるウィンドファーム向けに180基納入する。4プロジェクトは06年末から07年末の運転開始予定で、三菱重工の現地法人が試運転、メンテナンス、据え付け指導を行う。
 今回納入する「MWT−1000A」は平均風速毎秒6mの場所で、従来機に比べて発電効率を約20%向上させるなど、低風速域でも世界最高レベルの高効率発電を実現したベストセラー機。この技術的信頼性が受注の決め手となった。

05年度RPS電力記録量は約42億700万kWhに
 資源エネルギー庁は、05年度のRPS電力の記録量をまとめた。RPS電力記録量は、RPS法に基づいて認定された新エネ設備の発電量を記録したもので、発電者が電力事業者へ販売するRPS電力。05年度1年間の記録量は42億711万3千kWhで、前年度に比べ約13億kWh程多かった。また、PPSを含む電気事業者に割り当てられた05年度の義務量は38億3049万4千kWで、05年度単年度で約3億8千万kWh義務量より多い。電力会社などが自社保有する電源は認定設備に含まれていない。
東大ホロニックエネ講座が7月に定例シンポジウム
 東京大学のホロニック・エネルギーシステム学(東京ガス)寄付講座の第2回シンポジウムが7月10日、東京・本郷の東大武田先端知ビルで開催される。シンポジウムは「系統調和型再生可能エネルギー利用」をテーマに同講座の浅野浩志同大学教授(分散型エネルギー資源の統合制御)や長谷川裕夫産総研エネルギー技術研究部門副研究部門長(分散型エネルギーネットワーク)、茅陽一地球環境産業技術研究機構副理事長(ホロニック・パス再考)の講演とパネルディスカッションが行われる。自然エネルギーや分散型エネルギーシステムの広域的な活用などについて研究を行っているホロニックエネ講座は毎年1回シンポジウムを定例開催している。シンポジウムは7月10日(月)13時から17時30分まで。会場は東京大学武田ホール。参加費は無料。事前登録を受け付け中(http://www.hes.t.u-tokyo.ac.jp/)。
本紙海外視察団が帰国、英国洋上風力など視察
 本紙主催の「第23回世界ガス会議&欧州分散型エネルギー事情視察ミッション」に参加した12名(団長・内藤進リンナイ会長)の参加者は5月30日、成田を出発しイギリス(洋上風力発電所)、ハンガリー(バイオマス発電所)、オランダ(アムステルダムでの世界ガス会議)を視察、6月8日に帰国した。
 イギリスでは、ロンドン郊外にあるケンティッシュ洋上風力発電所(年間発電量2億8450万kWh)を訪れた。2年半前から始まったイギリス最大の風力発電所の建設、構造、運用などについてデンマーク・ヴェスタス社のプロジェクト担当者による説明の後、沖合に30基(1基3千kW)設置された風車を見学した。
 また、ハンガリーでは首都ブダペストから西に90km離れた国営のベルティッシュ発電所(発電容量11万kW)を訪れ、石炭火力に木材チップを10〜30%混焼、SO2やCO2を減少させ環境改善に取り組んでいる実情を視察した。アムステルダムでの世界ガス会議(WGC)は、「03年に東京で開催されたWGCから現在のエネルギー価格の高騰・高止まりの折り、産・官・学と消費者の代表が集い、ガスエネルギー全体の連携について市場性、環境対応、技術開発などの情報交流を行う最適な機会となった」(ジョージ・ヴェルバーグ国際ガス連盟〔IGU〕会長)という言葉に象徴された。基調講演で日本ガス協会の安西邦夫会長は、アジア・太平洋地区における発電用ガス需要の急速な上昇状況や、ホロニックエネルギーシステムのようなわが国で進められている分散型電源普及への取り組みなどを述べた。

その他の記事
・NEDO、風況調査を風力発電協会に委託
・東京都の新エネ導入調査
・江戸川区が15施設でESCO
・東京都、五輪基本計画で再生可能エネを活用
・都立がんセンターのPFI事業
・都下水道局が汚泥焼却廃熱発電
・羽田空港でPFI事業
・市場監視小委員会が報告書
・沖縄電力も料金引き下げ
・関電堺港発電所環境アセスが確定
・北陸電力敦賀火力2号機がバイオマス混焼
・東京ガス横須賀パワーが運開
・NTTファシリティーズが無線基地局用電源システムを開発
・三菱重工がアイスランドから地熱発電受注
・ハイドロエッジが本格操業開始
・07年にかけて電力需要の伸びは鈍化
  etc.
     
シリーズ連載
・分散型エネルギーの最前線(21)
・新エネルギーのパラダイムシフトE
・建築計画・工事ニュース
・分散型発電用語の栞

コラム
・発電論評
・プリズム
・ちょっと一休み
・青空


多くの課題を指摘した公取委の自由化提言【発電論評】

 電力自由化の行方が不透明さを増す中で、公正取引委員会が電力自由化の健全化を促す提言を発表した。自由化市場でのPPSシェアが2%に過ぎないことに対する不満や、供給区域を越えた電力間競争が少しも起きない現状を競争の自粛と批判。また、PPSの電源調達が満足に行えないことに対しては卸電力市場の未熟さも指摘している。また、電気料金についても、大きく引き下げられたのは比較的競争が行われた特高業務用分野だけでその他の分野での引き下げ幅は少ないこと、その結果、電力会社の利益率は他の産業と比べ4から5倍と極めて高いと自由化の成果の乏しさを指摘。先頃の総合エネ調の制度改革評価委の報告書とは正反対の評価となっている。
 さらに提言は、CO2問題についても、原子力や大規模水力を既得権として囲い込む電力会社側の姿勢に対しても極めて不公平だとして、原子力や水力の電源の切り出しについても言及、また、託送料金についても算定の不透明さを指摘して、認可制への移行や第3者機関による検証制度の導入を求めている。まさに、現在の自由化制度の持つ課題について総花的かつ具体的に言及したもので、この通りの検証・評価が健全な競争市場の創出という視点で行われるのなら、来年度から始まる全面自由化に向けての検討作業も少しは期待できるのではないかと思わせる。
 原油高に象徴されるように、世界的なエネルギーの獲得競争の様相が示される中で、日本の電力自由化は足踏みを始めている。エネルギーの安定供給とセキュリティーに主眼が移り、市場の健全な育成という観点は忘れ去られようとしているように思える。
 料金が下がれば健全な競争市場が出現しているというものではない。誰もが必要なときに必要なだけ必要な手段でエネルギーを作り使えること、それが求められているのだとしたら、前世紀から変わらぬ手段で、迷惑施設として嫌われる発電所を過疎地の遠隔地に置き、連系線で運び消費するというスタイルにわざわざ先祖返りすることはないのではないか。既存の経済的かつ効率的、またクリーンな電源を大切にしながら、需要地近傍の高効率で環境負荷の少ないシステムを増やし、マクロでの効率化と低環境負荷を目指す。そんな当たり前の発想が実現できる方向に進みたい。コージェネレーション技術の発展、また自然エネルギー利用システムの技術進歩等々前世紀には不可能だったシステムが続々と利用できるようになっている。スクラップアンドビルドしながらエネルギーのベストミックスとエネルギーシステムのベストミックスを目指す。そんな姿を構想するのが行政の役割といえるのではないか。